今回、脳卒中ガイドライン(2015)から、高次脳機能障害の評価と介護負担感の関係性についてまとめていきたいと思います。
目次
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「脳卒中治療ガイドライン2015」では、
・脳卒中一般
・脳梗塞・TIA
・脳出血
・クモ膜下出血
・無症候性脳血管障害
・その他の脳血管障害
・リハビリテーション
について、内科的薬物治療のみではなく、外科的治療、急性期における全身管理、嚥下障害と栄養摂取、合併症予防、リハビリテーション、地域連携等の視点から述べられています。
また、各論文のエビデンスレベルが5段階で評価され、それをもとに下図のように推奨グレードが決定されています。
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脳卒中治療ガイドライン(2015)において、高次脳機能障害(認知障害)の有無とその内容をスクリーニングし、その情報を家族に伝えることは家族介護負担感の軽減につながるとされています。
高次脳機能障害(認知機能)のスクリーニングテストとしては、MoCAやMMSEなどがあります。
また、家族介護負担感の指標としては、Zarit介護負担尺度日本語版、FCS ( 介護家族負担感尺度 )、介護負担感指標などがあります。
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MMSE | HDS-R | |
見当識(時間、場所) | ◯ | ◯ |
記憶3単語(直後、遅延再生)
5物品記銘 |
◯
|
◯
◯ |
計算100から順に7を引く | ◯5回まで | ◯2回まで |
数唱 | ◯ | |
語想起 | ◯ | |
言語検査 | ◯呼称、復唱、理解
読み、書字 |
|
模写 | ◯ |
両者は見当識、記憶、注意集中、計算をみる検査項目が含まれています。
HDS-Rでは動作を要する項目がないことと、野菜の語想起課題がある点が特徴的です。また3単語の遅延再生に6点の配点があり、近時記憶への負荷が大きいことが伺えます。
両者とも30点満点で採点し、HDS-Rは20点以下を明らかな認知症としており、MMSEでは24点以上を健常人としています。
MMSEの成績は教育歴に左右されると言われていますが、日本では6年間の義務教育が行われている事から、より高得点を境界とすべきだと言われています。
健常人32名(平均年齢68.8歳(SD 6.4)、範囲56〜79;教育歴11.8年(SD 3.0)、範囲8〜21)に実施した結果では、MMSEの平均29.1(SD1.1)、範囲27〜30とかなり高い値が得られた。したがってMMSEは明らかな異常と判断できる
高次脳機能障害学 第2版 P240
検査の結果(得点)だけに注目するのではなく、障害が明らかな項目に注目して詳細に検査、評価することが必要です。
例えば、3単語の遅延再生において1つでも出てこない場合、前向性健忘を念頭に置き三宅式記銘力検査などを行うことが推奨されます。
MMSEについて以下のようなことも言われています。
認知機能障害のある患者の83.8%,アルツハイマー型認知症患者の95.8%が23点以下,健常者の93.3%が24点以上の成績を示したことから,23/24点をカットオフ値とすることが望ましい と報告している(森ほか,1985). そのカットオフ値の感度は83%,特異度は93% であり,高い精度を有する検査であるといえる.
運動による脳の制御 P104
このカットオフ値は学歴や職業歴に影響を受けるとされており、高学歴者においては初期認知症を見逃すこともあります。
教育歴の少ない者においては計算や読み書きなどの成績不良により認知症と診断される傾向が強くなります。
認知症の軽度もしくは初期の方では感度が低く、 20点以上の認知症群に対しては感度が50%程度まで低下してしまうとの報告があります。
実施にあたっては年齢、教育年数、生活状況に関する情報の評価も含めた総合的な判断が求められます。
MMSEでは聴覚提示の項目が多く、聴力低下が成績低下につながることがあります。
HDS-Rでは視空間認知の評価がないため、補助検査が必要となります。
様々な認知機能(注意・集中、実行機能、記憶、言語、視空間認知、概念的思考、計算、見当識)を評価していきます。
教育年数が12年以下の場合、1点を加えます。合計得点が26点以上であれば正常範囲(25点以下で認知機能低下あり)となります。
MoCAはMMSEと比較して糖尿病患者の認知機能障害を見つけることに有用と言われています。
この検査を元に、さらなる詳細な検査を行っていくことも必要になります。
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社会的行動障害の診断名を説明するだけでは家族は何に注意をすればよいかはわからず、イメージも湧きません。
具体的な説明と実践的指導のポイントには以下のようなことが含まれます。
①社会的行動障害の基盤にある症状
②負の心理反応と逃避・回避行動の発生のメカニズム
③日常場面での問題の生じ方
④問題への具体的な対応方法
⑤家族が陥りやすい心理反応と対象者への態度
⑥日常で生じやすい問題解決のためのマニュアル作成
⑦心理的安定のための相談相手・場所や拠り所(家族会など)の紹介・確保
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FCS ( 介護家族負担感尺度 )は、自宅で生活している障害を持った方を同居もしくは別居という環境において、生活場面で支援をしている方の主観的介護負担感の評価表です。
日本の文化や国民性に合わせて開発されています。
10項目から構成され、支援をする家族全員の評価を行うことが大切です。
高い信頼性と妥当性、実用性が示されています。
自己回答式で、約5分程度で実施できます。
回答で迷ったときには低い状態を記録します。
思い当たらない質問項目の場合、「思わない」と記入します。
「思わない」:1点
「余り思わない」:2 点
「 時々思う 」:3点
「 よく思う 」:4 点
評価項目
1.介護のために、あなたやご家族はとてもイライラしていますか
2.現在あなたは、精神的に不健康な状態ですか
3.介護をしている方の欲求を、かなえようと努力するのは無意味ですか
4.普段介護の悩みを相談できる人に、不満足感を感じていますか
5.介護をしている方を、健康にしようと努力するのは無意味ですか
6.介護のために、あなたのご自宅で日課がめちゃくちゃになっていると思いますか
7.家族以外の人に介護上の悩みを、あまり相談できていませんか
8.介護のために、必要なものをあきらめなければなりませんか
9.現在あなたは、身体的に不健康な状態ですか
10.介護のために、余分な支出をする余裕がなくなってきましたか
介護負担感指標は、日本で用いることができる要介護高齢者の介護に伴う家族の負担感を測定することを目的に開発されました。
介護負担感指標では、介護負担感を介護に伴う否定的感情と位置づけ、「要介護高齢者に対する拒否感情」「社会活動に関する制限感」「経済的逼迫感(追い詰められてゆとりがない状態)」の3つのカテゴリーに分け、それぞれ4項目が設定されています(12の項目による構成)。
各項目に対し、3件法にて回答します。
0点:「まったくない」
1点:「ときどきある」
2点:「しばしばある」
評価項目
1.介護のために、社会的な役割が果たせず、不安になる
2.介護に追われ、家族や親族との関係がだんだん疎遠になると感じる
3.介護のために、自分自身のための自由な時間がとれない
4.介護のために、趣味や学習などの個人的な活動に支障をきたしている
5.要介護者を見るだけでイライラする
6.適切に介護をしているにもかかわらず、要介護者から感謝されていないと感じる
7.要介護者の言動に、どうしても理解に苦しむときがある
8.要介護者に対して、我を忘れてしまうほど頭に血がのぼるときがある
9.介護に必要な費用が家計を圧迫していると感じる
10.介護に関わる出費のために、余裕のある生活ができなくなったと感じる
11.要介護者の介護には費用がかかりすぎると感じる
12.介護のために、貯蓄していたお金まで使い、将来の生活に不安を感じる