認知症の評価からアプローチにおいては、問題点の捉え方、目標設定、問題行動の原因、不安の解消、残存能力、治療における注意点などを考慮する必要があります。今回、認知症における作業療法の評価やアプローチについてまとめていきたいと思います。
目次
認知症の評価とリハビリテーションアプローチ!効果測定できるリハを目指して!
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松下 太「最重度認知症におけるQOLとは一感覚刺激療法を通してー」四條畷学園大学 リハビリテーション学部紀要 第3号2007辻村 弘美ら「認知症高齢者のおだやかスケールの開発」
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認知症の種類による機能障害の違いを把握しておく
アルツハイマー型認知症と機能障害
アルツハイマー型認知症の初期に見られる機能障害
・もの忘れ
・判断力の低下
・時間と場所の見当識障害
・失名詞
・感情面の変化(アパシー、悲壮感、抑うつ気分)
アルツハイマー型認知症の初期では、物忘れや判断力、見当識障害により不安も出て来やすい時期になります。
これが、不安や幻覚、妄想、徘徊などに後につながってしまうことがあるため、できるだけ不安を取り除けるようなアプローチをしていくことが大切になります。
人の名前は覚えにくいですが、顔の認知はよいことが特徴です。
そのため、いいケアをしている人は覚えられやすく、また呼ばれやすかったりします。
ケアの際はなんとなくでもよいのでいいイメージを残せるようにしておくと、なじみの人となり安心感を与えることにつながります。
コミュニケーション面では話の中で単語が出て来にくいことがあります。
感情面では、日常のことに対する無関心や意欲の低下、抑うつ気分などが出現することがあります。
アルツハイマー型認知症の中期に見られる機能障害
・短期記憶、長期記憶障害
・観念失行
・観念運動失行
・失語症(錯誤、失名詞、理解力低下)
・失認
・不穏
・空間関係の障害
短期記憶や長期記憶が障害されると、さっきまでしていたことや、少し前にしていたことも忘れてしまうため、より不安が高まりやすくなってしまいます。
また、ケアの面では例えばご飯を食べたばかりなのに食べていないという方に、「さっき食べたでしょ」などとコミュニケーションをとると、食べた体験を忘れてしまっているので怒ってしまい、感情的に不安定になってしまいます。
そのような場合、あらかじめご飯を2回分に分けておくなど対処法を考えておくのがよいでしょう。
アルツハイマー型認知症の中期では、行動的な障害も出現する時期です。
動作の手順を忘れてしまったり、道具の操作が不器用になることがあります。
最初の動作の誘導をスムーズに行うことで、そのまま動作遂行できることもあります。
コミュニケーション面では言いたいことが伝えられなくなったり、理解力も低下していくため、ストレスがたまったり易怒的になったりすることもあるでしょう。
あらかじめ本人の伝えたいことを把握しておき、対応したり、本人が安心できるキーワードを把握しておくことで、安心感を与えられるようにすることが大切です。
アルツハイマー型認知症の後期に見られる機能障害
・知的機能の低下
・運動障害(固縮、痙縮)
・言語障害(反響言語(おうむ返し)、保続、発生・発語器官の運動障害、無言症)
・推論や抽象化、判断力の重度の障害
・人格変化
・失禁
アルツハイマー型認知症の後期では精神・身体的な機能障害がより重度となります。
コミュニケーション面では意思疎通を図れないことも多くなります。
そのため、これまでの経過から本人の行動や情動を把握しておき、適切なケアができるようにしていきます。
失禁はアルツハイマー型中期から見られ始めますが、後期ではそれが常にみられるようになります。
最終的には寝たきりの生活に移行していきます。
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脳血管性認知症の特徴と観察される機能障害!
脳血管性認知症でみられる機能障害
脳血管性認知症の診断基準からすると、
・記憶障害やその他の認知機能(見当識、注意力、言語能力、視空間機能、計算、行動能力、運動統御、抽象思考、判断力)障害
・脳血管障害による局在徴候(半身不全麻痺、中枢性顔面神経麻痺、バビンスキー徴候、感覚障害、半盲、構音障害)
がみられます。
また、脳血管性認知症が確定ではないが、見込みがある症状として、
・歩行障害が初期から出現
・ふらつきや頻発する原因不明の転倒
・泌尿器科疾患ではない尿失禁などの泌尿器科的な症状
・仮性球麻痺
・性格と情緒の変化、自発性低下、抑うつ、感情失禁、精神運動の不活性化、行動能力の障害など
が挙げられます。
脳血管性認知症とコミュニケーション
前途しましたが、脳血管性認知症では、損傷を受けた部位によっては仮性球麻痺が起こります。
仮性球麻痺では構音障害を呈するので、コミュニケーションのとりにくさがある場合があります。
このあたりは、失語症によるコミュニケーション障害なのか、構音障害によるコミュニケーション障害なのかを判別する必要があります。
脳血管性認知症の特徴として、日内変動や時間帯による変動がみられるため、コミュニケーション能力に違いがみられることもあります。
脳血管性認知症の行動における特徴
脳血管性認知症では、自分の能力に関する認知はしっかりとしていることが多く、そのためにできない事を多く感じることもしばしばあります。
それにより、チャレンジするようなことをためらったり、自ら行動を起こすことを苦手に感じる方もいます。
コミュニケーション能力の低下から、周囲とのコミュニケーションをとることをためらう方もいるかもしれません。
そのため、対象者の性格や病前の様子などの情報収集を行い、対象者の行動がどのような要因からそうなっているのかを評価していく必要があります。
できないと感じることに対しては、少しのことでもよいのでできるというように感じてもらうような、自己効力感を高めるようなアプローチをしていく必要もあるでしょう。
日内変動や時間帯による変動により、反応性の悪さや気分状態の変化なども起こることをあらかじめ把握しておくと、病状の理解につなげることができます。
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前頭側頭型認知症(ピック病)における機能障害の理解!
前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴
前頭側頭型認知症(ピック病)は、アルツハイマー型認知症と比較して、発症年齢は若いとされています。
CTやMRI検査では前頭葉や側頭葉の萎縮が認められ、脳血流の検査では前頭葉や側頭葉で血流低下が認められます。
前頭側頭型認知症(ピック病)は、ある程度進行するまでは記憶や視空間認知、日常生活そのものに問題は生じないとされています。
病識の欠如、無関心、自発性の低下、被影響性の亢進、注意の転導性亢進・維持困難、脱抑制、常同行動、食行動異常が見られやすいともされています。
前頭側頭型認知症(ピック病)の初期に見られる機能障害
前頭側頭型認知症(ピック病)の初期に見られやすい機能障害は以下のようなことが挙げられます。
・人格変化
・感情面の変化(恐怖感の喪失、自発性の低下(アパシー))
・判断力の障害
・社会的に不適切な行動
・言語障害(失名詞、回りくどい表現)
前頭側頭型認知症(ピック病)では、初期では記憶障害はみられにくいため、不適切なケアが、スタッフとの関係性のとりにくさにつながることがあります。
自発性の低下では、意欲低下や趣味への興味がなくなるなどがみられます。
社会的に不適切な行動としては、脱抑制(幼稚な言動や浪費など)、固執・常同性(同じ事を言う(保続)、同じ道を歩かないと気が済まない、特定のものしか食べない、異物を口に入れるなど)がみられます。
前頭側頭型認知症(ピック病)の中・後期に見られる機能障害
中期
・失語症(理解力の低下)
後期
・知的能力の低下
・記憶力の低下
・視空間における能力障害
・言語障害(無言症)
・錐体外路症状
・失禁
前頭側頭型認知症(ピック病)では、記憶障害や視空間認知の障害は後期にみられます。
錐体外路症状では、安静時振戦、筋肉のこわばり、緩慢な動作、バランス維持の困難、歩行困難などといったことがみられます。
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知っておきたい認知症、認知症のBPSDに対する薬物療法
認知症の薬物療法における注意点
認知症に対する薬物療法による効果においては、アルツハイマー型認知症でしか確立されていないとされています。
睡眠薬や抗不安薬、抗精神病薬、抗コリン薬などにより、認知症の症状が悪化する場合もあり、高齢者では他の合併症治療での複数薬剤の使用もあり、副作用には十分注意しておく必要があります。
アルツハイマー型認知症に対する薬物療法
アルツハイマー型認知症に使用される薬物としては、商品名言うと、アリセプト®、レミニール®、イクセロン®、リバスタッチ®、メマリー®があります。
アリセプト®は軽度〜重度の方に使用され、作用はコリンエステラーぜ阻害薬となります。
メマリー®との併用は可能ですが、他との併用はできません。副作用として吐き気、嘔吐・食欲不振、下痢などがあります。
レミニール®は軽度〜中等度の方に使用され、作用はNMDA受容体拮抗薬です。
副作用として吐き気・嘔吐・食欲不振などがあります。アリセプト®に比べて長期的な効果が期待できるとされています。
イクセロン®、リバスタッチはパッチ薬(500円玉程度の大きさ)で、日付を書くこともでき、服薬管理を行いやすいという特徴があります。
副作用には皮膚のかぶれ、吐き気・嘔吐などがあります。
メマリー®は中等度〜重度の方に使用され、アリセプトと併用することで進行を5年程度引き延ばせることが可能だとされています。
副作用には頭痛、めまい、便秘、体重減少などがあります。
認知症治療薬の開始時期が早くなることは、介護負担の軽減や施設入所までの期間が延長される等の利点があります。
認知機能低下を示す可能性のある薬剤
ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤 | ハルシオン:認知機能悪化やせん妄 |
抗うつ薬(三環系、四環系抗うつ薬) | 抗コリン作用による認知機能悪化 |
抗パーキンソン薬 | L-dopa、シンメトレル:幻覚・せん妄 エフピー:中枢神経系刺激作用 アーテン:認知機能悪化 |
抗不整脈剤・ジギタリス製剤 | リスモダン、ノルペース:認知機能悪化 ジギタリス薬:せん妄、見当識障害 |
抗コリン作用の強い抗ヒスタミン剤 | アレルゲン、レスタミン、アタラックス、ペリアクチン、ヒベルナ、ポララミンなど |
抗けいれん薬 | フェノバルビタール、アレビアチン、テグレトール |
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認知症と認知機能検査
MMSEとHDS-Rの対比と実施上の注意点
MMSEとHDS-Rの共通点と相違点
MMSE | HDS-R | |
見当識(時間、場所) | ◯ | ◯ |
記憶 3単語(直後、遅延再生) 5物品記銘 | ◯
| ◯ ◯ |
計算 100から順に7を引く | ◯ 5回まで | ◯ 2回まで |
数唱 | ◯ | |
語想起 | ◯ | |
言語検査 | ◯ 呼称、復唱、理解 読み、書字 | |
模写 | ◯ |
両者は見当識、記憶、注意集中、計算をみる検査項目が含まれています。
HDS-Rでは動作を要する項目がないことと、野菜の語想起課題がある点が特徴的です。また3単語の遅延再生に6点の配点があり、近時記憶への負荷が大きいことが伺えます。
両者とも30点満点で採点し、HDS-Rは20点以下を明らかな認知症としており、MMSEでは24点以上を健常人としています。
MMSEの成績は教育歴に左右されると言われていますが、日本では6年間の義務教育が行われている事から、より高得点を境界とすべきだと言われています。
健常人32名(平均年齢68.8歳(SD 6.4)、範囲56〜79;教育歴11.8年(SD 3.0)、範囲8〜21)に実施した結果では、MMSEの平均29.1(SD1.1)、範囲27〜30とかなり高い値が得られた。したがってMMSEは明らかな異常と判断できる
高次脳機能障害学 第2版 P240
検査の結果(得点)だけに注目するのではなく、障害が明らかな項目に注目して詳細に検査、評価することが必要です。
例えば、3単語の遅延再生において1つでも出てこない場合、前向性健忘を念頭に置き三宅式記銘力検査などを行うことが推奨されます。
MMSEについて以下のようなことも言われています。
認知機能障害のある患者の83.8%,アルツハイマー型認知症患者の95.8%が23点以下,健常者の93.3%が24点以上の成績を示したことから,23/24点をカットオフ値とすることが望ましい と報告している(森ほか,1985). そのカットオフ値の感度は83%,特異度は93% であり,高い精度を有する検査であるといえる.
運動による脳の制御 P104
このカットオフ値は学歴や職業歴に影響を受けるとされており、高学歴者においては初期認知症を見逃すこともあります。
教育歴の少ない者においては計算や読み書きなどの成績不良により認知症と診断される傾向が強くなります。
認知症の軽度もしくは初期の方では感度が低く、 20点以上の認知症群に対しては感度が50%程度まで低下してしまうとの報告があります。
実施にあたっては年齢、教育年数、生活状況に関する情報の評価も含めた総合的な判断が求められます。
MMSEとHDS-R実施上の注意点
実施の際、特に注意のいる項目について説明していきます。
場所の見当識:通常は、現在いる「病院、県、市町村、階、地方」ですが、住む地域、施設によって置き換えが可能で、5つ実施すればよいです。
3単語即時再生:
採点するのは1回目のみです。遅延再生のための記憶の登録として3つとも復唱できない場合、5回まで単語の提示と復唱を繰り返すことができます。
計算:
まず、「100から7を繰り返し引いてください。私が「終わり」と言うまで、続けて、引き算した結果から、さらに7を引くことを繰り返してください。」という教示を与える。もう少し噛み砕いた言い方でも良いが、計算を始めたら、「それから7を引いてください」と言ってはならず、必要があれば「続けてください/繰り返してください」程度の促しのみを行う。
HDS-Rでは100ー7の答えに対して「それからまた7を引くといくつですか?」と言って良いが、MMSEでは言ってはならない。そのため、MMSEとHDS-Rを合わせた形で同時に実施することはできない。高次脳機能障害学 第2版 P241
全く正答できない場合を除いて、途中で間違えても5回実施します。
採点について、答えを間違えても、次の引き算が正しければ、その答えには1点を与えます。例えば、100ー7=93(1点)→90(0点)→83点(1点)…というようになります。
3段階命令:
全ての命令を言い終えてから行ってもらいます。
模写:
採点は「五角形が2つ、重なった部分が4つの辺からなる(潰れた)四角形になるようになっていたら1点を与える」という基準で行います。
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HDS-Rの概要、実施上の注意点と結果の解釈
HDS-Rの概要
HDS-Rは年齢、見当識、3つの言葉の記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、野菜の名前の列挙(語の流暢性)、5つの物品記銘などの9項目からなり、最高得点は30点で、認知症のスクリーニング検査として使用されています。
HDS-Rには動作性検査(図形模写のような項目)が含まれておらず、本人の生年月日を把握していれば、他に情報がなくても検査を実施できるメリットがあります。
実施上の注意点
導入:いきなり検査を開始せず、世間話などをしてリラックスした状態で始めます。また「最近物忘れはきになったりしませんか?」などと問い掛けながら導入していきます。
年齢:満年齢を正確に言えると1点で、2年までの誤差は正当とみなします。これは、数え年で答える方もいて、誕生日を迎えているかで年齢に差が出ることがあるためです。生年月日を言えただけでは0点になります。
日時の見当識:何年何月何日何曜日を続けて聞いてもよいし、別々に聞いても構いません。逆から聞いた方が正当する場合もあります。それぞれに対し正当すれば1点となり、年は西暦でも年号でも構いません。
場所の見当識:病院名や施設名、住所は正確でなくてもよく、今いる場所がどのような所なのかを答えることができれば構いません。ヒントを与える場合、「家ですか」「デイサービスですか」「公民館ですか」などと言い回しを変えても構いません。
3つの言葉の記銘:正当が出ない場合、採点後に3つの言葉を覚えてもらい、3回以上繰り返しても覚えられない場合は打ち切り、遅延再生の際に覚えられなかった言葉を抜いて検査します(2つしか覚えられなかった場合、遅延再生では2つ思い出してもらう)。
計算:「100引く7はいくつですか」「それからまた7を引くといくつですか」というように順に聞いていきます。最初の答えが間違っていればそこで中止します。MMSEの計算の項目とは質問の仕方が異なるため注意が必要です。ワーキングメモリの検査であるため、質問の中に前の計算の答えを言ってはいけません。
数字の逆唱:開始前に、練習問題を入れるとよいです。「数字を反対から言ってみてください。1、2、3を反対から言うと?」のように聞きます。3桁で失敗したら打ち切ります。
3つの言葉の想起:ヒントは1つずつ提示します。すぐにヒントを与えず、「他にもありましたね」と待つ姿勢も必要です。
5つの物品記銘:品物はなんでもよいですが、本人に馴染みのあるもので、かつ相互関係のないものとします。どの物品から思い出しても構いません。
野菜の名前の列挙(後の流暢性):重複した答えが出てきても、そのまま記録し、採点の際に減点していきます。10秒待っても次が出てこない場合、打ち切ります。
終了後:答えられなかった事が多い場合、嫌な思いをすることがあるため、終了後には「疲れていませんか?」といった声かけや、野菜の話など(料理など)をし、嫌な気分のまま終了することがないようにします。
結果の解釈
30点満点中21点以上を認知症の疑いなし、20点以下を疑いありとした場合、感度は0.93、特異度は0.86と高くなります。
重症度の分類は行いませんが、重症度別の平均点が示されています。
非認知症 :24.27±3.91
軽度 :19.10±5.04
中等度 :15.43±3.68
やや高度 :10.73±5.40
非常に重度:4.0±2.62
カットオフ値を20/21とした場合に.感度は93%と特異度は86%であり, MMSE と比較しても認知症の弁別力は高いとされる(加藤ほか,1991).
