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脳卒中片麻痺者の上肢・手指の病態とリハビリ(亜脱臼予防、肩関節痛、肩手症候群)

脳卒中片麻痺者では、しばしば上肢の病態として、亜脱臼、肩関節痛、肩手症候群、手指拘縮などを認めることがあります。今回それらの病態に対するリハビリテーションについてまとめていきたいと思います。

目次

脳卒中片麻痺者の上肢の病態とリハビリ(亜脱臼予防、肩関節痛、肩手症候群)

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引用・参考文献

越智 文雄「脳卒中片麻痺における肩の痛みーその予防とリハビリテーションー」Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

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脳卒中片麻痺者の肩関節亜脱臼予防とリハビリテーションについて

亜脱臼発生のメカニズム

脳卒中片麻痺者の肩関節亜脱臼は、発症後の筋緊張が低い時期あるいは筋が弛緩している時期に起こります。

上肢機能障害が重症なほど亜脱臼の合併頻度は高くなることがわかっています。

発症後初期には棘上筋や三角筋などの肩関節周囲筋群が弛緩しており、上肢の重さに対し関節窩に上腕骨頭を求心位に保つことができなくなります。

さらにその状態が放置されることで靭帯・関節包が伸張され、肩関節亜脱臼が生じると考えられています。

肩関節亜脱臼の発生率は幅広く、亜脱臼のある全ての片麻痺者に肩関節痛があるわけではありません。

しかし、亜脱臼を放置していると、腱板筋が牽引され、critical zone(棘上筋腱が上腕骨大結節に付着する部分で、肩甲上動脈、肩甲下動脈の枝、上腕骨の回旋動脈が吻合する血管に富む部分)の虚血が起き、炎症が起こりやすくなります。

そのため肩甲上腕関節炎や肩甲関節周囲炎が起こりやすくなります。

三角筋やアームスリングを用いた亜脱臼予防の考え方

亜脱臼の予防には、三角巾やアームスリングなどの使用により予防する方法が取られることがあります。

その形状には様々なものがあり、メリット・デメリット含めて有効性を検討する必要があります。

上肢の重さを免荷し、上腕骨を関節窩に求心位に保てるアームスリングであれば有効性が高いといえます。また弛緩期では、移乗や歩行中に使用する価値は高いとの報告もあります。

その一方で、アームスリングの長期的な使用により、上肢屈曲共同運動パターンを助長する可能性があるとの見解もあります。

アームスリングのタイプ

①肘屈曲タイプ
肘屈曲タイプでは、肩関節内転・内旋位、肘関節屈曲位で上肢を保持することができます。

上肢は体幹に密着し、支持性を高めているタイプで、三角筋やループ式のものが用いられることが多いです。

着脱しやすく、値段も安価であることが特徴です。

デメリッットとしては、肩関節内転・内旋位での固定となり、筋肉の短縮や関節拘縮の可能性が高まります。

また肘関節屈曲位での固定は、屈筋共同運動パターンを助長する可能性があり、肘関節拘縮の可能性もあります。

麻痺側上肢をバランス反応等に利用できないため、ボディイメージの低下につながることが考えられます。

また上肢不使用により体性感覚フィードバックが得られないことも考えられます。

上肢不使用による循環不良や、浮腫の発生が予測されます。

これらを防ぐ意味でも、使用する期間や頻度の設定を適切に行う必要があります。

②肘伸展タイプ
肘伸展タイプでは、肩関節と肘関節の動きを制限せず、肩関節を機能的肢位に保つことを目的として使用されます。

上腕の重さを上腕部のカフで緊縛して引き上げることで肩関節周囲筋の代償機能を持つタイプでは、緊縛の程度により末梢の血流障害を引き起こす可能性もあり注意が必要です。

腋窩部にロールやパッドを挿入し、亜脱臼の整復を試みるタイプでは、腋窩部の圧迫による血流障害と上腕骨頭外側亜脱臼方向へ押す可能性もあり、適合の評価が必要になります。

