高齢者になると喪失感が高まるとされており、人生を満足して過ごすためにもその生きがいを保っておくことは重要と思われます。今回、高齢者向け生きがい感スケールの概要と評価方法、結果の解釈についてまとめていきたいと思います。
目次
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出田 めぐみ他「通所リハビリテーションでの活動中にみられる利用者の主体的行動とQuality Of Lifeの関連」Journal of Comprehensive Welfare Sciences vol.5 (2014)
青木 邦男「高齢者向け生きがい感スケールの因子構造とその得点の検討」山口県立大学学術情報 (2), 100-107, 2009-03
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高齢者になると主に4つの喪失感を体験すると言われています。
老化に従って生じる身体機能や活動能力の低下がこれに当たります。
近年ではフレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームなどの概念が提唱されていますが、身体的・精神的な機能低下は廃用症候群や閉じこもりにもつながることがあります。
人生を長く送っていると、様々な人とのつながりができますが、同時に様々な人との別れも生じます。
現役で仕事をしているときに比べて、定年や退職に伴い経済的基盤が弱くなります。
人生を送る中では、私たちは置かれている環境や他者との関係性の中で様々な役割を持ちます。
退職や死別などによってその役割は変化、または失うことにもなり、それは生きる目的を失うことにも繋がります。
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高齢者と生きがいについては、以下のようなことが言われています。
生き甲斐の学究的研究は老年学など、人の老年期に関する研究において盛んに行われている。一般的な人生観では、老年期は人生の盛りを過ぎ、健康や社会的役割など多くのものを喪失する期間とイメージされる事が多い。しかし、現実には若さを失った高齢者の多くが、自己否定感に苛まれる事なく日々を過ごしている。高齢者が穏やかに老いを受容できるのは、それぞれの持つ生き甲斐が、老いや喪失感への拮抗因子として働いていると考えられている。
高齢者の生き甲斐の特徴のひとつに「失われやすさ」がある。例えば、孫の成長が生き甲斐だった場合、孫が大人に近づくにつれて自分の役割は減少していく。初老の頃に始めたスポーツが生き甲斐となっても、老いとともに継続が難しくなる。高齢者にとって、社会的生き甲斐は常に喪失と隣り合わせである。
Wikipedia
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高齢者向け生きがい感スケールは16項目について「はい:2点」「いいえ:0点」「どちらでもない:1点」の3件法で答えて行くもです。
自己実現と意欲に関するもの(6項目)、生活充実感に関するもの(5項目)、生きる意欲に関するもの(2項目)、存在感(3項目)に関するもの、の4因子から構成されています。
信頼性、妥当性が高いことが示されています。
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評価項目
1.私は家の内股は外で役割がある(○)
2.毎日なんとなく惰性で過ごしている(●)
3.私には心のよりどころ、励みとするものがある(○)
4.何もかもむなしいと思うことがある(●)
5.私には、まだやりたいことがある(○)
6.自分が向上したと思えることがある(○)
7.私がいなければ駄目だと思うことがある(□)
8.今の生活に張り合いを感じている(●)
9.何のために生きているのか、わからないと思うことがある(●)
10.私は、世の中や家族のためになることをしていると思う(□)
11.世の中がどうなって行くのか、もっと見ていきたいと思う(△)
12.今日は何をして過ごそうかと困ることがある(●)
13.まだ死ぬわけにはいかないと思っている(△)
14.他人から認められ評価されたと思えることがある(○)
15.何かなしとげたと思えることがある(○)
16.私は家族や他人から期待され、たよりにされている(□)
*○:自己実現と意欲に関する項目
●:生活充実感に関する項目
△:生きる意欲に関する項目
□:存在感に関する項目
*[2][4][9][12]は逆転項目(配点が逆)
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合計得点が高いほど生きがい感が高い状態と解釈できます。
32~28点:大変高い
27~24点:高いほう
23~17点:普通
16~13点:低いほう
12~0点:大変低い
の5段階で判定されます。
生きがい感スケールの得点が低ければ、何かしらの喪失感を高く感じていたり、活動性低下にも繋がることが考えられるため、社会的な繋がりを確保したり、他者との交流の場を設けるなどして生きがいの再獲得を図ることも考える必要があるかもしれません。