運動による脳の制御 P105
認知症が中等度に進行し記銘力が低下した者では、5物品の記銘と即時再生課題がの得点低下により、MMSEよりも得点が低めになることが多くあります。
聴覚提示される単語の記銘に対して,物品 は目前に視覚提示されるため. 記銘に動員される感覚様式が異なり,聴力が低下し た高齢者では. 単語の再生よりも物品の再生で成績が回復する場合がある.
運動による脳の制御 P105
MMSEでは聴覚提示の項目が多く、聴力低下が成績低下につながることがあります。
HDS-Rでは視空間認知の評価がないため、補助検査が必要となります。
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MoCA
MoCAの概要
MoCAは約10分で実施することができる軽度認知機能低下のスクリーニング検査です。
様々な認知機能(注意・集中、実行機能、記憶、言語、視空間認知、概念的思考、計算、見当識)を評価していきます。
MoCAの検査項目と実施上の注意点
①Trail Making
数字からひらがなへ順番に線を結ぶ課題です。Trail Making TestBの形式をとっています。
この項目では認知の変換、課題の切り替え、注意の切り替えを評価することが可能です。
検査では速度は見ませんが、2つの反応パターンの交互切り替えと、2つの系列の順番がどこまで進んでいるかを保持しておくことが、課題の処理速度には必要になります。
②視空間認知(立方体)
3次元の立方体を正確に書き写していきます。模写のポイントは、3次元になっているか、すべての線があるか、余計な線がないか、線の並行関係が保たれて、長さが類似しているかです。
③視空間認知
時計を描き、指定された時間を指すように針を描きます。
輪郭(丸い時計)、数字(正しい順番、正しい位置)、針(長針と短針)が採点ポイントになります。
④命名
動物の名前を答えます。
⑤記憶
単語の即時記憶を評価します。
⑥注意(数字の順唱と逆唱)
5つの数字の順唱と3つの数字の逆唱、ビジランス(覚醒度)、計算(シリアル7)を評価します。
⑦復唱
2つの文章をそれぞれ正確に復唱します。採点には関係しませんが、復唱可能な長さ、音韻性錯誤、構音の誤りを見ることも言語的な視点では大切になります。
⑧語想起
1分間で指定されたひらがなで始まる言葉を答えてもらいます。
11個以上答えられた場合を正常としています。
⑨抽象的思考
単語のペアに共通するものを表す言葉を答えてもらいます。
FAB(前頭葉機能検査)においても問われる内容です。
⑩遅延再生
⑤で覚えた単語を再生してもらいます。
覚える段階(符号化)で失敗している場合には、手がかりを与えても再生できません。この場合、記憶の前段階の注意に問題がある可能性があります。日常生活上の影響では、周囲の音が気になり覚えることを覚えられなかったり、テレビを見ながら鍵を置いたらどこに置いたかわからなくなるなどが見られるようになります。
手がかりで再生できる場合、覚えていることを頭の中で検索できないことが考えられます。
⑪見当識
日付、場所を正確に答えてもらいます。
結果の解釈
各項目の得点の合計を算出します(最高30点)。
教育年数が12年以下の場合、1点を加えます。合計得点が26点以上であれば正常範囲(25点以下で認知機能低下あり)となります。
MoCAはMMSEと比較して糖尿病患者の認知機能障害を見つけることに有用と言われています。
この検査を元に、さらなる詳細な検査を行っていくことも必要になります。
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NMスケール
NMスケールの概要
NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)は家事・身辺処理、関心や意欲・交流、会話、記名・記憶、見当識の5項目について、それぞれ7段階(0〜10点)で評定する観察式の評価方法になります。
合計点により認知症の程度を示すことができ、認知症の有無のスクリーニングテストとしても利用可能です。
NMスケールは行動観察による評価のため対象者に拒否されることはなく、日常生活での実際的な能力や状態を把握することができます。
認知症の進行による言語での意思疎通困難な方や、視聴覚障害者、運動障害がある場合でも日常生活上での精神状態の評価をすることができます。
NMスケールは専門家でなくても評価することができ、短時間で実施できることが特徴です。
N-ADLとの併用で、日常生活上での高齢者の総合能力を把握することができます。
NMスケールの使用方法
各項目の各区分の状態像が評価表にあり、日常生活の観察や家族、介護者からの情報により各項目ごとにどの区分に当てはまるかを評価していきます。
5項目の合計点がNMスケールの評価点となります。
正常の基準については、日常生活の年齢相応の活動性・自立性が維持されてる状態で、10点となります。ごく軽度の記憶力低下や積極性の低下がみられるものが境界で9点となります。
軽度知的機能低下では7点、中等度知的機能低下では5点、重度では3点、1点、0点があり、0点は活動性や反応性が欠如した最重度の状態となります。
精神状態に変動がある場合、中間的な評価点欄にチェックをし、変動の激しい場合は精神症状・異常行動の欄に記入します。
結果の解釈
5項目の合計点で判定し、
正常 50〜48点
境界 47〜43点
軽度認知症 42〜31点
中等度認知症 30〜17点
重度認知症 16〜0点
となります。
寝たきり(N-ADLで歩行・起座が1点以下)の場合、会話、記名・記憶、見当識の3項目の合計点で暫定評価を行います。
その場合、
正常 30〜28点
境界 27〜25点
軽度認知症 24〜19点
中等度認知症 18〜10点
重度認知症 9点以下
となります。
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N式精神機能検査
N式精神機能検査の概要
N式精神機能検査は記憶、見当識、計算、概念構成、図形模写などの12項目(13の課題)からなります。
動作性の設問が多いこと、認知症の重症度判定基準が示されていることが特徴です。
所要時間は10〜15分程度です。
N式精神機能検査の各項目とどの機能を評価しているか
設問A:年齢(満もしくはかぞえ)を聞き、時の見当識および自己に関する基本認識が評価されます。
設問B:日付を聞き、時の見当識が評価されます。
設問C:指(薬指)の名前(患者の指を触りながら)を聞き、自己の身体認知や言葉の理解が評価されます。
設問D:片手をグー、もう一方をパーとして左右同じにならないように繰り返し、運動メロディといい、言語理解と運動系の障害が評価されます。
設問E:時計に示された時間を聞き、空間認知、数の概念、時間の概念が評価されます。
設問F:果物の名前を数多く言わせ、思考の柔軟性と語の流暢性が評価されます。
設問G:設問Jで文章の遅延再生をさせるための刺激提示で、設問G・Jは文章理解と聴覚性言語性近時記憶が評価されます。
設問H:計算力と注意・集中力が評価されます。
設問I:立方体透視図の模写で、視空間構成能力が評価されます。
設問K:数字の逆唱で、聴覚性言語性即時記憶と注意・集中力が評価されます。
設問L:文章の書き取りで、聴覚性言語性即時記憶、意味記憶、視覚的空間構成機能、運動機能などが評価されます。
設問M:視覚提示された文章の読み上げで、読字能力や発話能力などの言語機能が評価されます。
採点方法と結果の解釈
採点には集計表を用い、100点満点で算出します。例えば、設問J(物語再生)での粗点が1であれば5点、素点が2であれば10点とします。
得点により認知症の重症度分類を5段階で評価します。
正常:95点以上
境界:94〜85点
軽度認知症:84〜61点
中等度認知症:60〜33点
重度認知症:32点以下
となります。
85点以上を認知症の疑いなし、84点以下で認知症の疑いありとした場合に、感度0.95、特異度0.79とされています。
基準値は文献により異なっており、集計表の点数も違いがあります。
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認知症の精神機能評価:MENFISの概要と評価方法、結果の解釈
MENFIS(Mental Function Impairment Scale)の概要
MENFISは、対象者の状況について、主たる介護者から情報を得て、認知症者の精神機能の障害度について評価するものです。
MENFISでは、
・認知機能障害
・動機付け機能障害
・感情機能障害
を認知症の中核症状と捉え、この3つの領域で13項目からなっています。
MENFISの評価方法
MEFISでは、最近2週間の対象者の状態について評価していきます。
手続きは、まず介護者から患者の家族歴、既往歴、現病歴、生活史や日常生活の情報を入手する。
これらの情報に基づいて、患者との面接結果を評価するため、介護者からの情報の信頼性が重要になる。
状態の日内変動が目立つ例で、繰り返し評価を行う場合には可能な限り同時刻に面接を実施するようにする。
介護者と患者に対する面接結果より得られた情報を総合的に判断し、「まったく障害なし」から「完全な障害」まで7段階で重症度を評定する。
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_110006992408.pdf?id=ART0008904318
7段階の各評価としては、
0:まったく障害なし
1
2:少し障害あり
3
4:かなり障害あり
5
6:完全な障害
となっています。
評価用紙には、各質問項目における評価基準が記載されています。
13の質問項目は、
認知機能障害:
1.場所の見当識障害
2.時間の見当識障害
3.最近の記憶の障害
4.昔の記憶の障害
5.会話理解の障害
6.意思表示の障害
7.判断の障害
動機づけ機能障害:
8.自発性の障害
9.興味・関心の障害
10.気力の障害
感情機能障害:
11.感情表現の多様性の障害
12.感情表現の安定性の障害
13.感情表現の適切性の障害
MENFIS(Mental Function Impairment Scale)の結果の解釈
MENFISの得点範囲は、0〜78点で、得点が高いほど精神機能障害が重度であることを表しています。
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認知症者と時計描画テスト
時計描画テストとは
時計描画テストは、簡単に説明すると、指示された時間の時計を描く検査です。
具体的には、円を描き、そこに時計の文字盤の数字を全部書き、10時10分を表すように書いてもらいます。
採点方法は描かれた時計に対し、
全体像
・外周円が整っている
・円の大きさが適切である
数字
・1~12のみを書く
・算用数字を用いる
・順序が正しい
・用紙を回転せずに書く
・位置が正しい
・円のなかにある
針
・2 本の針を有する
・適切に時を指す
・適切に分を指す
・分針の方が長い
・余計な印がない
・2本の針が結合する
中心点
・中心が設定されている
の、15項目(各1点)で採点します。
時計描画テストは、BITにおいても採用されており、半側空間無視の有無を判断する課題としても用いられています。
時計描画テストでは何が評価できるのか
時計描画テストでは、以下のようなことが評価できるとされています。
・理解
・プランニング
・視覚記憶と図形イメージの再構成
・視空間機能
・運動プログラムと実行
・数字の認識
・抽象概念
・集中力(注意力)
・長期記憶と情報再生
・視知覚と視覚運動能力
・同時処理
・実行機能
これらのことから、時計描画テストは、主に前頭葉機能を反映していることがわかります。
認知機能低下の方ではどのような異常が現れるのか
認知機能低下がみられる方では、時計描画テストにおいてどのような異常が現れるのでしょうか。
健常者と認知機能低下がみられる方の境界域では、例えば
・数値配置のバランス(計画性)が悪く、時間も不正確
・10時と聞いて、10時ちょうどに描いた後に長針を修正する
・数値配置のバランス(計画性)が悪く、短針が10時ちょうどを指す
などがみられます。
認知機能低下がみられる方では、
・数字の配置に計画性が無く、
短針長針が逆になる
針が文字盤の中心から出ていない
・時計の概念に問題がある(反時計回りで数字が配置されているなど)
がみられます。
時計描画テストでみられるエラーの原因は何か
まず、時計の概念について理解ができていない場合を考えていきます。
このような時にみられるエラーは、前途しましたが、「反時計回りで数字が配置されている」「短針長針が逆になる」「針が文字盤の中心から出ていない」などがあります。
時計の概念理解の問題では、意味記憶の障害が考えられます。
「時間が不正確」な場合、時刻に関する概念(意味記憶の障害)、もしくはある刺激に惹かれる(10時の10に惹かれて長針が不正確になるなど)ことで時間が不正確になるような前頭葉障害が考えられます。
「10分」というのは、時計で表すためには「2」に変換する必要があり、これは意味概念を理解していなければならない課題といえます。
「数字の配置の不適切さ」については、視空間的な障害や計画性の障害が考えられます。
アルツハイマー型認知症者の時計描画テストの結果について、
156人のADのCDT総得点は11.5±3.4点であり,男女 間で有意差はなかった
小長谷陽子他「アルツハイマー病患者における時計描画の特徴 ―量的および質的評価による検討―」臨床神経学 54巻2号(2014:2)
とあります。
認知症の進行段階にみられる症状から考えていくと、認知症の中期にみられる機能障害としては、
・短期記憶、長期記憶障害
・観念失行
・観念運動失行
・失語症(錯誤、失名詞、理解力低下)
・失認
・不穏
・空間関係の障害
があります。
また、認知症の後期にみられる機能障害としては、
・知的機能の低下
・運動障害(固縮、痙縮)
・言語障害(反響言語(おうむ返し)、保続、発生・発語器官の運動障害、無言症)
・推論や抽象化、判断力の重度の障害
・人格変化
・失禁
があります。
これらのことから、認知症の進行によって、時計描画テストに影響を及ぼす機能障害があることがわかります。
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認知症に用いられる神経心理学的検査
認知症とリバーミード行動記憶検査
スクリーニング点合計(12点)のカットオフ値を5/6点に設定した場合,度81.8%,特異度%.2%と高い鑑別力をもつことが報告されている(松井2002).
