脳卒中片麻痺者においては、神経的な影響による筋力低下がみられることがあります。数ある運動の中でも、ブリッジ動作はベッド上で行えることから自主トレとしても最適なトレーニング方法です。今回、脳卒中片麻痺の下肢(股関節)のリハビリ・自主トレとして、ブリッジ動作についてまとめていきたいと思います。
目次
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何も目標がなく、ただ言われた訓練を行っているだけでは面白くもなにもなく、ただしんどいことをやっているだけという感覚に陥ってしまいます。
リハビリテーションでは目標を定めるのですが、そのことにより訓練意欲が増し、より積極的に訓練に取り組むことが可能になります。
下肢のリハビリにおいては、動きが良くなったらどんなことをしたいのかを自分の中で考え、それに向けて訓練を組み立てていくことが大切です。
作業療法士・理学療法士とともに考えることで、お互いに目標を共有しながら、それに向かって進んでいくことができます。
リハビリスタッフにはなんでも相談してみてください!
脳卒中が起こると、脳の神経細胞が損傷を受けます。
すると、脳から脊髄までの運動指令がうまく行き届かず、腕が動きにくいという現象が起きます。
運動指令が今までは100%だったものが、30%、50%というように伝達されにくくなってしまいます。
これにより、筋肉の収縮量が減少(筋出力の低下)してしまいます。
この状態を神経原性筋力低下といいます。
脳卒中と筋力低下については、以下の記事を参照してください。
脳卒中片麻痺者と非麻痺側筋力!筋力低下を見逃さずに自立度を高める!
脳卒中片麻痺者と上肢機能評価、リハビリテーションに向けた実践的知識と方法!
運動指令が低下し、筋肉の収縮量が減っている状態に対しては、しっかりと動かして筋肉の収縮量を上げていく必要があります。
(うろ覚えではありますが)ラットを使った実験では、一つの部位の運動機能の回復を促すには、1日200回以上動かす必要があるとの報告があったように思います。
私は患者さまには「1日1000回動かすつもりでいてください」と伝えており、そのため患者さまに「鬼みたいやな」とよく言われています。
筋収縮量を向上させるには、抵抗をかけることにより、通常よりもより筋肉を収縮させることを行う必要があります。
筋力強化の原理原則では、1回で持ち上げられる最大の重さの60%程度の重さを10回1セットで3セット行うことで筋力強化が行えるとされています。
脳卒中片麻痺者の自主トレーニングでは、そこまで考えられるのは軽度者かと思いますが、それでも自主トレーニングの中で上記のように抵抗や重りを使用してのトレーニングは非常に重要だと考えています。
脳卒中片麻痺者では神経性の筋力低下が起きていることから、しっかりと動かして鍛えていくことが大切になります。
筋力トレーニングの原理原則については以下の記事を参照してください。
筋力強化の原理原則!負荷の設定、頻度、回数の考え方!
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今回紹介するブリッジ動作は、適応は中等度〜軽度の運動麻痺がある方と考えてください。
まずはブリッジ動作について紹介します。
「ブリッジ」と言われると、両手両足を使って体の背面を持ち上げる動きを想像する方が多いと思いますが、リハビリテーション対象者ではそのような動きはまずできないと思います。
リハビリテーションにおける「ブリッジ」=ヒップアップ(お尻上げ)というイメージになるかと思います。
動きとしては、下図のように両足の足底で地面を支持して、お尻から腰、背中にかけて空中に浮かせる動きになります。
このブリッジ運動により鍛えることができる筋肉は、
・大臀筋
・ハムストリングス
・脊柱起立筋などの背筋群
になります。
股関節を伸展させる筋肉の筋出力を向上させることが期待できるわけです。
ブリッジ運動における注意点としては、
①手での支持はできるだけ行わない
②支持している足はできるだけ真っ直ぐに保つ
③お尻を上げてから、ゆっくりと下ろす
ことです。
①の「手での支持はできるだけ行わない」理由としては、運動において主に下肢の力を使ってお尻を持ち上げたいので、腕で床を支えながら行うと腕+下肢の力によりお尻を持ち上げていることになります。
そのため、腕は胸の前で組むなどして、手や腕で床を支えないようにして行うことがポイントになります。
②の「支持している足はできるだけ真っ直ぐに保つ」理由としては、脳卒中片麻痺の方がこのブリッジ動作を行うと、麻痺側の支持している足でうまく支えられずに足全体が横に倒れそうになることが多く見られます。
