近年、腎臓機能障害に対するリハビリテーションが盛んになってきています。今回、透析患者のリハビリテーションにおける基礎知識と腎臓のリスク管理についてまとめていきたいと思います。
目次
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透析患者では、以下のようなことが認められます。
・腎性貧血
・尿毒症性低栄養
・骨格筋減少・筋力低下
・骨格筋機能異常
・運動耐容量の低下
・易疲労感
・活動量減少
・QOL低下
腎臓の問題によって生じる貧血です。
腎臓ではエリスロポエチン(EPO)というホルモンが産生され、骨髄で赤血球を産生するように促します。
腎臓の機能が低下すると、エリスロポエチン(EPO)が賛成されにくくなり、赤血球が減少します。
貧血とは赤血球あるいはヘモグロビンの量が正常より少なくなった状態をさします。
貧血の症状としては、
・つかれやすさ
・めまい
・立ちくらみ
・動悸
・息切れ
・頭痛
・顔面蒼白
・耳鳴り
などがあります。
貧血による転倒には注意が必要です。
検査データとしては、おおよそ
RBC(赤血球数)
男性:427~570
女性:376~500
HB(ヘモグロビン(血色素)濃度)
男性:13.5~17.6
女性:11.3~15.2
となっています。
透析患者では、透析液中へのタンパク質やアミノ酸が喪失し、尿毒症やアシドーシスまたは透析による慢性炎症状態により分解代謝が増加するとされています。
そのため透析患者では、体蛋白や体脂肪の消耗など栄養障害を認めることが多くなっています。
リハビリテーションにより低栄養改善やタンパク質異化抑制などの効果が確認されています。
慢性腎臓病患者では、体内に蓄積する尿毒素が筋量と筋力の低下の原因となることが明らかにされています。
腎機能の低下により尿毒素の排出がうまくいかず、血中や筋肉に蓄積されます。
蓄積された尿毒素は、細胞内代謝の変化を誘導し、それが筋肉量を低下させる原因になります。
細胞内代謝の変化について説明していきます。
通常筋肉の細胞内では、糖が細胞内に取り込まれると、解糖系→TCA回路を介してエネルギー源になるATPを産生することで筋肉を維持します。
細胞内に尿毒素が蓄積することで、酸化ストレスを引き起こし、それを防ぐために抗酸化防御回路というものが亢進します。
それによりTCA回路が停滞し、ミトコンドリアが障害されることでエネルギーの産生が低下します。
そのために筋肉を維持することが困難になり筋萎縮が生じます。
長期間にわたって透析を行っていると,心不全や低血圧などの合併症が発生し,それが透析患者のQOLを一層低下させてしまう.
さらに,透析合併症や超高齢化に伴う多疾患や透析合併症による重複障害により安静を保つことで,運動耐容能はさらに低下し,廃用症候群に陥ってしまう.
透析患者の運動耐容能は心不全患者やCOPD患者のものと同レベルまで低下している.
運動耐容能の低い透析患者や運動をしない透析患者では生命予後が悪いことが明らかになっている.
さらに,透析患者が運動を行わないことは,低栄養・左室肥大と同程度に生命予後に影響することが指摘されている.上月正博「内部障害のリハビリテーション:理論と実際」Jpn J Rehabil Med 2013 ; 50 : 212.224
とあります。
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心臓と腎臓には関係性があると言われており、例えば心臓の機能が低下すると腎臓の機能低下が起こり、またその逆も起こることがよくあります。
このような、心臓と腎臓の関係性を心腎連関と呼びます。
腎臓機能の低下により高血圧や糖尿病、体内の活性酸素が増加します。
活性酸素は動脈を傷つけることがわかっており、心臓血管に負荷をかけ、血管が弱くなったり、心臓機能の低下に繋がります。
腎臓機能が低下すると、余分な塩分や水分の排泄が困難になり血液量が増加し、血圧上昇に繋がります。
さらに、血圧上昇は腎臓に対する負荷を強め、さらに腎臓機能の低下に繋がります。
高血圧の持続は、腎臓血管における動脈硬化を生じさせます。
腎臓血管は細く、動脈硬化によりさらに狭くなり、腎臓に流れる血液量が低下し、腎臓機能は低下します。