塗り絵は分野を問わず様々なリハビリテーション場面に取り入れられています。また健康な方でも塗り絵を趣味として行う場合もあり、老若男女問わず愛されている作業活動といえます。リハビリテーションの場面ではただ単に塗り絵を行えばよいというわけではなく、しっかりとした目的や対象者の方に適した実施方法が取られるべきです。そこで今回、リハビリとしての塗り絵の効果的な活用法について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。
目次
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絵画というと、かなり難しそうなイメージを覚えるかもしれません。それは、絵を描くことは個人によって得意不得意があり、白紙から絵を描いていく作業は、不得意な人からすると大変抵抗のある作業となります。
一方、塗り絵というと、子供のころから取り組んだ経験のある作業であり、また色をつけるだけという事と、枠があり自由度がある程度決まっている事もあり取り組んでみようと思いやすい作業活動になります。
塗り絵の図案にも様々なものがあり、主に子供向けのものや、日本の美しい風景のものなどがあり、海外のものでは幾何学模様を組み合わせたものなど、行う人の興味関心によって色々なものを提案する事ができます。
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年齢や性別を問わず、過去の経験を生かすことができ取り組みやすい作業であること、図案が決まっている構成的作業であること、身近な道具により行え価格も抑えることができること、広いスペースを取らずに行えること、図案の細かさなどにより作業の段階付けが可能であること、中断や再開がいつでもできること、作品として残り、達成感も得られやすいこと、線上に色をつけ縁取りする能力があれば行えること、縦横斜めへの様々な方向への往復運動であることなどが挙げられます。
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塗り絵の特性である非言語的な側面やを活かすことで、パラレルな場面において安全を感じながら集中力を発揮させることが可能です。また塗り絵はゆっくりとくつろぎ感を感じることができ、気分転換などの効果を期待することができます。
急性期では精神状態の不安定さや自己評価の低い対象者にとって、刃物を使用せず構成的な作業で手順も少ない塗り絵作業は、導入しやすい活動であるといえます。
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高次脳機能障害と塗り絵との関係では、半側空間無視との関連が報告されており、
大小3つの花と葉の組み合わせからなる図案のぬり絵課題と線分抹消テスト(Albert法)、線分2等分テストとの関連を検討した結果、ぬり絵課題は半側空間無視の検出に有効。塗り残しにも数種類のパターンがあり、中には質的評価の目安になるパターンもある。
作業療法のとらえかた〈PART2〉P117
認知症の評価としては、痴呆性老人用ぬり絵評価尺度が存在し、ぬり絵がスクリーニングテストへの応用の可能性があるとの報告もあるようです。また塗り絵の結果が認知症の臨床像を反映しているとの報告もあるようです。
知的障害への評価としては、精神遅滞児の自発的反応の検出や重度知的障害者の内面を知る手法としての有効性が報告されているようです。
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健常者と統合失調症者の塗り絵の比較では、
統合失調症者が作成した「ぬり絵」は、まとまりに乏しく整合性にかけ、暗く冷たく寂しく重く、やや弱い印象を与えることがわかったとしている。
〜中略〜
「彩度」に差がみられ、「色の自由さ」において差がみられる傾向にあったと報告している。作業療法のとらえかた〈PART2〉 P117
とあります。
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塗り絵の効果としては、図案に合わせてどのような色の組み合わせで塗っていけばよいかを考えることは、知的な面への働きかけが期待できます。
図案に合わせて線からはみ出さずに塗ることは、集中力や注意力、手指の巧緻性や手と目の協調性が必要になります。
幻覚や妄想など現実世界と離れている方には、現実に近い着色や現物を見ることで現実世界との接点を得ることができます。
塗り絵作品を完成させることで達成感を得られ、本人の自信につながり、他者からの賞賛の機会を得ることが可能です。
ぬり絵作業を通して、趣味としての活動や、楽しみ、充実感を得ることが可能です。
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塗り絵と脳のリフレッシュとの関係について、
リラクセーションとレクリエーションは、脳の働きを円滑にし、活性化する。脳が活性化されればストレスのもとをコントロールする力が強まり、その結果ストレスを解消することができる。ストレス解消には脳全体の働きを円滑にする必要があり、毎日たまるストレスに対応するために、毎日の刺激が不可欠である。塗り絵はその条件を満たすものの1つである。
作業療法のとらえかた〈PART2〉 P118
とあります。
ぬり絵の最中の脳の活動に関して、
後頭葉で下絵を見定め、前頭連合野で「ぬる」ことのプランを立て、運動野に指令を出し、身体は「ぬる」という活動を行う。われわれは塗り絵の作業中に、過去にみた名画や色を混ぜたときの記憶も使いながら作業をすすめる。記憶をたどることには側頭葉が働く。また、ぬったところを再確認し、必要なら修正を加え、作品を仕上げていく。このモニターや修正、加筆などには脳のさまざまな部分が使われる。つまり、プランを立てるのに脳の前部・後部が働き、運動をコントロールするのに運動野が、記憶を思い出すのに左右の側頭葉が働き、脳全体が働くことになるのである。
作業療法のとらえかた〈PART2〉 P118
とあります。
また塗り絵を行うとP300(脳波)が増大され、脳機能が活性化される可能性が示唆されたとの報告があります。
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塗り絵を高齢者に導入する際の注意点として、図案の線が細く複雑なものや、人物が振り返ったり、ものが重なっていたり、ものの1部分しか書かれていないものは、高齢者がそれを何であるかわからないことがあります。そのため、線で書いているものが何であるかが誰の目から見てもわかる図案を選ぶ必要があります。下絵の線が細い場合、線を太くするなどの配慮が必要になります。
例えば、季節に関するもので、名前を聞いたときにすぐイメージでき、色が選択しやすいものが良いといえます。
実物を見る機会がすくないものや、動物や鳥も種類によりどの色を塗るか迷う場合があります。
対象者の主体性を尊重していくには、図案を自ら選んでもらうことが重要になります。図案を選んでいること自体が楽しみの一つであり、わくわくする作業でもあります。
自由な発想で着色してもらうことも良いですが、高齢者は柔軟性に欠けることも多く、現実に近い色を思い出してぬる方が取り組みやすいと考えられます。迷うようであれば、実物を用意して見て塗ることも不安が解消し作業遂行が行いやすくなります。