肘関節の関節可動域制限の原因として真っ先に挙がるものとしては、肘関節の筋(例:上腕二頭筋や上腕三頭筋)だと思います。しかし、橈側手根屈筋と尺側手根屈筋も肘関節の可動域制限の原因になりえるのです。今回、橈側手根屈筋と尺側手根屈筋が肘関節の関節可動域制限に関与する理由について考えていきたいと思います。
目次
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続 運動機能障害症候群のマネジメント頸椎・胸椎・肘・手・膝・足
皮膚テーピング〜皮膚運動学の臨床応用〜 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ)
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尺側手根屈筋と聞くと、まず思い浮かぶのが手関節屈曲と尺側への運動だと思います。
しかし、尺側手根屈筋は二関節筋であり、肘関節屈曲にも作用します。
そのため、肘関節伸展を制限する原因として、この尺側手根屈筋を考慮する必要があるのです。
尺側手根屈筋が肘関節屈曲に補助的に作用するということは、この筋肉に筋緊張亢進や短縮があると、肘関節伸展の関節可動域制限になりうるということになります。
尺側手根屈筋が一番伸張されるのは、手関節が伸展されたときになります。
そのため、尺側手根屈筋が肘関節の関節可動域の原因として関与するときには、手関節が伸展位の際に起こります。
肘関節屈曲の関節可動域制限が疑われる際には、手関節伸展位として肘関節の運動を行うことも必要になります。
橈側手根屈筋と聞くと、まず思い浮かぶのが手関節屈曲と橈側への運動だと思います。
しかし、橈側手根屈筋は二関節筋であり、肘関節屈曲にも作用します。
さらに、前腕の回内運動を補助する働きもあるとされています。
そのため、肘関節伸展を制限する原因として、この橈側手根屈筋を考慮する必要があるのです。
橈側手根屈筋が一番伸張されるのは、手関節が伸展されたときになります。
そのため、橈側手根屈筋が肘関節の関節可動域の原因として関与するときには、手関節が伸展位の際に起こります。
肘関節伸展の関節可動域制限が疑われる際には、手関節伸展位として肘関節の運動を行うことも必要になります。
①豆状骨を探し、手首の掌屈(手首を曲げる)と尺屈(手首を小指側に横に倒す)をさせ、豆状骨についている尺側手根屈筋腱に触れる。
②小指(中手骨底)が上腕骨内側上顆(肘の最も内側)に一直線で近づくように掌屈、尺屈させ、腱や筋の動きをたどっていく。
③尺側手根屈筋は前腕の手首側1/3あたりで腱から筋腹に移っていく。肘に近づくにつれて、親指側にある長掌筋との判別もしていきます。
別法として、小指を強く外転運動(外に広げる)させることで尺側手根屈筋をたどっていくことも可能です。
①軽く指全指をつまみ、長掌筋腱を見つけます。そこから手首を曲げると長掌筋腱の親指側の横に橈側手根屈筋腱を確認できます。
②人差し指(中手骨底)が上腕骨内側上顆に向かって一直線で近づく様に繰り返し運動させ、橈側手根屈筋をたどっていきます。
③腱は前腕の中央付近で筋腹となります。起始側の橈側(親指側)には円回内筋、尺側(小指側)には長掌筋があります。
各筋のストレッチ方法については以下の記事を参照してください。
肘、前腕、手首の痛み解消法!筋肉別トリガーポイントのほぐし方、緩め方!
・橈側手根屈筋と尺側手根屈筋は肘関節の関節可動域制限に関与する。
・上記筋が伸張する肢位(手関節伸展位)での肘関節の関節可動域を評価することが必要。
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肘関節伸展の正常可動域は、5°の過伸展だとされています。
肘関節伸展の制限としては、
・肘頭と肘頭窩がぶつかること
・前方関節包と靭帯の影響
・肘関節屈筋群
があります。
肘関節は、前腕回内位、上肢下垂位にて完全伸展できれば可動域は獲得できていることを示しています。
肘関節屈曲に作用する筋は、肘関節伸展を制限する筋肉になりえます。
上腕二頭筋の作用は、肘関節屈曲と前腕回外です。
神経学的に大切なこととして、上腕二頭筋腱膜の下には正中神経が走行しています。
そのため、肘関節屈曲で正中神経が圧迫されると、正中神経領域の神経症状が出現することがあります。
上腕二頭筋が肘関節伸展を制限する場合、
・前腕回内位での肘関節伸展が制限されることがあります。
ここで注意したいことは、前腕回内位では、上腕筋が主動作筋となっていることです。
そのため、前腕回内位での肘伸展では、上腕二頭筋だけでなく、可能性として上腕筋(または関節包)の影響も考えることができます。
では、上腕二頭筋と上腕筋どちらが肘関節伸展制限の原因になっているのかを区別する方法を考えていきます。
上腕二頭筋は、肩関節にも関与する二関節筋です。
そのため、肩関節の肢位を変化させることで、肘伸展可動域に変化があれば、上腕二頭筋の影響が大きくなると考えることができます。
