脳卒中の方において、眼球の動きが悪くなることがしばしばみられますが、どの脳神経に問題があるかを考えたときに迷うこともしばしばです。今回、眼球運動に関わる脳神経と臨床症状についてまとめていきたいと思います。
目次
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脳神経の覚え方の語呂合わせで有名なのは、
「嗅いで視る動く車の三の外顔聞く舌は迷う副舌」
が有名です。
正確には、
①嗅神経
②視神経
③動眼神経
④滑車神経
⑤三叉神経
⑥外転神経
⑦顔面神経
⑧内耳神経
⑨舌咽神経
⑩迷走神経
⑪副神経
⑫舌下神経
となっています。
その内、眼球運動に関する脳神経としては、太字で示した、
③動眼神経
④滑車神経
⑥外転神経
となっています。
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動眼神経は中脳レベル、外転神経は橋下部に位置しています。
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眼球運動と脳神経の関係性を考えていく上で、眼球運動を見る順序を理解しておくと評価がはかどります。
そのためには、
③動眼神経
④滑車神経
⑥外転神経
がどの筋肉を支配しており、その筋肉がどの眼球運動に関与しているかを理解しておくことが大切です。
以下の表は、脳外臨床研究会の山本先生がまとめていたものです。
脳部位 | 筋肉 | 眼球運動 | 脳神経 |
中脳 | 内側直筋 上直筋 下直筋 下斜筋 上眼瞼挙筋 瞳孔括約筋 |
内側 上内側 下内側 上外側 瞼を上げる 縮瞳 |
動眼神経 |
中脳(反側) | 上斜筋 | 下外側 | 滑車神経 |
橋 | 外側直筋 | 外側 | 外転神経 |
この中で、眼球運動はほとんどが動眼神経支配となっています。
眼球運動を観察していて、私たちが知りたいのは、その原因がどこにあるかということになります。
動眼神経、滑車神経、外転神経のどれが問題かということです。
よく臨床では、様々な方向に眼球を動かしてもらって、眼球運動の質を評価しますが、上記の表をみていると、ほとんどが動眼神経支配となっています。
そのため、区別をするためには、表の中で一つの動きしかないものを優先的に評価することで、それがどの脳神経に問題があるのかを把握することに役立ちます。
眼球運動における追視の評価は、まずは眼球を外側に向けることができるか
ということをはじめに行うことがポイントになります。
そのときに外側に向けることができないのであれば、動眼神経に問題があるということになります。
上記の表にも書いてありますが、滑車神経のみ反対側に障害が出現します。
たとえば、滑車神経以外の脳神経は、右の出血があれば、右の眼球運動に障害が起こります。
これは脳神経は同側性に障害が出現するためです(核より上ですでに交叉しているため)。
ちなみに、核よりも上の損傷は対側性となっています(例:右の皮質出血で左麻痺が出現する)。
滑車神経のみ反対側に障害が出現すると先ほど述べました。
右の脳出血があれば、右眼球の外転運動が行えませんが(右の脳幹の障害)、
滑車神経は左の眼球運動に障害が出現します。
①横方向(外転方向)の動きを見る
ー動く→中脳の問題
ー動かない→橋の問題
②滑車神経の問題を確認
ー障害側と反対側の斜め下の動きをみる
両方の眼球運動を確認することがポイントになります。
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動眼神経の障害があるときに、対象者の方がよく訴えることとして、縮瞳の問題があります。
動眼神経の損傷があると、縮瞳が生じなくなります。
またもうひとつの問題として、眼瞼下垂の問題(瞼が挙げられない)があります。
これらの問題があるときに、対象者は「まぶしい」と訴えます。
まぶしいと感じるため、対象者は目を開けることをためらいます。
すると、廃用的に上眼瞼挙筋は筋力低下を起こします。
急性期において、ベッド上リハビリ介入する場合、天井を見ている中で眼球運動トレーニングをすると、対象者からすればたまったものではないでしょう。
そのため、暗い環境を用意する中でトレーニングをしたりすることも必要です。
環境設定として、眩しさを軽減できるようにベッドの配置を廊下側に変えてもらったり、間接照明に変える、サングラスを使用することもポイントになります。
眼球運動を見るさいに中脳の問題が大きいと感じたら、次にライトを当てて縮瞳の出現を確認することがポイントになります。
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