前頭葉障害では、行動開始の障害が生じることがあり、日常場面で行動開始が困難になると、予定していた時刻に遅れてしまったりと、日常生活上不具合が生じることがあります。今回、前頭葉障害(行動開始困難)に対する行動促進のためのリハビリテーションについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。

前頭葉障害(行動開始困難)に対する行動促進のためのリハビリテーション

引用・参考文献

柴崎 光世「前頭葉機能障害の認知リハビリテーション」明星大学心理学年報 2012,No.30,23―40

チェックリストの利用

チェックリストを利用したアプローチでは、食事の際の準備や台所の掃除など、日常生活課題がリストアップされたチェックリストを使用します。
課題ごとに、うまくできれば褒める、決められた時間内に動作が起こらい、または不適切動作が起こる場合はキュー(促し、暗示、手がかり、ヒントなど)を与える、などの訓練があります。
Katzmannらによると、このような訓練においては、毎回の褒め言葉や強化報酬がなくても、成功それ自体が報酬として働くとされています。
褒める場合は、さりげなく、どこが良かったか具体的に伝えると有効です。
成功自体が報酬となるような内的要因のものは、次のステップへの意欲向上につながります。
病棟ではスタッフが、在宅では家族がキーマンになりますが、セラピストと事前相談をしておき、どのような点に着目、注意しておくかを話しておくことで、賞賛やキューの送り方を把握しておきます。
対象者にストレスを与えてしまっては、モチベーション低下につながることも考えられるため、どのようなことがストレス因子になるのかも把握しておく必要があります。

 

言語的促しと強化報酬の組み合わせ

「◯◯をしてください」というように言葉による指示で動作を促し、よい反応(行動)が起こらない場合、身体的介助(誘導やポインティング)を行います。このとき、あまりコミュニケーションをとらないようにしていきます。
身体的介助によりよい反応が生じると言葉による賞賛(具体的に、さりげなく)を与えて、さらにチョコレートや外出できる特典(何枚貯まったら外出できるというような交換制のチケット)などの報酬を与えます。
動作が改善してきたら、それまでは細かな促しだったものを大きなステップでの促しに変更していきます。
あまりに不適切な行動を行った場合、その場から一旦作業遂行をやめる、暴力などの行為が見られた場合、その場から去るなどの処置をとります。

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モデリング(動作見本)

行動開始障害に対し、動作見本を示し、改善を期待するものです。
前頭葉損傷者ではしばしば見られる模倣行動を利用したものになります。
日常生活活動において、身体機能的には動作遂行が可能ですが、食事以外には指示が必要というような場合が臨床場面でもよくみられると思います。
例えば、様々な動作でスタッフなどから促しがあり、その動作の最初の動きを行えば、後の動作は自分で完了でき、終了できるというような場合、それは開始の困難さが問題点となります。
例えば、メガネをかける場合、ベッド近くの決まった位置にセットしておけば、それを自分で手に取りかけるという行動がみられるかもしれません。
この場合、目につくところ、いかに手の伸ばしやすいところにメガネを置いておくかがポイントとなるでしょう。
成功すれば賞賛を与え、それが次の行動にもつながることを期待します。
歯磨き動作では、他の患者が歯磨きを行っている横に位置させることで、本人が洗面所に向かい、歯磨きを開始することを期待します。
このようなことを繰り返していくと、もしかすると、洗面所に連れて行き、歯磨きセットが置かれている状況を見るだけで歯磨きが開始されるかもしれません。

行なうべきことを自身で考え行なうための質問法

前田ら(2009)は、行動開始障害を呈した脳炎後遺症者の復職へのアプローチを行っています。
対象者が復職に向けて行なうべきことを自分自身で考え、自ら行動に移すために、初めから対象者に対して具体的な行動を提示・提案するのではなく、まずは復職に関する漠然とした質問を行い、それに対して答えが得られない場合、より具体的な質問を行っていき、それでも答えが得られない場合「◯◯をしてみてはどうか」と提案するという訓練を行いました。
訓練開始2週目から支援者からの提案は必要ではありましたが、提案された内容を対象者自ら工夫して行なう様子がみられ、開始1か月半後には具体的な提案がなくても対象者自ら主治医や会社の上司と連絡をとり、復職に向けた調整を行なうようになりました。

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