また,松田らは,軽度のアルツハイマー型認知症患者46名と年齢,育歴をマッチングさせた健常者46名を対象としてRBMTの検査を行い ,13/14をカットオフ値とした標準プロフィール得点で,アルツハイマー型認知症患者の98.8%と健常者の95.7%を,5/6をカットオフ値としたスクリーニング得点で, アルツハイマー型認知症患者の97.8%と健常者の95.7%を正しく分類できたことを示した(松田ほか,2002).
運動による脳の制御 P106
標準プロフィール得点やスクリーニング点は観察での日常生活上の健忘症状の程度と有意に相関しており、日常での記憶の評価に有用だとされています。
詳しくはこちらをご覧ください。
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Rey聴覚性言語学習検査
192名のMCI高齢者を3 年間追跡調査した ところ,RAVLTの試行Ⅰ〜Vの合計点が33以下であった場合には,アルツハイマー型認知症への移行リスクが高かったことが報告されている.
また,認知症のない高齢者116名を2年間追跡し,RAVLTとアルツハイマー型認知症発症の関連性を分析した報告によると,試行VI のスコアが0,または試行VI (干渉後再生)における 忘却単語のパーセンテージ(試行VI-試行V/試行Vx 100)が75%以上の場合にアルツハイマー型認知症の発症リスクが高かったとされる(Estevez-GonZaleZ et al 2003)
運動による脳の制御 P108
信頼性の高い指標は試行I〜Vの合計点、試行Vおよび遅延再生課題の正答数です。
以下の指標は信頼性は劣るものの、 試行I〜VのリストA即時再生では、即時記憶容量を測定可能で、正確な再生単語数から学習曲線を描くことができます。
通常は試行を繰り返すと高齢者でも再生単語数が漸増しますが、アルツハイマー型認知症者では増加がほとんどなく、フラットに近い学習曲線になるとされています。
再生に加え再認課題を行うことにより、記銘の問題なのか、想起の問題なのかを判別します。
単語の想起に問題がある場合、試行VIよりも再認課題の得点が高くなります。
記銘自体に困難がある場合、試行VIと再認課題の正答数は同程度となります。
試行I〜Vの即時再生の成績は加齢に伴い低下しますが、再認課題ではあまり変化はみられません。
このことから、高齢者の場合では記銘力と比べて想起能力低下が問題になりやすいとされています。
詳しくはこちらをご覧ください。
Rey複雑図形検査
中国で行われた年代別平均値と標準偏差を算出した研究では51〜61歳では9点以下,61〜70歳では6点以下,71〜80歳では0点以下をMCIの半定基準としています(教育歴8〜15年)。
この判定基準によるアルツハイマー型認知症への移行率は, 1年あたりで18%であったとされる(Guo et al 2009)
運動による脳の制御 P110
この検査では視覚性記憶だけでなく、視覚認知、視空間構成、運動機能(巧級性)も関係している評価であり、成績低下があった場合、どの要素による成績低下なのか、もしくはこれらの要素の相互作用によるものなのかなど様々なことが考えられ、解釈を複雑にしています。
臨床においても、知覚や視覚運動、巧級性などの要素や、課題への反応の性質について注意する必要があります。
この検査では複雑な言語的教示が必要でなく、被検者は課題内容の理解が容易となるため、言語性記憶検査と比較して教育歴や文化的背景の影響を受けにくいとされています。
Guo らは,ROCFを用いた基準によりMCIを判定したところ,物忘れ外来を受診した対象者のうち27%が該当したが,2年後の再調査ではそのうち55%が健常値を示したことを報告している(Guo et al., 2009) .WMS-RLM (11%)に比較すると,正常へと戻る割合は顕著に高く,ハイリスク判定のための評価指標としての欠点と考えられる.
運動による脳の制御 P110
詳しくはこちらをご覧ください。
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ベントン視覚記銘検査
認知症でない1,425名のBVRTの成績とアルツハイマー型認知症の関連について前向きに調査した研究によると,誤謬数が6以上であった場合,5以下の場合に比較して1-3年以内の発症では5.7倍,3-5年以内では2.1倍,5-10年では1.8倍,10-15年でも1.8倍発症リスクが高かったと報告されており,発症の10年以上前から予測が可能な精度の高い指標であると考えられている(Kawas et al., 2003) .
運動による脳の制御 P111
検査スコアの中で、正確数は全般的成績水準の評価に用いられ、誤謬数は質的分析のために用いられます。
施行A・Bでは刺激図版の提示時間に違いがありますが、どちらも即時記憶課題といえます。
施行D に関しては干渉手続きがなく、間隔も15秒で即時記憶課題といえます。
施行Cは模写課題で、即時記憶を評価はできません。
しかしこの課題では被検者の視空間構成機能や視空間的把握能力の評価は行えます。
この検査では難聴や失語、手指巧緻障害があっても実施が可能で、テストへのモチベーションが低い者でも遂行可能で拒否が少なく、非言語性テストのため教育歴や社会的背景の異なる者に用いることが可能です。
詳しくはこちらをご覧ください。
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認知症と重症度評価
DASC-21の概要と評価方法、結果の解釈
DASC-21の概要
DASC-21は、短時間で認知機能と生活機能の包括的な評価が行えるツーツのひとつです。
DASC-21について、
DASC-21は,原則として,粟田主一先生の研修を受けた専門職が高齢者の「認知機能障害」と「生活障害」を把握し,認知症を検出し,重症度を評価するアセスメントツールとして,適切な内的信頼性と併存的妥当性および弁別的妥当性を有することが証明されています.
とあります。
質問項目には導入のA,B(採点は行いません)と21項目があります。
各質問に対し、4段階で評価します。
IADLの項目が多く、軽度認知障害(MCI)の検出にも優れています。
DASC-21の実施方法と注意点
家族や介護者に質問することで行い、その回答は基本的に採用して構いません。観察により回答との乖離が見られる場合、評価者の判断に従います。
対象者が独居の場合、本人に質問していきます。
質問に対して実際の様子を確認していない場合、家族・介護者からみて行えそうかで判断します。
評価表はこちらから。
このような評価項目を見ていると、認知症者の認知機能、生活機能評価に必要な要素を把握することができます。
結果の解釈
合計点は21点から最高84点となり、31点以上は認知症の可能性ありとなります。
- 合計点が31点以上で,遠隔記憶(項目No.3),場所の見当識(項目No.5),社会的判断力(項目No.9),身体的ADLに関する項目(項目No.16~21)のいずれ「も」が1点または2点の場合は「軽度認知症」の可能性ありと判定する.
- 合計点が31点以上で,遠隔記憶,場所の見当識,社会的判断力,身体的ADLに関する項目のいずれ「か」が3点または4点の場合は「中等度認知症」の可能性ありと判定する.
- 合計点が31点以上で,遠隔記憶,場所の見当識,社会的判断力,身体的ADLに関する項目のいずれ「も」が3点または4点の場合は「重度度認知症」の可能性ありと判定する.
注意点
本評価は認定者が使用できるものであり、eラーニングにて受講可能となっています。
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FAST(Functional Assessment Staging)の概要と結果の解釈
FAST(Functional Assessment Staging)の概要
FASTは、アルツハイマー型認知症の日常生活機能の総合評価から、その重症度を判定することを目的としています。
検査では対象者に対する様々な情報により症状の判定が行われるため、対象者の負担はありません。
軽度認知症では、日常生活での行動の変化が重要な指標になりますが、家族や本人から必ず訴えがあるわけではないため、聴取の際に細かく聞いていく必要があります。
FASTの使用方法
FASTは対象者普段生活上での観察評価や、家族・介護者からの情報により状態を把握していきます。
FASTのstage
1.認知機能の障害なし(正常、主観的および客観的機能低下は認められない)
2.非常に軽度の認知機能低下(年齢相応、物の置き忘れを訴える、喚語困難)
3.軽度の認知機能低下(境界状態、熟練を要する仕事の場面では機能低下が同僚によって認められる。新しい場所に旅行することは困難)
4.中等度の認知機能低下(夕食に客を招く段取りをつけたり、買い物をしたりする程度の仕事でも支障をきたす)
5.やや高度の認知機能低下(介助なしでは適切な洋服を選んで着ることは困難、入浴させるときにもなんとかなだめすかして説得することも必要な時がある)
6.高度の認知機能低下(不適切な着衣、入浴に介助を要す・嫌がる、トイレの水を流せない、尿・便失禁)
7.非常に高度の認知機能低下(最大6語に限定された言語機能の低下、理解できる語彙はただ一つの単語、歩行・着座・笑う能力の喪失、昏迷・昏睡)
結果の解釈
アルツハイマー型認知症について、正常老化を含めた7段階に病期が分類されます。
境界例、軽度例、重度例についての臨床的特徴が詳細に書かれているため、それを参考にしていきます。
stage6、7にはそれぞれ5段階のsubstageがあり、病状の進行に応じた具体例が示されています。
境界例、もしくは軽度認知症の特徴は、職業生活を含めた社会生活で何かしらの困難があることですが、FASTの行動変化の記述例はその把握に参考になります。
重症度の経過と一致しない例もあるため、注意が必要です。
FASTのみでアルツハイマー病の重症度の刑事的変化の評価は難しく、他の検査との併用が必要になります。
追跡調査によると、軽度認知機能低下(境界例)ではstageの期間がおよそ7年で、中等度の認知機能低下(軽度の認知症)ではほぼ2年となります。
FASTを使用することにより、各stageの認知機能低下を示す患者の鑑別診断を行う上で一助となることがあります。巣症状のある限局性の脳病変やうつ病などの疾患との鑑別になります。
うつ病では、境界状態(軽度認知機能低下)から中等度認知症(やや高度の認知機能低下)が認められる可能性があることに注意する必要があります。
また、認知症の経過がFASTで示されている経過と著しく違う場合にも、アルツハイマー型認知症以外の疾患の可能性を考慮する必要があります。
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GBSスケールを用いた認知症評価の概要と使用方法、結果の解釈
GBSスケールの概要
GBSスケールは、認知症の重症度とともに質的な違いも評価することができる尺度になります。
評価の領域は運動機能、知的機能、感情機能、精神症状の4領域で、認知症の量的評価に加え、質的評価のためにも使用できます。
このスケールは認知症の評価には用いることができますが、認知症の診断を目的としたものではありません。
GBSスケールは定量的評価(知的機能の評価を中心とするもの:認知症の診断やスクリーニングに有効)と、定性的評価(行動の評価を中心とするもの:認知症状のプロフィールや類型を知るのに有効)の両側面を含んだものになります。
簡単に評価でき、対象者は特別な努力は必要ありません。
時間制限もなく、視覚的課題は避けていることが特徴です。
GBSスケールの使用方法
対象者の状態を詳しく把握しているスタッフが評価を行います。
知的機能の項目については対象者と対話形式で得られた答えを段階的に評価します。
運動機能、感情機能、認知症に共通なその他の症状については、行動観察で評価していきます。
運動機能(6項目)、知的機能(11項目)、感情機能(3項目)、認知症に共通なその他の症状(6項目)の計24項目からなっています。
軽度の認知症の評価や薬効やリハビリテーション成果の継時的評価の場合、同じ評価者が行う、また事前に評価の練習を行い、評価者間でのばらつきを小さくしておくことが大切になります。
繰り返し評価する場合、毎日同じ時間に評価を行います。
評価用紙はこちらからダウンロード可能です。
採点方法と結果の解釈
各項目の設問に対し、0(正常)から6(最重度)までの7段階でチェックしていきます。
0、2、4、6の4段階における採点基準があり、この4段階に該当しない各段階の中間の場合には、1、3、5の3段階があります。
失語などにより評価不可能な項目(時間に関する見当識障害、冗慢さ(表現に締まりがなくて無駄が多い状態)、感情不安定)において検査不能な場合、9と採点されます。
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CDR(Clinical Dementia Rating)の概要、使用方法と判定方法、結果の解釈
CDRの概要
CDRは臨床的な認知症の重症度を評価することを目的としています。
この評価方法では、対象者の協力が得られない場合でも、認知症にみられる臨床症状を把握、評価することで重症度の判定が可能になります。
CDRの使用方法
対象者本人への面接または対象者の日常生活を把握している家族もしくは介護者からのできる限り詳しい情報をもとに、6項目(記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家庭状況及び趣味、介護状況)それぞれについて5段階(健康、認知症の疑い、軽度認知症、中等度認知症、重度認知症)の重症度で評価します。
各項目はできるだけ独立して評価するようにします。
これらの総合から、健康(CDR0)、認知症の疑い(CDR0.5)、軽度認知症(CDR1)、中等度認知症(CDR2)、高度認知症(CDR3)に評定します。
判定方法と結果の解釈
6つの項目が全て同じ評定レベルの場合、そのレベルでの判定(CDR0〜3)となります。
判定には記憶障害の程度を基準にしており、記憶障害以外の少なくとも3項目が記憶障害と同程度であれば、CDRは記憶障害の程度に相当します。
記憶以外の3項目以上が記憶障害のレベルよりも重症のレベルであれば、3つ以上の項目の障害レベルで示されるCDRとなり、記憶障害以外の3項目以上が記憶障害のレベルよりも軽度であれば、3つ以上の項目の障害レベルで示されるCDRとなります。
記憶以外の3つの項目が記憶障害レベルよりも軽度で、2項目が重度の場合、記憶障害のレベルでCDRを判定します。
記憶の障害レベルが0.5のとき、ほかの少なくとも3つの項目が1かそれ以上であれば(この場合には介護状況の項目は考慮しない)CDRは1となる。
記憶障害のレベルが0.5であればCDRが0になることはない。
0.5あるいは1のどちらかとなる。
記憶障害のレベルが0であり、ほかの2つ以上の項目の障害レベルが1であればCDRは0.5となる。
高齢者のための知的機能検査の手引き P68
認知症の疑い(CDR0.5)では、軽度のうつ状態もしくはごく軽度のアルツハイマー型認知症と考えられる例が存在しますが、日常生活に支障をきたすほどではありません。
6つの項目の合計得点(0〜18点)を算出することで、数量的な評価も可能となります。
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高齢者用多元観察尺度(MOSES)の概要と評価方法、結果の解釈