そのため、麻痺側の足に意識を向け、支持している足をできるだけ真っ直ぐに保つことがポイントになります。
股関節周囲の筋の力が安定してくると、足は自然と真っ直ぐに保つことができるようになります。
③の「お尻を上げてから、ゆっくりと下ろす」理由としては、脳卒中片麻痺者の筋緊張との関係があります。
片麻痺の方のお尻の筋肉(主に大臀筋)を触ってみると、非麻痺側と比較してプニプニして張りがないような状態が多いと思います。
これは、大臀筋の筋緊張が低下することにより起こっていると考えられます。
筋緊張を高めるには、筋肉の性質である粘性に対してアプローチする必要があるのですが、それには筋肉の遠心性収縮がポイントになります。
床にお尻がついている状態からお尻を上げる時には、大臀筋やハムストリングスは求心性収縮が行われます。
遠心性収縮を促そうと思うと、ブレーキをかけるようにゆっくりとお尻を下ろすことが必要になるのです。
さらに、常に臀筋群から力が抜けないように、できるのであればゆっくりと下ろしたお尻を床につけずに、床ギリギリのところでとどめて、再度お尻を上げていく動作を行うことがよいと思われます。
筋の遠心性収縮と筋緊張の関係については、以下の記事を参照してください。
筋緊張に関わるγ運動ニューロンの特徴から考える筋緊張の高め方(適切な筋緊張に調整できるか)
筋緊張亢進(痙縮)に対するニューロリハビリ!伝統的リハビリも交えながら!
今までは、基本形のブリッジ動作について説明してきました。
ブリッジ動作は、足の関節の位置関係により発揮される筋活動に違いがあります。
まずは、股関節の角度からブリッジ動作と筋活動を考えていきます。
①股関節を屈曲伸展の中間位で行った場合
図をみるとわかるように、股関節を曲げず、ベッドより膝から下を垂らした状態で行うブリッジ運動です。
この場合のブリッジ運動では、大臀筋、ハムストリングス、脊柱起立筋のうち、大臀筋の筋活動が大きく高まります。
さらに大臀筋の筋活動を高めたい場合は、頭を上に上げながら行うと効果的です。
②股関節を屈曲位で行った場合
図をみるとわかるように、股関節を曲げて行うブリッジ運動になります。
この場合のブリッジ運動では、ハムストリングスと大内転筋が主な股関節伸展の力源となります。
このようなことから、大臀筋を優位にトレーニングしたい場合は股関節を伸ばしたままで実施し、ハムストリングを優位にトレーニングしたい場合は股関節を曲げてトレーニングすることがポイントになります。
次に、膝関節の屈曲角度からブリッジ動作を考えていきます。
①膝関節屈曲位で行った場合
膝関節を屈曲位で行うと主に大臀筋の筋活動が高まります。
これは、今まで説明してきた図にあるようなブリッジ運動になります。
②膝関節伸展位で行った場合
膝関節を伸展位で行うと、主にハムストリングスの筋活動が高まります。
これまでに様々なブリッジ運動を紹介しましたが、健康な方であればどのような肢位においてもブリッジ運動が行えるので、脳卒中片麻痺の方においても、様々な肢位でトレーニングを行えるということは大切な要素だと考えています。
ここまでは両足による支持でのブリッジ動作を紹介してきました。
次に紹介するのは、片脚でのブリッジ運動になります。
両足でのブリッジ動作では、主に股関節伸筋のトレーニングを行うことができました。
これが、片脚ブリッジになると、股関節伸展筋に加えて、中臀筋などの股関節外転筋のトレーニング効果も期待できます。
初めは非麻痺側の足を麻痺側の足の上に組んで行うと行いやすいと思います。
レベルを上げるためには、麻痺側の足で支持しながらブリッジし、非麻痺側の足は空中に浮かせるようにコントロールします。
この方法では、麻痺側、非麻痺側の足を両方コントロールする必要があるため、難易度は確実に上がります。
ブリッジの筋活動については以下の記事も参照してください。
ブリッジ(殿部挙上)運動の目的や効果、運動肢位による筋活動の違いと臨床応用
歩行においては、大臀筋の求心性収縮が特に重要になります。
踵からつま先に体重が移動し、逆の足が振り出される時に、特に筋活動が高まります。
その大臀筋の筋活動を高めるという点では、ブリッジ運動も自主トレとしては安全に行えるトレーニングとしては大切だと思います。
ブリッジ運動について、
この活動を容易に行えるようになれば、歩行時に膝を過伸展してロックすることを防ぐことができるようになる。
ステップス・トゥ・フォロー 改訂第2版
とあります。
踵設置時に膝を安定させるのは大臀筋の筋活動が重要になるので、歩行時の膝の過伸展を防ぐという意味でも、ブリッジ運動は大切なのかもしれません。
歩行については以下の記事も参照してください。
歩行のバイオメカニクスとリハビリテーション!歩行周期と筋活動から評価を考える!
