脳卒中片麻痺者では、麻痺側上下肢をいかに使用させるか、またはその使用量を確保させるかが、回復のポイントになります。しかしながら、脳卒中片麻痺者では学習性不使用と呼ばれる、麻痺肢を使用しないことが常態化することもしばしばみられます。今回、脳卒中片麻痺者の学習政府使用が生じる理由についてまとめていきたいと思います。
目次
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学習性不使用とは、簡単に言うと、麻痺肢を使用しないことを脳が学習していくことを言います。
これは、脳卒中の発症により片麻痺になった時点から、時間経過の中で徐々に麻痺肢の不使用が学習されていくことになります。
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脳卒中を発症すると、大脳皮質一次感覚野→皮質脊髄路→脊髄前角細胞→筋肉→関節運動
と言う流れにおける情報伝達が遮断、もしくは情報伝達が弱くなります。
脳からの指令が伝わりにくくなると、関節運動を生じるためにかなりの努力が必要となります。
もちろん、日常生活における運動量も少なくなります。
すると、大脳皮質では体部位表現領域が縮小します。
体部位表現領域が縮小するということは、動きの少ない関節運動に関わる部位についての表現領域からの運動指令情報が伝達されにくくなるということになりますから、さらに努力が必要になり、運動量も低下するという悪循環に陥ります。
脳卒中片麻痺を発症後、対象者はリハビリテーションを通じて訓練場面や日常生活において麻痺肢を使用する練習を行います。
練習の中で、麻痺肢を使っても失敗を繰り返していればどうなるでしょうか。
健常者でも、新たなことに挑戦をして失敗を繰り返していれば、取り組み始めた活動を放棄したりすることはあるではないでしょうか。
対象者の方も同じです。
いくら努力しても、行動が失敗に終わることが長く続くと、それは負の強化となってしまいます。
行動が抑制されるということは、日常生活における麻痺肢を使用する練習や習慣は身につくはずはありません。
脳卒中片麻痺者の方では、共同運動パターンという特徴的な運動パターンを呈します。
これは、一次運動野の障害による適切な関節運動の組み合わせが行いにくかったり、神経性の筋力低下から、代償的な運動としてパターンが生じていることもあります。
対象者の状態に適した課題が設定されていない場合、行っている関節運動がかなり代償を用いている場合があります。
そのような代償を用いた運動パターンが強化されると、努力的で非効率な運動が強化されてしまいます。
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「Quantifying Real-World Upper-Limb Activity in Nondisabled Adults and Adults With Chronic Stroke.」という論文では、
加速度計を用いて麻痺側と非麻痺側の使用頻度を比較しています。
それによると、健常者では利き手、非利き手の使用頻度が均等ですが、脳卒中片麻痺者は使用頻度に偏りがあるとの結果が出ており、学習性不使用が生じていると解釈できます。
ここで、学習性不使用を改善させるためにはどうすればよいのかを考えていきます。
まずは第一に、麻痺肢を使用していないことを認識させる必要があります。
それにはインタビューのなかで、1日のスケジュールのうち麻痺肢の使用頻度を聴取するのも一つの方法でしょう。
対象者の麻痺肢の使用頻度を高めるには、
・麻痺肢を使用しないと、悪い状態に陥りやすいということへの知識を持ってもらう
・麻痺肢を使用することで、その状態が改善されるという知識を持ってもらう
というような、対象者の知識を高める必要もあります。
麻痺肢を使用するためには努力することが必要なのですが、その努力により得られるメリットが少ない場合、対象者の行動は強化されない可能性があります。
そのために、行動強化のための動機付けや、自己効力感を高める工夫をセラピストは提供する必要があります。
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まずは前途したように、麻痺肢の使用頻度を高めることがいかに大切なのかについての知識を提供する必要があります。
リハビリ場面では、難易度が高すぎる場合は失敗を招いたり、代償的で非効率な運動パターンが強化されてしまうため、課題設定は難易度をやや落として、適切なレベル設定にしなければなりません。
麻痺肢の機能回復に合わせて、日常生活の中でどのように使用すれば麻痺肢を参加させることができるのかについて対象者とともに検討する必要があります。
CI療法が優れているのは、行動療法を基盤にして、いかに日常生活の中で麻痺肢を使用させるかについての理論がしっかりしているところです。
CI療法と適切な課題設定について学びたい方は是非下記の書籍に一度目を通してください。
竹林先生のエッセンスが詰まっていてとてもわかりやすく書かれています。
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