身体イメージ、身体図式、運動イメージと似たような用語が並んでいますが、その違いはどのようになっているのでしょうか。
身体図式と身体イメージの違いについては、
近年、運動イメージをリハビリテーションに用いる有用性が言われ始めていますが、臨床場面においてどのように応用されるのかは、確立しきっていません。今回、運動イメージの中でも、メンタルローテーション課題の概要と、リハビリテーションへの応用についてまとめていきたいと思います。
目次
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身体イメージ、身体図式、運動イメージと似たような用語が並んでいますが、その違いはどのようになっているのでしょうか。
身体図式と身体イメージの違いについては、
意識下で作動する身体図式は、身体イメージとは区別される (body image)。身体イメージとは、「私は、身長170cmで、瘦せ型である。大きな耳を持っている。」というような顕在的な自己身体に関する知識を指す
http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%BA%AB%E4%BD%93%E5%9B%B3%E5%BC%8F
とあります。
また、
Gallagerは自己意識によってアクセス可能な内的表象を身体イメージ(body image)と定義し、身体イメージは必ずしも実際の身体とは一致しておらず改変可能性のあるものとした。
一方、意識化されないものを身体図式(body schema)とし、これは感覚−運動に関連した脳内の身体地図の作動を表し、運動している際に身体図式は駆動しているが、どの筋肉がどのように使われているかといった報告不可能なものを示したリハビリテーションのための神経生物学入門
とあります。
これらのことから、身体図式は意識されないもので、身体イメージは意識されるものだということがわかります。
運動イメージについては、
実際の運動は行われないにもかかわらず、その運動を想起することができることを指し、脳内にワーキングメモリが再生されるプロセス
リハビリテーションのための神経生物学入門
とあります。
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メンタルローテーションは、心的回転とも呼び、3次元の空間で回転しているシンボルや文字を想起し、それが何なのかを言い当てたり、他の刺激と同じか/異なるかなどを判断する課題です。
臨床場面では、手や足を様々な角度から見て、「右手」か「左手」かなどを確認します。
これは、身体イメージが適正かどうかの評価につながります。
答えるまでの反応時間は、運動イメージの想起能力を反映すると考えられ、反応時間が短いほど運動イメージの想起能力が高いと考えられています。
また、メンタルローテーション課題は、運動関連領域である運動野、運動前野、補足運動野などの賦活があるとされ、その反応時間はおおよその運動イメージ能力に等しいとされています。
さらに、運動プログラミングの生成に働く基底核の活動も確認されるなど、メンタルローテーション課題では、あたかも実際に運動を行っているかのように運動関連領域が賦活することが知られています。
メンタルローテーション課題は、「学習性不使用」などによる運動量の増減によっても感覚入力が変化し、体性感覚野における身体図式が変化したことによって反応時間の遅延が起きるということも示唆されています。
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福岡ら(2017)は「身体部位を使用したメンタルローテーション課題が疼痛に及ぼす影響」にて、メンタルローテーション課題が即時的・ 短期的な除痛に影響したことを報告しています。
山田ら(2009)は、肩関節周囲炎患者における肩関節機能向上にメンタルローテーション課題が有用であったと報告しています。
山田ら(2008)は、メンタルローテーション課題の反応時間は加齢とともに延長する傾向にあり、転倒高齢者の反応時間は非転倒高齢者よりも有意に延長していたと報告しています。