高齢者用多元観察尺度(MOSES)の概要
高齢者用多元観察尺度(Multidimensional Observation Scale for Elderly Subjects:MOSES)は、観察によりADL、精神、行動面を評価する評価尺度です。
評価項目は5領域で40項目から構成されています。
主なカテゴリーとして、セルフケア、失見当、抑うつ、怒り、引きこもりがあります。
各項目に対し、1週間の日中の行動について当てはまる選択肢を選んでいきます。
評価者に制限はなく、スタッフであれば誰でも評価することが可能です。
評価項目に対して、
・正常/問題なし
・軽度の障害
・中等度の障害
・重度の障害
として判定します。
高齢者用多元観察尺度(MOSES)の評価項目
セルフケア
1.着替え
2.入浴
3.身繕い
4.失禁
5.トイレの使用
6.移動能力
7.ベッドの利用
8.柵やベルトの使用
失見当
9.コミュニケーション
10.発話
11.屋内での見当識
12.職員に対する見当識
13.場所に対する見当識
14.時間の見当識
15.最近の出来事の記憶
16.重要な過去の出来事の記憶
抑うつ
17.悲哀/抑うつ状態
18.悲哀/抑うつ的訴え
19.抑うつ的発言
20.心配/不安状態
21.心配/不安の訴え
22.声を上げて泣く
23.将来に対する悲観
24.自分に対する関心
怒り
25.ケアに対する協力
26.職員の指示に従う
27.イライラ感
28.かんしゃく
29.攻撃的言動(職員)
30.攻撃的言動(他患)
31.攻撃的行為
32.けんかを売る(他患)
引きこもり
33.一人でいることが好きか
34.周りと接触しようとするか
35.接触に対する反応
36.他患との交流
37.日常の出来事に対する関心
38.社会的な出来事に対する関心
39.積極的に動く
40.他患の手伝い
ここに記載されているのは評価項目のみで、評価票には詳細なものが載っていますので、下記の書籍を参考にしてください。
高齢者用多元観察尺度(MOSES)の結果の解釈
高齢者用多元観察尺度(MOSES)では、通常は下位尺度ごとに加算します。
高得点なほど、障害が重度ということを示しています。
評価表については、以下の書籍に掲載されています。
認知症をもつ人への作業療法アプローチ−視点・プロセス・理論
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認知症とニーズの評価
デマンドとニーズ、顕在・潜在ニーズについて
ニーズとは
ニーズとは対象者が本当に必要としている客観的なものをさします。
クライエントが表現・表出した希望が即座にニーズとなるわけではなく、対象者を取り巻く状況、本人の状態や表出された内容の背景、過去から未来に至る対象者の人生や生活について理解・推察できてから、真のニーズを取ることができる。
認知症をもつ人への作業療法アプローチ P46
デマンド(要求)とニーズ(必要性)
セラピストと対象者、または家族とのリハビリの説明と合意の過程においては、デマンド(要求)とニーズ(必要性)の違いを指摘し、その中でセラピストが対象者との関わりを通してニーズを双方が探っていくことが大切になります。
対象者のデマンドを優先してリハビリを開始した場合、対象者の状態や能力がデマンドに対して低い場合は能力の過小評価につながり、精神面に影響を及ぼすことがあります。
このことから、まずは対象者のデマンドを確認し、それが実現可能かどうかを検討していく過程が重要になります。
両者の話し合いにより、ニーズを決定し、合意を得るようにしていくことが基本ですが、場合によっては、対象者の望むことをやってみて、結果の振り返りの中でニーズを検討していくことも必要かと思われます。
顕在ニーズと潜在ニーズ
顕在ニーズとは、
クライエント自身がすでに特定の作業やその背景、つまり行いたい、行わなければならない作業、そしてその理由を本人が具体的に気づいて、他者に表出できるニーズである。
認知症をもつ人への作業療法アプローチ P47
とあります。一方、潜在ニーズとは、
クライエント自身がはっきりと認識していないニーズである。
例えば「自分は認知症で人に迷惑をかけるようになって申し訳ない。何もできなくなった」というように、何にしても拒否する人がいたとする。
このような人が、趣味であった編み物を行うきっかけをもつと、急に意欲をもって取り組み始めるということがありうる。
このような場合に、この人にとっての編み物は潜在ニーズであったと考えられる。
認知症をもつ人への作業療法アプローチ P47
とあります。
潜在ニーズは様々な要因(身体性、精神性)により表出されないことがあり、セラピストは顕在ニーズばかりに注目しやすくなってしまうことがあります。
ニーズは将来の予後予測により意味のある作業が何であるかも変わってきます。
機能面の回復程度がどの程度なのか、対象者の行く予定の施設がどのような所なのか、などです。
作業遂行ニーズと本質的ニーズ
作業遂行ニーズとは、「トイレ」「料理」など、対象者が行わなければならないと考えている重要な意味をもつ活動の希望で、名詞で表現可能なニーズです。
本質的ニーズとは、「面白い」「人の役に立っている」などの、漠然としていますが対象者にとっては意味のある活動を選択する上で動機となるニーズです。
作業遂行ニーズが把握できない場合、本質的ニーズを把握することで作業活動を選択しやすくなる場合があります。
前途した、デマンドでの活動レベルが高いことや、環境的に達成が難しい場合に、対象者が求める活動の本質的なニーズを把握しておくことで、達成可能な活動を選択できることもあります。
昔はスポーツなどで皆と集まり勝負事が好きだったが今は立位保持や歩行が難しい対象者の場合、本質的ニーズは友人と集まるという所属感の欲求や、勝負での達成感が本質的ニーズである可能性があります。この場合、昔行っていたスポーツでなくても、座位で可能な集団を通したレクリレーションでニーズが満たされる可能性があります。
面接による評価
対象者に面接を通して背景となることの聴取は、本質的ニーズを把握するのに役立ちます。方法としては、必要な項目をまとめたシートを使う場合もあれば、自由な話を通して聴取する場合もあります。
具体的な作業活動を探りながら、それがいつから、何をきっかけに、誰と、どうして続けたか、どのようにやっていたかなどの意味や動機を把握することは、本質的ニーズの把握につながります。
作業遂行のニーズでは、カナダ作業遂行測定(COPM)を用いることがあります。
認知症が軽度であれば実施可能な場合があります。家族などの対象者をよく知る人に用いる方法もあります。
興味チェックリストではクローズな質問を通して、「現在している」「してみたい」「興味がある」を答えてもらうことで、作業に対する興味やそれを通して背景を探ることができます。
ADOCというiPadのアプリを用いた作業選択意思決定支援ソフトでは、認知症をもつ方でも視覚的なイラストにより理解しやすくなり、作業遂行ニーズを評価しやすくなります。なお、ADOCはMMSE8点以上でその評価結果に妥当性があるとされています。
絵カード評価法は、70種類の作業カードを「とても重要」「あまり重要でない」「全く重要でない」に分け、意味ある作業を選択していくことに役立ちます。
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COPMの概要、実施方法と意味ある作業の見つけ方のポイント
COPMの概要
COPMは、カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure)の略です。
COPMは作業療法専門の評価法であり、の専門性を活かすために開発されました。
作業療法クライエント中心の実践を行うために使用するツールであり、それはクライエントの言いなりになるという意味ではなく、コミュニケーションを図りながら、への参加を促しながら、その上で表出された対象者の選択を尊重していきます。
作業療法クライエント中心から考えると、日常生活上のどの活動ができて、どの活動ができていないかを決めるのはクライエントになります。
他者から見て満足していると思われても、本人からするとそうは思えない、不満足で実行できていないと思っていることがよくあります。
そのため、本人の思いは本人から聞く必要があります。
COPMを使用する価値として、
COPMを使って、クライエント自身が捉える作業の問題を知ることができます。
作業の問題は、クライエント自身からしか知ることができないのです。
自分が行う作業を出発点として、自分自身を見つめ、自分の問題に取り組み、解決を図るということができれば、自分の人生を自分で作っていくことができます。
作業療法がわかる COPM・AMPSスターティングガイド P11
とあります。
COPMの実施手順
COPMは4段階に分かれます。
第一段階:重要な作業の探索
第二段階:優先順位の決定(10段階で重要度評定)
第三段階:これから取り組む作業の決定と遂行度と満足度の評定
第四段階:遂行度と満足度の評価
「重要な作業の探索」では、以下のように尋ねます。
「作業療法では、◯◯さんにとって必要な作業をしていただくことになります。そのために、どんな作業をしていくか決めていきたいので、色々と話を聞かせて下さい」などと尋ねます。
「優先順位の決定」では、「重要な作業の探索」において出てきた作業を10段階で重要性を評価することになります。
なお、「10」を最も重要、「1」を全く重要でないとして、評価をしていきます。
重要性を評価するなかで、対象者自身が何を優先的に取り組んでいきたいかを整理することにもつながるでしょう。
「これから取り組む作業の決定と遂行度と満足度の評定」では、いくつかの作業の候補のなかから、対象者とセラピストが協業して取り組んでいく作業を決定し、その作業の現在における遂行度と満足度を評価していきます。
遂行度では、「10」をとても上手にできると思う、「1」を全くできないと思うとして評価をしていきます。
満足度では、「10」をとても満足している、「1」を全く満足していないとして評価をしていきます。
遂行度、満足度の各作業における点数を合計し、それぞれ課題数で除する(割る)と、遂行スコアと満足スコアが示されます。
「遂行度と満足度の評価」では作業療法アプローチを終えて、または中間で遂行度と満足度を再評価します。
COPM実施のポイント
COPMを実施するには、少しコツがあります。
それぞれ対象者によってコミュニケーション能力や認知機能も異なるため、柔軟に対応していく姿勢が求められます。
「やってみたいことはありますか」「楽しみにしている、していたことはありますか」「できなくてこまっていることはありますか」などと質問を変えながら対象者にとって意味のある作業を探索していかなければなりません。
また、話を進めるなかで対象者が自分を見つめ直すことにもつながり、重要な作業を考えるきっかけにもなります。
趣味や楽しみの話から、対象者がどのようなことに価値観を置いているか、何を大切に考えているかを知ることもできるかもしれません。
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認知症高齢者の絵カード評価法(APCD)を用いたニーズの評価
認知症高齢者の絵カード評価法(APCD)とは
APCDは、OTの概念的実践モデルの1つである人間作業モデルに基づく作業適応障害の改善のために、個人の価値、役割、能力の自己認識などを取り入れ、適応的な作業を促進し、パターン化するといった概念を理論的基盤としている。
事例でわかる人間作業モデル P191
APCDは日本で開発された評価法で、作業療法士が対象者と共に70枚の絵カードを3カテゴリー(「とても重要である」「あまり重要でない」「まったく重要でない」)に分けるものです。
絵カードの種類は高齢者が実際に行っている日常生活上の作業をもとにして作成されています。
使用方法と使用の意義
APCDは絵カードを用いていることから作業に対するイメージが浮かびやすくなり、抽象的な作業を思い浮かべる事が苦手な方でも、生活における重要で意味のある作業を明らかにされやすくなることが期待されます。
使用方法は、絵カードを1枚ずつ読み上げていき、対象者は70枚の絵カードを「とても重要である」「あまり重要でない」「まったく重要でない」に分けてもらいます。
各作業に対する質問や対象者が理解できていない様子を感じた場合には、作業療法士はそれを説明して、作業に対する理解を深めてもらいます。
絵カードを通して対象者が語ったことから、対象者が体験してきた、または体験している作業をもとにした生活を把握することが可能になります。
このことから、絵カードの分類で終わるだけではなく、対象者の言葉の中から、潜在ニーズを含めて把握していくことが大切になります。
BPSDと作業適応障害
人間作業モデルでは、BPSDを作業適応障害として捉えています。
認知症の方は、記憶障害や思考・判断力低下、失語などの中核症状により、意味ある作業に基づく生活ができていなかったり、他者に作業ニーズを伝えることができないことがあります。
作業ニーズが満たされないことで、不安や焦燥が生じ、BPSDが生じてしまうことにつながります。
これは、マズローの欲求段階からも、捉えることが可能と思われます。
認知症高齢者のBPSDはクライアントの作業適応障害の状態であるととらえることができる。
そのため、OTRが認知症高齢者のBPSDを理解して作業適応を促進するためには、クライアントの作業と作業的生活を理解することが必要である。
事例でわかる人間作業モデル P206
APCDを用いて作業に対する価値観や思いを語ってもらうことで、BPSD改善の方策を見つけることが可能になることが考えられます。
作業ニーズの把握により、BPSDの原因と関係性を分析し、作業ニーズを満たす作業遂行を援助することでBPSDの改善につががることが考えられます。
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認知症のADL評価(評価バッテリー)
リハビリテーションの成果を示すには、数値化できる客観的な評価方法が必要になります。
N式老年者用日常生活活動動作能力評価(N-ADL)の概要と結果の解釈
N式老年者用日常生活活動動作能力評価(N-ADL)の概要
N-ADLは歩行・起座、生活圏、着脱衣・入浴、摂食、排泄の5項目の自立度に対して、7段階の評価尺度を用いて重症度分類を行うものです。
「しているADL」の観察を基本に行います。
NMスケールとの併用により、日常生活っでの能力の総合評価が可能になります。
評価の内容
0点 | 1点 | 3点 | 5点 | 7点 | 9点 | 10点 | |
歩行・起座 | 寝たきり(座位不能) | 寝たきり(座位可能) | 寝たり、起きたり、手押し車などの支えがいる | つたい歩き 階段昇降不能 | 杖歩行 階段昇降困難 | 短時間の独歩可能 | 正常 |
生活圏 | 寝床上(寝たきり) | 寝床周辺 | 室内 | 屋内 | 屋外 | 近隣 | 正常 |
着脱衣 入浴 | 全面介助 特殊浴槽入浴 | ほぼ全面介助(指示に多少従える) 全面介助入浴 | 着衣困難、脱衣も部分介助要する 入浴も部分介助を多く要する | 脱衣可能、着衣は部分介助を要する 自分で部分的に洗える | 遅くて、ときに不正確 頭髪・足など洗えない | ほぼ自立、やや遅い 体は洗えるが洗髪に介助を要する | 正常 |