そのため腋窩のパッドを本人に適合するように作ることで血流障害を防ぐことが可能です。

複雑な構造を持つタイプでは、独力での着脱が困難な場合もあります。

肘伸展タイプでは、歩行時の上肢の振りに関連して、骨盤の回旋運動を妨げにくいとの報告があります。

一方、三角巾では骨盤の回旋を妨げてしまうため、歩きにくさを感じることがあります。

アームスリングの種類とタイプ

オモニューレクサは前腕を緊縛して機能的肢位を保持するタイプですが、血流障害が生じにくい特徴があります。しかし、独力での着脱には課題があります。

肩サドル付肘伸展アームスリングでは、サドルを腋窩に挿入し、体幹の外から肩甲骨下方回旋を支え、亜脱臼整復を試み、かつ独力で着脱できるように改良が加えられてるものです。

鎖骨骨折などで使用されるクラビクルバンドは、両肩関節を後方に固定することに加え、腋窩の軟部組織に圧が加わり、二次的に上腕骨を関節窩に押し上げ求心位を保持する効果があるとの報告があります。

片麻痺による非麻痺側凸の機能的側弯症から、肩関節外転位となり亜脱臼を起こす場合や、体幹の前傾による上腕骨頭の前方への亜脱臼に対し、肩甲上腕関節と脊柱のアライメントを整える姿勢の改善という目的でも、市販のクラビクルバンドの使用は簡便であると考える。

脳卒中の作業療法 P685

アームスリングの適応

上肢の回復段階に応じたアームスリングの目安として、Br-stageⅠでは亜脱臼の有無に関わらず、弛緩期には使用することが推奨されます。

Br-stageⅡ・Ⅲでは亜脱臼があったり、麻痺側の管理が不十分な場合使用が推奨され、アームスリングを外す目安としては、連合反応により亜脱臼が整復される等、肩関節周囲筋の筋緊張が十分である場合や、上肢屈筋群の筋緊張が亢進し、関節拘縮が予測される場合があります。

Br-stageⅣ〜Ⅵでは、痛みがあったり、弛緩性麻痺の持続で亜脱臼の増悪が予測される場合、麻痺側の管理が不十分な場合に使用が推奨され、アームスリングを外す目安としては、上記の兆候がなければ基本的に使用はしません。

麻痺側の管理については、脳卒中発症後の認知機能低下や、高次脳機能障害や感覚障害により麻痺側上肢の良肢位が保てない場合があります。

肩の痛みは患者の意欲に関与し、痛みがある方にとっては、アームスリングが安心感をもたらすこともあります。

アームスリング単体での亜脱臼の改善は難しく、予防・現状維持としての使用を考えることになります。上肢機能の状態などを考慮し、適切なスリングの選択が必要になります。

三角巾の正しい付け方

亜脱臼の予防として三角巾がしばしば使用されますが、その正しい使用方法を知っておく事は、患者に負担をかけない上でも非常に重要と言えます。

①三角巾の二等辺三角形の頂点を丸く結びます。

②固定する上肢の肘を曲げ、手のひらを上向きにした状態で、丸く結んだ部分に肘をおさめるように腕の下に三角巾を通します。

③固定側の上肢の肩を覆うようにし、三角巾の一端を体の背面に回していきます。

④手のひら側の一端を背面に回し、背中の真ん中あたりで両端を結びます。

*前から見たときのチェックポイント肩の高さが左右同じであるか、肘が十分曲がっているか(下垂していると下方への牽引が働く)、手のひらが上に向いているかの3点に注意します。

*横から見たときのチェックポイントは、肩の位置に対して肘が後ろ側に引けていないかに注意します。

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亜脱臼のリハビリテーション

亜脱臼のリハビリテーションにおいて、脳卒中ガイドライン2015では、麻痺側の肩関節可動域と亜脱臼の改善を目的として、機能的電気刺激が勧められるが、長期間の効果の持続はなし(グレードB)とされています。

関節窩に上腕骨頭を求心位に保つことを目的として、電極を棘上筋、三角筋後部線維に貼り付け、1日に約2〜6時間の治療を行います。

これにより肩関節亜脱臼改善が示されています。

また、肩屈曲や外転における上腕骨頭のコントロールでは、棘上筋や三角筋の強化が必要であり、高電圧パルス電流を1日15分、自動運動と同期するように電気刺激療法もあります。

家庭でできる、低周波治療器を用いた亜脱臼のリハビリテーション

低周波治療器を用いて、棘上筋、三角筋後部線維に電極を貼りつけ筋収縮を促していきます。
棘上筋、三角筋後部線維への貼りつけ位置は、図を参照してください。

棘上筋は肩甲棘の上にあります。三角筋後部線維は肩峰の後方部分にかけて走行しています。
モードは「おす」で強度は8程度で行います。

なお、家庭用低周波治療器を用いた亜脱臼に対する電気刺激に関してはエビデンスはありませんが、筋収縮を促す点で、使用する価値はあると感じています。

 