前腕回外位、肩関節屈曲位にて肘関節が伸展可動域が拡大する場合、上腕二頭筋の影響が強いと考えます。
①肩を90度程度挙げ(テーブルなど腕を置くと良い)、肘を100度程度曲げ、手のひらを顔に向けます。この肢位は上腕二頭筋の働きを抑えながら上腕筋を触るのに適したものになります。
②その肢位から手のひらを反対に向けながらさらに肘を曲げていきます。上腕骨外側上顆から上腕骨外縁に沿って上腕筋を触知していきます。
上腕筋は内側の筋腹も触知することができ、その場合内側上顆やや上の部分で、肘を曲げていった際の筋収縮を深部から押し上げてくる感覚を頼りに触知していきます。
①肩90度程度挙げ(テーブルになどに腕を乗せると良い)、手のひらは顔に向け、肘を曲げます。上腕筋に押圧を加え、肩(上)方向に引き寄せます。
②手のひらを反対側に向けながら、肘を伸ばしていきます。
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関節運動が起こるとき、皮膚はどのような動きをしているでしょうか。
例えば、肘関節を90度曲げた状態をスタート位置とします。
肘の裏側(肘頭)の皮膚を考えたときに、肘関節を曲げた場合には皮膚は伸ばされます。
また、肘関節を伸ばした場合には皮膚は縮みます。
このように、皮膚は関節運動に合わせて自在にその伸張性を変化させることができます。
ちなみに、肘関節屈曲において、皮膚は縦方向だけでなく、横方向にも伸びていることがわかっています。
皮膚の伸張性低下と関節可動域制限を考えていくときに一番わかりやすいのが、手術後の皮膚状態です。
またまたわかりやすいので肘関節を例に考えていきます。
肘関節の手術(外傷含む)を行った場合、皮膚を切った部分は最後縫うことになるのですが、その際皮膚はその伸張性が低下することがよくあります。
肘関節後面の皮膚の伸張性低下が生じた場合、特に肘関節屈曲の可動域が制限される可能性が高くなります。
皮膚といえば、リハビリテーションで関連があるのは筋膜です。
鶏肉を調理したことがある方は思い浮かべてください。
鶏肉の肉の部分は筋肉です。また、その上には鶏皮があります。
鶏皮を剥がそうとめくったときに、薄い膜を見たことはあるでしょうか、あれが筋膜です。
筋膜は、皮膚と筋肉の間に位置しています。
そのため、皮膚、筋肉、筋膜のどれかが緊張する、もしくは硬さが生じてしまうと、他の2つの部分にも影響が出てしまいます。
この硬さは筋肉と皮膚、もしくは筋膜の間の滑走性を失わせるので、運動時の痛みや関節可動域制限の原因になりえてしまいます。
皮膚はどれくらい伸びるものなのでしょうか。
例えば、私の肘関節後面の皮膚は、図のような感じで伸びます。
肘が曲がっている状態なので、皮膚は少し伸びにくいですが、肘を伸ばした場合には図のような皮膚の伸びがみられます。
この肘周辺の皮膚の伸びですが、手術などで皮膚に侵襲が加わった場合、先ほどの皮膚のような伸びを見せないことがあります。
イメージとしては、「パッツンパッツンで皮膚をつまめない」という感覚です。
手術をしている場合には、術部を触れてもよいか、Drに確認してから行うようにしてください。
両手が使える部位であれば、一番わかりやすい方法としては、皮膚をつまんで動かすという方法があります。
例えば、膝のお皿(膝蓋骨)の皮膚を緩めてみます。
膝蓋骨上の皮膚をつまみ、以下の矢印方向のように交互に動かすことで、皮膚が緩み、皮膚の伸張性が徐々に出てきます。
これは、皮膚を緩めるのと同時に筋膜を緩めることにも通じています。
皮膚・筋膜の滑走性が悪い場合、つまんで矢印方向に交互に動かした際には痛みを感じるでしょう。
この痛みの感覚は、「チクチク」「ピリピリ」という感じです。
滑走性が改善されてくると、痛みは徐々になくなっていきます。
全く痛くないのが「0」、我慢できない痛みが「10」だとすると、痛みのレベルが「3」になるくらいを目安に取り組んで欲しいと思います。
緩めた部分の痛みが軽減しても、その隣の部分を緩めるとまた痛みがあるかもしれません。
これは、皮膚・筋膜というのはつながりがあるため痛くなっています。
そのため、周辺を緩めてみて、痛みがある部位を緩めていくことで、滑走性や皮膚の伸張性が獲得されていきます。
他の方法としては、皮膚をつまみながら関節運動を行う方法です。
例えば、肘関節後面の皮膚の伸張性を獲得したい場合、以下のように皮膚をつまみながら、肘関節の屈伸運動を行います。
私の経験上、前腕の回内外がスムーズに動きにくいと感じていた方に、円回内筋上の皮膚を緩めることで、回外運動がスムーズになった例もあります。
肘関節の手術を受けた方では、肘周辺の上腕、前腕部の筋緊張も疼痛により亢進することも考えられます。
筋緊張亢進により皮膚の伸張性低下や皮膚、筋間と筋膜の滑走性が悪くなることがあります。
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