リハビリテーションを提供する上でリスク管理は最重要事項ですが、中でも転倒を防ぐことが重要になります。そして、その要因の一つとして薬剤の影響を考慮する必要があり、リハビリテーション従事者も薬剤についての知識を持ち合わせていることが必要になります。今回、リハビリテーションと薬剤における、転倒の危険性を高める薬剤についてまとめていきたいと思います。
目次
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多くの対象者が何らかの薬剤を使用しており、私たちリハビリテーション従事者はその効用や副作用を把握しておく必要があると言えます。
薬剤と転倒の関係性を見ていくと、薬剤が精神機能面に与える影響として、眠気・ふらつき・注意力低下・失神・めまい・せん妄などがあり、これらは転倒に繋がることがあるため危険な状態になります。
また、薬剤が身体機能面に与える影響として、失調(協調性低下)・脱力・筋緊張低下・パーキンソン症候群などがあり、これらも転倒に繋がることがあるため危険な状態を意味しています。
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高齢者は薬剤の影響を受けやすいと言われていますが、その理由を挙げていきます。
・薬剤に対しての反応が複雑
・多剤併用になっていることが多い(合併症が多くなっている)
・代謝機能が低下し薬剤への耐性が低くなっている
このような要因が、薬剤使用の調整を困難にし、前途した転倒に繋がるような精神・身体的影響を受けやすくなっていると言えます。
そのため、服薬状況の確認と、日々の対象者の状態チェックを行うことが転倒予防には必要になります。
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以下に挙げる薬剤は転倒リスクを増加させやすいことが知られています。
○筋弛緩剤・抗不安薬:脱力、筋緊張低下
○抗不安薬・睡眠薬・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・抗てんかん薬・麻薬・非麻薬性鎮痛剤・抗がん剤:ふらつき、めまい
○降圧剤・利尿剤・抗うつ剤・向精神薬:失神、起立性低血圧
○抗パーキンソン病薬・ジギタリス製剤・麻薬・H2拮抗剤・β遮断薬・抗がん剤:せん妄
○抗コリン薬・抗てんかん薬:視力障害
○睡眠薬・抗不安薬・抗てんかん薬・抗ヒスタミン剤・血糖降下剤・麻薬・非麻薬性鎮痛剤:眠気、覚醒低下、注意集中力の低下
○向精神薬・抗うつ剤・制吐薬・胃腸機能調整役:パーキンソン症状
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先ほどまでは、転倒につながってしまう薬剤を挙げてきましたが、ここでは転倒させてしまうことでさらにリスクが高まってしまう薬剤を取り上げていきます。
それは、抗凝固剤や抗血小板薬です。
これらの薬剤はいわゆる血液をサラサラな状態にするものであり、転倒に伴う外傷は出血が止まりにくくなります。
また、出血は外傷が生じた部位だけではなく、頭蓋内などにも起こる可能性があり、硬膜下血腫などに繋がるリスクもあります。
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薬剤は転倒のリスクを高めてしまいますが、薬剤の変更や調整による転倒リスクの軽減を図ると同時に、転倒を防止できる環境設定や、もし転倒が起こっても被害を最小限に止めるための環境設定を行なっておく必要があり、その例を以下に示します。
・ベッドの高さ調整
・ベッド柵の利用
・ナースコールの位置設定
・照明の調整
・ポータブルトイレの位置設定
・床頭台やオーバーテーブルの整理
・センサーマットの検討
・床マットの設置
・観察しやすい部屋への移動
・同意を得ている上での安全ベルトの使用
・履き慣れた靴を使用(できるだけサンダルを利用しない)
・ズボンの裾の長さをチェック
・床の状態(水濡れ等がないか)
・床の配線の状態チェック
・点滴スタンド等の位置と可動性チェック
・側につくべきか否かの判断をしておく(認知面の確認)
・ナースコールの使用ができるか評価
・排泄パターンの確認と排泄誘導