股関節伸展の制限因子にはどのようなものがあるでしょうか。今回、股関節伸展の制限因子を推察する方法を、筋肉や軟部組織を中心にまとめていきたいと思います。
目次
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標準的な可動域:15°
主動作筋:大臀筋、大内転筋、内側ハムストリングス
制動する組織:腸骨大腿靭帯
股関節が伸展する際には、大腿骨は前方に滑りながら運動をしていきます。
このことは、股関節の前方に位置している組織の柔軟性が低下すると、股関節伸展可動域制限に繋がることが考えられます。
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股関節伸展の関節可動域計測では、腹臥位や側臥位で計測する方法があります。
その際の代償動作としては、骨盤前傾や同側への回旋があります。
股関節伸展運動の関節可動域測定では、上記のような骨盤を中心とした代償運動が出現します。
そのため測定時には骨盤を触知しながら、股関節伸展運動に伴い骨盤の動きが生じた時点で計測を行うようにすることが大切です。
腹臥位では対側の下肢をベッドから下ろし、側臥位では対側の下肢を屈曲位に固定(セラピストの脚を用いて)することがポイントになります。
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関節可動域制限の原因を推察するには、関節運動におけるエンドフィールを確認することが大切になります。
各エンドフィールの特徴には以下のようなものがあります。
最終域感 | 生理的最終域感 | 病的最終域感 | ||
構造 | 例 | 特徴 | 例 | |
軟部組織性 | 軟部組織の近接 | 肘関節屈曲 | 通常より早くまたは遅く起こる、または軟部組織性最終域感以外の関節にも起こる
腫脹・浮腫:軟部組織が圧迫されることで運動が止まる |
軟部組織の浮腫 骨膜炎 |
結合組織性 | 筋の伸張 関節包の伸張 靭帯の伸張 |
膝関節を伸展しての股関節屈曲 手指のMP関節伸展 前腕回外 |
通常より早くまたは遅く起こる、または結合組織性最終域感以外の関節にも起こる
筋緊張増加:他動運動中に急に動きが遮られるような硬い抵抗感(痛みを伴うことが多い) 関節包・靭帯の癒着や短縮:最終域で急に硬い抵抗感 筋・腱の癒着や短縮:最終域に向かって徐々に抵抗感が増加 |
筋緊張増加 関節包、筋、靭帯の短縮 |
骨性 | 骨と骨の接触 | 肘関節伸展 | 通常より早くまたは遅く起こる、または骨性最終域感以外の関節にも起こる
骨性:硬く弾力のない抵抗感(痛みはなし) |
骨関節炎 関節内遊離体 化骨性筋炎 |
虚性 | 疼痛により最終ROMに至ることができない。 防御性収縮または筋スパズムを除いては抵抗感はない |
急性関節炎 滑液包炎 膿瘍骨折 心理的防御反応 |
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股関節伸展の可動域制限を考える際には、二関節筋の影響を考慮することがポイントです。
股関節を内外転中間位と外転位で股関節伸展角度を比較し、
股関節外転位での股関節伸展角度が大きい(股関節内外転中間位での伸展角度が小さい)→大腿筋膜張筋が制限因子
となることが考えられます。
膝関節屈伸の影響を考慮することで、二関節筋である大腿直筋が制限因子になるかを考えることができます。
膝関節伸展位と屈曲位で股関節伸展角度を比較し、
膝関節伸展位での股関節伸展角度が大きい(膝関節屈曲位での伸展角度が小さい)→大腿直筋が制限因子
となることが考えられます。
股関節内転内旋位、股関節内転外旋位での股関節伸展角度の違いをみることで、伸展制限の理由が大腿筋膜張筋によるものか、縫工筋によるものかを考える資料になります。
股関節内転内旋位での股関節伸展制限が大きい→縫工筋が制限因子
股関節内転外旋位での股関節伸展制限が大きい→大腿筋膜張筋が制限因子
となることが考えられます。
腸腰筋の短縮を評価するテストには、Thomasテストがあります。
Thomasテストは、検査側と反対側の股関節を最大屈曲させることで骨盤の代償運動を抑制させ、検査側の下肢が浮き上がるかどうかを確認する検査方法です。
検査側の下肢が浮き上がることは、股関節屈曲拘縮の存在を表しています。