ブルンストロームといえば、評価ですが、片麻痺上下肢機能の促通法としてのブルンストローム法があります。今回、ブルンストローム法による片麻痺上下肢機能促通方法を学んでいきたいと思います。
目次
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背もたれ椅子に座り、麻痺側上肢の肘を非麻痺側上肢で持ち(腕を組むように)ます。
必要に応じてセラピストは麻痺側上肢を保持し、体幹屈曲を誘導しながら、肩甲上腕関節屈曲と肩甲骨上方回旋の動きが出るように誘導していきます。
stageが低ければ前鋸筋も働きにくく、拮抗筋の硬さもあるため、セラピストが肩甲骨内側縁に手をもってこれるのであれば、肩甲骨の動きを介助できるようにします。
前途の姿勢で、体幹の回旋に伴い上肢を側方に振っていきます。
体幹のリズミカルな回旋運動に伴って、肩関節外転、内転の交互運動が生じますが、これにより自動的な筋活動が促通されることを期待します。
屈筋・伸筋共同運動の肩の要素が交互に誘発されます。
完全な伸筋共同運動が誘発されやすい肢位は、非麻痺側への体幹の回旋と、麻痺側への頸部の回旋が組み合わさった場合になります。
このとき、動作の指示では「(麻痺側の)肩先を見るように」と言うと、混乱が生じにくくなります。
対象者の麻痺側上肢をテーブルに肩関節外転、肘関節屈曲、前腕と手は支持して乗せます。
セラピストは一方の手で麻痺側の肩鎖部に手を置き、もう一方の手を側頭部に置きます。
セラピストは両方に抵抗を加え、肩に頭を近づけるようにしてもらいます。
その後、肩に抵抗をかけながら肩を頭に近づけるようにさせ保持させます。
抵抗を与えている間に、蓄積された肩挙上筋の緊張が、肩関節挙上を誘発するのを期待します。
対象者が随意的に肩挙上が行えない場合、セラピストは麻痺側上肢を保持しながら、肘を上に押し上げるようにしながら運動の介助を行います。
このとき、僧帽筋上部繊維に皮膚刺激などを行います。
筋に反応が見られた場合、伸張性収縮(肩を下に落とさないようにする)を行います。
そこから徒手抵抗を加えながら、肩を耳に近づけるように挙げてもらいます。
肩甲骨挙上動作を行うと、屈筋共同運動の全要素の活動を誘発につながり、伸筋共同運動での大胸筋の抑制効果もあります。
これは外転運動を行うことで得られますが、このときの外転方向は斜め前方(前方と側方の間)で行います(純粋な外転では肩を痛める原因ともなる)。
挙上の際には前腕回外、下制の際には前腕回内を同時に行うようにします。前腕回外と肩関節外旋は屈筋共同運動の要素であることが組み合わせる理由になります。
頭を非麻痺側へ回旋させることにより(緊張性頸反射)、大胸筋のリラクセーションが図られ、可動域も広がりやすくなることがあります。
肩甲骨の挙上と内転を行うことも、屈筋共同運動の要素であり、片麻痺者でも比較的行いやすい運動になります。両側の肩内転(肩甲骨を背骨にくっつける)を、背部への皮膚刺激などにより運動方向の理解を促します。
1全屈筋共同運動が弱い要素に対して、強い要素の促通効果を利用するために使われる
2できるだけ早く抵抗を利用する
3運動は疼痛を避けるように誘導してやる
4少なくとも、部分的なコントロールをもつ屈筋の要素のために、まず患者の努力は要求される
5反応のよくない筋の局所的な刺激ー固有、皮膚刺激が使われる
6促通手法は繰り返される(このような繰り返しは加重効果をもつ)
7等尺、伸張収縮が短縮収縮をする前に必要である
8伸筋共同運動、あるいはその要素のいくつかが主働筋ー拮抗筋の反応を継続するために瞬間的に誘発する片麻痺の運動療法 P78-79
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対象者が伸筋共同運動の要素の1つも開始できない場合、非麻痺側の運動を利用して麻痺側の大胸筋を活性化していきます。
背臥位、座位どちらでも可能です。
対象者の上肢を斜め前方に向かい水平位に保持します。
徒手抵抗は非麻痺側の肘より上の部分に内側に加え、対象者に水平内転させるようにします。
