アパシー(意欲障害)について、脳部位、疾患から考えるアパシーの原因や前頭葉損傷によるアパシーの特徴を文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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アパシー(apathy)は一般的に興味・意欲の欠如と定義されます。また無関心や感情の平板化(感情鈍麻)と似たような意味で用いられています。
神経内科領域では周囲への無関心、意欲の低下による自発性の減少をさすことが多いですが精神科では情動面の低下や欠如を指すことが多くなります。
様々な定義付けが行われてきていますが、客観的評価が困難な内的、心理学的側面よりも、行動として現れる側面を評価の基準としていることもあります。
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アパシーの原因疾患には大きく3つ(脳の局所性障害、認知症、精神疾患)あります。
1)脳の局所性障害
1.背外側前頭前野障害
2.前頭葉内側障害(前帯状回および補足運動野)
3.前頭葉皮質下部位(基底核、視床)との連絡の障害
4.中脳辺縁系損傷によるドパミン障害
5.脳幹損傷によるカテコールアミン障害
6.辺縁系損傷による発動性低下(両側扁桃体や側頭極)
2)認知症
1.前頭葉および皮質下性認知症
2.すべての認知症の進行期
3)その他
1.周囲からの報酬や動機付けの喪失
2.一次感覚喪失(失明、聾)
3.代謝性障害
4.睡眠障害
5.慢性疼痛脳疾患によるアパシー(意欲障害)の臨床 P4
基底核でのアパシーでは、自発性低下や思考の減弱、情動反応の低下・欠如があります。基底核では尾状核損傷がアパシー発生の頻度が高く、被核損傷では最も頻度は少なくなります。基底核損傷では中脳辺縁系ドパミン路との関連が考えられています。
他にも、前頭葉と神経連絡を密にしている部位または連絡繊維のある前頭葉の深部白質がアパシーを生じさせる可能性があります。
前頭葉、辺縁系の出力に関連した部位を含む損傷の場合は、アパシー発生の可能性があることを頭に入れておく必要があります。
認知症ではアパシー発生の頻度が高く、認知症の予後や治療効果に影響があると言われています。
前頭葉型認知症では人格変化とならんで、アパシーはしばしば問題となる重要な症状である。アルツハイマー型認知症でもアパシーを呈する頻度は非常に高い。アルツハイマー型認知症での身の回りに対する無頓着性はアパシーに関連しているとされ、他の症状と独立して認められる。
脳疾患によるアパシー(意欲障害)の臨床 P4
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アルツハイマー型認知症でのアパシーが見られる頻度は約60%(37〜86%)と言われています。
外傷性脳損傷では約61(46〜71%)%とされています(小児、若年例除く)。
前頭葉の局所性障害では約60%(13〜90%)とされています。
基底核疾患では約40%とされています。
脳血管性認知症では34%、脳卒中後では35(23〜57)%とされています。
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前頭葉が関連したアパシーは実行関連アパシーと呼ぶことができます。
前頭葉と皮質下を結ぶ回路には前頭葉-線条体-淡蒼球・黒質-視床の連絡があります。
回路は5つあり、運動面の回路2つと、行為面の回路3つに分けることができます。
運動関連では眼球運動と運動一般に関連する回路で、前頭眼野と補足運動野がそれぞれ関与し、自発行動の低下があります。
眼球運動では、反対側の自発的な眼球運動の低下(重度例では病巣側への共同偏視)が見られ、半側空間無視が見られることがあります。
補足運動野では、語想起の低下が見られるタイプ(左背外側前頭前野が主に関与するといわれているが)があります。また自分の意志で左手を動かすことができないタイプ(他人の手兆候)もあります。
行為関連では背外側前頭野、外側眼窩面、前帯状回が関与します。
背外側前頭野では、語想起低下と行動の能動的選択性(目的に合わせて柔軟で創造的に行動し、自動に不適切な行動を抑制する機能)低下が見られます。
外側眼窩面では人格変化が見られ、辺縁系からの情動入力が障害されることでアパシーが発生すると考えられています。注意力は保たれているが自発性低下が見られることが特徴です。
前帯状回のアパシーでは両側病変で自発性低下が生じます。
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