運動失調(協調運動障害)における姿勢や歩行制御能力の問題の捉え方とアプローチの戦略
脳卒中片麻痺者の歩行で体幹が非麻痺側へ側方傾斜する原因と対策
脳卒中片麻痺の予後予測(急性期、上肢、歩行、失語)の方法!
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脳卒中片麻痺者におけるトレーニングでは、運動麻痺がある側の足に対するトレーニングを中心に行っていくことが中心となっていると思います。
これは確かに大切なことで、運動麻痺の改善のためにはかなりの運動回数や負荷をかけていく必要もあります。
ある程度麻痺側の足の運動機能が回復してきたら、両足が独立した運動を行うことが重要になります。
寝返るときだって、両足は異なる運動をしています。
歩いている時も両足は異なる運動をしています。
そのように考えていくと、両足それぞれ独立した運動を行うことは、運動麻痺の改善には必要と考えられます。
では、両足の分離運動を促進するトレーニングについて解説していきます。
まずは、両足の足底が地面についている状態でのトレーニングです。
このトレーニングでは、麻痺側筋肉の筋出力が十分に高まっていない場合でも行うことができるはずです。
まずは両膝を曲げた位置が基本ポジションです。
そこから、まずは準備運動として両足同じ動きで運動を行っていきます。
例えば、
両足の曲げ伸ばし
両足を外に開く
両足を内に閉じる
などがあります。
これは、両足を動か際のコマンドは比較的単純だといえます。
両足が分離した、独立的な運動を行うには、
片方は曲げ、片方は伸ばす
足踏み運動
などがあります。
足踏み運動は、片方の足を空間で保つためにプレーシングなどとも呼ばれます。
この運動がうまく行えるためには、腹筋群での固定性と、腸腰筋による筋活動が必要になります。
注意点としては、麻痺側の筋出力が不十分だと、下肢を空間に挙げる際にブレが生じることがあります。
下肢を下ろす際も同様で、ブレないように、また、ゆっくりと下ろすことを心がけるようにします。
ゆっくりと足を下ろすのは、筋収縮の様式でいうと遠心性収縮になります。
遠心性収縮は、運動麻痺により筋緊張が低下している筋肉の筋緊張の高めていくためにも必要になります。
また、歩行においては腸腰筋の遠心性収縮が重要になります。
歩行の前段階のトレーニングとしても非常に重要なものとなります。
足踏み運動では、膝関節は曲がっています。そこで、次の段階としては、膝を伸ばした状態で足を同時に交互に動かしていきます。
このとき、浮かさない側の足は、床面に押し付けるようにしておくことでより独立した運動になります。
脳卒中片麻痺者の方においては、膝を伸ばした状態で股関節を持ち上げると、多くの方は膝が曲がってしまいます。
このような状態では、片足における分離運動がまだ不十分なので、まずは片足の運動において膝を伸ばしたまま股関節を曲げる(持ち上げる)ようにトレーニングを行う必要があります。
さらに難易度の高いトレーニングとしては、以下のようなものがあります。
言葉で言うと、一方の足で蹴っておき、一方の足で曲げ伸ばしをするというトレーニングです。
これを自主トレとして行うとすると、壁を利用する必要があります。
図のように、一方の足は壁を蹴り続け、もう一方の足は空間で保持しながら曲げ伸ばしを行います。
このトレーニングでは、空間で麻痺側下肢を保持しながら曲げ伸ばしを行うだけの分離性と筋出力や、両足に注意を分配する能力が高く必要になります。
また、空間での自転車漕ぎ様の運動も負荷が高く、独立した運動を促すのに最適です。
どのようなトレーニングにせよ、運動機能の改善に従って自分の状態に適したメニューを取り入れることが大切になります。
そのためにも、担当の療法士と相談しながら、どのようなことに困難さがあり、どのような動きを改善していきたいのかを常に共有していけるようにする必要があります。
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足首の動きは歩くときに非常に重要な役割を果たします。
足首には反る(背屈)、曲げる(底屈)、小指側に体重をかける(内反)、親指側に体重をかける(外反)があります。
たとえば、運動麻痺により足首を反ることができないと、そのまま歩いていると足の先が引っかかってしまい、転倒してしまうことが考えられます。
また、足首を曲げることは、足を振り出すときの前への推進力にもつながります。
