記憶障害のリハビリテーションにおいては、エラーレス学習がよいとされているのが通説です。なぜエラーレス学習がよいのか、種々の方法にエラーレス学習を取り入れるにはどのようにすればよいのか等について、まとめていきたいと思います。

記憶障害のリハビリテーション:エラーレス学習のすすめ!

記憶障害のリハビリテーションについて勉強したい方は

 

エラーレス学習とは

エラーレス学習(誤りなし学習)とは、誤りをさせない学習方法です。
一方、誤り(試行錯誤)を通じて学習していく方法は、エラーフル学習(誤りあり学習)になります。

記憶障害を有する方においては、エラーレス学習とエラーフル学習を比較すると、エラーレス学習の方がよい成績になると言われています。
そのため記憶障害を有する方には、エラーレス学習を中心にリハビリテーションを行っていく必要があるとされています。

なぜエラーレス学習なのか

記憶障害を有する方では、一度間違えて覚えてしまうとその誤反応が残ってしまい、正しい反応や行動に修正しにくくなるという特徴があります。
このことから、記憶障害を有する方が、新規の事を覚えようとする際には、先に誤った反応が出るのを避ける必要があるといえます。
そのため、最初から正しい(覚えてほしい)反応が出るように、セラピストや介護スタッフ、家族は関わっていく必要があります。

健常者では、エピソード記憶が正常なので、誤反応があったとしても、その体験をもとに正しい反応や行動に修正することが可能です。

潜在記憶は記憶障害者にも保たれているため、自分の行った誤り反応が潜在記憶に残り、次回以降も同じ誤りを繰り返す結果になると考えられている。

綿森 淑子ら「記憶障害のリハビリテーション-その具体的方法-」リハビリテーション医学 VOL.42 NO.5 2005

潜在記憶は簡単に言うと無意識レベルの記憶で、専門的に言うと「意識的な想起を伴わない記憶」となります。
誤反応が無意識レベルの記憶として保たれてしまうというわけです。

エラーレス学習を用いたリハビリテーション

これまでのことから、記憶障害を有する方においてはエラーレス学習がポイントになることがわかりました。
では、臨床場面においてエラーレス学習をどのように用いるかを考えていきたいと思います。

基本的な戦略としては、対象者に「推量を求めない」ことが重要なポイントになります。
推量(考える、推測する)ことは、試行錯誤をさせることにつながってしまいます。
考えて出した答えが間違ったものだったとすると、記憶障害を有する方はその答えが潜在的に保持されてしまい、次回以降も間違った答えを表出してしまう可能性が高くなります。
それだけは絶対に避けたいですから、常に正しい答え・反応を対象者に提供する必要があります。

このような考え方は、セラピスト、介護スタッフ、家族など、対象者に関わる全ての方に徹底しておく必要があり、セラピストは、行うと決めた戦略を有効にしていくためにも家族教育なども行うことが重要になります。

エラーレス学習の例

繰り返しになりますが、エラーレス学習は相手に推量を求めないことですから、こちらから正しい反応を提示していく必要があります。

「今日は何月何日何曜日ですか?2月20日火曜日ですね。」「私の名前を覚えていますか?◯◯ですよ。」などと日常会話場面でもエラーレス学習を応用できる機会は多いと思います。

新規課題(例:クロスステッチ)を行う際にも、対象者が迷いそうな素振りが見られたら即座に適切な行動がとれるように誘導していくことで、正しい反応が潜在記憶として残るようにアプローチしていく必要があります。

対象者に話してもらう時も、答えに確信がないものを言ってもらうよりは、確実に確信がもてることのみを言ってもらう方が記憶障害を有する方にとってはとても有益だと思われます。

PQRST法を行う際にも同様で、Testにおいて即答できない場合に、正解を導くための最初の語などを提示することにより、誤った表出を防ぐようにします。

記憶障害のリハビリテーションについては以下の記事を参照してください。
記憶障害のリハビリテーション:PQRST法
ワーキングメモリのリハビリ、鍛え方:Nitendo 3DSを用いて
メモリーノートの使用による記憶障害に対するリハビリテーション
記憶障害のリハビリテーション:間隔伸張法
記憶障害のリハビリテーション:道順を覚える戦略