摂食 | 経口摂取不能 | 経口全面介助 | 介助を多く要する(途中でやめる、全部細かく刻む必要あり) | 部分介助を要する(食べにくいものをきざむ必要あり) | 配膳を整えてもらうとほぼ自立 | ほぼ自立 | 正常 |
排泄 | 常時、大小便失禁(尿意・便意が認められない) | 常時、大小便失禁(尿意・便意があり、失禁後不快感を示す) | 失禁することが多い(尿意・便意を伝えること可能、常時おむつ) | ときどき失禁する(気をくばって介助すれば、ほとんど失禁しない) | ポータブルトイレ・しびん使用、後始末不十分 | トイレで可能、後始末は不十分なことがある | 正常 |
結果の解釈
それぞれの自立度について、重症度分類が行われます。
10点 | 正常 | 自立して日常生活が営める |
9点 | 境界 | 自立して日常生活を営むことが困難になりはじめた状態 |
7点 | 軽度 | 日常生活に軽度の介助または観察を要する |
5点・3点 | 中等度 | 日常生活に部分介助を要する |
1点・0点 | 重度 | 全面介助を要する(0点は活動性や反応性が全く失われた最重度の状態) |
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SCR-DEの概要と評価方法、結果の解釈
SCR-DEの概要
SCR-DE(Self care rating for dementia, extended)は、認知症者のADL評価のツールです。
その特徴として、遂行機能障害を反映させているという点が挙げられます。
元々は、SCR-Dという評価尺度が先に作成されていました。
基本的 ADL ( basic ADL : BADL )に含まれる更衣,整容 などのセルフケア全般から遂行機能障害を評価するため, dementia 患者のためのセルフケア評価尺度( Self ─ care rating for dementia : SCR ─ D )を作成
佐藤 亜紗美ら「Self ─ care rating for dementia, extended ( SCR ─ DE ) :遂行機能障害を反映した認知症患者のセルフケア障害評価法の妥当性の検討」高次脳機能研究 第 31巻 第2号
SCR-DEは、更衣、入浴、整容、摂食、排泄の項目を評価します。
評価方法としては、主な介護者に対して面接(インタビュー)を行います。
それぞれのADL動作について、開始への声かけが必要か、活動を始めてからは声かけや監視がなくても準備や段取り、遂行を適切に行えるか、活動を遂行するためにはどの程度の頻度で指示や誘導が必要か、活動の工程ごとに介助が必要かなどについて聴取していきます。
聴取内容から、各動作に対して、
0点:自立
1点:開始に激励が必要
2点:適宜指示誘導が必要
3点:1段階ずつの指示誘導が必要
4点:1段階ずつの指示誘導と適宜動作介助が必要
5点:1段階ずつの介助が必要
の6件法にて評価します。
評価項目の中に、「セルフケア全体」というものがありますが、これは例えばトイレに行ってから食事をとり、歯を磨くといったような全体の流れの中でスムーズに活動を遂行していくことができるかということを評価していきます。
なお、「セルフケア全体」の採点は0点〜3点となっています。
SCR-DEの評価方法
評価項目
・更衣(着替え)
・入浴(お風呂)
・整容(洗面・歯磨きなど)
・摂食(食事)
・排泄(トイレ使用)
*トイレを用いない場合は評価項目から除外する
・セルフケア全体
SCR-DEの結果の解釈
各項目の得点が高いほど、動作遂行においての介助(誘導・声かけまたは身体的介助)の必要性が高く、遂行機能障害があると解釈されます。
認知症の方においては、「組織かと順序立ての障害」が見られることがあり、活動の手順や動作の性急さ(タイミングの悪さ)、ペース配分、動作の質(例:早すぎて質が悪い)などに関連します。
このような症状を呈するということを知っておき、各活動においてどの工程のどの部分にどのような手助けが必要なのかを観察し、考えることがリハビリテーションにおいては大切な要素となります。
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DADの概要と評価方法、結果の解釈
DADの概要
DAD(Disability Assessment for Dementia)は介護者にインタビューをすることでADL評価をおこなう評価方法です。
DADは在宅で生活する認知症者(アルツハイマー型認知症)を対象としています。
DADは衛生、着衣、排泄、摂食、食事の用意、電話の使用、外出、金銭管理、服薬、余暇と家事の10領域、40項目から構成されています。
各項目に対して、過去2週間における「した(行った)、しなかった(行わなかった)」を評価します。
各領域において、行動開始、計画、遂行の3つの要素を評価できるようになっています。
DADの評価方法
評価項目
衛生
・自分からシャワーを浴びたりお風呂に入ろうとしたか
・自分からシャワーを浴びたりお風呂に入るためにお湯を入れ、量や温度を調節したか
・自分で体を洗って体を拭いたか
・自分で歯を磨いたり、入れ歯の手入れをしたか
・自分で歯磨き/入れ歯の手入れを適切にしたか
・自分で洗髪や整髪をしようとしたか
・自分で洗髪や整髪を適切にしたか
更衣
・自分で起床時や外出時に服を着替えようとしたか
・自分で天候や色の組み合わせに気を使って適切に服を選んだか
・自分で適切な順番(下着→衣服)で着替えたか
・自分で完全に服を着たか
・自分で完全に服を脱いだか
排泄
・自分から尿意や便意を感じた時にトイレに行こうとしたか
・自分で失敗なしにトイレを使ったか
摂食
・自分から食事を食べようとしたか
・自分で適切な食器や調味料を選んだか
・自分で普通のペース、適切なマナーで食べたか
食事の用意
・自分から簡単な軽い食事を用意しようとしたか
・自分から簡単な軽い食事の献立を考えようとしたか
・自分から簡単な軽い食事を用意をしたか、あるいは料理をしたか
電話をかける
・自分から用事があるときに電話をかけようとしたか
・自分から正しく番号を見つけて電話したか
・電話で適切な会話をしたか
・かかってきた電話の伝言を適切に伝えることができたか
外出
・自分から適切な時間に外に出ようとしましたか
・自分から交通手段、鍵、目的地、天候、必要なお金、買い物などを考えて外出したか
・自分で慣れた場所(徒歩の範囲)であれば迷子にならずに行けたか
・自分でバスや電車などの交通機関を適切に利用できたか
・買い物に出かけたとき、目的の品を買ってきたか
金銭の取り扱い、通信
・自分から金銭の取り扱い(勘定の支払い、貯金、家計)や手紙のやり取り(懸賞の応募、年賀状含む)などに関心を示したか
・自分で勘定の支払いの準備をしたか(財布、お金、クレジットカード)
・自分で、手紙を書くとき、封筒、切手、文房具、住所録などを準備したか
・自分で勘定の支払いやお金をくずすことができたか
服用
・自分から正しい時間に薬を服用しようとしたか
・自分で、正しい用法・用量で薬を服用したか
余暇と家事
・自分から余暇活動に関心を示したり、行おうとしたか
・自分から以前行っていた家事に関心を示したり行おうとしたか
・自分から、以前行っていた家事の段取りをきちんとつけたか
・自分で、以前行っていた家事をきちんとこなしたか
・留守番のとき、訪問客の対応も含めて任せられたか
DADの結果の解釈
DADでは、人生の中で一度も行ったことのない項目については評価項目からは除外します。
その上で、残った項目の得点を分母にして、その率を算出します。
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PSMSの概要と実施方法、結果の解釈
PSMSの概要
PSMSは、高齢者の日常生活の活動性を、施設内での処遇、ケースワーク、スタッフ教育のために評価することを目的として作成された尺度(Langly-Porter Scale)に基づき作成されました。
PSMSは在宅者でも施設入所者に対しても施行可能であり、「排泄」「食事」「着替」「身繕い」「移動能力」「入浴」の6つの基本的生活機能を各5段階で評価し、得点を算出します。
評価項目と評価表
項目 |
A. 排泄 1.排泄では全く介助を要しない 1 2.誘導あるいは後始末に介助が必要、時に(多くても週に1度)失敗がる 0 3.週に1度以上、寝ている間に失禁がある 0 4.週に1度以上、日中に失禁がある 0 5.常に失禁がある 0
B. 食事 1.介助なしで摂取できる 1 2.食事のときに多少の介助が必要、特別な調理法が必要あるいは食事のときに汚したたものを片付けてもらう 0 3.食事に介助が必要であり、食べる時にも散らかってしまう 0 4.常に介助が必要 0 5.自力ではまったく摂取できない 0
C. 着替 1.タンスから適切な服を選んで自分で着替えられる 1 2.多少の服介助で脱ぎ着できる 0 3.服を選んだり、脱ぎ着に手助けが必要 0 4.着替に介助を要するが、本人も協力する 0 5.常に介助が必要であり、着替に拒否的 0
D. 身繕い(身だしなみ、髪や爪の手入れ、洗面など) 2.1人で身繕いできるが髭などは剃ってもらう 0
E. 移動能力 F. 入浴 |
各項目の設問の横数字が得点です。
結果の解釈
それぞれの項目について5段階評価し、合計得点は0〜6点となります。
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IADLを用いた認知症の日常生活行動評価の概要と使用方法
IADLの概要
IADL(Instrumental Activities of Daily Living Scale)は、高齢者の日常生活における活動性を評価する目的に使用されます。
IADLは8項目(電話の使い方、買い物、食事の支援、家事、洗濯、移動・外出、服薬間管理、金銭管理)で構成されています。
男性の場合、食事の支援と洗濯、家事の項目については評価をしません。そのため、女性の得点範囲は0〜8点、男性では0〜5点となります。
情報収集には、対象者の日常生活をよく知る家族や主たる介護者から聞き取りを行うことや、職員による観察評価でも可能です。
各項目3〜5段階の評定があり、できる場合には1点、できない場合には0点とします。
各項目の合計得点を算出します。
IADLの使用方法
情報収集には、対象者の日常生活をよく知る家族や主たる介護者から聞き取りを行うことや、職員による観察評価でも可能です。
各項目3〜5段階の評定があり、できる場合には1点、できない場合には0点とします。
各項目の合計得点を算出します。
IADLの評価項目
項目 *()内は得点 |
A電話の使い方 1自由に電話をかけることができる(1) 2いくつかのよく知っている番号であればかけることができる(1) 3電話で対応できるが電話をかけることができない(1) 4まったく電話を使うことができない(0)B買い物 1一人で買い物ができる(1) 2少額の買い物であれば一人でできる(0) 3だれかが付き添っていれば買い物ができる(0) 4まったく買い物ができない(0)C食事の支援 1人数にあった支度をして必要十分な用意ができる(1) 2材料が用意してあれば食事の支度ができる(0) 3食事をつくることはできるが、人数にあった用意ができない(0) 4他人に支度をしてもらう(0)D家事1力仕事など以外は一人で家事をすることができる(1) 2食事のあとの食器を洗ったり布団を敷くなどの簡単なことはできる(1) 3簡単な家事はできるが、きちんとあるいは清潔に維持できない(1) 4他人の助けがなければ家事をすることができない(1) 5まったく家事をすることができない(0)E洗濯 1一人で洗濯できる(1) 2靴下などの小さなものは洗濯できる(1) 3他人に洗濯してもらう(0)F移動・外出 1自動車を運転したり、電車・バスを利用して出かけることができる(1) 2タクシーを自分で頼んで出かけられるが、電車やバスは利用できない(1) 3付き添いがあれば電車やバスを利用することができる(1) 4付き添われてタクシーや自動車で出かけることができる(1) 5まったく出かけることができない(0)G服薬管理 1きちんとできる(1) 2前もって飲む薬が用意されていれば自分で服薬できる(0) 3自分ではまったく服薬できない(0)H金銭の管理 1自分でできる(家計費、家賃、請求書の支払い、銀行での用事など)(1) 2日常の買い物は管理できるが、大きな買い物や銀行へは付き添いが必要(1) 3金銭を扱うことができない(0) |
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老研式活動能力指標の概要と使用方法、結果の解釈
老研式活動能力指標の概要
老研式活動能力指標は、手段的自立5項目、知的能動性4項目、社会的役割4項目の、家庭内で日常生活を自立して行うために必要な能力を評価する尺度です。
各項目で実際に行っている場合には「はい」を選択し1点となり、13点満点となります。
これらの能力の低下は、認知症による要介護状態発生のリスク因子としての可能性が示唆されています。
また地域での高齢者の生活機能の測定に活用でき、要介護や生活支援の必要性、介入効果の判定などに利用することができます。
1 | バスや電車を使って一人で外出できますか |
2 | 日用品の買い物ができますか |
3 | 自分で食事の用意ができますか |
4 | 請求書の支払いができますか |
5 | 銀行預金・郵便貯金の出し入れが自分でできますか |
6 | 年金などの書類が書けますか |
7 | 新聞を読んでいますか |
8 | 本や雑誌を読んでいますか |
9 | 健康についての記事や番組に関心がありますか |
10 | 友だちの家を訪ねることがありますか |
11 | 家族や友だちの相談にのることがありますか |
12 | 病人を見舞うことができますか |
13 | 若い人に自分から話しかけることがありますか |
老研式活動能力指標の使用方法
老研式活動能力指標は自己記入式の評価ツールであり、知的機能の著しく低下した高齢者や認知症などで自己の状態がが把握できていない者でなければ、調査票への記入を行ってもらいます。
家族などで対象者の日常生活ををよく知る者も回答可能です。
面接にて聴取する場合には、本人や他者による回答であっても,検査者が自己判断で説明の追加や誘導するなどがないように注意する必要があります。
質問表には「いますか」「ありますか」や「できますか」という問いかけが記載されています。
「できますか」という問いかけの場合、できるのであれば本人が現在しているかどうかに関係なく、「はい」となります。
老研式活動能力指標の結果の解釈
以下は性別、年齢別の得点(平均点±標準偏差)となります。
男性 | 女性 | 計 | |||||
65〜69歳 | 11.8±1.9 | 11.8±2.0 | 11.8±2.0 | ||||
70〜74歳 | 11.1±2.8 | 11.0±2.4 | 11.0±2.6 | ||||
75〜79歳 | 10.4±3.2 | 10.5±2.9 | 10.5±3.0 | ||||
80歳〜 | 8.7±4.2 | 7.6±4.2 | 8.0±4.2 | ||||
計 | 11.0±3.0 | 10.6±3.1 | 10.8±3.0 |
特にカットオフ値は定められていません。
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認知症のADL評価(観察による評価)
認知症をもつ方のできる力、わかる力を見極める!動作を分割して分析する!
行動を助ける介入方法は本当に合っていますか?