繰り返すことで、麻痺側大胸筋の反応が出現することがあります。
随意的な両側性収縮を得るために、「両腕を離さないように」「両腕をお互いに近づけて」などと指示を出します。
肘伸展は共同運動の弱い要素であり、共同運動優位の間は、上腕三頭筋の収縮は大胸筋の収縮に伴うことで獲得されていきます。
肘伸展の強化にはいくつかのポイントがあります。
1.麻痺側への頸部回旋(緊張性頸反射)は、肘屈筋の緊張を減弱させながら、上腕三頭筋の緊張を高める一助となります。
2.前腕回外位は肘伸展を抑制するため、セラピストもしくは対象者自らが回内位をとるようにします。
3.前腕回内位で上肢を非麻痺側の大腿外側におき、非麻痺側への体幹回旋も用いて下方向に押します。押す際には上腕三頭筋の皮膚刺激を入力します。
4.両側性の漕ぐ動作(ボートを漕ぐような動作)を誘導しながら、非麻痺側には抵抗を与えます。前に押すときは前腕回内位で行い、引くときは前腕回外位とします。
5.伸筋共同運動に沿った運動に対して、対象者の手関節を保持しながら手掌の近位部に抵抗を与えます(もしくは握りこぶしに抵抗を与える)。抵抗は、対象者が運動方向を理解する一助ともなり、肘伸展の促通に有効な場合があります。
6.肘をやや完全伸展位(伸筋共同運動の完全可動域)となるまで、誘導し、「そのまま保持して」「押し返して」と指示し運動を誘発します。セラピストが後方に押し返す運動を繰り返すことで、上腕三頭筋の伸展反射を誘発し、短収縮が起こることを期待します。
7.対象者の前に砂袋などを置き、そこに握りこぶしを作り、前かがみになりながら麻痺側上肢を押し付けていきます。
8.背臥位は緊張性迷路反射の影響で伸展優位となるため、この肢位での肘伸展運動を誘発することもあります。
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腕の水平位への前方挙上では、肘の伸展を伴いながら腕を前方挙上(屈曲)させる必要があります。
この際、肩甲胸郭関節は上方回旋していく必要があります。
屈筋共同運動の影響が強い場合、前方挙上すると腕は一部外転し、肘の伸展位保持は難しいことが多いです。前腕が回外位になったままの場合もあります。
対象者が伸筋共同運動で開始しようとする場合、肘の伸展は見られますが、挙上動作は大胸筋の下部の線維の収縮により困難になります。
肩甲胸郭関節の運動(特に前鋸筋の活動)が低下している場合は、側臥位や座位にて肩甲骨プロトラクションの促通が必要になります。
三角筋前部線維の収縮が弱い場合、背臥位や側臥位などで肩屈曲を抵抗付きで行うなどして筋出力を高めます。
水平位に前方挙上できるが肘の伸展が不十分な場合、上腕三頭筋の収縮力が低下しているか、肩甲骨の動きを介助して肘伸展が見られやすくなった場合は、肩甲骨周囲筋の影響を考えていきます。
腕の挙上が全くできない、もしくは部分的に可能だが不十分な場合、三角筋前部や中部線維に刺激を入れながら腕を他動的に挙上させ、そのまま保持するようにさせます。
これが成功した時には、肘伸展位のまま腕の上下運動を少しずつ可動域を増やしていきながら行っていきます。
屈筋共同運動を誘発させてから肘関節を伸展させることは、大胸筋のリラックスと三角筋の活性化につながります。
肘屈曲位での前腕回内外では、共同運動が減少していく際にみられる単関節運動のひとつになります。
共同運動の影響が強い場合、回内は肘伸展に伴ってみられ、回外は肘屈曲に伴ってみられます。
座位で肘屈曲させ、前腕は大腿の上もしくは大腿の上に置いた枕の上に置きます。
肘は大腿から離し、前腕回内外を行います。
このとき、肘は体幹に密着させておいて、体幹の側方運動防止や、両側の運動比較のために、両手の回内外を行わせるようにします。
代償運動として、肩外転内旋によるものがありますが、それは重力による回内のため注意が必要です。
肘屈曲位で回内ができないときには、以下の方法を用います。
①セラピストは対象者の肘をやや伸展させ、前腕を最大範囲で回内位とします。
②この肢位で前方に押すように命令しますが、回内に対し抵抗を加え、「手のひらを上に向けないように」と指示します。この際回内筋を使用しますが、回外に抵抗できて等尺性や伸張性収縮が得られた場合、運動方向を逆にします。
