脳卒中片麻痺の対象者のトイレ動作の自立を妨げる要因として、立位バランス能力の低下があります。麻痺側下肢の筋出力が発揮、維持できれば立位バランスはコントロールされやすいですが、そうでない場合、非麻痺側(健側)を中心とした戦略をとりトイレ動作を自立に導いていく必要があります。今回、脳卒中片麻痺と立位バランスにおいて、非麻痺側(健側)下肢荷重と姿勢アライメントの関連性をまとめていきたいと思います。
目次
トイレ動作自立を妨げる要因には様々なものがあります。
・麻痺の重症度
・感覚障害有無
・高次脳機能障害の有無
・バランス能力
「回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランス能力の検討」によると、
実用歩行困難かつ下肢Br.SIIIおよびIVの回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランス能力の要因として,非麻痺側筋力および座位保持能力はトイレ動作遂行に必要最低限の要因であり,着座,移乗,閉眼立位,起立,立位保持の5項目に相当する立位バランス能力はトイレ動作自立の決定的要因であることが示された。
〜中略〜
一方,トイレ動作非自立群の特徴は,下肢での体重支持を基本とした立位バランス能力が明らかに低いことであると示唆された。
米持利枝他「回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランス能力の検討」
とあります。
この検討においては、運動麻痺は中等度の方を対象にしていますが、運動麻痺が重度な方においても、トイレ動作の自立を目指すには立位バランス能力の向上が求められることは確かです。
運動麻痺が重度の方においては、どうしても非麻痺側(健側)中心の動作になりますから、そのような制御の立位バランスを獲得していくことが求められます。
バランスを保つというのは、どのような要素から成り立つのでしょうか。
姿勢を保つということは、支持基底面内に重心点を留めるということです。
重心を留めるために必要な筋肉のことを抗重力筋(出力)と呼び、
重心を留めるために必要な感覚のことを前庭覚、視覚、体性感覚と呼びます(視覚、体性感覚、前庭覚を統合することで自分の重心点がどこにあるかがわかる)。
重心点が逸脱しないようにする反応のことを立ち直り反射と呼び、
重心点を移動可能にしているものをストラテジーと呼びます。
姿勢筋(抗重力筋)をある一定の張力に保つものを姿勢筋緊張と呼びます。
バランスが悪い方がいた場合、上記のどこに問題があるのかを評価しなければなりません。
運動麻痺が重度であればあるほど、姿勢コントロールにおいては非麻痺側下肢の働きが重要になります。
前途しましたが、非麻痺側下肢の筋力に加えて、非麻痺下肢を中心とした荷重と良い姿勢アライメントをコントロールする能力が必要になります。
ここで、非麻痺側(健側)下肢荷重と姿勢アライメントについて考えていきます。
次の3つの写真を見たときに、良い姿勢アライメントと思われるものはどれでしょうか。
正解としては、左の写真が一番良いアライメントで、右に行く順で悪いアライメントになります。
ここからは、良い姿勢アライメントと悪い姿勢アライメントの理由を考えていきます。
左図は一番良いと思われる非麻痺側下肢中心の姿勢アライメントです。
図を見てわかるように、体幹の側屈が見られません。
真ん中の図は悪い姿勢アライメントになります。
図を見るとわかるように、体幹を非麻痺側側(健側)に側屈させています。
立位バランスは保持できますが、歩行時(下肢の振り出しや着床)に骨盤の運動を利用しにくく不利な立位姿勢アライメントであるといえます。
右図は一番良くない姿勢アライメントです。
麻痺側に体幹を側屈させており、麻痺側下肢に体重が乗っています。
この肢位では、荷重の中心は非麻痺側下肢ですが、歩行時には悪影響を与える可能性が高まります。
具体的には、下肢振り出し時の足尖の引っかかりや、立脚における骨盤の制御ができない(トレンデンブルグ歩行)、歩行スピードが上がりにくいなどの弊害があります。