依存症、アディクション(嗜癖)に関する家族問題には、暴力・虐待などがあります。今回はその介入について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。
目次
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対人援助職のためのアディクションアプローチ: 依存する心の理解と生きづらさの支援
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アディクションの継続やそれをやめさせることに絡んで、またはスケープコート役の子供が起こす非行などの結果として、暴力や虐待が起こることがあります。
これは、世代境界や個人境界の薄さにより家族間の心理的距離が近くなり、強い期待やコントロールをしますが、それが達成されない場合に気持ちのブレーキが効きにくいために起こります。
このような状況の援助には、下記のように考えていきます。
援助職は発見し、相談を受けたら積極的に介入していく必要があります。逃げることを直接提案し、逃げ場所の具体的な情報提供やリファーをし、家族関係に暴力の加害被害が起きないようにすることです。暴力は家庭内の内輪ごとではないので、外にはみ出た事件として援助者が介入するチャンスでもあります。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P150
家族の機能不全状態にも関わらず、恒常性が働き現在の状況を維持しようとすることがあります。
また暴力があっても逃げられないなど危機に関して警報が働かない情報状態であり、援助職は被害者に危機を伝え、注意を促し、場合によっては被害者を守ろうとする姿勢見せることも必要です。
距離をとることに現実的な考えにならない場合、逃げ方を一緒に考えていく中で不可能でないことを感じてもらうように関わることが大切になります。
被害者は逃げられない理由をたくさん挙げますが、そこに新しい情報を伝えることが大事になります。その対応には、下記のようなことが挙げられます。
警察を呼ぶ:警察官が駆けつけることでタイムアウトになります。たいていそこで事情を聞かれ、少なくともその日は離れていることを勧められます。いったん離れて戻ってくるときが本人への介入のチャンスになります。
親など周囲の人の理解を求める:多くの人に面倒を持ち込みたくないという配慮は、全体的にみてかえって問題を長引かせ、子供に影響が出ます。親に理解を求め、タイムアウトを取る場所や、逃げ場所として協力してもらえるようにします。ただし、親の健康度が低い、古い家族観に基づき「我慢しなさい」という親の場合は、援助職が逃げ場所になることもあります。
シェルターなどを利用する:連絡先や使い方まで伝えます。落ち着いて出られる(逃げられる)なら、あらかじめ相談しておいた友人や親戚宅でもよい。結果として使わなくても、避難できる場所の連絡先を知っていることは力になります。
子供の保育園や学校への情報提供:関係機関が協力してもらえることを話し合っておくだけでも、家族の心の準備になります。
法的知識を持つことや弁護士への相談:専門家には連絡先を具体的に伝えておきます。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P150
小さな子供や高齢者がケアを受けながら被害を受けている場合には、分離するだけでなく加害者にもアプローチし、背景にあるアディクションの問題も含めて考え、見守っていくことが必要になります。
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機能不全家族で、アディクション問題に巻き込まれている子供が健康的に成長していくためには、その子供に焦点を置いてサポートしていく必要があります。
そのポイントとして、以下の事が挙げられます。
・アディクションについての年齢に応じた情報提供の上、子どもには問題の責任がないことを理解してもらいます。その上で本人の回復を応援していくように伝えます。
・子どもの話をよく聞き、子どもなりに感じた、今までの(あるいは現在の)苦しさを理解します。あなたに関心がある、あなたを愛している、ということを表現していきます。
・挨拶を交わす、いたわり合う、ねぎらい合う、誕生日を祝うなど、危機状態への対応で忘れ気味だった本来の生活を平常に戻していきます。
・親がよい相談相手とは限りません。子どもが相談やサポートを受けられる大人が存在するようにします。
・子どもの本来の興味や関心に応じて参加できる、発散できる場を見つけるようにします。(スポーツや習い事など)
・親子関係の修復を目指します。遅すぎることはありません。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P151
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DVは被害・加害者の認識が持たれにくく、それがアディクションによるためと否認されてしまうことがあります。
身体的暴力は外見でわかりますが、精神的暴力や経済的暴力、モラルハラスメントの問題も含まれることがあります。
人間関係嗜癖では、
相手との境界線がないなかで男性らしさ・女性らしさのコントロールが起きるため、妻であればこうするべきという行動の押し付けから、果ては「お前の話には主語がない。話にならない」としゃべり方まで押し付けてくることがあります。アディクションへの欲求が強いために起きるDVであり、アディクション行為そのものが妻を傷つけるDVなのです。
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などの問題があります。
このような場合、支配的な関係のなかで、先の見通しがなく絶望しているようなことが見られます。人質の心理で、相手から被害を受けないために世話役を担い生き延びるための手段としていることがあります。
支援としては、被害者としての意識を持ってもらい、緊急時の連絡体制を整えておくこと、具体的なプラン、経済的な見込み、支援のネットワークなど生活の安全を図るように取り組んでいきます。
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依存症やアディクションの本人をケアする役割が社会的に家族に求められる場合に、ケア役を担う人を「ケアラー」と呼びます。
アディクション問題を起こしている本人が要介護状態となった時に、本人のケアをめぐるキーパーソンとして配偶者を見ることになります。
このケアラーもサービス対象者として捉えていくことが必要になります。
日本にはケアラーを支援する制度はありませんが、相談、情報、休息、介護者の健康支援、趣味を持つこと、経済支援など、様々な視点から幅広く考えていくことが必要になります。