③「手のひらを下に向けて」と指示をしながら、肘屈曲位に徐々に持っていきます。
④肘を体側につけたまま、抵抗なしの状態で前腕を回内外できれば動作完了となります。
回内筋に痙性がある場合、回外に対する抵抗が回内筋の緊張を軽減させることになります(相反抑制)。
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ステージ3から4の段階では、屈筋・伸筋共同運動の全要素の運動範囲が行えるまで待つ必要はなく、様々な運動方向の修正を試みていくことが大切になります。
前提として、共同運動のでの「引く」「押す」動作はある程度コントロールされている必要があります。
この時期では、対象者の随意的な筋反応の修正に向けて、機能的な動作を行わせることが必要になります。
屈筋動作の促通では、手が口に届き、手が体幹や頭部などの様々な場所に届くように肩の要素(外転と外旋)が修正され、また大胸筋による伸筋要素により置き換えていく必要があります。
屈筋共同運動の要素が強い場合、下図のような肢位をとりやすくなります。
手と口、手と反対側の肩の運動を学習していくことになりますが、そのためにはまず肘を屈曲する際に肘を体側にしっかりと押し付けて外転の抑制が必要になります。
手を反対側の肩に届かせる場合、肘屈曲の間に大胸筋の活性化と肩外転の抑制が必要になります。
また三角筋前部線維と大胸筋の運動の組み合わせにより、肩関節屈曲内転方向への運動の活性化が必要になります。
対象者の運動でよくみられるパターンとして、肘屈曲を行うが肩関節が内旋することにより肘完全屈曲が行えないことがあります。
この際は肩関節外旋筋の促通を行い、その中で内旋しないように肘屈曲を行うことを学習していきます。
肩関節屈曲内転方向への促通では、座位で行うことが困難であれば、まずは背臥位から行い、次に座位へとステップアップしていく必要があります。
座位で運動を行った場合に、肩甲帯の後退が強くみられる場合には、肩甲骨外転・上方回旋の促通が必要で、背臥床での肩甲骨プロトラクションや、側臥位での肘伸展を伴う肩甲骨のプロトラクションを学習していきます。
肘屈筋の筋出力が弱い場合、上腕二頭筋の皮膚刺激や、促したい肘屈曲可動域まで誘導し、それを保持させるようにする(肢位後保持)などして、強化していきます。
肩屈曲内転方向
1あごに手を持っていく
2耳に手をもっていく(麻痺側から非麻痺側(頭の回旋は許す))
3手で反対の肘に触る
4反対側の肩に手をもっていく
5額に手をもっていく
6頭頂部に手をもっていく
7後頭部に手をもっていく
8叩く運動
a額からはじめ、頭頂部から後頭部を叩く
b膝の上に手を置き、そこから非麻痺側の背面を叩き、肩から首まで向かう
これらは屈筋運動が主で、唯一組み合わされる伸筋は大胸筋となります。
これらの動作が獲得できれば、食べ物を手に取り口に持っていく(一切れのパン、ポテトチップスなど)、櫛で髪をとかす、洗体タオルで非麻痺側の腕を洗うなどを目標に機能的な動作としていきます。
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共同運動パターンの影響が強いと、肘伸展する際には大胸筋(特に下部線維)が常に働いてしまい、共同運動パターンを強めてしまいます。前方方向、外側の伸展運動獲得のためには、大胸筋は上腕三頭筋と分離する必要があります。
上腕三頭筋と大胸筋の分離を促すためには、随意的伸筋共同運動を修正していくことが求められます。
そのための促通方法としては、伸展運動に対し抵抗を加えながら、初めは前方・下方で行い、次第に外側、下方・後方に向かって伸展運動を行わせます。
下方・後方に向かう伸展運動は「手を体の後ろへ」の運動獲得に大切で、それに必要な筋群を活性化させる準備となります。
肩関節の痛みがなければ、肩挙上位での伸展運動(斜め上方)を行います。
体の各部位を叩く運動は、まずはセラピストの誘導により大腿の前面から膝、下腿へと広げていき、前腕の調整を学習していきます。
