保続というと、同じ行動をとってしまうというイメージが強いと思います。その保続には、2種類あるのを知っているでしょうか。

目次

2種類の保続とリハビリテーション

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by カエレバ
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保続とは

「保続」とネット上で検索すると、言語障害との関連での記事が上位に出てくるようです。

脳損傷者の行動全般にみられる症状で、前にした反応を場面や状況が変わっても持続すること。失語症者の場合は、前に言った言葉を次の場面でも繰り返すような言語性の保続が多い。

https://kotobank.jp/word/%E4%BF%9D%E7%B6%9A-383907

保続は、前頭葉が損傷された時にみられる症状になります。
前頭葉は動作の動作の企画と遂行にとって重要な部位であり、動作の順序や組み立て、開始やタイミングなどに関わることが知られています。
また前頭葉に問題があると、「スイッチの切り替え」が上手くいかなくなります。
例えば、生年月日を聞かれた時に「1986年1月1日」と正しい答えを言えたとして、次に、今日の日付を聞かれた場合にも、「1986年1月1日」と答えてしまうことがあります。
これは言語で見られる保続の例ですが、要するにスイッチの切り替えが上手くいっていないことが原因といえます。

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保続があると日常生活にどのような影響が見られるか

保続では単純な動作が繰り返されますが、これを意図的には止めることができません。
日常動作の中では、1つの反応パターンから他の反応パターンに移行することが難しく、その結果として動作遂行中に反復した運動や行動が見られます。
そのため遂行の開始や終了にも影響が出てしまいます。
そのようなことが繰り返されると、動作の遂行時間が長くなる他、遂行自体が達成できなくなることもあるでしょう。
例えば、最初に歯を磨いて、次にクシで髪を整えようとする時に、保続があると手にクシを持つがそれで歯を磨いてしまうように動作をすることがあります。

動作のみではなく、思考の変換や修正がうまくいかないことや、前途したように、コミュニケーションにおいても困難さを示すことがあります。

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2種類の保続(前頭前野性と運動前野性)

保続には脳部位との関連から2つに分類することができます。

前頭前野性

一つ目は前頭前野性の保続です。
前頭前野性では、行動全体または行動のある要素が反復されます。
前途したように、歯磨きの後に、櫛を手に持ち歯を磨くような動作をしてしまうのは、行動のある要素が反復されるという、前頭前野性の保続が見られていることになります。

運動前野性

2つ目は運動前野性の保続です。
運動前野性では、同じ運動が衝動的(脅迫的)に繰り返されます。
例えば、服の袖を腕に通す時に、ずっと服を引っ張り続けているようなことが観察されます。

意図性保続と間代性保続

上記の2つの保続の別名ともいえるかもしれません。
引用の部分からわかるように、意図性保続が前頭前野性の保続と同義で、間代性保続が運動前野性の保続と同義になります。

意図性保続は何かを意図的に始めようとすると, 少 し前におこなった行為がくりかえされる現象で,たとえば一 度書いた単語がその後に別な単語を書こうと思ったときに出てきてしまうようなばあいである.

間代性保続はひとつの運動がくりかえされる現象で,同じような線を何本もひき続けるようなばあいである.

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049020083.pdf

さらに詳しい解説を動画で確認

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保続の評価と検査

ADL観察

基本的にはADL場面の観察により、保続が出現していないかを確認していくことが重要です。

保続が強いと,一つ目の課題はうまくできても,それ以降の課題で保続による誤りが続くことがある.したがって,誤りが保続の影響でないかどうか気をつけてみておく必要がある.

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049020083.pdf

とあるように、ADL評価として一つの場面を観察するよりは、整容のように、歯磨き→洗顔・髭剃→整髪というように一連の流れで確認する方がよいことがわかります。
更衣であれば、上衣、下衣、靴下というように全てを一度に観察できるようにすることが大切になります。

机上検査

ウィスコンシンカードソーティングテスト

この検査では、保続傾向の有無が確認できます。
保続があると、ルールが変わったとしても思考のスイッチを切り替えることができず、同じルールのままで回答しようとして正答できなくなります。
ウィスコンシンカードソーティングテストに関しての記事は以下を参照してください。
ウィスコンシンカードソーティングテストの概要と結果の解釈

前頭前野性の保続では、◯△◯△という順番で書くような課題において、◯△◯◯◯というような反応がみられます。

運動前野性の保続では、「◯」と同じものを書くような課題において、◯をぐるぐると書き続けてしまうような反応がみられます。

さらに詳しい解説を動画で確認

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保続に対するリハビリテーションはどうすればよいのか

リハビリテーションでは、機能的な訓練と、ADLに直接アプローチする方法が考えられます。
前途したように、保続はスイッチング(切り替え)がうまくいかないことにより生じているといえそうです。
そのため、いかにスイッチングが行えるようにするかがアプローチとして重要になると考えています。

機能訓練

機能訓練では、例えばあるルールに従い、途中でルールを変更しても新たなルールに従えるようにするような課題が行われます。
・トランプ課題(数字で分類、色で分類、形で分類などの組み合わせ)
・積み木やおはじきなどの並べ替え、色分け、形の分類
・迷路課題

これらの課題において、対象者に保続行動がみられた場合、
・動作を一旦やめさせる
・徒手または言語により誘導・修正
を行います。
思考の切り替えを促すように、ルールを確認したり、少し前の行動を振り返ってもらう、「次はどうするんでしたか?」などとスイッチングに必要なキューを提示していきます。
動作遂行がうまくいっている場合、賞賛やフィードバックも取り入れるようにします。

ADLに対する訓練

ADLに対しては、保続がみられる時に直接アプローチすることが必要になります。
その際も先ほどと同じように、
・動作を一旦やめさせる
・徒手または言語により誘導・修正
を行います。
そして、動作の切り替えに必要なキューを、対象者の状況に合わせて提示していくことが大切になります。
基本的にはエラーレスで動作学習を促していきたいため、保続がみられたときにはそのまま放置せずにすぐに介入できるようにします。
そして、思考や動作の切り替えがスムーズに行えるように、「次はどうするんでしたか?」などとスイッチングに必要なキューを提示します。

さらに詳しい解説を動画で確認

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