脳卒中片麻痺者におけるリハビリテーションでは、いかにして運動学習効果を高めていくことを考える必要があります。そのときに、どのように対象者にフィードバックを入れることが効果的なのかは、あまり知られていないこともあります。今回、脳卒中上肢リハビリと運動学習において、効果を高めるフィードバックや褒め方、伝え方のコツを考えていきたいと思います。
目次
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リハビリ場面では、対象者の方にフィードバックをすることが大切だと言われていますが、そもそもフィードバックとはどのようなことを指すのでしょうか。
心理学・教育学で、行動や反応をその結果を参考にして修正し、より適切なものにしていく仕組み。
おそらく、リハビリテーション場面では上記のような意味で捉えている方が多いと思われます。
「フィードバック」というのは、量的な結果を対象者に伝えることと私は捉えています。
リハビリ場面においては、例えば、
・「昨日は3つだったが、今日は5つできた」
・「昨日は何分だったが、今日は何分だった」
などということが挙げられます。
これは、専門的な言葉で言えば「結果の知識(KR)」と言われるものになります。
このあたりの復習については、以下の記事も参考になります。
リハビリテーションと運動学習!保持や転移(汎化)に向けた戦略!
上肢機能訓練(CI療法でいう所のシェイピング)におけるフィードバックは、その展開によって2つのフィードバックが考えられます。
それは、タイムトライアルと質重視のパターンです。
スピード重視でのフィードバック:
距離、高さ、個数は一定、遂行完了するまでの時間です。
後半5回の平均値が、前半5回の平均値よりも速い場合、高さまたは個数あるいは距離に対して難易度調整を行います。
これらの結果は、毎日行うことでグラフ化(結果を視覚的に確認できる)できるので、対象者が結果を認識しやすくなります。
個数は一定にし、遂行時間が速くなれば、
・箱べる量
・台の高さ
などを変化の指標として提示します。
動作の質重視でのフィードバック:
動作の質は、ビデオ録画することで対象者も確認しやすくなります。
CI療法では、動作の質を「3.5(1〜5段階中)」の質で遂行できるように課題を設定するようにしています。
1:麻痺手で動作を遂行できない
2:麻痺手で一部はできるが最終的には非麻痺側の助けが必要
3:共同運動パターンが出ているが、なんとか麻痺手で動作遂行できる
4:ある程度スムーズな動きができるが、共同運動パターンは残っており、スピードの遅さや拙劣さがある
5:正常な動き
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コーチングやモデリングというと、あまり聞きなれない言葉かもしれません。
コーチングやモデリングは、パフォーマンスに対する知識(KP)を伝える際に用いるものです。
体幹をこう、肩をこうなどの質的なものに関する、言語化できるパフォーマンスの知識をさします。
パフォーマンスの知識(KP)については、以下の記事も参考になります。
リハビリテーションと運動学習!保持や転移(汎化)に向けた戦略!
コーチング:
言語で説明するもの。
言語で細かく、もしくはメタファー(長島監督のような)伝え方、どれが伝わり理解しやすいかを確認しながら行うのがポイント。
モデリング:
視覚的に真似をさせる、もしくは他の対象者が行っているのを見せる方法があり、後方病変の失語の方などに有効とされている。
聴覚、視覚どちらの情報が入りやすいのかを見極めるのがポイント。
視覚情報としては、対象者の人よりも少しうまいくらいの方が良い。
誰もが行う課題を1つ用意しておいて、それをビデオに撮っておくとその後も利用しやすい。
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励ましや応援は、対象者の意欲を高めるのに用いられることがよくあります。
これは、報酬の提供ということになります。
具体的には「頑張って、いいですよ!」などです。
励ましや賞賛、応援などは、基本的にはポジティブな言葉で伝えることが大切です。
対象者によっては、どういう言葉が入りやすい、受け止めやすいのかは異なるため、色々と試しながら確認していくことが必要になります。
セラピストと対象者間でのコミュニケーションでは、派ましや応援が入りにくいことがあります。
そのような場合には他者を利用することがあります。
セラピストと同じ立場にいるスタッフでは応援や励ましのエネルギーは少し弱いと思われます。
対象者同士や知らない人から言われることは、対象者の意欲向上につながることをよく経験します。
別の方法としては、昔の動画を見ることがあります。
自分自身の能力の向上を知ったときには、患者のエンパワメント(個人や集団が自分の人生の主人公となれるように力をつけて、自分自身の生活や環境をよりコントロールできるようにしていくこと)はかなり向上します。
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フィードバックの量を減らして、対象者の方に考えてもらいながら課題を行うことで、学習が進みやすい(運動記憶が定着しやすい)と言われています。
100%と50%フィードバックをした実験では、フィードバックの量を減らして、対象者の方に考えてもらいながら課題を行うことで、学習が進みやすいとされています。
学習の維持と学習効率に影響を与えることから、フィードバックを提示しすぎるとよくないことが示唆されています。
セラピストが介入する時間を減らしていくことも大切です。
対象者の方に学習の仕方を覚えてもらって、成功体験を積みながら、最終的には自分で問題解決ができるようにする方向性をいかに作っていくかが大切です。
関わりとして最初は時間をかけるが、徐々に関わる時間を減らしていくことがポイントになります。
最初に難しい課題を設定してしまった場合、間違いなく代償動作が出現するでしょう。
すると、我々セラピストは改善してほしい動きを注意してほしいこととして伝えることがあると思います。
その都度1つ1つ注意点の提示があると、対象者の方にとっては失敗体験をかなり意識させてしまうことになりかねません。
罰(注意や助言)を与えてしまうと、学習は進まないので、罰(注意や助言)を減らすことを意識する必要があります。
アドバイスは価値のある言葉ですが、それは対象者とセラピスト間の信頼性がある時点で価値が生まれます。
対象者が助言を嫌と感じれば罰になるので、ある程度結果が出てから言う事が大切ということになります。
このことからも、まずは課題の難易度を下げて、対象者ができることを提供することを心がけるようにしてください。
どうしてもネガティブな事を言わなければならない時には、
・混合提示(良いところと悪いところを両方伝える)は良くない(混乱するから)
・悪いところは悪い、良いところは良いでそれぞれ伝える
・混合提示をどうしても出したいときには、笑顔で伝えると多少はまし
ということを覚えておくと良いと思われます。
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