日常生活上の機能的動作の獲得には、服の袖に腕を通す、テーブルの上の物を向こう側に押すなどが挙げられます。
アクティビティとしてはサンディングブロックの利用により伸展動作を促通する方法があります。
この動作に必要な筋機能は、屈筋共同運動、伸筋共同運動のいずれでもなく、広背筋、大円筋、菱形筋が機能する必要があります。
大胸筋と上腕三頭筋の分離、肩内旋筋(肩甲下筋)の働きも必要になります。
対象者は肩甲帯挙上、肩過伸展とやや外転、肘屈曲により手背で腰の外側に触れながら垂直方向に腕を垂らし、手を体のやや後ろにもっていきます。
ここから伸筋共同運動を利用しながら、対側の仙骨を横切り斜め下方向に押し下げるように動かします。
セラピストは抵抗を加えながら引く、押す運動を行いながら、腰の皮膚を擦り上げたり下げたりして筋出力を強化します。
外側から後ろに動かすことが困難な場合、セラピストの介助・誘導により肩関節内旋させながら運動を行います。この際大胸筋の強い収縮がみられることがありますが、繰り返し動作を行っていることで背部の筋が機能し、大胸筋の過剰収縮はおさまってきます。
前途した押し運動を前方から斜め外、下方、後方に向けて行う中で体の後ろに手を届かせていきます。
その際手背で仙骨部をこすって表在刺激を強調します。
伸展運動(前方伸展から後方伸展も含めて)は誘導により前後にリズムよく行わせます。
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この運動の獲得には、肘屈筋と肩外転筋の強い連携を取り除き、伸筋共同運動の2つの要素(肘伸展と前腕回内)と屈筋共同運動の2つの要素(肩甲帯の後退と肩外転)が適切に組み合わされ、適切な筋収縮のタイミングが必要になります。
座位で困難な場合、背臥位で三角筋中部線維の筋収縮を高めたり、側臥位で肘伸展を伴いながら、三角筋中部線維を用いた上肢のプレーシングを誘発していきます。
片麻痺者で腕の挙上を行っても、水平位からさらなる挙上ができないことがよく観察されます。
パターンとしては、三角筋や僧帽筋はよく働いていますが、前鋸筋、ローテーターカフの収縮が不十分であることが多いです。前鋸筋の機能不全では翼状肩甲が観察されます。
頭上への腕の挙上では、肩関節の動作時の痛みがないこと、大胸筋が抵抗なく伸張されること、前鋸筋や肩甲上腕関節に作用する筋が十分に機能する必要があります。
前鋸筋の筋出力を高めるには、上肢お前方水平位に保ち(セラピストの介助などで)、対象者に前方にパンチをするように押しやるようにさせます。
このときセラピストは後方にすばやく少し押し、筋出力を高められるようにします。
このとき大胸筋の収縮を防ぐために、上肢はより外側方向に向いている必要があります。
そこから斜め上方に徐々に肢位を移動させ、下方向に何度も抵抗を繰り返しながら、「下に押し下げられないように」から「上に腕を伸ばして」と指示を出していきます。
別法としては、「腕を耳へ近づける」運動が挙げられます。
①対象者はからだの前方で反対側の肩にと届くように上肢を動かし、それに抵抗を加えます。
②少しずつ上肢を挙上させながら、手を頭上に持っていきます。
この運動を行うと、三角筋前部や後部の筋活動、耳に届くときには肩甲骨の上方回線が全可動域に渡って必要となるため、この運動に抵抗を加えると前鋸筋の筋活動も高まります。
ステージⅤの運動の中では一番難しい運動になります。
運動の難しさは、手掌が上向きの際には、屈筋要素(前腕回外と肩外旋)が加わり、肘関節は屈曲しやすくなるためです。
この運動を行うことは機能的な面からはあまり重要ではなく、対象者が回復過程のどこに存在するのかを測るものとしては有用です。
日常生活上では、様々な上肢の位置での前腕回内外を含む動作を練習することが望ましいといえます。
この時期では、対象者の興味や重要な作業に必要な上肢・手指のコントロールを身につけることが大切になります。
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共同運動の影響が強く出ているときには、肘屈曲するときに手関節は屈曲する傾向があり、肘伸展するときには手関節は伸展位(固定)となりやすといえます。