脳卒中片麻痺者では、しばしば「内反尖足」と呼ばれる状態が生じ、そのために歩くことに困難さが生じます。
このような場合、足首に装具をつけ、足首を固定することでしっかりと地面に足が接地できるようにしています。
ミラーセラピーとは、簡単に言うと、鏡を見ながら運動をおこなうことです。
ただ、鏡は自分の真ん中に置き、麻痺側の足の動きは目で見ることはありません。
鏡には、自分の健康な側の足が映るのですが、それを見ることで、あたかも麻痺側の足が動いているように錯覚させています。
これにより、麻痺していない側の足が正常に動いているように視覚的な錯覚を作り出すことができます。
ミラーセラピーでは、足首の運動をイメージすることにより神経系の活動が高まることや、視覚からのフィードバックにより、ミラーニューロンと呼ばれる、運動の観察をすることで活動が高まる神経系のシステムが関与しているとされています。
足首の運動をイメージすると、運動に関する脳の部位に、実際に運動した際と似た脳血流が起こるとされています。
ミラーニューロンは運動のイメージや運動の観察により、実際に運動した際と似た脳の活動が起こるとされています。
脳卒中片麻痺者で重度の運動麻痺があると、足が動かない状況では、目から「自分の意思で自由に動いている」というフィードバックを受けることがなくなってしまいます。
この状態が続くと、「学習された麻痺」というような状態に陥ります。
ミラーセラピーでは、鏡像から、「麻痺側の足が動いている」という情報が得られるため、運動意欲も得られ、トレーニングを続けることにもつながります。
このことは、「学習された麻痺」の状態を防ぐことにつながります。
学習性不使用については以下の記事を参照してください。
脳卒中片麻痺者の学習性不使用が生じる理由と、麻痺が悪くなる理由!
ミラーセラピーは元々、切断者の幻肢痛治療として考案されたもので、その後運動麻痺の治療への応用が報告されました。
メリットはその簡便さにあり、値段の高い機器を必要とせず、どの施設(環境)でも導入しやすく、自主トレーニングとしても行えることにあります。
ミラーセラピーは、重度の運動麻痺にも適応することができ、場所あまりとることがないので、例えば病院の自室におおいてもトレーニングとして導入することができます。
ミラーセラピーは、発症後間も無く(急性期〜回復期)だけでなく、慢性期(一般的に発症後6ヶ月以上)においても効果があるとの報告があります。
足のミラーセラピーでは、鏡を使用します。
指に対するミラーセラピーは、小さい鏡でも大丈夫ですが、足のミラーセラピーでは大きな鏡が必要です。
家庭では姿見鏡を用いるのが良いと思います。
図のように、麻痺していない側の足が鏡に映るように、自分の真ん中(股の中心)に鏡を設置します。
麻痺している側の足は見ないようにし、鏡を覗き込むようにしながら、足首を反る運動(背屈)を行います。
ミラーセラピーでは、まだ確固たる根拠があるわけではないので、回数や動かし方などは文献によってバラバラです。
しかし、麻痺の回復を促すには、動かす量も重要であることから、数はこなしたほうが良いかもしれません。
例えば、30分間、200回などと設定して行います。
ミラーセラピーを行うことで、目から「自分の麻痺側の足が自由に動いている」という情報(錯覚の)が脳に伝わるため、「学習された麻痺」を防ぐことにつながります。
少しでも麻痺側の足首の動きが出現してきたら、足首の運動を繰り返すことで、筋肉の収縮力を高めれるようにします。
足首の動きが全範囲にわたり動かせるようになれば、抵抗や負荷をかえるなどして、筋力強化を図っていくことが重要です。
足首の動きが回復してきたら、日常生活でいかに使用していくかが大切です。
これにより回復の程度が異なってくると言われています。
足首の動きにより、足首がある程度固定できれば、靴下を履く際に履きやすくなります。
また、靴を履く際にも履きやすくなるでしょう。
担当の療法士とともに使用場面を考えていくことで、幅が広がると思います。
ミラーセラピーだけでなく、他の自主トレーニングも同時並行的に行い、回復に合わせて日常生活場面で使用していきましょう。
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正常歩行と片麻痺歩行の違いについて、簡単に説明をしていきます。
正常歩行では、スムーズで力強く歩くためには、固定する足と動く足の関係が非常に大切になってきます。