認知症をもつ方への介入方法が、本当に行動を助ける最適な方法になっているでしょうか。
例えば、薬を一人で飲むことができない方がいるとします。このとき、よく思い浮かぶのは服薬カレンダーを使用して飲み忘れを防ぐという方法があると思います。
服薬カレンダーは、確かにその日に飲む分が分けて入れてあり、視覚的に把握できるので便利です。
服薬カレンダーが有効な場合は、薬を飲む必要性、時間などがわかっているが、飲むべき薬を選ぶのが苦手、薬を取り出すのが苦手などといった場合であると考えます。
薬を飲む必要性がわかっていない、薬を置いている場所がわからない、薬を薬だと認識できないといった場合には服薬カレンダーは不適応になります。
できる力の分析
動作を分析する際に必要なことは、その動作を細かく分けることにあります。
薬を飲む動作であれば、
①薬を選ぶ
②薬を取り出す
③薬を口に運ぶ
④薬を飲むといった工程に分かれます。
この中で、どの工程が、どのくらいできて、どのくらいできないかを分析すると、介入方法のヒントが把握しやすくなります。
薬を選ぶことができない場合、先ほどの服薬カレンダーもそうですし、一度に飲む薬を一緒に包装してもらっておくことも考えられます。また薬の写真などを見ながらであれば選べるかもしれません。
このように、どこまでできて、できない原因はどこにあるのかを分析できれば、どうすれば動作ができるようになるかのヒントが把握しやすくなります。
わかる力の分析
わかる力は、認識力と言い換えることができます。
服薬で考えれば、薬を飲む必要性がわかっているか、薬を置いている場所がわかっているか、薬を飲む時間帯(食後、食前など)がわかっているか、薬を薬だと認識しているかといったことが挙げられます。
薬を置いている場所がわからない場合、その方の記憶力の問題、もしくは視覚的な問題(視力、視空間認知)があるかもしれません。このように考えていけば、分析・考察する要素が増えてくるので、薬を飲めない理由が探りやすくなります。
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認知症の方の観察による作業遂行分析
作業遂行分析の前に!工程と技能の分析
作業遂行分析を行う前には、その動作の工程と技能の分析を行います。
動作の方法、手順は十人十色なのですが、ある程度大まかな工程と技能の分析ができていると、対象者の方に作業遂行の滞りが見られた場合に、遂行を先に進めるための援助が可能になります。歯磨きをする場合の工程と技能の分析について考えていきます。
工程①歯ブラシと歯磨き粉と棚から取る
技能①道具を見つける、手を伸ばす、物をつかむ
工程②歯ブラシに歯磨き粉をつける
技能②適量を判断する、両手でもつ、つかむ
工程③歯全体を順序良く磨く
技能③小刻みに腕を動かす、順序を考える
工程④コップを戸棚から取る
技能④道具を見つける、手を伸ばす、物をつかむ
工程⑤コップに水を入れる
技能⑤蛇口をひねる、水量を判断する
工程⑥うがいをする
技能⑥コップを口まで運ぶ、適量を判断する
工程⑦歯ブラシやコップを洗う
技能⑦両手を使う、水量を判断する
工程⑧道具をしまう
技能⑧道具の場所を見つける、手を伸ばす、つかむ
工程⑨汚れたシンクを拭く
技能⑨汚れに気づく、スムーズに腕を動かす
作業遂行観察のポイント①:工程を順序良く進めているか
作業遂行を完了させるために工程を飛ばしたり、余計な工程が入ったりせずに、順序良く進めているかを観察していきます。
観察のポイントとしては、
・なかなか始まらない ・すぐに手がとまる ・次の工程に移れない
・いつまでも止めない ・別のことをし始める ・隣の人の物に手を出す
・本来の箇所とは違う箇所に作業を施す ・次第にやり方が変わる
・目的に適わない方法で行う ・不適切な順序で行う
認知症をもつ人への作業療法アプローチー視点・プロセス・理論ー P57
が挙げられます。
この要素が見られた場合、作業遂行に時間がかかったり、仕上がりの結果が不十分なものになります。
作業遂行観察のポイント②安全に動作が行えるか
安全に作業遂行するためには、注意力や判断力、また身体機能的な能力が求められます。
事故につながる例として、
・足のつま先が椅子の脚に引っかかる ・歩く際にバランスを崩す
・座る際に臀部が椅子から滑り落ちる ・熱い物を触る ・熱い物をこぼす
・火を消し忘れる ・火の調節をしない ・刃物を使うときに力の調節ができない
・刃物を使うときに、物を固定するほうの手を置く位置が悪い
・嚥下機能が悪いのに一気に食べる ・食べ物でない物を食べる
認知症をもつ人への作業療法アプローチー視点・プロセス・理論ー P57
が挙げられます。
作業遂行観察のポイント③動きの滑らかさ
作業遂行の際の、手足、体の滑らかさを観察していきます。滑らかでない場合、遂行完了に時間がかかったり、努力的になってしまいます。また仕上がりの質も不十分となりやすいです。
観察のポイントとしては
・指の動きが拙劣 ・力加減が不適切 ・力を加える方向が誤っている
・動きが緩慢 ・動きが速すぎる ・物の固定が不十分
・物を持つと手が震える ・立ち座りが困難 ・歩行が不安定
認知症をもつ人への作業療法アプローチー視点・プロセス・理論ー P58
が挙げられます。
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認知症の周辺症状(BPSD)の評価
行動・心理症状(BPSD)の特徴
行動・心理症状(BPSD)とは
行動・心理症状(BPSD)は認知症に伴い出現する行動や心理的な症状をさします。
心理的なものとして、不安、多幸、妄想、幻覚、抑うつなどがあります。また行動面では興奮、夜間行動、易怒性、異常行動、脱抑制などがあります。
行動・心理症状(BPSD)があると、対象者本人のQOLの低下や、介護者の負担を大きくしてしまうことにつながります。
中核症状と行動・心理症状(BPSD)のつながり
認知症の中核障害があると、時間や場所(見当識)がわからくなったり、簡単な計算ができなくなるなど認知機能の低下がみられます。そのような機能低下が影響して、日常生活上が不自由になったり、不安感が大きくなってくると、行動・心理症状(BPSD)が出現することがあります。
また本人の置かれている環境や介護者の対応など、様々な要因が絡み合い行動・心理症状(BPSD)を生じさせる可能性があります。
認知症初期では、「自分は何か病気があるかもしれない」という意識から、不安感の増大や抑うつ症状が現れることがあります。また誤りや失敗を訂正されると怒り出すこともあります。
認知症の重症度と行動・心理症状(BPSD)
軽度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、
活動性・意欲低下
興味関心の低下
抑うつ(気分の落ち込み)
不安感
異常に怒る
抵抗や攻めるような態度
などがあります。
中等度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、
質問を繰り返えす、後追い、突然の叫び声など
徘徊、睡眠障害、幻覚(幻聴、幻視)
脱抑制や攻撃などの不適切行動
などがあります。
重度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、
蹴る、たたくなど介護者への攻撃行動
叫ぶ、うめくなどの非言語的な行動
自宅内を一人で歩けない
などがあります。
BPSDと薬物療法の知識
BPSDに対する薬物療法
BPSDに対しては、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠導入剤などが使用されます。
抗精神病薬(非定型含める)を使用する際には、自傷や他害の恐れがある場合など、薬剤投与によるメリットがデメリットを明らかに上回る場合に限って、適切なインフォームドコンセント(使用目的、他の代替療法がなく、適応する薬物もないこと、副作用の可能性)を行った上で開始する必要があります。
BPSDに対応する抗精神病薬使用ガイドラインにおいても、対応の第一選択は非薬物療法であり、抗精神病薬の使用は適応外使用で、基本的には使用しない姿勢が必要だとされています。
そのため、対象を焦燥、興奮、攻撃性や精神病症状等に限定し、非薬物療法との組み合わせにより多剤投与は行わないことが重要です。
錐体路症状やジスキネジアの出現が少ない薬剤の使用し、副作用(転倒、起立性低血圧、過鎮静)に加え、他の重篤なリスクを家族と共有しておくことが大切になります。
薬剤分類 | 薬剤名 |
抗精神病薬(非定型) | リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ペロスピロン、アリピプラゾール |
抗精神病薬(定型) | ハロペリドール、スルピリド |
ジスキネジア治療薬 | チアプリド |
抗不安薬(睡眠薬) | タンドスピロン、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ブロチゾラム |
抗うつ薬 | セルトラリン、トラゾドン、フルボキサミン、パロキセチン |
気分安定薬 | カルバマゼピン |
コリンエステラーゼ阻害薬 | ドネペジル、リスパダール |
漢方薬 | 抑肝散、抑肝散加陳皮半夏 |
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阿部式BPSDスコアの概要と評価方法、結果の解釈
阿部式BPSDスコアの概要
阿部式BPSDスコアは、認知症の周辺症状を簡易に測定し、その状況把握や治療効果の判定に用いるために開発された自己記入式の評価尺度です。
阿部式BPSDスコアでは、認知症患者において見られるBPSD10項目について、頻度と重症度により0〜9点を配点し、その合計点でBPSDの度合いを判定します。
記入には約1分程度を必要とし、非常に簡便な評価尺度です。
この評価尺度では、Neuropsychiatric Inventory(NPI)との関連があり、MMSEの得点低下に伴いBPSDの増加を認めることから、BPSDスコアとして信頼性が高いものとなっています。
また介護者による評価の信頼性も保たれています。
阿部式BPSDスコアの評価方法
各評価項目に対して、「ほとんどない」「たまにある」「時々ある」「しょっちゅうある」から選択します。
ただし、それぞれの回答に対する点数の配分は異なります。
評価項目
家中や戸外を徘徊して困る
食事やトイレの異常行動がある
幻覚や妄想がある
怒りっぽく、暴言を吐く
昼夜逆転して困る
興奮して大声でわめく
やる気がなく何もしようとしない
落ち込んで雰囲気が暗い
暴力をふるう
いつもイライラしている
評価用紙はこちらから
阿部式BPSDスコアの結果の解釈
各項目の合計点によりBPSDの度合いを判定します。
得点が高いほど、BPSDの度合いが高いことを示しています。
なお、認知症のBPSDの一般的な分類は以下のようになっています。
重症度 | 頻度対応 | 行動症状 | 心理症状 |
グレード1 | 高頻度 対応可能 | 繰り返し訊ねる 付きまとい 罵る、泣き叫ぶ アパシー | |
グレード2 | 中頻度 対応苦慮 | 焦燥、イライラ すぐ怒鳴る 大声で叫ぶ 軽度徘徊、暴言 不潔行為 性的脱抑制 | 妄想 幻覚 誤認 抑うつ 不眠 不安 |
グレード3 | 低頻度 対応困難 | 暴力、不穏 攻撃、高度徘徊 |
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CMAIの概要と評価方法、結果の解釈
CMAIの概要
Cohen-Mansfield Agitation Inventry(CMAI)は、Cohen- Mansfieldらによって開発された、介護者による評価方法です。
CMAIでは、攻撃的行動が11項目、非攻撃的行動が11項目の計22項目から構成されています(国立長寿医療研究センターの認知症・せん妄サポートチームマニュアルの資料では22項目から構成されていました)。
一定期間内の具体的な行動障害の出現頻度を7件法により介護者が評価を行います。
具体的な症状を評価できるため、実施しやすいことが特徴です。
Behave-ADの2つの下位尺度の代替として使用可能だとされています。
CMAIの評価方法
1点:なし
2点:1週間に1回未満
3点:1週間に1ないし2回
4点:1週間に数回以上
5点:1日に1ないし2回
6点:1日に数回以上
7点:1時間に数回以上
攻撃的行動
つばを吐く
悪態をつく・攻撃的発言
たたく(自分をたたく場合も含む)
ける
人や物につかみかかる
押す
奇声を発する
叫ぶ
噛み付く
ひっかく
ものを引き裂く・壊す
非攻撃的行動
あてもなくウロウロする
不適切な着衣・脱衣
常に不当に注意を引いたり、助けを求める
同じ言葉を繰り返す・ひっきりなしに 質問する
別な場所へ行こうとする
不平不満を言う
反抗的言動
物を不適切に取り扱う
物を隠す
何度も同じ行為を繰り返す
落ち着きのなさ
CMAIの評価方法の結果の解釈
攻撃的行動の得点合計は11〜77点、非攻撃的行動の合計は11〜77点で、総合では22〜154点の範囲となります。
得点が高い方がBPSDが高頻度で現れていることを意味しています。
CMAIの評価結果は、リハビリテーション介入の効果検証や、対象者のBPSDの経時的な変化を見ていくことに役立ちます。
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ABIDの概要と評価方法、結果の解釈
ABIDの概要
ABID(Agitation Behaviorin in Dementia Scale)は、BPSDの「興奮」に特化した評価尺度です。
ABIDは「興奮」に対して作業療法などのリハビリテーションアプローチを行った際の、効果判定に用いるために使用することができ、日本語版の妥当性も確認されています。
家族、または介護者に聴取して採点をしていきます。
評価項目は16項目あり、それぞれについて問題行動の頻度の評価(5段階)と、介護者の反応の評価(6段階)を行います。
評価手順と評価項目
施行手順:以下のリストは人々/患者様が時々抱える問題のリストです。
これらの問題のいずれかが過去2 週間以内に起きたならば、教えてください。
もしそうならば,問題が起きたとき、それがどの程度あなたを悩ませたり、動揺させまし たか?問題の頻度とそれへのあなたの反応に関して以下の5 段階または6 段階の評価を用いてください。数字の意味を注意深く読んでください。
問題行動の頻度の評価 | 介護者の反応の評価 |
0=その週に問題行動は生じなかった 1=その週で1~2 回 問題行動は生じた 2=その週で3~6 回 問題行動は生じた 3=毎日またはそれ以上の頻度で問題行動を生じた 9=わからない/当てはまらない | 0=まったく動揺しなかった 1=少しは動揺した 2=中程度に動揺した 3=大変動揺した 4=大変ひどく動揺した 9=わからない/当てはまらない |
評価項目
1他の人に対して,言葉により威嚇あるいは攻撃的であった
2他の人に対して,肉体的に威嚇あるいは攻撃的であった
3患者自身を傷つけた(例:噛み付いたり,つねったりする)
4不適切に大声をあげたり,叫んだりする
5ものを壊す
6適切な援助を受けることを拒む(例:身の回りの世話)
7不適切に自宅から出ようとしたり,出かけてしまう
8言い争う,怒りっぽい,文句をいう
9社会的に不適切な振る舞い(例:大声で攻撃的な話し方をする)
10不適切な性的な振る舞い(例:過剰なほど性的にせまる,公の場での性的な振る舞い)
11落ち着きがない,そわそわする,じっと座っていられない
12心配する,不安がる,恐れる
13容易に興奮したり,いらいらする
14夜中に目覚めて,起きる(トイレに行く以外で)
15患者を苦しませる,誤った信念や妄想(例:誰かに脅かされている,あるいは傷つけられている)
16実際には存在しない人々や物事を見たり,聞いたり,感じたりしてそれに苦しんだりする(例:家の中に見知らぬ男がいる,壁を虫が這っていたりする;幻覚)
結果の解釈
各項目の問題行動の頻度の評価、介護者の反応の評価を点数化し、作業療法などのリハビリテーションアプローチにより、各項目の得点がどのように変化したかを成果として表す際に有効です。
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NPI-Qの概要と評価方法、結果の解釈
NPI-Qの概要
NPI-Q(NPIのアンケート版NPI-Brief Questionnaire Form)は、認知症者のBPSDの頻度、重症度、介護者の負担度を数量化できる評価方法です。
「妄想」「幻覚」「興奮」「うつ」「不安」「多幸」「無関心」「脱抑制」「易怒性」「異常行動」「夜間行動」「食行動」の 計12項目からなっています。
妥当性と信頼性が確認されており、認知症者の精神症状、介護者負担度の評価に有用だとされています。
評価方法
