前腕や手掌の小指側にしびれがある場合には、尺骨神経症状を考える必要があります。今回、尺骨神経症状の原因と評価の考え方についてまとめていきたいと思います。
目次
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腕や指の小指側(尺側)にしびれがある場合に考えなければいけないことは、尺骨神経(ギヨン管)の問題です。
尺骨神経は、
脊髄神経から分岐し上腕・前腕・手へ繋がる腕神経叢に由来する橈骨神経、正中神経と並ぶやや径の大きな神経である。解剖学的正位に位置し、上腕部においては、上腕部尺骨神経溝、前腕部においては、尺骨に沿って内側を走行する。背側指神経、総掌側指神経、固有掌側指神経に分枝する。
Wikipedia
とあります。
また、ギヨン管は、尺骨神経の通り道となっています。
ギヨン管症候群は、尺骨神経の圧迫により引き起こされますが、その絞扼部位によっても症状が変わることがあります。
尺骨神経はギヨン管のところで浅枝と深枝に分かれます。それを基準にすると、
・枝分かれする前:尺骨神経支配の手内筋全ての筋萎縮や筋力低下、小指球・小指・薬指の感覚障害
・深枝:尺骨神経支配の手内筋全ての筋萎縮や筋力低下
・浅枝:小指球・小指・薬指の感覚障害、短掌筋(小指の皮膚を引き、くぼみを深める作用)の運動機能低下
となります。
下図は尺骨神経の知覚支配の領域です。
なお、尺骨神経支配の筋は、
となっています。
尺骨神経の運動障害で有名なのは鷲手です。
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ここでは、ギヨン管症候群を確かめるために用いられるテストをみていきます。
ギヨン管部分(下図の黄色丸)を打鍵器(の細い部分)で叩打し、前途した小指球・小指・薬指の感覚障害が出現するかを確認するテストです。
このテストでは、叩打によりギヨン管の内圧が上昇し、尺骨神経が圧迫を受けた場合には神経症状が出現します。
机の上に腕を乗せ、紙を両手の親指と人差し指でつまみ、親指のIP関節が屈曲するかどうかを確認するテストです。
親指のIP関節が曲がれば、それは長母指屈筋によって代償している(母指内転筋の筋力が十分に発揮されていない)ことになり、尺骨神経症状が出現しているということになります。
机の上に手のひらを下にして乗せ、小指の内外転を求め、内転が行えるかどうかを確認するテストです。
内転ができないのであれば尺骨神経症状が出現しているということになります。
内転ができないのは、尺骨神経支配である掌側骨間筋の機能低下があるためです。
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ギヨン管は、床を横手手根靭帯、天井を掌側手根靭帯、尺側を豆状骨と豆鈎靭帯、橈側を有鈎骨鈎から構成されています。
小指球は、豆状骨や有鈎骨鈎についていることから、小指球が過緊張状態であったり硬さがある状態では、ギヨン管部を圧迫し、尺骨神経症状につながることがあります。
前腕回内の可動域制限がある方で、さらに前腕回内を要求する動作を行う場合、代償的に手関節の尺屈や掌屈を大きくすることがあります。
このような運動を反復的に行っていると、小指球が圧迫され、尺骨神経症状につながることがあります。
前腕回内、回外運動では、上橈尺関節において、橈骨が尺骨の上で回旋をしています(軸回旋)。
回内運動では尺骨上で橈骨頭の後方への滑り、回外運動では前方への滑りが生じているともされています。
また、回内運動に伴い橈骨はわずかに外側に移動するともされています。
その際に、橈骨輪状靭帯が制動をコントロールしているのですが、橈骨輪状靭帯の伸張性が低下すると、その動きが制限され、前腕回内可動域の制限が生じることがあります。
前腕回内、回外運動では、下橈尺関節において、回内時には橈骨が尺骨上を前内側方向に滑り、回外時には橈骨が尺骨上を後外側方向に滑ります。
この時の動きの制動を、橈尺靭帯が担っています。
橈尺靭帯の伸張性低下があると、橈骨の動きが阻害されてしまい、前腕回内、回外に制限が生じることがあります。
前途した、前腕回内、回外運動時における下橈尺関節の動きの制動には、前腕骨間膜も関与しています。
回外筋は肘関節がどの肢位(肘屈伸)においても影響を受けることがありません。
回内制限がある場合に、個別で回外筋の影響を確認するためには、
・肩関節90°屈曲位、肘関節最大屈曲位にて前腕を回内させる
ことが必要になります。
また、手指伸筋群も前腕回外に作用するので、回内制限の原因になりえます。ここで、手指伸筋群の短縮を区別する方法を考えていきます。
長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋
手指伸展位で手関節掌屈の可動域を測定します。
*手指伸展位で長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋が緩む肢位になります。
総指伸筋
手指屈曲位で手関節掌屈の可動域を測定します。
*手指屈曲位で総指伸筋が緊張する肢位になります。
前腕回内外の可動域制限の理由と治療については以下の記事も参照してください。
前腕回内、回外の関節可動域(ROM)制限の原因と改善方法!