右足が地面に着いて、全体重をしっかりと支持できていると、左足を前に振り出すことが可能です。
また逆に左足が地面について、全体重をしっかりと支持できていると、右足を前に振り出すことが可能になります。
一方、片麻痺歩行では、地面を支持する際に麻痺側の足である場合、しっかりと体重を支持できないため逆足をうまく振り出せず、すぐに足が着いてしまう現象がみられます。
逆に、健康な側(健側)の足が地面を支持する場合、麻痺側の足は振り出しやすくなります。
脳卒中片麻痺の杖歩行と杖なし歩行を後方から見て比較すると、杖歩行では左右の揺れ幅が小さく、杖なし歩行では左右の揺れ幅が大きいことがよく観察されます。
このような場合、杖なし歩行の方が「歩行が不安定」であるという判断になります。
よく、脳卒中片麻痺の歩行では「ぶん回し歩行」が特徴的であるといわれます。
このぶん回し歩行は、下肢を前に振り出すために、体幹の回旋動作を利用したものになります。
杖なし歩行の場合、体幹の回旋を妨げないように、健側の腕を側方、後方にすることにより効率の良い回転を実現しています。
杖歩行の場合、健側の腕は杖を持っているため、杖を前方に出します。
そのため体幹の回旋は制限されることになり、ぶん回し歩行が行いにくくなります。
このような理由で、杖歩行と杖なし歩行の左右の揺れ幅に差が生じます。
杖歩行では、「安定性のある歩行」が獲得できます。
一方、杖なし歩行では不安定ではあるが健側の手が使えたり、荷物を持ちやすいというような利点もあります。
どちらが正解かは、その方のライフスタイルや、安全性、疲れやすさや効率性、実用性の視点で総合的に判断していく必要があります。
歩行能力を確認する意味では、杖なし歩行を行っている方にも、杖や平行棒での歩行の中で、麻痺側の足をしっかりと前に振り出せているかを確認することも必要かと考えられます。
もちろん麻痺している足の動きを良くする訓練も大切になります。
先ほど杖歩行では、体幹の回旋が行いにくいため、ぶん回し歩行が行いにくいと述べました。
このときに、麻痺していない足の位置を「やや外側」に出すことでぶん回しが行いやすくなります。逆に、足を内側に出すとぶん回しは行いにくくなります。
杖をつく位置も重要で、杖を外側に出せばぶん回しが行いやすく、逆に杖を内側に出せばぶん回しは行いにくくなります。
自主練習では、以上の2点を注意して杖歩行練習を行うことで、安定した中でもスムーズに足が出しやすい歩行獲得の近道となります。
環境的に許されるのであれば、床に2本の線を引いて(テープなどで)、行う方法が目で確認しながら行えるため有効です。
2本の線のうち、自分に近い内側の線に麻痺していない足を合わせ、外側の線には杖を合わすようにします。
このように、自己修正できる環境を用意することでより効果的な自主練習が行えます。
なお、ぶん回し歩行を推奨しているわけではなく、あくまでも安全性、効率性、実用性を兼ね備えた歩行を、担当のセラピストと相談しながら行ってください。
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脳卒中片麻痺者の歩行に必要な筋力として、まずは股関節周囲筋の筋力が挙げられます。
麻痺側下肢の振り出した後、体重を前方移動するためには、麻痺側股関節伸展筋(特に大臀筋)の筋活動が必要になります。麻痺側下肢での立脚がしっかりしていないと、非麻痺側下肢の振り出しが不十分になります。
また、麻痺側下肢の足底設置直後の体重支持では大腿四頭筋や中臀筋の筋活動が必要になります。
これらは、椅子からの立ち上がり訓練により鍛えることが可能です。必要に応じて手すりを使用し、ゆっくり立ち上がりゆっくり着座することを意識しながら行います。
1セット10回で、1日10セットを目安に行います。
中等度以上の運動麻痺がある者では、歩行では装具や杖を使用して行うことが多いですが、このような対象者が維持期において体力や運動能力を維持していくためには、1日1時間、5000歩程度の歩数が必要とされています。
これは、この程度が最も適した有酸素運動になるとされているためです。
ある調査では、慢性期の脳卒中片麻痺者で、T字杖と下肢装具を使用して屋外歩行しているBrs-stageⅢ、Ⅳの者の日常生活での歩数が平均3600歩だとしており、5000歩というのは十分に達成できる歩数と考えられます。