質問に対し、介護者に当てはまるものを選択してもらい、質問紙法にて評価を実施します。
過去1ヶ月以内に各症状が認められた場合に基準に従って評価します。
病前から認められるものが増悪せず、1ヶ月以上前にあったが、過去1ヶ月以内には認められなかた場合は、「0」となります。
「症状の重症度(本人にどれほど影響しているか)」
0:全くなし
1:軽度 症状の存在は感じられるが、はっきりとした変化ではない
2:中等度 症状ははっきりと存在するが、劇的な変化ではない
3:重度 症状は非常に著明であり、劇的な変化を認める
「この症状について介護者等が感じている負担度(介護者等にどれほど影響しているか) 」
0:全くなし
1:ごく軽度 ごく軽く負担には感じるが、処理するのに問題はない
2:軽度 それほど大きな負担ではなく、通常は大きな問題なく処理できる
3:中等度 かなり負担で、時に処理するのが難しい
4:重度 非常に負担で、処理するのが難しい
5:非常に重度あるいは極度 極度に負担で処理できない
評価項目
http://さくらパス.com/images/guide/bpsd.pdf
*日本語版 NPI マニュアル・検査用紙 セットが販売されています。
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結果の解釈
各項目に対し、それぞれの負担度、重症度で評価します。高得点なほど重症度、負担度が大きいことを示ます。
BEHAVE-ADの概要と評価方法、結果の解釈
BEHAVE-ADの概要
BEHAVE-ADは認知症者のBPSDの評価尺度のひとつです。
評価項目は25項目あり、妄想と幻覚に関する項目が充実しています。
BPSDには様々な症状が存在し、BEHAVE-ADの様な項目数が多い評価法を用いることで、BPSDを見逃さずに評価することが可能です。
またBEHAVE-ADで評価を実施することによって、家族に対して現在認められない症状だとしても、今後出現する可能性があることを家族は知り、心理教育的アプローチの一助となる可能性もあります。
家族は、質問されることにより始めて精神症状と知ることがあり、それまでのことを性格と捉え、症状と捉えていないこともあるようです。
また,作業療法アプローチの効果判定においても、点数化して重症度を評価できるため利用できます(作業療法の成果を示すために重要です)。
BEHAVE-ADの評価方法
家族、または介護者に質問をしていくことで評価します。
質問では最近2週間におけるBPSDについて尋ねていきます。
評価項目
A:妄想観念 1.誰かが物を盗んでいるという妄想 0=なし 1=だれかが物を隠しているという妄想 2=誰かが家に侵入して、物を隠したり盗んでいるという妄想
2..ここは自分の家ではないという妄想。
3.配偶者は(介護者)はにせものという妄想
4.見捨てられ妄想 0=なし 1=介護者が電話などしていると、自分を見捨てたり、施設ん入れようとしていると疑う。2=介護者が自分を見捨てたり施設に入れようとしていると言ってなじる。3 =介護者がいますぐにでも自分を見捨てたり、施設に入れようとしていると言って攻撃する。
5.不義妄想 0=なし。1 =配偶者や子どもなど介護者が不実を働いていると確信している。2=配偶者や子どもなど介護者が不実を働いていると怒る。3=配偶者や子どもなど介護者が不実を働いていると暴力をふるう。
6. 猜疑心・妄想 0=なし1=猜疑的(自分で物を隠しておいて、どこに置いたかわから ないときなど)2 =妄想的(訂正困難な猜疑心や、猜疑心に基づいて怒りがみられる状態)3=猜疑心に基づいて暴力をふるう。
7.妄想(上記以外) 0=なし。1 =ありそう2=発言や感情状態から、妄想の存在が明らか 3 =妄想に基づく行動や暴力が認められる |
B幻覚 8. 幻視
0=なし。 1 =対象は不明瞭(あいまい)だが、ありそう。 2 =見える対象は明らかである。 3 =見える対象に向かって、言動や感情の表出がみられる。 9.幻聴 0=なし。1=対象は不明瞭(あいまい)だが、ありそう。2 =聞こえてくる音や声が明らかである。3 =聞こえる音や声に向かって、言動や感情の表質がみられる
10幻嗅 0=なし。1=対象は不明瞭(あいまい)だが、ありそう。2=何のにおいかはっきりしている。3=におってくるものに向かって、言動や感情の表出がみられる。
11幻触 0=なし。 1=対象は不明瞭(あいまい)だが、ありそう。2 =何が触っているかはっきりしている。 3 =聞こえる音や声に向かって、言動や感情の表質がみられる。
12その他の幻覚 0=なし。 1=対象は不明瞭(あいまい)だが、ありそう。2 =対象がはっきりしている。3 =対象に向かって、言動や感情の表出がみられる。 |
C行動障害 13徘徊 0=なし。1=その傾向はあるが、やめさせるほどではない。2 =やめさせる必要がある。3 =やめさせようとすると、それに逆らう言動や感情の表出がみられる。
14無目的な行動 「本人には意味があるかあるかもしれないが、はためには無意味でしかない動作や行為がみられますか?」 0=なし。1=無目的な行動を繰り返す。2=行ったり来たりするような無目的な行動があり、やめさせる必要がある。
15不適切な行動 |
D攻撃性 16暴言 0=なし。1=あり(いつもは使わないような口汚い言葉づかい、ののしり)。2 =あり(怒りを伴う)。3 =あり(怒りが明らかに他人に向けられる)。 |
17威嚇や暴力 「人を脅したり、暴力をふるわれることはありますか?」0=なし。1=威嚇する身振りがある。2=暴力がある。3=激しく暴力をふるう。18不穏 「怒ったような表情や態度、あるいは抵抗などがみられますか?」0=なし。1=あり。2=あり(感情的になっている)。3=あり(感情と動作の両面に現れている)。 |
E日内リズム障害 19睡眠・覚醒の障害 0=なし。1=夜間何度も覚醒する。2 =夜間睡眠が本来の50-75%に短縮。 3=夜間睡眠が本来の50%未満に短縮(日内リズムの完全な障害)。 |
F感情障害 20悲哀 0=なし。1=あり。2=あり(明らかな感情的表出がみられる。3=あり(感情、身振りの両面に現れている。手を握りしめる動作など)。
21抑うつ 0=なし。 1=あり(病的な深みはないが、ときに「死にたい」などという)。2=対象がはっきりしている。 |
G不安および恐怖 22間近な約束や予定に関する不安 0=なし。1=あり。2 =あり(介護者を困らせる)。3 =あり(介護者は耐えがたい)。
23その他の不安 0=なし。 1=あり。2 =あり(介護者を困らせる)。3 =あり(介護者は耐え難い)。
24独りぼっちにされる恐怖 0=なし。 1=あり(その恐怖を訴える)。2=あり(介護の対応が必要)。3=あり(介護者は常に付き添う必要がある)。
25その他の恐怖 0=なし。1=あり(その恐怖を訴える)。2=あり(介護の対応が必要)。3=あり(恐怖のあまり生じる行為をやめさせる必要がある)。 |
全体評価=以上の症状は下記のどれに該当しますか? 0=介護者に全く負担はなく、患者自身にも危険性はない。1=介護者への負担と患者自身への危険性は、軽度である。 |
参考:
Behabioral Pathology in Alzheimer’s Disease Rating Scale (Behave-AD)
結果の解釈
各項目を4段階で評価します、その項目の症状に対する重症度を算出します。
作業療法などのリハビリテーションアプローチにより、各項目の得点がどのように変化したかを成果として表す際にも有効です。
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TBSの概要と評価方法、結果の解釈
TBSの概要
TBS(Troublesome Behavior Scale:問題行動評価尺度)は在宅、病院・施設で生活している認知症者の問題行動を評価するものです。
認知症者に比較的よく観察される問題行動を、介護者が過去1か月間に観察した頻度に基づき5段階評価を行います。質問項目は14のから成り、在宅の対象者と病院・施設の対象者とでは内容が一部異なっています。
TBSは認知症者の行動異常を評価する尺度として、信頼性と妥当性があるとされています。
在宅 | 病院・施設 | |
1. 住居の内外をしきりと歩き回る。住居を出て行ことする | ||
2.食べ物ではないものを口に入れる | ||
3.運転やガス・電気器具の危険な操作 | (−) | |
4.金品を盗られたと責める | ||
5. 言い掛かりや、説明に対する否定・ゆがんだ解決 | ||
6. むやみに物を隠す | ||
7. 無意味な作業(例;衣類・たんす、トイレなどのいたずら) | ||
8. (在宅)家族の団欒・会話の妨害 | (−) | |
(病院・施設)職員の仕事・休憩の妨害 | (−) | |
9. 他人とのトラブル | ||
10. つまらないものを集める | (−) | |
11. 夜半に騒いだり、人を起こす | ||
12. トイレ以外での排泄、便こね(弄便行為) | ||
13. 暴力・破損行為や暴言(介助の際の抵抗は含めない) | ||
14. まわりついたり、同じ質問を繰り返す | ||
15. 大声で叫ぶ・金切り声をあげる | ||
*(−)は回答不要
TBSの評価方法
問題行動評価票の補足説明
1:目的もなく、あるいはしきりと住居の内外を歩き回ったり行き来している状態、いわゆり徘徊、あるいは「帰る」などと住居を出てゆこうとするような状態。
2:石けんや洗剤、その他の食用でないものを口に入れること、それを噛んだり飲み込もうとすること。
3:車やバイクなどを運転したり、しようとすること、ガス・電気器具を誤った方法で使用したり、それらを付けっ放しにすること。
4.現金、通帳、権利書、などが見つからない、誰かが盗んだに違いないなどと主張、責め、追及するような行為。
5.事実に反し、妄想・幻覚や作り話あるいは思い違いなどと思われる迷惑な発言や主張。また、これに対して説明しても、否定したり、ゆがんだ解決をすること。
6.自分や家族の所持品。家庭用品その他を必要もないのに隠したり、しまいこんでしまうこと。
7.本人なりに仕事・作業をしているかもしれないが、迷惑であったり、悪戯やお節介と映る行為。例えばタンスや衣装ケースをいじって衣類を散らかしたり、トイレ用品・台所用品などを台無しにすること。
9.(在宅)家族の団欒や会話、くつろぎなどを妨害するような行為。
(病院・施設)職員の仕事の遂行や休息を妨げる行為。
10.役に立たない物品や腐った食物などを集めること。結果的に盗みとなる行為も含める。
11.夜間、消灯後に物音や大声をたてて他者を安眠させない状態。あるいは他社を起こそうとする行為。
12.大小便をトイレ以外の場所で排泄したり、自分の便に触って衣類や住宅などを汚す行為。
13.日常生活動作の介助場面以外、例えば注意・制止の際あるいは理由がないと思われるような状況でみられる暴力・破損行為、または暴言。
14.介護者に終始つきまとったり、依存しすぎたりする状態。また何度説明しても繰り返し同じことを尋ねること。
15.理由や意味がないと思われる叫び声、金切り声をたてること。
結果の解釈
各項目の採点から、合計点を算出します。
それを作業療法などのリハビリテーションアプローチを行い経時的変化を捉えます。
また、各項目ごとの比較を行うことも可能です。
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DBDスケールの概要と使用方法、結果の解釈
DBDスケールの概要と使用方法
DBDスケール (Dementia Behavior Disturbance Scale)はBaumgartenらによって開発された、行動異常を定量的に評価し、介護者の負担を客観的に評価する方法のひとつです。
認知症者によく認められる行動異常、例えば、 徘徊、興 奮、摂食障害、攻撃性、性的異常等についての28の質問項目から構成されています。
質問前1週間における各行動異の出現頻度を「全くない」「ほとんどない」「ときどきある」「よくある」「常にある」の5段階に分け、0から4点の点数をつけ評価します。
評価点の合計は、 0から最高112点 までであり、 得点が高ければ高いほど、 異常行動の出現頻度が高いことを示しています。
形式は介護者に対する質問表となっており、介護者に対する面接聴取や、施設では介護者に直接記入することも可能です。
DBDスケールの評価項目
評価項目 | 認知症群 | 非認知症群 |
1同じ事を何度も何度も聞く | 2.8±1.5 | 1.3±1.3 |
2よく物をなくしたり、置き場所を間違えたり、隠したりする | 2.7±1.5 | 0.8±1.0 |
3日常的な物事に関心を示さない | 2.9±1.1 | 0.5±1.0 |
4特別な理由がないのに夜中に起きだす | 1.0±1.5 | 0.2±0.7 |
5根拠なしに人に言いがかりをつける | 1.0±1.4 | 0.4±0.9 |
6昼間、寝てばかりいる | 1.5±1.5 | 0.9±1.2 |
7やたらに歩き回る | 0.8±1.2 | 0.1±0.2 |
8同じ動作をいつまでも繰り返す | 1.0±1.4 | 0.2±0.4 |
9口汚くののしる | 0.7±1.2 | 0.4±0.9 |
10場違いあるいは季節に合わない不適切な服装をする | 1.4±1.5 | 0.3±0.7 |
11不適切に泣いたり笑ったりする | 0.6±1.2 | 0.2±0.5 |
12世話をされるのを拒否する | 1.2±1.2 | 0.5±0.9 |
13明らかな理由なしに物を貯めこむ | 0.9±1.3 | 0.1±0.3 |
14落ち着きなくあるいは興奮してやたらに手足を動かす | 0.7±1.1 | 0.1±0.2 |
15引き出しや箪笥(タンス)の中身を全部出してしまう | 1.1±1.4 | 0.1±0.2 |
16夜中に家の中を歩き回る | 0.6±1.2 | 0.1±0.2 |
17家の外に出て行ってしまう | 1.1±1.4 | 0.1±0.2 |
18食事を拒否する | 0.4±0.7 | 0.1±0.3 |
19食べ過ぎる | 1.3±1.5 | 0.5±0.7 |
20尿失禁する | 1.2±1.5 | 0.7±1.3 |
21日中、目的なく屋外や屋内をうろつきまわる | 0.7±1.2 | 0.1±0.2 |
22暴力を振るう(殴る、かみつく、ひっかく、蹴る、唾をはきかける) | 0.4±0.7 | 0.2±0.7 |
23理由もなく金切り声をあげる | 0.3±0.9 | 0.1±0.2 |
24不適切な性的関係を持とうとする | 0.1±0.3 | 0.1±0.2 |
25陰部を露出する | 0.0±0.2 | 0.1±0.2 |
26衣服や器物を壊したりする | 0.2±0.6 | 0.2±0.5 |
27大便を失禁する | 1.1±1.4 | 0.5±1.1 |
28食べ物を投げる | 0.1±0.5 | 0.1±0.2 |
認知症群と非認知症群の得点(平均得点±S.D.)、認知症群の重症度構成は,DSM-III-R分 類で軽度17例、中等度4例、高度6例
評価用紙はこちらから。
結果の解釈
前途したように、最高点は112点であり、得点が高いほど異常行動の出現頻度が高い事を意味しています。
知的機能、身体機能、精神機能の障害をもとに現れる行動異常、特にそれが介護者のストレスの原因になるような状態像の評価、介護者の負担感を知ることが可能です。
DBDスケールは、介護負担を軽減するためのリハビリテーション目標の設定や効果の判定にも用いることが可能です。
DBDスケールでは、行動異常の頻度を評価対象としているため、評価者が対象者に接する時間の長短が結果に影響することが考えられます。また、対象者の行動が評価者によって変化することがないかということも考慮しなければなりません。
そのため、評価者は常に一定にしておく必要があります。
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DBD-13(Dementia Behavior Disturbance Scal短縮版)の概要と評価方法、結果の解釈
DBD-13の概要
DBD-13は、認知症の行動障害尺度のDBDの短縮版です。
評価項目は13項目あり、これは出現頻度が多く、また作業療法などの治療介入に反応して変化が大きい下位項目となっています。
DBD-13は簡便に臨床場面で評価できるものであり、52点満点となっています。(DBDは28項目112点満点)。
短縮版と原版は高い相関関係を有し、介護負担感とも良好な正の相関を認めたとされています。
評価方法
形式は介護者に対する質問表となっており、介護者に対する面接聴取や、施設では介護者に直接記入することも可能です。
各項目に対して、0から4までの評価に従って記入します。
0:全くない 1:ほとんどない 2:ときどきある 3:よくある 4:常にある