棘上筋の選択的収縮

棘上筋の選択的収縮の方法と、その根拠を示していきます。

棘上筋のみの収縮を行うには、肩甲骨を下制しながら、肩関節を外転させます。

肩関節を外転する際には、僧帽筋上部線維は肩甲骨の挙上に働きます。

そこで、僧帽筋上部線維の働きを抑えるために肩甲骨を下制しながら肩関節外転を行う事で棘上筋が選択的に収縮することが可能になります。

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脳卒中片麻痺者の亜脱臼におけるエビデンスとリハビリテーション

亜脱臼の病状と病態

肩関節亜脱臼について、

非外傷性に上腕骨頭が肩甲骨関節窩に対し転位したもので、下方への転位が多く、脳卒中後の片麻痺に17%〜81%の頻度でみられる。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

とあります。

肩関節の安定性には筋や靭帯が大きく関与しており、筋の麻痺や靭帯が伸張されることにより亜脱臼が生じやすくなります。

肩関節亜脱臼は肩甲上腕関節において上腕骨頭を関節窩に押し付けて固定している筋群の麻痺によって起こりやすく、特に弛緩性の重度の上肢麻痺において発生しやすい。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

このような筋群には、ローテーターカフのひとつである棘上筋、アウターマッスルの三角筋があります。棘上筋や三角筋の麻痺により、座位や立位・歩行時に上肢の重みで上腕骨が下方に引っ張られ、靭帯の伸張が起き、肩関節亜脱臼が生じます。

上肢筋の麻痺が完全麻痺が重度の場合亜脱臼の発生頻度が高くなります。感覚障害が亜脱臼の原因になるとの見方もありますが、否定的な意見もあります。

肩内転筋の痙縮や年齢に関係があるともされています。

半側空間無視は亜脱臼の原因にはなりません。

肩関節亜脱臼はX線撮影で、前後方向の撮影で肩甲骨関節窩から上腕骨頭の転位がわかります。

肩関節亜脱臼に対する上肢スリングとエビデンス

上肢スリングについて、

主に弛緩性麻痺の患者が立位時、歩行時に、上腕骨頭が重力により下方に引っ張られることを防ぎ、亜脱臼を防止、改善するために使用される。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

とあります。

麻痺側上肢の不安定さに対して、歩行訓練初期に有効だとされています。

上肢スリングは長期的に使用すると、上肢の運動や感覚入力の妨げになり、上肢屈曲、内転、内旋位で固定することになり、上肢屈筋の筋緊張亢進につながることもあります。

また歩行やボディイメージの低下につながるとして、否定的な意見もあります。

上肢スリングを使用する際には、上記の事を防ぐためにも、ROM訓練を併用していく事が重要になります。

上肢スリングには三角筋や他にも様々なものがありますが、効果や優劣に関してエビデンスの高いものはないとされています。

注意点として、

腋窩をサポートするボバーススリングは肘を屈曲で固定することを避ける狙いがあるが、肩関節亜脱臼の減少効果が証明されておらず、上腕骨頭の外側への変位で軟部組織が損傷しやすいので使用は避けるべきである。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

座位では前腕をテーブル、または車椅子用テーブルに乗せ、車椅子にアームトレイをつけて対応します。

肩関節亜脱臼に対するテーピングのエビデンス

テーピングにより肩関節の解剖学的位置を保ち、亜脱臼予防を行うことがあります。

発症後早期に行うことが効果的だとされています。

脳卒中発症後3〜5日に肩のテーピングを上肢スリングと併用すると上肢スリング単独よりも効果的であるが、テーピング単独では上肢スリングほどの効果はない。

肩のテーピングを発症時から行うと肩の疼痛の発症を遅らせることができるが、疼痛の軽減や上肢機能の改善、拘縮の進行には影響はなく、テープによる皮膚の問題や衛生上の問題も指摘されている。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

