脳卒中後にアパシー(意欲障害)を高い頻度で合併するものとして、血管性認知症が挙げられます。アパシーは脳血管障害の結果として起こりますが、これが廃用性認知症の原因となる可能性も指摘されています。今回、脳卒中後のうつ状態、アパシー(意欲障害)と血管性認知症との関係について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。
目次
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アパシーをきたすには3つの機序があるとされています。
1つには、喜怒哀楽などの情動と、高度な感情の連携過程の破綻で、眼窩内側前頭前野皮質、線条体、淡蒼球腹側の辺縁系が関与しています。
2つには、実行機能の低下によるもので、背外側前頭前野皮質、背側尾状核が関与しています。
3つには、自動的賦活過程の障害で自発的な行動が低下するが、外的駆動(他者からの誘導など)による行動は保たれるもので、重度のアパシー状態となるものです。これには両側前頭前野や両側淡蒼球が関与していると言われています。
アパシーはうつ状態とは違った病態ですが、血管性うつ状態などでは合併することも多いと言われており、うつ状態の症状の一つだとみなされてしまうことも多いようです。
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血管性うつ状態の定義には、①計画力、企画力、持続力、抽象力などの認知機能障害②精神運動制止③罪業感などの抑うつ思考の乏しさ④病識欠如⑤無力感⑥感情障害家族歴がないとなっていますが、これはアパシーそのものだとも考えることもできます。
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血管性認知症は皮質下認知症で、背外側前頭前野回路を中心とした基底核、視床などや、その投射路の白質の障害によっておこります。
一方、アルツハイマー型認知症は大脳皮質神経細胞自体が脱落する皮質性認知症になります。
皮質下性認知症では、前頭前野の血流が著明に低下しており、白質障害により前頭前野に集まるネットアーク機能が低下し、アルツハイマー型認知症と比較して記憶障害は比較的軽度で、ヒントにより改善することが特徴となります。
また注意、実行機能の低下があり、認知過程の遅延(情報処理速度の低下)が目立ちます。感情障害ではうつ状態よりも、自発性低下などのアパシーが多いとされています。
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アパシーは長期的にみると認知機能低下を生じさせる可能性があり、これは、アパシーによる廃用性認知機能低下だと考える意見もあるようです。
血管性認知症では尾状核のドパミンの取り込み低下がみられると言われており、尾状核頭部病変は前頭前野への投射系障害を引き起こし、アパシーを生じさせる可能性があります。
血管性認知症は数回の再発により生じることが多いですが、これには尾状核頭部周囲の病変が重要とされています。
アパシーが先行し、白質病変がネットワーク障害を基礎とする廃用性認知症を引き起こすと考えることができます。
このことから、脳血管障害にみられるアパシーは、血管性認知症の症状の一つであり、また廃用性認知症の原因として考えることが可能です。
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