これは、手関節伸展は伸筋共同運動の要素部分であるからと言えます。
そのため、対象者は肘を伸展している際に、手関節伸展位に固定する機能を獲得することがあります。
上肢を使用する際に手関節屈曲位となることはほとんどないことから、他動運動時に手関節は伸展位に保持するようにします。
自動伸展運動を行うときには、手掌近位部や握りこぶしに対して抵抗を加え、手関節伸展の筋出力を強化していきます。
握りこぶしで物を押すことも方法の一つになります。
把握のための機能的手関節肢位のためには、肘伸展位でセラピストが上肢を保持し、手関節伸筋の近位部を叩打して誘発し、同時にしっかりと手指を握ってもらいます(手関節伸筋と手指屈筋の収縮を同時に行うため)。
長橈側手根伸筋は誘発しやすいですが、短橈側手根伸筋と尺側手根伸筋は筋腹叩打を加えると反応が生じます。
把握とリリースを交互に繰り返し、途中手関節の支持をやめて、対象者に独力で手関節伸展位を保持してもらうようにします。
手関節伸筋と手指屈筋の同時収縮が得られれば、リラクゼーションのために握りをやめ、手関節を垂らし(手関節伸筋と手指屈筋のリラクゼーション)、肘を屈曲させます(手関節伸筋のリラクゼーション)。
肘伸展位で手関節の固定ができるようになれば、少し肘を屈曲し、前腕回内しながら把握させ、叩打を加えたり、対象者に独力で保持させるようにします。
最終的に肘屈曲は口元まで達するようにします。
例外的に、把握の際に手関節伸展が強く出すぎてしまう(肘伸展位で把握をやめても手関節が垂れない)対象者もおり、その場合には、逆に肘関節を屈曲位にして肘伸展筋の緊張を抑制します。
肘屈曲位で把握、リリースを繰り返しながら、伸展位把握時の力を入れすぎないようにしてもらいます。
リラクゼーションは肘屈曲位から始め、伸展位でも行えるようにしていきます。
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ブルンストロームは、Twitchellの研究データから、手指の機能回復の段階を7つ挙げています。
1腱反射の回復と亢進
2痙性の出現と他動運動に対する抵抗感
3固有受容刺激での随意性手指屈曲の出現
4固有受容性牽引反応の誘発
5固有受容性刺激なしで手指の運動がコントロール可能
6把握は手指に対する触刺激で著しく強調され、痙性の減弱
7真性把握反射の誘発と痙性のさらなる減弱
固有受容性牽引反応は近位性牽引反応とも呼ばれています。
これは、上肢の関節の1つの屈筋をストレッチすることで、他の全ての関節の屈筋群の収縮の誘発、もしくは活性化がおこり、結果として上肢全体としての長さが短くなるというものです。
これには、緊張性頸反射(頸部回旋で向いた側の上下肢の伸筋優位、反対側の屈筋優位、頸の屈曲で 上肢屈筋優位、下肢屈筋優位、頸の伸展で上肢伸筋優位、下肢屈伸優位)が牽引反応を活性化したり、もしくは抑制すると言われてます。
このことから、屈筋共同運動の近位要素のコントロールがある程度は可能な場合は、適当な関節運動に抵抗を与える(もしくは屈筋のストレッチ)ことにより、手指屈筋群の反射性収縮が生じ、手指屈曲と手関節屈曲(望ましくはないが)が同時に出現することがあります。手関節に対してはセラピストが伸展位に保
持し、牽引反応を利用していきます。
真性把握反射は、手指の掌側表面の部分を遠位方向に向かって強く圧迫しながらこすることで把握反射が起こるというものです。
近位方向に刺激を加えても何も起こらないため注意が必要です。
反射が誘発される場所は手掌表面の多くの部分で、尺側は含まれません。母指の反応は弱いですが、他指のMP、PIP、DIP関節では良い反応が得られやすくなります。
刺激により生じた局所的な反応は、刺激が移動する関節の屈曲ですが、その反応が他の局所的な反応を瞬間的に強化することがあります。
促通反復療法(川平法)でも同様の促通があり、川平先生は「皮膚筋反射」と呼んでいます。
2指の指と指の間を掌側から背側方向へ刺激していくと、隣り合った手指の内転を誘発することができます。
