膝立ち位は、リハビリテーションの訓練においてかなりメリットのある動作です。筋力強化に用いられたり、バランス強化に用いられたり、歩行の準備段階として用いられることがあります。今回、膝立ち位における筋力強化とバランス強化のメリットと方法について、まとめていきたいと思います。
目次
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定義的には、「膝関節90°屈曲,上半身を直立し,上肢を体幹側につける姿勢」になります。
図を見てもらえるとわかるように、膝立ち位では立位に比べて地面に接している部分が大きいため、安定性が得られやすいことが特徴です。
また、立位と比べ身体重心が低く、膝・足関節の影響を除外し、選択的に股関節伸展を促すために効果的な姿勢でもあります。
立位では足底面しか接しておらず、支持基底面が狭くなっています。
そのため、高度なバランス能力を必要とします。
立位バランス訓練を行う際に、立位ではバランス保持が困難な方では、まずは膝立ち位にてバランス能力を獲得していく方がよい場合があります。
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膝立ち位における筋活動は、立位における筋活動をもとに考えるとわかりやすいでしょう。
立位における筋活動は、抗重力筋と呼ばれる筋肉が主に働いています。
体の前面の抗重力筋には、
・頚部屈筋群
・腹筋群
・腸腰筋
・大腿四頭筋
・前脛骨筋
があります。
体の後面の抗重力筋には、
・頚部伸筋群
・脊柱起立筋
・大臀筋
・ハムストリングス
・下腿三頭筋
があります。
膝立ち位では、膝関節より上でバランスをとり姿勢を保持しているため、筋活動は上記から前脛骨筋、下腿三頭筋を除いた筋になります。
これらの筋肉が、姿勢の状態により筋肉の活動量を変化させながら、姿勢保持に働いています。
もちろん、支持基底面が狭い立位に比べると、筋活動は少ないことは言うまでもありません。
ここで、立位と膝立ち位の姿勢の違いから、筋活動の違いを考えていくことも可能です。
膝立ち位は立位と比べ身体重心が前方に位置するため、大殿筋と脊柱起立筋の筋活動が高くなります。
また、骨盤後傾位において努力性の筋収縮が入り、大殿筋の筋活動が高くなると考えられます。
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膝立ちは、よく姿勢矯正にもよいと言われています。
これは先ほど説明しましたが、
・膝立ちが立位に比べ安定しやすい
・膝立ちが立位に比べ筋活動が少なくて済む
・大臀筋と脊柱起立筋の筋活動が高まりやすい
このことが関係しています。
立位に比べて安定しやすく、筋活動の要求も少ないため、体にとって理想的な姿勢が取りやすい環境になります。
膝立ち位を定期的にとることで、理想的な姿勢の感覚をしることができます。
また、膝立ち位で以下に紹介するようなトレーニングを行うことで、体幹・股関節の筋収縮がより得られるようになるので、姿勢矯正が行いやすくなります。
膝立ち位をする場合は、ヨガマットを用いることで怪我の防止につながります。
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膝立ち位は、脳卒中片麻痺、股関節疾患、胸髄下位から腰髄損傷や脊髄不全損傷の方などにおいて用いることができるでしょう。
立位姿勢の保持や歩行動作においては、骨盤や体幹のコントロールが重要になります。
体の中心部が崩れてくると、その上下にある上部体幹や下肢に不安定性が波及し、動作遂行が不十分になってしまうことが考えられます。
膝立ち位は、筋活動による骨盤や体幹のコントロールを獲得していくためにメリットのある姿勢になります。
なお、TKAなどの膝疾患の手術をされた方では、膝立ちを行うことはお勧めできません。
主治医と相談して行うようにしてください。
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まず、バランスが不安定な方においては、膝立ち位をとる際に、前方や側方に台を置くなどして、上肢で支持しながら練習を行えるようにすることでリスク管理を行うことができます。
基本姿勢は図のような膝立ち位です。
理想的なアライメントは、体の横から見て、
・耳垂
・肩峰
・大転子
を通ります。
また、細かくみていくと、
・頚部は過度な屈曲や伸展がなく、顎を引き天井から引かれるようなイメージ
・股関節屈伸0°で腸骨稜の真上と大天子を結ぶ線が大腿骨の長軸と一緒になる
・上前腸骨棘と恥骨結合が同一垂直面上にある
となります。
まずは、このような理想的なアライメントをとれるように練習を行います。
リスク管理としては、台の上に手をつくなど、支持物を用意しておく必要があります。
次に、より高度なバランス練習へと進めていきます。
理想的な膝立ち位から、片側上肢を挙上(上、横)、両側上肢を挙上(上、横)させることで、体重移動が自然に起こるので、それに合わせて抗重力筋による骨盤や体幹のコントロールが促通されるのを期待します。
ある程度バランスが取れるようになれば、コントロールする範囲を広げていくようにします。
例えば、右いっぱいに手を伸ばす、上いっぱいに手を伸ばすなどです、
重心移動が大きくなればなるほど、バランスをとるための筋活動はアップします。
それだけ高度なバランス能力が必要とされるため、リスク管理には十分に注意する必要があります。
両方の下肢での膝立ちで、バランスがしっかりととれるのであれば、片足による膝立ちを試してみるとよいと思います。
片足といっても、これは瞬間的に片足立ちになるということです。
図のように、片膝立ちで体重を支持し、逆側の足を前方に出していくようにします。
この運動は、片麻痺の方にとっては両足の分離運動の練習にもなります。片方の足は支持、片方の足は運動しているので、足の左右の分離の練習とも考えることができます。
この動作では、非常に高度なバランス能力を必要とします。私の経験上、この運動を行うと股関節周囲筋の促通がかなり行われます。しかし、対象者への負担は大きいため、注意してください。
股関節周囲筋の筋力強化として取り組みたい場合には、膝立ち位で股関節を屈伸させることで、スクワットのように強化が行えます。
図のように、物品に対してリーチする要素も取り入れれば、筋力強化+実用的なバランス強化のトレーニングとしても活用できるでしょう。
最後に、膝立ち位で一番高度な運動が膝立ち歩きです。
このとき、股関節や骨盤が左右にぶれず、しっかりとコントロールされたなかで膝立ち歩きができるように取り組むことが重要になります。
理想的でない運動を学習してしまうと、いざ実際の歩行練習になったときにも適切でないアライメントで歩行を行ってしまうことがあります。
膝立ち位でのトレーニングでは、アライメントの崩れに注意しながら動作練習を行うようにしてください。
膝立ち位で歩く際に、前方への進むのには大殿筋や大腿二頭筋の筋活動を高めながら行われます。
膝立ち位で歩く際に、股関節外転筋の作用は低いことが言われています。
これは、膝立ち位では骨盤を挙上しながら体幹を支持側へ傾けることで動作を行っているため、立位よりも股関節外転筋の筋活動は低下します。
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