発達障害において 、 姿勢や運動上のつまづきに対処するには、正常発達を知っておくことが大切です。今回、歩行獲得に向けた、姿勢・ 移動運動の正常発達(12ヶ月)について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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出生から最初の3ヶ月では、頭部の垂直位保持と、その結果としての対称姿勢の獲得の時期となります。
胎生期では、子宮の中での保護的な養育環境となっています。
そこから外の重力のある世界に生まれる新生児にとって、まずは生存のために活動をしていく必要があります。
「生存」するために、生理的屈曲姿勢と原始反射は生まれながらにして持っている機構となります。
生理的屈曲姿勢は胎生期での姿勢の延長です。
胎内では、生理的屈曲姿勢により山道の通過を容易にすることができます。
また生後において、自己保存を有利にすることができます。
新生児では、背臥位で寝かせても支持面に対して体を預けられず(緩められず)、体を丸めた姿勢をとります。
これは外界での安定を得られないために、体を丸めることで各部位を結合させ、姿勢の安定性を図ろうとするためです。
原始反射の意味ははっきりとはしていませんが、栄養摂取や危険の回避などの生存に関する保護的なメカニズムとされています。
運動方向で分類すると、屈曲方向の把握反射、伸展方向の非対称性緊張性頸反射(ATNR)、モロー反射などがあります。
これらの両方向の反射を経験することで、生理的屈曲姿勢が緩和されていきます。
新生児では、腹臥位においては全身を屈曲させますが(緊張性迷路反射(TLR))、数ヶ月すると頭部を持ち上げれるようになります。
前庭感覚を処理する脳内の構造がより柔軟になってくると、同じ刺激に対してもまったく正反対の反応を示すようになる。
発達障害と作業療法[基礎編]
日常の中で、背臥位、腹臥位、抱っこによる垂直姿勢などの様々な姿勢を経験することで、頸部の筋肉が協調して収縮するようになります。
この協調した収縮が「首がすわった」状態をつくります。
左右頸部筋の協調した収縮は、頭部を正中に保つことを可能にします。
頭部の対称性は、体幹の対称性を促し、それにより、両手を胸で合わせることができるようになります。
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生後4〜6ヶ月では、移動のための準備期間となります。
それまでに獲得した姿勢の対称性、抗重力姿勢、伸展した頭部・体幹をもとにして、寝返りと座位を獲得していきます。
背臥位からの寝返りでは側臥位までは頸の軽度屈曲させ回旋します。
側臥位から腹臥位では頸の軽度伸展を伴い体幹の回旋を助けます。
脳性麻痺児では頸部屈曲できず床に押し付け、体全体を反らせて寝返る動きが観察されます。
寝返り獲得には、空間での頭部の垂直位への立て直し(3ヶ月)、前後左右どの方向からも頭部を垂直に立て直す(4ヶ月)、が必要です。
これは哺乳や抱っこ、腹臥位での頸部の持ち上げなど頸部の同時収縮の経験により促されます。
寝返りは左右の手足の異なる動きが必要な姿勢変換です。
随意的非対称な動きは、一度姿勢の対称性が獲得されて初めて可能になります。ATNR(非対称性緊張性頸反射)が残存してると、随意的なコントロールが難しくなります。
寝返りには四肢が頸の回旋に影響されない必要があります。
新生児期では、股関節屈曲すると膝屈曲がみられるように、各関節の分離した動きが困難です。
股関節は内転・外転、内旋・外旋と様々な動きがありますが、寝返りは体幹を伸展させたまま下肢の屈曲により行いやすくなります。
ほとんどの姿勢変換には体幹回旋が必要です。
新生児では生理的屈曲姿勢が見られ、四肢は屈曲・伸展が中心です。