1.同じことを何度も何度も聞く
2.よく物をなくしたり、置場所を間違えたり、隠したりしている
3.日常的な物事に関心を示さない
4.特別な理由がないのに夜中起き出す
5.特別な根拠もないのに人に言いがかりをつける
6.昼間、寝てばかりいる
7.やたらに歩き回る
8.同じ動作をいつまでも繰り返す
9.口汚くののしる
10.場違いあるいは季節に合わない不適切な服装をする
11.世話をされるのを拒否する
12.明らかな理由なしに物を貯め込む
13.引き出しやタンスの中身を全部だしてしまう
結果の解釈
最高点は52点であり、得点が高いほど異常行動の出現頻度が高い事を意味しています。
知的機能、身体機能、精神機能の障害をもとに現れる行動異常、特にそれが介護者のストレスの原因になるような状態像の評価、介護者の負担感を知ることが可能です。
DBDスケールは、介護負担を軽減するためのリハビリテーション目標の設定や効果の判定にも用いることが可能です。
DBDスケールでは、行動異常の頻度を評価対象としているため、評価者が対象者に接する時間の長短が結果に影響することが考えられます。
また、対象者の行動が評価者によって変化することがないかということも考慮しなければなりません。
そのため、評価者は常に一定にしておく必要があります。
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ひもときシートの活用
ひもときシートの概要
認知症者のケアを行うために、ひもときシートを活用することがあります。
ひもときシートは、
①援助者としての立場から感じる課題や対応方法
②課題の背景や原因の分析
③認知症者本人の立場から感じる課題や改善策
の3ステップから考えていくことで、ケアのヒントを生み出していこうとするものです。
このシートを活用することで、どのような背景や原因があって対象者がBPSDを生じているのかを、様々な視点から考えていくことに役立てることが可能になります。
特にステップ②の分析では、多くの視点があり、とても参考になるものです。
・病気や薬の副作用の影響、うつやせん妄などの精神症状の影響など
・身体的不調(痛み、便秘、不眠、空腹など)の影響
・精神的苦痛や性格の影響
・感覚過敏の影響
・ケアの関わり方や方法の影響
・環境整備の影響
・援助者が提供する作業が対象者の負担になっていないか、日常の過ごし方の影響
これらが、対象者にとってどのような影響を与えているかを考えていくことが重要になります。
ひもときシートは、こちらからダウンロードしてください。
似たようなことですが、以下のような事も分析の視点になります。
身体的要因の分析の視点
・身体的要因
身体的要因は認知症をもつ人の快、不快に直接的な影響を与えてしまうことになります。
この要因の項目をたくさん知っていると、観察の視点が増えることになります。
・麻痺/拘縮 ・頭痛 ・発熱 ・脱水 ・便秘/下痢 ・空腹/満腹
・眠気 ・痛み ・かゆみ ・しびれ ・むくみ ・のどの渇き ・虫歯
・義歯の不具合 ・白内障 ・難聴 ・薬の作用/副作用 など
”理由を探る”認知症ケア P116
他にも声が聞こえにくい原因として、耳垢がたまっていた。歩くのを嫌がるのが巻き爪があったからなどということもあります。
心理的要因の分析の視点
・心理的要因
感情、情動は一見しただけではわかりませんが、これも認知症の快、不快に影響を与える要因となります。
・不安 ・心配 ・いら立ち ・怒り ・悲しみ ・寂しさ ・心細さ
・困惑 ・後悔 ・焦り ・未練 ・孤独感 ・絶望感 ・虚無感
・喜び ・嬉しさ ・思いやり ・感謝 など
”理由を探る”認知症ケア P120
例えば、寂しさを感じていることから帰宅要求が強まっていることも考えられます。その方の周りの人間関係や、職員の対応なども含め、寂しさがどのような理由でおこっているかを探ることも大切になります。
環境的要因の分析の視点
・環境的要因
環境の良し悪しによって、その方の能力を最大限に発揮できたり、逆に能力を奪ってしまうことにもつながります。
・なじみのある場所 ・使い慣れた道具があるか
・見慣れたものが見えるか
・五感に働きかけるもの(音、明るさ、温度、におい、風通し、など)は適切か
・親しい人がそばにいるか ・人や物が多すぎる など
”理由を探る”認知症ケア P124
個人的要因の分析の視点
・個人的要因
個人的要因も、その方の行動に影響を与えます。価値観は千差万別であり、それぞれの譲れないところ、こだわりなどがあります。
・生活歴(どこで、誰と、どのような暮らしをしてきたか)
・職歴(職種・役職) ・生活習慣(なじんでいる方法、好み、こだわり、など)
・性格 ・問題に直面した時の解決スタイル など
”理由を探る”認知症ケア P128
介護者の要因の分析の視点
・介護者の要因
ケアにかかわるスタッフ、家族の方の言動や行動も、認知症をもつ人の行動に影響を与えます。
・介護者のペースである(本人のペースを考慮しない)
・声かけが早口である ・カタカナ語や専門用語をよく使う
・本人が訴えていることを軽く扱う
・声もかけずにいきなり介助する ・こわばった表情で介助する
”理由を探る”認知症ケア P131
他にも、声かけの仕方も重要な要素になります。
急に立ち上がる方がいた時に「どうされましたか」と声かけするのと、「トイレですか」と思い込みが先走って声かけするのとでは違ってきます。
後者では、本当に困っていたことがあったとしても、ケアする側との信頼関係がとれていなければ本心を聞き出すことができないかもしれません。
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事実と解釈を分けて考える
事実と解釈を同時に行うとどなるか
例として、入浴介助を必要としている認知症をもつ人がいるとします。
その人が「お風呂から出た後に寒くなるからお風呂に入りたくない」という訴えが聞かれたとします。
このとき、事実と解釈を同時に行うと「お風呂に入るのを嫌がって断った」ということになってしまう可能性があります。
事実と解釈を分けて行うとどうなるか
事実だけを抽出すると、「お風呂から出た後に寒くなるからお風呂に入りたくないと言って断ったこと」、「お風呂に入らなかったこと」の2点になります。
「お風呂に入るのを嫌がった」というのは、解釈になります。
事実と解釈を同時に行い、他者に報告するとどうなるか
先ほどの事実と解釈を同時に行った、「お風呂に入るのを嫌がって断った」という事を他者に伝えるとどうなるでしょうか。
「嫌がった」という解釈が入った報告を他者が聞くと、あたかもそれが事実のように感じられます。
つまり次回以降、その人の事を「お風呂に入るのを嫌がる人」というレッテルを貼られるようになってしまいます。
レッテルを貼られると、理由を探る援助の邪魔をしてしまう
一度レッテルを貼られてしまうと、その後の援助に悪影響が出てしまいます。
もし、他の日にその人が「お腹が痛いからお風呂に入りたくない」と言うことがあったとします。
すると、「お風呂に入るのを嫌がる人」というレッテルが貼られているために、お腹が痛いのはお風呂に入らないための嘘の理由(口実)だと解釈されてしまう可能性が高くなります。
改めて、事実と解釈を分けて、他者に報告するとどうなるか
事実と解釈を分けて他者に報告するとどうなるでしょうか。
・「お風呂から出た後に寒くなるからお風呂に入りたくない」と言われた。(事実)
・「それはお風呂に入るのが嫌だというように感じた」(解釈)
・「今日はお腹が痛いと言っていた」(事実)
・「朝食、昼食はしっかり食べれていたので、お風呂に入らないための口実だったのかもしれない」(解釈)というようになります。
事実と解釈を分けるだけで、間違ったレッテルを貼ることはかなり少なくなるのではないかと思われます。
このような考え方が基本姿勢にあると、行動の理由を探りやすくなったり、援助のヒントが得られやすくなります。
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認知症のQOL評価
認知症とQOL評価
認知症は進行性疾患であり、中核症状の治療よりも周辺症状の改善に焦点を当てることになります。
その際、対象者がいかに自分らしく、満足感をもちながら生活を送れているかというようなQOLの視点は非常に大切になります。
重度認知症者では、日常会話が行えなくなっても最後まで残る能力は「微笑み」であり、「微笑み」はQOLの指標となります。
QOL-Dの概要と評価方法、結果の解釈
QOL-Dの概要
QOL-D(Quality of life questionnaire for dementia)は、陽性感情、陰性感情&陰性行動、 コミュニケーション能力、落ち着きのなさ、他者への愛着、自発性&活動性の6 領域 31 項目から構成されています。
各項目を4 段階(見られない、まれに見られる、ときどき見られる、よく見られる、該当せず)で採点し,下位領域ごとに加算して算出します。6 領域のうち陰性感情&陰性行動、落ち着きのなさの2 項目は点数の低下が改善を示すことになります。
領域もしくは項目ごとにポジティブ・ネガティブな側面からQOLの評価が行われていることが特徴です。
認知症者専用で、客観的にQOL評価ができるツールとなります。
QOL-Dの評価方法
最近4週間を振りかえって評価します。
各項目に対して、見られない ≒ 4週に1回未満:1点、まれに見られる ≒ 週に1回~4週に1回:2点、ときどき見られる ≒ 週に数回:3点、よく見られる ≒ ほぼ毎日:4点、該当せず(NA)で採点します。
*質問項目には毎日起こらないこともありますが、大体の頻度で採点します。
・陽性感情
①楽しそうである (楽しそうな 表情をみせる)
②満足している (自分の現在の立場、状態、生活に満足している)
③ペットや子供に対して嬉しそうにする( 可愛いという対象〔ペットや子供〕に対して嬉うしそうにする)
④食事を楽しんでいる
⑤訪問者に対して嬉しそうにする( 訪問者とは、たとえば、身内や知り合いなど日常的 に出会う人をさす)
⑥周の人が活動するのをみて楽しんでいる( 活動とは、レクリエーション、 運動などをさす)
⑦ 安心して生活している (特に不安であるとの訴えはない)
・陰性感情&陰性行動
①怒りっぽい
②ものを乱暴に扱う
③他人が寄てくると苛立つ
④大声で叫さけんだりわめいたりする
⑤周囲の人とトラブルになる
⑥介護に抵抗する
・コミュニケーション能力
①名前を呼ばれると返事をする
②身体の不調を訴えることができる
③好みを選択することができる(好みとは食べ物、衣服等をさす)
④人の話を落ち着いて聞くことができる(あいづちを打つことができる)
⑤昔のことに興味を示す(若い頃の話などに興味を示す)
・落ち着きのなさ
①慣なれた場所でも落ち着かない
②慣なれない場所ではイライラする
③緊張している(ちょっとしたことでも緊張しや すい)
④外へ出て行きたがる
⑤気分が沈んでいる
・他者への愛着
① 周りの人との接触を求もとめる(周りの人とは、身内や知り合いには限定しない 。接触とは主に会話をしたり、他人のそばにくっついて座ることなどを意味する)
②周りに人がいると安心する (同室者などがいると安心する)
③自分から人に話しかける(人に積極的に話しかける)
④スキンシップができる(接触を伴うような、たとえば、 肩を抱いたり、手を握るなどの非言語的コミュニケーションができる)
・自発性&活動性
①自分に決められた仕事や作業をしようとする
②自発的に何かをしようとする(日常的なこと、たとえば,、布団の上げ下げや食器の 片づけ、あるいはテレビのスイッチを消したり等する)
③仕事やレク活動について話をする(仕事とは昔の仕事も含める。レク活動とは自分の 熱中していること、もしくは周りの人が活動していることなどでもよい)
④ テレビや音楽を楽しむ
結果の解釈
各項目を採点し、作業療法などのリハビリテーションアプローチを行った結果、各項目の採点がどのように変化したかを捉えていきます。
陰性感情&陰性行動、落ち着きのなさの2 項目は点数の低下が改善を示すことになります。
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日本語版DQoL (DQoL-Japanese version)の概要と評価方法、結果の解釈
日本語版DQoLの概要
DQoLは1999年、 Brodらによりより開発されたものです。
認知症高齢者本人に直接面接により、本人のQOL評価を定量的に評価することが可能です。
日本語版DQoLは9項目からなり、「自尊感情」「肯定的情動」「否定的情動 (逆転項目) 「所属感」「美的感覚 」の5つの下位尺度から構成されます。
5段階の視覚スケールにより回答してもらいます。
日本語版DQoLの評価方法
番号は質問の順番です。
「自尊感情」「肯定的情動」「否定的情動 (逆転項目) 「所属感」に関しては、「あなたは次のことをどれくらい感じましたか」と最初に尋ね、次に「あなたは(下位尺度の項目)をどのくらい感じましたか」と尋ねます。
「美的感覚 」については、「あなたは次のことをどのくらい楽しみましたか」と尋ね、次に「あなたは(下位尺度の項目)をどのくらい楽しみましたか」と尋ねます。
視覚スケールの例です。
自尊感情
9自信がある
10満足する
12何か重要なことをやり遂げた
29あなたはどのぐらい自分で決められますか
肯定的情動
13最近あなたはどのくらい笑うことがありましたか
15楽しい
18元気が良い
21満足する
23期待する
28他の人と冗談を言ったり、笑ったりする
否定的情動
7恥ずかしい思いをする
14怖い
16さみしい
17がっかりする
19腹立たしい
20心配する
22気が重い
24びくびくする
25悲しい
26いらいらする
27はらはらする
所属感
6人の役に立つ
8人から愛される
11人から好かれる
美的感覚
1音楽を聴く
2自然の音(鳥の声、風の音、雨の音)を聴く
3動物や鳥を見る
4綺麗な色を見る
5雲、空、雨を見る
日本語版DQoLの結果の解釈
この評価尺度では、質問の意味を理解し、答えることが必要です。
MMSEで13点以上の方が対象となります。
「否定的情動」の11項目 (7, 14, 16, 17, 19, 20, 22, 24, 25, 26, 27) は逆転項目となり、他の回答の得点を逆転し「まったく感じなかった: 5点 」から「非常にたびたび感じた: 1点」として換算します。
得点は、下位概念別の回答の得点を合計し、項目数で割った点数を得点とします。
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生活健康スケールの概要と評価方法、結果の解釈
生活健康スケールの概要
生活健康スケールはデイケアなどに通所する認知症高齢者の生活者としての健全さ、健康さを、職員が積極的に見守りデイケアを効果的に進められることを助けれるように、開発されたものです。
生活健康スケールは20項目から構成され、4件法で評価されます。
生活健康スケールでは、「常識や好みに応じて人環境を選択的に使い分けられる力」「身振り表現、振る舞いなどの身体技法における表現力」「おかれている場を許容して操作的に扱える力」の3つの面からなります。
生活健康スケールの評価方法
評価ではあくまで個人を見るものであって、他者との比較で行うものではありません。
3:かなりみられる
2:ややみられる
1:あまりみられない
0:全くみられない
仲間への気配りがある
3:仲間の感情や集団全体の動きに気を配り、適切にそれを表現できる。
2:気を配る様子はあるが、状況にマッチした気配りにはならないことのほうが多い。 1:どちらかといえば0に近い。
0:仲間のほうへ目が向かない。
聞こうとする態度がある
3:話しかけられているとき、聞いているというように身構えをし、うなずいたり聞き返したりして嫌なことは嫌、好きなことは好きと言える。表現力がある。
2聞こうという身構えはあるが、表現力のスムーズさには劣る。どちらかといえば3に近い。
1:どちらかといえば0に近い。
0:聞こうとする身構えさえ難しい。
身だしなみに気をつかう
3:立ち居振る舞いのなかで、服装の乱れを整えようとする。おしゃれ心がある。仲間の服装の乱れ にも気づいて注意することがある。人の服装や髪型などをほめることがある。
2:どちらかといえば1に近い。
1:服装などおしゃれ心はあまりみられないが、汚したりすると、気にし、困惑して落ち着きさを失ってしまう。
0:汚れや湿りに関して全く無頓着。
自分の居場所をみつけることがうまい
3:施設のルーム空間を、自分の家のように安心しきって振る舞っている。
2:安心していられる定まった場所がいくつかある。言われなくとも自分で選択している場所に行くことができる。
1:くつろいでいる様子ではないが、身のおきどころがないという感じではない。
0:身の置きどころがない感じで落ち着かない。
人にものが頼める
3:頼みごとの表現力が豊かで自然。何をしてもらいたいたか&