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緊張性母指反射は、上肢挙上位、前腕回外位にて強い反応が見られやすくなります。
上肢を挙上する高さは、頭上に挙げることが理想で、肩関節痛があり無理な場合には、少なくとも顎関節付近まで挙上させることが必要です。
反射活動はゆっくりと促通され、最大に達するまでには数秒はかかることがあります。
母指の反射活動を促通する際に、示指の伸展が母指の反応に伴う場合もあります。
反射活動をさらに強めるには、母指の他動屈曲後に増大し、跳ね返るように元の位置に戻っていきます。
屈筋群のコントロールがある程度できていれば、前腕回外位に伴う上肢挙上にて反射の誘発が行えますが、屈筋痙性が亢進している場合、屈筋群の筋緊張抑制手技や、振動刺激による痙性の抑制を行ってから反射を誘発するとよいです。
なお、環指、小指に伸展促通には、前腕回内位で上肢挙上させ、前腕尺側背側をこするような刺激を入力する(こする方向、こすり方は重要ではない)ことで、随意伸展の強化を行います。
また、上肢挙上位での腕の重みをセラピストが介助することで努力的な運動が少なくなり、促通されやすくなることがあります。
手指の伸筋反射がある程度可能になれば、上肢下垂位、肘屈曲位、前腕と手関節は支持したなかで把握させます。
この際、把握して少し指が屈曲し始めた所でリリースさせるようにし、上肢を挙上位に戻します。
すると緊張性指反射により手指伸展が再度出現します。
伸展時に力を入れすぎてはならず、把握とリリースを交互に行うことで、上手くいけば手指伸展を強化できます。
この段階では、上肢挙上位でのリリースが強化されますが、徐々に上肢を下げた状態においてもリリースを強化していく必要があります。
屈筋の痙性が強くなれば抑制しながら、様々な上肢位置においてリリースを強化していきます。
このような半随意性の運動は、上肢の姿勢、特に四肢の粗大運動との結びつきがあります。
母指の個別運動において、母指伸展の際には、最小の力で行う必要があります。
必要であれば、長母指外転筋や短母指伸筋腱を軽く叩打したり、こすったりして刺激を入力します。
さらなる母指の運動コントロールのためには、母指を回旋させるようにしていきます。
はじめは、自分の手を組み、手関節をやや屈曲させながら両方の母指を回旋させます。
非麻痺側で母指で麻痺側の母指を押して回旋させる必要があるかもしれません。
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脳卒中片麻痺者での歩行では、トレンデンブルグ歩行が観察されることがあります。
観察上、麻痺側下肢での体重支持において、中臀筋により骨盤外側の固定ができず、骨盤を平行に保つことができなくなります。
片麻痺者では、伸筋共同運動の要素の連合と、他の筋との共同動作を排除することに関係しています。
股関節外転筋は屈筋共同運動の要素のため、麻痺側下肢での体重負荷が行いにくくなることが関係しています。
股関節外転筋を活性化するために指針としては、以下の考え方を用います。
1随意運動がどんな姿勢でも、共同運動を行わせてでも出現しない場合、反射的な収縮を利用します。
2反射性の収縮に随意的努力を加えていきます。
3局所的な促通方法を用います。
4歩行に必要な筋活動様式(立脚初期から中期)での活性化を行います。
レイミステ現象を用い、股関節外転筋の反射性収縮を誘発します。
レイミステ現象は股関節外転よりも股関節内転の法が誘発しやすいと言われています。
これは、背臥位では股関節・膝関節は伸展しており、股関節内転、伸展は伸筋共同運動の要素としてあるためだと考えられます。
外転に関しては、非麻痺側股関節外転への抵抗を加えることで誘発されます。
これには強い持続した努力が求められます。等尺性収縮、短縮性収縮を用いながら、外転筋の活性化を試みていきます。
非麻痺側の外転に対する抵抗を麻痺側に少しでも反応が出るまで繰り返し与え、次に外転、内転を交互に誘発し、両方の反応を強化します。
