視床を損傷すると、基底核障害が生じることがあります。今回、視床損傷(出血、梗塞)で基底核障害が起こる理由と視床亜核と基底核の関係性についてまとめていきたいと思います。
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視床と大脳皮質—大脳基底核ループの関係性
大脳皮質の運動関連領域から出力された情報は、大脳基底核の入力部である線条体(被殻・尾状核)に伝達されます。
その後、直接路(アクセル)と間接路(ブレーキ)の二手に分かれ、大脳基底核の出力部である淡蒼球内節・黒質網様部に至ります。
そして、その情報は視床へ伝達され、最終的には運動関連領域へと収束していくことになります。
直接経路は、アクセルともあるように、抑制を緩めて運動を促進させる(脱抑制)経路です。
間接経路は、ブレーキともあるように、抑制を強めて運動を止める経路です。
このような運動制御の中で、視床亜核に情報が伝達されるのですが、これを担っているのが主にVA:前腹側核(Ventral anterior nucleus)、VL:外腹側核(Ventral lateral nucleus)です。
前腹側核(VA:Ventral anterior nucleus)
入力:基底核、小脳
出力:運動前野、補足運動野
運動プログラム、姿勢制御に関連
外側腹側核(VL:Ventral lateral nucleus)
入力:基底核、小脳
出力:運動野
精緻運動に関連
とされています。
このようなことから、視床が損傷することで、大脳皮質—大脳基底核ループの機能低下が起こることが予測されます。
大脳皮質—大脳基底核ループの具体的役割と生じる障害
大脳皮質—大脳基底核ループは4つのループがあります。
①運動ループ
②眼球運動ループ
③前頭前野ループ
④辺縁系ループ
運動ループは、補足運動野-被殻-外側腹側核でループを形成しています。
記憶誘導性の運動や、自発的な動作に関与しています。
運動ループの機能低下が起こると、記憶を元にした運動の手順の障害が起こることが予測されます。
また、自発的な運動が起しにくくなることが予測されます。
眼球運動ループは、前頭眼野-尾状核-前腹側核、背内側核でループを形成しています。
眼球運動(サッケード)が頻繁に生じないように抑制をする役割があります。
眼球運動ループの機能低下が起こると、サッケードの抑制障害が起こったり、自発的な眼球運動が生じにくくなるなどが予測されます。
前頭前野ループは、背外側前頭前野-尾状核-前腹側核、背内側核
外側眼窩前頭皮質-尾状核-前腹側核、背内側核
でループを形成しています。
遂行機能、問題解決、意思決定や衝動のコントロールを制御する役割があります。また報酬予測にも関連するとされています。
前頭前野ループの機能低下では、これらの機能低下に加え、運動学習を阻害することも予測されます。
辺縁系ループは、前帯状回-腹側線条体-背内側核でループを形成しています。
情動や動機付けに関与しており、辺縁系ループの機能低下では、情動のコントロールや動機付けの障害が生じることが予測されます。
大脳基底核障害が生じる視床亜核は脳画像上どの部位にあるのか
上図は視床における視床亜核の全体図です。
この中の「VA」が前腹側核で、「VL」が外側腹側核、「MD」が背内側核です。
視床損傷で生じる基底核障害のまとめ
外側腹側核の損傷では、記憶を元にした運動の手順の障害、自発的な運動の障害が起こる可能性があります。
前腹側核、背内側核の損傷では、サッケードの抑制障害が起こったり、自発的な眼球運動が生じにくくなる可能性があります。
また、遂行機能、問題解決、意思決定や衝動のコントロール、運動学習の障害が生じるこ可能性があります。
背内側核の損傷では、情動のコントロールや動機付けの障害が生じる可能性があります。
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