股関節の可動域制限を有していると、日常生活上に支障が生じることが多くあります。リハビリテーションでは、日常生活に必要な股関節可動域を訓練で獲得したり、獲得できない場合には代償手段を探していくようにアプローチを行います。今回、日常生活に必要な股関節可動域はどのくらい必要かということについてまとめていきたいと思います。
目次
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股関節の運動には、
・屈曲
・伸展
・外転
・内転
・外旋
・内旋
があります。
標準的な各可動域は、
・屈曲:125°
・伸展:15°
・外転:45°
・内転:20°
・外旋:45°
・内旋:45°
となっています。
これらの股関節運動を生む主な筋肉は、以下のようになります。
・屈曲-腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋
・伸展-大臀筋、大内転筋、内側ハムストリングス
・外転-中臀筋、大臀筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋
・内転-大内転筋、長内転筋、短内転筋、大臀筋
・外旋-大臀筋、中臀筋、腸腰筋
・内旋-中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋
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股関節運動には、それを制動する組織があります。
・屈曲-体幹
・伸展-腸骨大腿靭帯
・外転-臼縁、恥骨大腿靭帯
・内転-対側下肢、腸骨大腿靭帯
・外旋-腸骨大腿靭帯、臼縁
・内旋-坐骨大腿靭帯
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「人工股関節置換術を受けた人の入院前・退院後の生活実態調査」という論文において、股関節の可動域制限や疼痛によりどのような日常生活動作に支障が生じるのかが検討されています。
論文によると、
日常生活を送る上で困難な動作・行動に回答した人は,入院前が延べ558名,退院後は延べ398名であった。入院前の上位を占めたのは,階段を昇る(階段昇59名),階段を降りる(階段降52名),重い物のかたづけ(重い物49名),足の爪を切る(足の爪43名),畑仕事(34名),靴下をはく(靴下履33名),車に乗る(車乗る31名)であった。退院後は足の爪を切る(足の爪54名),重い物のかたづけ(重い物43名)が上位を占め,以下,階段を昇る(階段昇33名),階段を降りる(階段降33名),前屈みで床に手をつく(前屈み32名),靴下をはく(靴下履32名),畑仕事(30名)の順であった。「足の爪を切る」と「前屈みで床に手をつく」は,入院前より困難と回答する人が増えていた。
とあります。
出典:人工股関節置換術を受けた人の入院前・退院後の生活実態調査
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日常生活上を支障なく送るために必要な股関節の可動域は、
・屈曲-120〜130°
・外転-20°
・外旋-30°
・内旋-20°
だとされています。
上記の股関節の可動域が確保されていない場合は、遂行する動作によってはなんらかの行いにくさを感じていたり、動作遂行のためになんらかの工夫をされていると思われます。
日本整形外科学会股関節機能判定基準では、日常生活の困難さを把握するために以下の項目が設定されています。
出典:http://hokkaidogaisho.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20130328221413-F7813964C71CAB8FCF568A27231CAB98A0FF9A1F3A7053E8D85C8ECC7F0C03EB.pdf
上記の項目に必要な股関節可動域は、おおよそ以下のような数値になります。
しゃがみこみ:屈曲115°、外転30°、外旋25°
立ち上がり:屈曲110°、外転20°、15°
階段(昇り):屈曲70°、外転15°、外旋20°