これにより、主動筋・拮抗筋の収縮を増幅させていきます。
このような内転、外転運動が可能になれば麻痺側の外転のみの動きを促通していきます。
この段階では背臥位ですが、立位や歩行で体重負荷機能を果たすには不十分です。
重要なのは、立脚初期において股関節、膝関節の伸筋と共同して働くことです。
なお、促通反復療法(川平法)では、股関節屈曲・内転、伸展・外転方向への運動の促通や、膝屈伸を伴
う股関節屈曲・内転、伸展・外転方向への運動の促通を行います。
側臥位で麻痺側下肢が上に来るようにします。
①セラピストは対象者の下肢を持ち上げ、股関節外転位にします。
②中臀筋を叩打しながら、「足を下ろさないようにして!」と指示し、努力させます。
*これを繰り返す中で、外転筋の反射性収縮を高めていきます。
筋出力が上がっていけば、反応として足の下降がゆっくりとなります。
立位において、両側股関節外転筋の促通を行います。
①平行棒などに向かって非麻痺側で体を支えます。
②セラピストは後方より介助しまたは誘導し、まずは非麻痺側下肢に体重を移動し、麻痺側下肢を外転させます。外転筋の反応が良くなくても、骨盤運動の少しの範囲で行えます。
③体重を麻痺側に移動させ、麻痺側腸骨稜を下方に押し、非麻痺側骨盤を上方に押し上げます。このとき麻痺側外転筋が十分に機能すれば非麻痺側への体幹の傾きを防ぐことが可能です。
④同時に非麻痺側下肢を外転させます。
*このような操作により股関節の両側性の活動が生じます。非麻痺側の外転筋の筋収縮により、麻痺側の外転筋の促通を期待します。
①立位にて非麻痺側下肢を床から離し(片脚立位)、非麻痺側骨盤を挙上するようにさせます。
*このとき麻痺側の股関節外転筋の強力な収縮を必要とします。
*対象者には非麻痺側骨盤の挙上に意識を集中させます。
②麻痺側・非麻痺側交互に骨盤挙上運動を行わせます。
*歩行の移行期での訓練で、交互の骨盤挙上運動が行われます。
片麻痺者におけるトレンデンブルグ歩行が、訓練を通じて軽減されないようであれば、対象者には杖を使用し異常歩行の最小化と、麻痺側股関節外転筋の過伸張をさけるようにします。
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脳卒中片麻痺者では、下肢では伸筋共同運動が優位となりやすいです。
そのため、伸筋共同運動は発症後初期より誘発されやすいという特徴があります。
その反面、立位や歩行において伸筋群の調整が行いにくく(痙性のコントロール)、バランスの変化に対応できなかったり、伸筋・屈筋の協調がとれずに歩行の妨げになることがあります。
これは、踵接地直後の大腿四頭筋の筋収縮の調整に代表されます。
膝屈筋と伸筋に関しては、それらの交互活動を協調していくことが重要です。
背臥位では迷路性の影響により、膝を伸展位に固定する原因となることもあり、随意屈曲を妨げることがあります。
このような時には、ハムストリングの腱を刺激したり、大腿四頭筋の緊張を軽減させて、膝関節をやや屈曲位として保ちます。
屈筋共同運動を用いて屈曲していきますが、このときセラピストは下肢が浮かないように保持しながら、足底を床を水平に滑らせるように誘導していきます。
このような運動を繰り返し、膝屈曲に対する運動感覚を学習してもらいます。
「床の上を滑っていることを感じ取ることができますか」などと運動感覚を確認しながら、次に床から足底を離さないように伸展させていき元の位置に戻していきます。
このような屈曲、伸展運動を交互に行い、股関節屈筋の部分的な抑制と、膝屈筋の随意収縮、膝伸筋の遠心性収縮も含めて強化していきます。
運動には可能であれば抵抗を加え、速度を増し、強化していきます。
なお、初期に滑りにくのであれば、スライディングシートなどを用いて運動を実現しやすくなるような環境調整を行います。
背臥位で膝が屈曲できない場合、座位で行うことで収縮を促しやすくなります。
①椅子に座り踵を床につけ、膝関節はほぼ伸展位とします。
②踵を床に接地しながら、足底部も接地させ下肢を後方に引きます。
下肢は椅子の下まで引き、膝を90度以上屈曲させます。