T字杖では、杖を把持した場合の手関節の不安定性があり、歩行も不安定になってしまうという例もあります。
長期のT字杖使用では、手根管に持続的な荷重や圧迫がおこり、手根管症候群による成虫神経麻痺が起こる可能性も否定できません。
ノルディックポールはグリップ部分がスキーのストックと同じ形をしていて、手のひら全体で把持でき、手根管の圧迫や体重負荷が少なく、親指でトップを押さえることにより杖の動きのコントロールがしやすくなります。
歩行時の杖の不安定性を解消でき、手根管への負担も小さいこと、歩幅や歩行速度の向上、姿勢改善、有酸素運動効率の改善など、メリットが大きくなります。
腕を大きく振ることで、体幹筋の活動も促され、全身運動となり、有酸素運動が効率よく行えます。
ノルディックポールでの歩行について、高齢健常男性では、
通常の歩行と比較して、酸素摂取量 が23%増え、心拍数も4%有意に増えたこと、また、ノルディックポールを使用したときの心理的負担は通常歩行と同程度であったこと、等が報告されている。
高橋 秀寿ら「片麻痺による歩行障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.7
とあります。
また、慢性期脳卒中片麻痺者においては、
片手ノルディックポール使用による健側の腕振りによって、健側の上肢、肩甲帯、体幹筋を活発に使用するので、歩幅の増加や、姿勢の安定が得られる利点がある。
さらに、酸素摂取量の改善が予測される。
実際、慢性期の脳卒中患者に6週間、週5回、1日30分のトレーニングで、同様にトレッドミル歩行訓練をやった場合と比較して、ノルディックポール使用群では、the timed up and go test、6分間歩行テスト、改訂バーセルインデックスが有意に改善したと報告されている。
高橋 秀寿ら「片麻痺による歩行障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.7
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高齢者と若年者の歩容を比べると、歩き方に差があることがわかります。
まず姿勢ですが、高齢者は首から腰にかけて背骨が曲がった姿勢をとりやすくなります。
また腕の振りも若年者と比べると小さくなります。下肢筋力も低下しており、そのために歩幅が小さくなったり、つま先があまり上がらずにつまづきやすくなってしまいます。
足のアーチも崩れやすく、足が地面についた時の衝撃がうまく吸収できなくなることで痛みが生じやすくなります。
転倒、転落の5割は在宅で発生しており、そのうち4割は履物が転落、転倒の原因と言われています。
よく屋内ではスリッパ、屋外ではつっかけという組み合わせを聞きますが、これでは転倒の、転落のリスクを高めてしまっていることになります。
屋内ではルームシューズ、屋外では靴という組み合わせにするだけでもリスクは下がります。
スリッパは踵部分を覆う所がありません。
そのため、スリッパは脱げやすく、足を床にするように歩くため段差などにつまづきやすくなります。
ルームシューズは踵をお覆う部分があり、脱げにくく、足の上がりもよいためつまづきににくなります。
足に合わない靴を長時間使用することで、足には様々な症状が出現する可能性があります。
魚の目、たこ、靴ずれ、外反母趾、ハンマートゥ、陥入爪などが代表的です。
①つま先
靴のつま先が少し上がっていることで、足運びがスムーズとなり、つまづきにくくなります。
足先から靴の先までは1㎝程度余裕があると良いです。この幅が小さすぎると痛みの原因となり、大きすぎると歩きにくくなります。
②履き口
つま先まで開くタイプのものや、伸縮性のある素材を使用した靴は履きやすくなります。
③サイズ
足のサイズが左右で違う場合に左右それぞれのサイズで購入できるもの、足の状態に合わせてソールの高さ、バンドの長さを調整・変更できるものがあります。
いろいろな条件を挙げましたが、最後に試し履きをしてください。
自分の感覚で歩きやすいか、つまづきにくくないか、足の運びがスムーズになるかなどの視点で確認することが大切になります。
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腹臥位on elbow(パピーポジション)の意義とリハビリでのトレーニング!
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