今回、COPDを中心とした呼吸器疾患に対するリハビリテーションとして、運動耐容能向上に向けた運動強度決定とトレーニング方法についてまとめて行きたいと思います。
目次
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COPD患者に対する運動強度の処方に関しては、高強度負荷と低強度負荷の考え方があります
高強度負荷では、最高酸素摂取量の60~80%であり、高い運動能力の改善が期待できるがリスクが高い(監視が必
要)ことがデメリットになります。
そのため、監視下でのリハビリテーションが必要になります。
低強度負荷では、最高酸素摂取量の40~60%であり、在宅で自主練習として取り組みやすいことや重度な呼吸困難や高齢者に適応できることがメリットです。
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運動耐容能向上のための運動強度の決定には、TDR(Target Dyspnea Rating:目標呼吸困難スコア)が用いられることがあります。
これを呼吸困難指標として運動強度を決定します。
運動時のVO2 と呼吸困難(ボルグスケール)は比例相関関係にある(Mahlerら,2004,2011)ことから、運動強度をボルグスケール5で行います。
COPD患者において在宅中心の低強度呼吸リハビリ・プログラムの施行により,運動耐容能,呼吸困難,健康関連QOLが有意に改善する(菅原ら,2008)とされています。
ACCP/AACVPRガイドライン(2007)では低強度運動療法がエビデンス1Aともされています。
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Horowitzら(1996)によると、修正ボルグスケールと最高酸素摂取量の関係は以下のようになっています。
修正ボルグスケール3:最高酸素摂取量の約50%
修正ボルグスケール5:最高酸素摂取量の約75%
佐竹らによると、6分間歩行テストにおける修正ボルグスケールと最高酸素摂取量の関係は以下のようになっています。
修正ボルグスケール2:最高酸素摂取量の49%
修正ボルグスケール3:最高酸素摂取量の69%
修正ボルグスケール5:最高酸素摂取量の90%以上
また、漸増シャトル歩行試験における修正ボルグスケールと最高酸素摂取量の関係は以下のようになっています。
修正ボルグスケール2:最高酸素摂取量の55%
修正ボルグスケール3:最高酸素摂取量の71%
修正ボルグスケール5:最高酸素摂取量の90%以上
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下肢による持久力トレーニングには平地歩行、階段昇降、エルゴメータ、トレッドミルなどがあります。
下肢による全身持久力トレーニングに上肢の筋力トレーニングを加えると、上肢を挙上させたときの酸素消費量が低下し、日常動作に伴う呼吸困難感はより軽減する(Riesら1988)とされており、上下肢ともにトレーニングを行うことで呼吸困難感の軽減を期待することができます。
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以下は高橋仁美 他「COPD に対する低強度運動療法の有効性」Jpn J Compr Rehabil Sci Vol 2, 2011 より引用しています。
「座ってできるCOPD体操は」、
・椅子に座って行う体操
・頚肩甲帯・胸郭のストレッチ
・等尺性収縮での上下肢の筋力トレーニング
・椅子に腰掛けた状態で行う有酸素運動 で構成されています。
その特徴としては、運動強度としてTDR(Target Dyspnea Rating:目標呼吸困難スコア)「2」としており、低強度の運動処方となっている事です。
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- 頚部と体幹
①鼻から息を吸いながら,頚を後ろに倒し,両手を後方に引く.②口から息を吐きながら,頚を前に曲げ,背中を丸める.(これらを5回繰り返す)- 側胸部口から息を吐きながら,頭にあてた方の肘を持ち上げる.(左右3回ずつ行なう)
- 肩甲帯 口から息を吐きながら,頚と上部体幹を一方に捻る.
(左右3回ずつ行なう)- 上肢筋力トレーニング①両手を背屈して真横に伸ばす.
②口をすぼめて息をはきながら,上肢の伸展筋の等尺性収縮を6秒間行う.
③次に正面に手を伸ばして同様に行う.(それぞれ5回ずつ行なう)- 下肢筋力トレーニング(大腿四頭筋)
①足首のところで,両足を交差させ,上になっている足で下になっている足を押さえる.
②口をすぼめて息をはきながら,大腿四頭筋の等尺性収縮を6秒間行う
③足を組み替えて,反対側も同様に行う.(左右5回ずつ行なう)- 下肢筋力トレーニング(抗重力筋全体)
①椅子のふちを両手で握り,下肢は床を踏ん張るように力を入れる.
②口をすぼめて息をはきながら,下肢の抗重力筋の等尺性収縮を6秒間行う.(5回行う)- 前後ステップ①片足を前方に出して踵を床につけて,再び足を元の位置に戻す.
②反対の足も同様に行ない,繰り返す.- 左右ステップ
左右方向へのステップも同様に行う.- 椅子歩行
一側の上肢を前方,他側の上肢を後方に振り,歩く動作を繰り返す- 膝伸展
①片足を上げ,膝を伸展させて,再び足を元の位置に戻す.
②反対の足も同様に行ない,繰り返す.以上の有酸素運動は,4つの動作をTDR2で,それぞれ2分半ずつ,2セット(20分)程度を目安に行う.
呼吸パターンは呼気:吸気が2:1程度になるようにして,呼気を強調する.高橋仁美 他「COPD に対する低強度運動療法の有効性」Jpn J Compr Rehabil Sci Vol 2, 2011