*はじめに非麻痺側で行い、次に麻痺側で行うことで運動の感覚が掴みやすくなることがあります。
*セラピストは下肢を後方に滑らせる時の介助や、足と床の摩擦を少なくするために、大腿部を少し持ち上げる(膝屈筋腱がある部分を刺激しながら)ことや、前途したスライディングシートを用いることも可能です。
座位では、ハムストングを刺激するのにいくつかの利点があります。
ひとつには膝と股関節の屈曲は、二関節膝屈筋は伸張されるため、膝屈曲が促通されやすいことにあります。
ふたつには、運動の際股関節の角度変化は少ないため、膝のみの運動感覚をつかみやすいことです。
第三に、床上に足を滑らせることは、膝屈曲伸展運動の誘導に役立つことです。
他の方法としては、体幹前傾を利用した膝屈曲促通があります。
これはハムストリングが膝の屈曲よりも、股関節伸筋としての方が筋収縮を誘発しやすいということきています。
①椅子に座り、麻痺側の肘を非麻痺側で保持し、体幹を前傾させます。セラピストはハムストリングの収縮を触知しておきます。
*このとき体幹の前傾と下肢を後方に引く努力を同時に一致させて行います。
テーブルの上にもたれ、膝の屈曲と伸展を行います。開始にはハムストリングの刺激を入力します。
半腹臥位から次第に立位となり、最終的には股関節伸展位での膝屈曲を行えることを目指します。
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足関節背屈筋の活性化方法として、股関節屈曲がある程度随意的にコントロールできる場合には、抵抗を利用する方法があります。
①股関節屈曲に対してセラピストが抵抗をかけ、足関節背屈を誘発します。
このとき、対象者により反応は異なるため、下肢の位置をその都度変更し、試しながら、良い反応が得られる場所、抵抗の強弱を調整していきます。
股関節の随意的コントロールが困難な場合には、足指の他動的屈曲を利用します。
①背臥位、膝伸展位で足指を他動屈曲し、反射反応を誘発します。
下肢の位置(膝の屈曲角度)などは良い反応が見られるところをその都度調整していきます。
足関節背屈の反射収縮を何度も誘発し、対象者の随意性努力を重ねていきます。
反射反応はすぐに消えてしまうため、タイミングよく対象者は随意性努力を行う必要があります。
良い反応が得られた場合には、セラピストが対象者の足背に圧迫を加えながら屈筋共同運動に抵抗を加えると同時に、「足を下ろさないで!」と指示します。
反射反応による誘発なしに自動運動にて足関節背を行うステップでは、背臥位や座位が用いられます。
セラピストは対象者の大腿部(膝上)に手を置き、軽く下方に押しながら股関節屈筋と全脛骨筋を収縮させ、押す力を大きくしていきます。
このとき股関節屈曲は起こさせず、足関節背屈のみの反応を得られるようにします。
前脛骨筋の皮膚刺激や足関節を走行する腱を叩打するなどをします。
「足を下に下げないで!」と伸張性収縮や等尺性収縮をまず行い、次に「足を上げて」と短縮性収縮を行います。
背臥位の場合、股関節・膝関節の屈曲を少しずつ伸展位にし、足関節背屈の反復を行います。
前脛骨筋の促通とそもに長指伸筋を活性化させ、次には腓骨筋も活動性を高めていけるようにします。
足関節の外反に対して抵抗を与えていきますが、次第に外側に移動させていくと良い反応が得られやすくなります。
外反に対する抵抗時には、「足をそのまま保って!」「足を内側にしないで!」から、後には「足を外側に向けて」と指示していきます。
腓骨筋の伸張反射の誘発では、対象者の足関節に急速な内反運動を起こします。
このようにして高めた筋緊張を、抵抗により強化し、筋緊張の期間を長くしていきます。
腓骨筋などの外反筋を叩打したり、こすったり、足の外側面を強くこすることで良い反応が得られやすくなることがあります。
これらの方法は、
①部分的な筋活動のコントロールができているか、もしくは近い将来できると予測される場合
②他の要素を含んでいる運動の修正
③短縮収縮の前に等尺または伸張性収縮の獲得
が原則になります。
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