肩関節亜脱臼に対する機能的電気刺激(FES)のエビデンス

肩関節亜脱臼に対する機能的電気刺激では、棘上筋と三角筋後部線維の両筋に使用されます。これは両筋が上腕骨を肩甲骨に対して正常な位置に保つ働きがあるためです。

強度は上腕骨が軽度の外転、伸展を伴って挙上される強度とする。FESの使用時間は1日1.5時間から6時間まで徐々に伸ばし、週5日、6週間続ける。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

急性期では亜脱臼発生の予防に有効ですが、慢性期では有意な効果はなかったとされています。

急性期のFESは上肢外転筋力を改善するが、慢性期では効果がなく、一方で疼痛のない肩関節可動域については急性期のFESの効果はなく、慢性期では効果があった。

発症からの期間を区別しないメタアナリシス、FESは肩関節亜脱臼の重症度の軽減や疼痛を生じない肩外旋可動域の改善には効果はあるが、肩の疼痛の発生頻度や程度、上肢運動機能の回復、上肢の痙縮には効果はなかった。

Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

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脳卒中片麻痺の肩の痛みとリハビリテーションの実際

亜脱臼と肩関節痛

脳卒中片麻痺者の肩の痛みの原因としては、癒着性肩関節包炎、肩峰下滑液包炎、腱板損傷からの肩峰下インピンジメント、痙性からの筋緊張の異常など、様々なものが言われていますが、はっきりした原因はわかっていません。

亜脱臼と肩関節痛の関係では、関連性が見出せなく、亜脱臼以外に原因があるとの報告もあります。

また運動麻痺の程度と亜脱臼の程度は相関するが、亜脱臼と肩関節痛の関係は認めないとの報告もあります。

しかし、亜脱臼を放置すれば肩甲上腕関節包炎や、肩関節周囲炎を招く可能性もあります。

肩甲上腕関節包炎

運動麻痺による寡動(動きが少ない)や不動により起こる癒着性関節包炎で、関節周囲炎を伴うことが多くあります。

癒着性変化と肩関節痛には強い相関があると言われています。

癒着性変化では可動域制限は全域に及び、特に肩外転と外旋に強くでて、痛みの程度、痛みの時間帯などは様々な症候を呈します。

肩甲関節周囲炎

脳卒中片麻痺の場合、粘液包炎、腱炎、腱鞘炎、腱板損傷などの成因別には考えずに、大きなくくりでとらえるのが臨床的といえます。

回旋筋腱板の主な構成要素は棘上筋ですが、上腕骨大結節に付着する部分では動脈の血管に富む危険区域(critical zone)があります。

この部位では緊張と負荷が最もかかる部位で、肩峰と上腕骨頭に挟まれることから圧迫を受けやすい特徴があります。

また、炎症や変性、石灰沈着、断裂などを起こしやすい場所で、片麻痺者ではこのような所見が多く見られるとの報告があります。

上肢の支持性が保たれている場合は危険区域の循環状態は良いですが、支持性が失われると腱板の牽引により循環状態が不良となります。

すると虚血状態となり炎症が起こりやすくなります。

脳卒中片麻痺の肩関節痛の特徴

脳卒中片麻痺の肩関節痛の特徴について、疼痛期間が一定しない、自動・他動運動時痛が主で、安静時・夜間時痛が少ないということがあげられています。

炎症性の疼痛では瘢痕形成により疼痛が軽減し、凍結肩に移っていきますが、脳卒中片麻痺の肩関節痛では疼痛期間が数年続く場合があったりと、治療経過が異なります。

炎症性疾患では夜間時痛が特徴的ですが、脳卒中片麻痺による肩関節痛では夜間痛の頻度は少ないことからも、炎症性の痛みとは考えづらいと言えます。

疼痛の原因

肩関節痛の原因として、肩峰下インピンジメントが原因であるとの報告があります。

運動麻痺により亜脱臼が生じるとすれば、肩峰骨頭間距離は大きくなり、肩峰下インピンジメントは生じないと考えることができます。

疼痛を有する例では肩甲上腕関節の可動性が低下していますが、非疼痛例では肩甲上腕関節の可動性は増大しているとの報告があり、これは非疼痛例では麻痺により肩甲骨の動きが阻害され、上腕骨の動きが先行したためだと考えられています。

