半側空間無視に対するアプローチには様々なものがありますが、今回は電気刺激療法における効果と、受動的注意の改善には電気刺激療法が効果的かもしれないということについてまとめていきたいと思います。
目次
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半側空間無視があると、視覚性運動失調のような要素が出現することがあります。
視覚性運動失調とは、
対象に対し正確に手を伸ばす到達動作の障害である。
視覚や運動,体性感覚の障害はないのに,ここぞと伸ばした手の先が対象から前後左右にずれる(Rondotら 1977)。
周辺の視野にあるものに対して正確に手を伸ばせない場合をataxie optique,見つめたものにも正確に手を伸ばせない場合をOptische Ataxieと呼んで区別する。
平山 和美「視覚背側経路損傷による症状の概要」高次脳機能研究 第35巻 第2号
脳卒中者において、半側空間無視がみられない単純な運動麻痺の方と、同程度の運動麻痺に加えて半側空間無視がある方の比較として、上肢到達運動の軌道分析を行うと、明らかに視覚性の運動失調のような要素が出現します。
半側空間無視を有する方の上肢運動麻痺治療においては、視空間に対する制御をしっかりと行っていくことが大切になります。
半側空間無視に対する物理療法としては、振動刺激もしくは電気刺激がアプローチとして適切性があるという報告がみられます。
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以下の研究は、半側空間無視に対する電気刺激療法の効果について、知っておくと良いと思われるものです。
この研究では、慢性期脳卒中患者に対して、左側上部僧帽筋に電気刺激を与えることで、半側空間無視の改善が見られたということが報告されています。
一番左側の図を見ると、アプローチ前は文章読解が10数%程度、線分抹消が35%程度、文字抹消が55%程度、認知側に比べると無視側の不十分さが多かったということがわかります。
このような状態に対し、電気刺激療法を行うと、文章読解が10%程度、線分抹消が20%程度、文字抹消が45%程度に改善されることがわかります。
電気刺激によって、無視側から刺激を与え続けることにより、無視の改善を図ることができるということになります。
真ん中の図は、視覚誘発電位についてのものです。
視覚誘発電位(しかくゆうはつでんい、英:Visual evoked potentials, VEP)とは、視覚刺激を与えることで大脳皮質視覚野に生じる電位である。
Wikipedia
この研究では脳波において、脳自体が電気刺激を刺激としてとっているかということをみています。
電気刺激を実施した後では、刺激をとっている量(反応量)が増えており、皮質自体が反応しているということを示しています。
右の図は、対象者の左側への反応速度を示しており、電気刺激介入で左側への反応速度が向上していることがわかります。
パラメータ設定に関しては、上記の研究ではHz;100Hz パルス幅;100μsec 刺激強度:0.5μA/mmとなっていますが、感覚閾値であれば問題はないと思われます。
先ほど、感覚閾値で電気刺激を行うと説明しましたが、これはどういうことかというと、
出典:https://en.ppt-online.org/285080
この図の縦は「電流強度」、横線は「パルス幅」を示しています。
「Aβ Sensory=感覚」「Motor=運動」「Aδ Sharp pain=鋭い痛み」「C Dull pain=鈍い痛み」「Denervated Muscle=脱神経筋」を示しています。
感覚閾値は赤いラインが目印なので、例えば、パルス幅を10μsecで設定している場合には、おおよそ60mAの電流強度が感覚閾値になります。
この図を見ていると、感覚閾値に設定したければ、どのパルス幅、電流強度の組み合わせにおいても設定できることがわかると思います。
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半側空間無視に対する電気刺激療法では、基本的には抹消部に電気刺激を与えることになるのですが、この研究では僧帽筋上部線維に電気刺激を行っています。
この理由としては、半側空間無視を有している方では、感覚障害も重度なパターンがしばしば見受けられます。
そのような場合、手部などの抹消部に電極を貼り付けても、電気刺激を感じることができない可能性があります。
僧帽筋上部線維の場合、抹消部と比較すると電気刺激を知覚できることが多いため、この部位に電極を貼り付けているということになります。
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半側空間無視では、近年では2つの注意様式の問題があると言われています。
能動的注意は、課題遂行のために自ら積極的に意識し、集中するような注意の様式です。
前頭眼野-上頭頂小葉・頭頂間溝との関わりが深いとされています。
受動的注意は、課題遂行中でも突然現れた変化やアクションに対して自分の意思とは関係なく注意が向くような注意の様式です。
中・下前頭回-下頭頂小葉・上側頭回との関わりが深いとされています。
半側無視の基本的な中枢は、受動的注意になるとされています。
BITの検査項目にあるような、線分抹消試験などは、能動的注意課題と呼ばれています。
このような課題では、半側空間無視を有している方は、前頭葉で代償的に注意を左側に向けていくことで課題を遂行していくことになります。
リハビリテーション場面では、視覚探索訓練のような能動的注意課題は用意しやすいのですが、受動的注意課題を用意するのは難しい面があります。
モグラ叩きのようなものや、ボードトレーナーのようなものであれば受動的注意課題になると思われます(ボードトレーナーは能動的課題かもしれません)。
出典:https://www.og-wellness.jp/product/rehabilitation/gh841
これは、大阪府立大学の竹林崇先生がセミナーで言われていたことですが、
健常者を対象として、15分間感覚閾値で電気刺激を与える実験です。
右の空間に対する反応速度が比較的早い人では、左の空間に対する反応速度が早くなったそうです。
このようなことから、電気刺激は受動的注意にも一定の影響を与える可能性が示唆されたそうです。
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