ワーキングメモリは、日常生活場面の様々な場面で役立ちます。ワーキングメモリの容量が大きいということは、それだけ動作遂行におけるパフォーマンスが高くなることが期待できます。リハビリテーションにおいてもワーキングメモリを考慮したアプローチは重要であり、その容量を評価、把握できていることは治療計画立案にも役立ちます。今回、ワーキングメモリの容量と評価法について、まとめていきたいと思います。

ワーキングメモリの容量と評価方法

ワーキングメモリの概要

ワーキングメモリは、認知活動において認知的処理と処理されている情報の両者に関与するシステムです。
情報を一時的・同時的に保持、または処理するための能動的で目的指向的な記憶といえます。
ワーキングメモリは別名で「脳のメモ帳」「作動記憶」「作業記憶」と呼ばれることがあります。
記憶の保持時間としては、数秒〜数日、情報保持が可能です。
行動の目標達成のためには、陳述記憶、手続き記憶、エピソード記憶などの長期記憶をうまく短期記憶につなげることが重要ですが、ワーキングメモリは情報を時間的に接着する役割を持ちます。
ワーキングメモリの容量を超えると、もの忘れやし忘れにつながります。

日常生活とワーキングメモリ

ワーキングメモリは日常生活の中で様々な場面に役立っています。

会話するときに相手の言葉を聞いて理解しながら受け答えをするときや、
料理の手順を考えて調理するときにワーキングメモリが必要です。スポーツでも、相手の動きを予測し自分の次の行動を考えるときに
ワーキングメモリが必要になります。ワーキングメモリの能力が高い人は、複数のことを同時にこなしたり、頭の中に記憶しておいて順番に処理することができるのです。

https://www.nintendo.co.jp/3ds/asrj/about/index.html

ワーキングメモリに関与するシステム(中央実行系)

中央実行系の機能には、
①課題準備などを含むプランニング機能
②記憶内容のや表象の更新
③注意資源の配分や注意焦点の移動
④表象の活性化や不適切な反応の制御
があります。
ワーキングメモリは、論理的思考、理解、学習などの遂行において、覚えておかなければならないことを心的過程にとどめておくために必要です。
そのモデルにでは、中央実行系とそれに支配を受ける音韻性ループ、視空間スケッチパッド、エピソードバッファからなります。

音韻性ループは音響的、音韻性の記憶痕跡をごく短時間(2秒程度)保持するコンポーネントとそれをリハーサルするコンポーネントからなる。

視空間スケッチパッドは、視空間のイメージについて同様の機能を持つシステムである。

中央実行系は、短期間の記憶痕跡、イメージの保持と処理に対して、容量に限りある注意を振り分けるシステムである。

高次脳機能障害学 第2版 P199

エピソードバッファは後から追加された概念で、多次元の情報を一時的に保管するためにあります。

いずれも容量が小さく保持の期間も短く、中央実行系による注意の制御に伴う様々な意識的処理の過程で、定着した言語、視覚性意味記憶、エピソードの長期記憶(臨床的な遠隔記憶)へのアクセスを経て、より長い記憶の過程(近時記憶)へと橋渡しされる。

高次脳機能障害学 第2版 P199

このことから、中央実行系は実行機能、遂行機能との関連が深いといえます。

ワーキングメモリに関連する脳領域

ワーキングメモリに関連する脳領域として、前頭前野背外側皮質と前頭前野腹外側皮質があり、背外側部は加齢による衰退が指摘されています。
ワーキングメモリの短期貯蔵部に容量が収まる程度の情報記憶には腹外側皮質が関与し、それを超える情報量の場合は背外側部が関与します。
中央実行系には前頭前野内側皮質と前部帯状回皮質の相互作用が必要で。機能が良好なほど前部帯状回皮質の活動が高いことが言われています。

ワーキングメモリはどのように評価されるのか

ワーキングメモリの評価方法には、様々なものが開発されています。

①リーディングスパンテスト

リーディングスパンテストは、提示された文章の音読、言葉を覚えることを繰り返し実施し、再生の合図が出された時に覚えた言葉を順番に再生するものです。

②ディジットスパン(数唱)

数唱課題は数字を順番に読み上げたものを記銘し、提示終了後に覚えた順番に再生する課題です。
順唱と逆唱があり、逆唱では読み上げた数字を逆順に再生します。
例:1-2-3-4→1-2-3-4(順唱)
  1-2-3-4→4-3-2-1(逆唱)

数唱課題の解釈では、失語症の影響を考慮する必要があります。
標準注意評価法(CAT)の中にある課題です。

③タッピングスパン

用紙などに視覚的に提示されたいくつかの「⬜︎」などのマスに、不規則に指差されたのを、それを覚え、提示終了後に再生させる課題です。
タッピングスパンの成績は、通常はディジットスパンよりも1〜2個少ないとされています。

タッピングスパンの解釈では、視空間の障害を考慮する必要があります。
標準注意評価法(CAT)の中にある課題です。

④オペレーションスパンテスト

オペレーションスパンテストでは、計算と言葉の記銘を繰り返し、単語の再生成績によって容量を測定します。
例えば、(1×2)+1=?のような計算課題とアルファベットを記銘することを数試行繰り返します。