疼痛例では肩甲上腕関節の可動性が低下し、肩甲上腕リズムが崩れていることにより起っていますが、これは痙性による異常筋緊張によるものだとの考え方もあります。

肩甲骨の下制・後退、上腕骨内旋方向の痙性が疼痛の原因となりうると考えられています。

また上肢挙上時の肩関節の三次元動作解析によると、疼痛例では上腕骨外旋と肩甲骨上方回旋の不十分さ(肩甲上腕リズムの破綻)との関連性が報告されています。

他にも、他動的な肩関節外転時には、肩に痛みのあるすべての肩関節亜脱臼例において、肩外転に伴い上腕骨頭が上方にすべったことを報告し、上腕骨頭を関節窩に安定化させることができず、烏口肩峰弓に大結節や棘上筋腱が当たり、肩峰下滑液包炎が生じたとの報告もあります。

リハビリテーションの基本方針

肩の痛みの予防と早期発見が重要になります。

そのため、麻痺側上肢のポジショニング(昼、夜間)や基本動作(起き上がり、移乗時など)において肩に負担をかける介助になっていないか等を確認していく必要があります。

そのため他職種との連携が重要になり、リハ医との連携から痛みの軽減に取り組む必要があります。

脳卒中ガイドラインと肩関節痛

脳卒中ガイドライン(2009)によると、訓練前に非ステロイド性抗炎症薬の内服を行うことがグレードBで推奨されています。

ステロイド関節内注射は、グレードC2で低いですが、ローテーターカフの損傷がある片麻痺患者へは長期的に痛みの軽減や自動運動での関節可動域の改善があったとの報告があります。

関節可動域訓練はグレードBで推奨されており、早期からの実施により肩の疼痛、拘縮予防が期待できます。

その際には、愛護的に訓練を行う必要があります。

リハビリテーションの実際

関節可動域(ROM)訓練では、訓練前に肩関節周囲筋の筋緊張緩和を目的にホットパック、超音波、マイクロウェーブなど)を行うことが望ましいとされています。

関節可動域訓練では、痛みを起こさないように愛護的に行い、痛みの怒らない範囲での可動域にとどめることが必要です。

上腕骨頭は関節窩から逸脱しないよう、骨頭を保持しながら行います。

肩の挙上(屈曲、外転)ではその角度に必要な外旋角度になるように注意します。

肩関節痛を有する片麻痺者では肩関節構成筋群、特に内旋筋群に痙縮があるとの報告があります。

そのため屈曲、外転時に必要な肩関節外旋や上腕骨頭の下方へのすべり運動が不十分となり、インピンジメントや腱板損傷を引き起こす可能性があります。

痙縮については、以下の記事も参照してください。
筋緊張亢進(痙縮)に対するニューロリハビリテーションの知識

肩関節外旋の可動域制限が肩の痛みと最も相関が強いとの報告もあり、肩関節内旋筋の大胸筋や肩甲下筋へのA型ボツリヌス毒素注射やフェノール注射の有効性も示されています。

痙縮の減弱には、振動刺激を用いた痙縮抑制法の効果を期待することもできます。

バイブレーターを用いて、痙縮筋を伸張しながら肩関節内旋筋を刺激していきます。
刺激し始めには緊張性振動反射による筋収縮が起こりますが、5分程度刺激すると筋収縮の消失と同時に痙縮が軽減されます。

この際の筋の伸張は愛護的に行う必要があります。

肩関節内旋筋群の最大伸張位置とバイブレーターの当て方

関節内旋筋には、肩甲下筋、大胸筋、大円筋があります。

それぞれの筋には最大伸張位があるため、その肢位に上肢を持っていくことが必要となります。

①肩甲下筋
上部繊維:肩軽度伸展、内転、外旋により上部繊維が最大伸張位となります。
下部繊維:肩外転、外旋により下部繊維が最大伸張位となります。

②大胸筋
鎖骨部繊維:肩軽度外転から伸展、外旋により鎖骨部繊維が最大伸張位伸位となります。
胸肋部繊維:肩外転位から水平外転、外旋により胸肋部繊維が最大伸張位となります。

③大円筋
肩屈曲、外旋により大円筋が最大伸張位となります。

バイブレーターは、軽い圧迫を加えるような力で筋に押し当てるようにします。

その他振動刺激抑制法の用い方として、強制把握や手指屈筋の痙縮軽減に用いられます。

方法は、患者の手関節から手指にかけてできるだけ伸展した状態にし、手掌面にバイブレーターを5分程度当てます。

この時手指屈筋の痙縮が軽減し、Fー波でみた脊髄運動ニューロンの興奮水準も低下することがわかっています。

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