呼吸器疾患の対象者では、呼吸器の問題により呼吸困難を示すことがあり、その評価方法にも様々なものがあります。今回、呼吸困難の評価に用いられている評価バッテリーにおける、概要と評価方法、結果の解釈についてまとめていきたいと思います。
目次
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呼吸困難感について、
呼吸困難とは様々な強度のいくつかの質的に異なる感覚によって構成される「呼吸の不快感の主観的な経験」を指し示す用語である。
この経験は多くの生理学的、心理学的、社会的、あるいは環境的要因の相互作用によって生じ、また二次的な生理学的、行動反応を引き起こすであろう。
ATS statement 1998
呼吸困難感は、複合感覚であり、過去の記憶や感情なども加わって形成されます。
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呼吸困難の発生機序としては、以下のような要因があります。
・換気能力の低下
・換気仕事量の増大(呼吸補助筋の増大)
・換気需要の病的亢進
さらに細かくみていくと、
換気能力の低下に関連する因子としては、
・気流制限
・動的過膨張
・肺、胸郭のコンプライアンスの低下
が挙げられます。
息を(換気)をする時、呼吸筋(横隔膜・肋間筋など)は、吸気に筋肉を収縮させて胸郭を拡げて息を吸い込み、次に筋肉を弛緩させて呼気を排出します。
それが、COPDになると気流制限(1秒量の低下)が起こり、吸い込んだ息が十分排出されず、 肺に空気が溜ることで肺胞壁が破壊 されていきます。これが 「肺気腫」で、肺が空気で腫れると書きます。
このために肺は過膨張し、横隔膜が下へ進展されて動きが制限され、 吸い込みが浅く大きな呼吸ができなくなります。
https://www.fukuda.co.jp/medical/inhome_medical/pdf/hotikiiki001.pdf
肺のコンプライアンスとは、簡単に言うと肺の膨らみやすさのことを指します。
肺や胸郭のコンプライアンスが低下するということは、肺がふくらみにくくなるということです。
コンプライアンスが低下している状態では、1回換気量(1回の呼吸により肺を出入りするガスの総量)が低下します。
換気仕事量の増大(呼吸補助筋の増大)に関連する因子としては、
・動的過膨張による弾性仕事量の増大
・末梢気道抵抗の増大
が挙げられます。
過膨張している肺では、COPDの方でみられるように、肺胞壁が破壊されている状態です。
胞壁が破壊されると肺胞内に空気が換気されていても、酸素を血液中に取り込むことが出来ず、二酸化炭素の排出も出来なくなります。
逆に、肺胞構造と血流が保たれて いても、喀痰や気道狭窄にり気道が閉塞されれば肺胞低換気となり、酸素を血液中に取り込むことが出来ず、二酸化炭素の排出も出来なくなります(ガス交換障害)。
ガス交換能の低下は、安静時も運動時も同じ量の酸素を体内に取り込むのに、健常人の倍以上の空気を換気することが必要となります。
https://www.fukuda.co.jp/medical/inhome_medical/pdf/hotikiiki001.pdf
これが、呼吸筋の仕事量が増え、エネルギーを消費しやすい状態になる原因といえます。
末梢気道抵抗の上昇ですが、例えば気管支喘息であれば末梢気道の抵抗上昇によって、呼吸仕事量は増大します。
また、喀痰などが気管内に付着すると気道半径が小さくなり、気道抵抗は気道半径の4乗に反比例するので、 気道抵抗が急激に増大します。
気道抵抗が大きくなるということは、それだけ抵抗に逆らって空気を肺内に吸い込むことが必要になるため、呼吸筋の仕事量が増大します。
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NRS(numerical rating scale)は、 0と10を最端とし,間に数値によるアンカーポイントが記載されています。
0を「まったく苦しくない」10を最大に苦しいとし、その中でどの数値に当てはまるかを選択してもらいます。
VAS(visual analogue scale)は、両端が最大もしくは最小の主観的感覚(全く苦しくない・最大に苦しい)を示す 100mmの直線分上に、自分の状態に当てはまる所を自身で印をつけ、その点を下端より測定します。
自分の息切れの程度を0の「何も感じない」から10の「非常に強い」の10段階で表します。
0 何も感じない0.5非常に弱い
1 やや弱い 2弱い 3ちょうど良い(楽である) 4ややきつい 5きつい( 強い ) 6 7 かなりきつい 8 9 10非常にきつい |
活動遂行時に得られる主観的な息切れの程度から、休息のタイミングなどを図っていきます。
一般的には、3〜4程度で休息を入れるのがベターになります。
日本呼吸器学会発 行のガイドラインに掲載されているもので、「Lung Function Tests (editedbyJMB Hughes & NB Pride) 」 に掲載されたMRC息切れスケールを邦訳したものです。
文献:MRC息切れスケールをめぐる混乱 ―いったいどのMRC息切れスケールを使えばよいのか?―
BDIは、呼吸困難による機能障害、呼吸困難が生じる仕事量、呼吸困難が生じる作業の程度の3つについて、面接により0〜4の5段階で評価を行います。
TDIは、BDIで得られた点数をもとに、その変化を-3から+3の7段階に分けて評価し、リハビリテーション効果を測定するために用いられます。
Grade4:息切れを感じることなく普通の活動ができる(No impairment)
Grade3:息切れを感じて若干活動能力が落ちてしまう(Slight impairment)
Grade2:息切れを感じて普通の活動が出来ず、作業を変えたり、あきらめることがある(Moderate impairment)
Grade1:息切れを感じて普通の作業ができない(Severe impairment)
Grade0:息切れを感じて全ての作業ができない(Very severe impairment)
OCDは、VAS(visual analogue scale)を応用したものです。
VASの線分上に、様々な日常生活活動を提示させ、どの所に当てはまるのかを評価します。
OCDは、各活動における酸素必要量がどの程度なのかということが、おおよその感じてして把握できます。
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