体幹の安定性向上に伴い内転・外転、さらに回旋方向の動きが拡大します。
運動パターンは屈曲・伸展→内転・外転→回旋となり、座位、膝位、立位の各段階でパターンが繰り返され、機能的になっていきます。
そのため、体幹や骨盤の動きに回旋をだすには、臥位での屈曲・伸展側屈などを促す必要があります。
3ヶ月を過ぎると、臀部や下肢を空間にあげ、足で遊んだり、逆にブリッジしたりします。
これらが体幹の前後左右からの立ち直り(4〜5ヶ月)を準備し、体軸内回旋とねじれの戻しを可能にします。
寝返りは下の肘で床を押し、反対の体を床から押し上げることで達成されます。
そのため、上肢の支持性は、寝返りを容易にします。
腹臥位で頸を持ち上げたり、足で床を蹴って遊ぶとき、頸を持ち上げると重心は臀部に下がり、足で蹴ると重心は頭部に上がります。
この方向がぶつかるのが肩甲骨周囲で、動きの繰り返しにより肩甲帯の同時収縮が促され、肩甲帯が安定すると背臥位でも前方への手伸ばしが可能になります。
背臥位と腹臥位で手伸ばしを練習すると腹臥位でも肘での支持が可能になり、手掌でも支持が可能になります。
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生後6〜9ヶ月では、座位からさらに抗重力姿勢となる膝位へと向かう時期です。
座位から臥位、また座位へ起き上がるような中間姿勢の経験により、膝位の保持が可能になっていきます。
この時期の移動は四つ這いであり、以下に必要な能力を挙げていきます。
四つ這い初期では、重心を臀部後方に移動させ、手を自由にする傾向があります。
上肢を交互に動かすには、片手で上体を支持する必要があります。
上肢の支持性は、腹臥位での手掌支持での体重移動、腹臥位での手伸ばし運動(6〜7ヶ月)、背臥位・腹臥位からの座位への起き上がり(7〜8ヶ月)などを経験することで獲得されていきます。
四つ這い移動での前進では、手が何かにつまづくと転倒の危険があります。
そのため手を前方、側方へ伸ばし、危険から身を守る自動的な動き(パラシュート反応)が必要になります。
四つ這いでの重心移動をスムーズに行うには、上下肢を少し内転させる必要があります。
両上肢が内転すると姿勢は不安定となり、バランス反応が必要になります。
四つ這いでのバランス反応は、座位から四つ這い、四つ這いから座位への中間姿勢の変換を通して強化されます。
未発達な四つ這いや脳性麻痺児の四つ這い移動では、腰が左右に振れることがあります。
これは、股関節の屈筋、伸筋、外転筋など下肢交互運動の中での骨盤周囲の支持性が不十分なためです。
座位での体幹回旋、手伸ばし運動に伴う重心移動が骨盤周辺の支持性を強化していきます。
四つ這い移動では、上下肢の協調した交互運動により重心の前方移動が行われます。
手と足の協調、下肢交互運動は、背臥位で足に手を伸ばして遊ぶ、両足を交互に蹴るなどで強化されます。
対称性緊張性頸反射(STNR)は、頸部伸展が上肢伸展を助けるため、四つ這い姿勢維持に役立ちます。
しかし、反射が強く作用するとうさぎ跳びのような移動になり、移動に対して拮抗的な動きとなってしまいます。
頸部の位置に関わらず、上下肢を伸展させたまま交互に動かすには、STNRの抑制が必要になります。
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この時期は、膝位での身体のコントロールが強化されることで、立位や歩行に必要な能力を獲得していく時期です。
この時期では、つかまり立ちや伝い歩き(10〜11ヶ月)が移動手段となっていきます。
以下に、伝い歩きに必要な能力を挙げていきます。
伝い歩きでは、垂直位での移動であり、体幹の空間内での垂直保持が必要です。
体幹の垂直保持が行えると、回旋も促されます。
つかまり立ちの中で、左右、後方へ手伸ばしをする中で準備されます。
伝い歩きは横移動であり、下肢伸展や股関節外転が必要です。
新生児では、陽性指示反応(足底への体重負荷で足を突っ張る)が1ヶ月でみられますが、3〜4ヶ月では一時足に体重を負荷しない時期があります。
足底で体重負荷するのは5ヶ月頃になります。
伝い歩きは進行方向と逆の方向へ体重を移動させ、自由になった足を広げて移動します。
つかまり立ちで頭部回旋や手伸ばしをする中で、足底での体重移動を経験します。
つかまり立ちで身体を前後に移動することで、前後方向の体重移動も足底で経験します。
つかまり立ちでの体重移動は、下肢の支持性だけでなく、体重移動に対するアライメント修正の制御を足部に準備させることが必要です。
これは、後方への傾きに対して、足首や足指を背屈させることで、重心を元に戻すことです。
立位での体重移動は、倒れないようにする自動的な反応を下肢に準備させることを促します。
これは、転倒方向に足を踏み出して転倒を防ぐメカニズムとなります。
下肢の支持性、下肢の分離動作バランス反応は立位で練習が行えます。
膝位からものに手を置いて立ち上がるといった中間姿勢を十分に経験することで、安定したコントロールを獲得していきます。
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歩行獲得の時期は12ヶ月とされています。
初めは自分自身の姿勢調整能力以外に頼るものがないことから、つかまり立ちで余裕を持っていたとしても、再び難しくなってきます。
初期歩行では、不安定さを代償する徴候がみられます。
や、肩甲骨内転で背筋を伸ばし、空間での体幹保持を助ける働きがあります。
体幹でのバランス保持が向上すると、上肢の補助が少なくなり、ミドルガード、ローガードと手が下がってきます。
バランス保持に上肢の補助がいらなくなると、上肢は骨盤回旋のために使用され、腕の振りが出現します(4歳)。
成熟した歩行では骨盤と肩甲骨は逆の動きになります。
初期歩行では姿勢の安定が必要なため、股関節周囲筋を同時収縮させています。
足関節での支持性が出てくると、股関節周囲筋の過剰収縮は必要でなくなり、結果的に骨盤回旋がみられるようになります。
年長になると腹部の脂肪が減り、腹筋が作用しやすくなることも、骨盤回旋を助けています。
1歳前後は重心の位置は成人よりも相対的に高くなっています。
そのため歩行安定には、広い支持面を確保する必要があります。
股関節外転・外旋位で足を踏み出すような歩き方となります。
バランスの安定性向上により歩隔は狭くなります。
初期歩行では四つ這い移動も行われており、これが股関節内転・内旋の準備をします。
膝、足が進行方向に対してまっすぐ向くようになると、方向転換が容易になります。
股関節外転・外旋での足の運びは、股関節と膝関節を過剰屈曲させ、足を持ち上げ、しこを踏むようにそのまま接地させます。
足関節の支持性が伴うと、股関節、膝関節の過剰屈曲の必要がなくなり、足関節での接地面の蹴りが現れます(2歳)。
踵から接地し、最後に足指が離れるパターンになっていきます。
初期歩行では支持性を高めるため立脚相では膝を軽く過伸展でロックしています。
バランスや支持性向上により、踵接地の瞬間に膝伸展させますが、立脚相で膝がやや屈曲したままになります。
膝の軽い屈曲は、衝撃緩衝作用となり、同時に重心の垂直移動を抑える役割があります。
初期歩行では上下左右の重心移動が大きく、エネルギー消費も大きいことが特徴です。
膝屈曲が生じると、重心移動が少なくなり疲れにくくなります。
初期歩行では足の短さやバランスの不十分さからケイデンス(1分間の歩数)が大きく、ちょこちょこした歩き方となります。
歩幅が均一でなく上下左右の重心移動も大きく、疲れやすい短距離しか歩けない歩行といえます。
歩幅が大きくなるほど、ゆったりとした歩き方に変わっていきます。
https://youtu.be/tXqGw232DxM