高次脳機能障害は、ADLやiADLに影響を及ぼしますが、そのアプローチは多岐に渡り、どのような戦略を取ればよいか迷うことがあります。今回、ADL場面における高次脳機能障害の問題に対するアプローチに対する、大まかな戦略の枠組みについてまとめていきたいと思います。
目次
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私たちが行動を起こすには、以下のような順序を経ています。
・認知
・評価
・行動計画
・運動プログラム
・運動
そしてそれぞれに関わる脳部位は以下のようになります。
・認知(後頭葉、側頭葉、頭頂葉)
・評価(側頭葉内側(辺縁連合野))
・行動計画(前頭前野)
・運動プログラム(補足運動野、運動前野)
・運動(一次運動野、脊髄)
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Grafman(1995)は、道具使用において、以下のような流れが存在すると述べています。
・知覚システム
・ワーキングメモリ、SupervisoryAttentional System、知識表象ネットワーク
・動作システム
知覚システムは、前途した部分で言い換えると「認知」に当たります。
認知段階では、視覚情報をWhatの経路、Whereの経路でそれぞれ捉え、情報を統合し、物体の認識や物体の名前や意味を理解します。
この知覚システムに障害が起こると、診断名としては半側空間無視、空間関係の障害、視覚失認などが生じます。
この段階では、前途した部分で言い換えると行動計画(と、その監視(モニタリングを含む))に当たります。
行動計画段階では、大まかに動作遂行を行う手順が導き出されます。
この段階に障害が起こると、
①物品の使用が不適切
②行動の構成要素が脱落
③他の行動が混入
④行動順序の誤り
⑤1つのステップを反復する
などの問題が見られることがあります。
また、この段階には遂行機能障害も含まれます。
①物事の計画を立てる
②順序立てて行動する
③自分の行動がうまくいっているかどうか確認する
④ワーキングメモリ
⑤意志決定
⑥推論
などに問題を示すことがあります。
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動作システムは、前途した部分で言い換えると「運動プログラム」に当たります。
運動プログラムの段階では、運動前野と補足運動野が関与します。
運動前野は前頭前野からの行動の計画に基づき頭頂葉の感覚情報をもとに運動をプログラムします。
また、小脳の誤差情報を利用し適宜、プログラムを修正します。
補足運動野は頭頂葉の身体情報を用いて基底核に蓄えられている手続き記憶を引き出し運動をプログラムします。
補足運動野や前頭前野について深く知りたい場合は以下の記事も参照してください。
運動前野と補足運動野の役割!視覚誘導性運動と記憶誘導性運動!
よく言われている所の、視覚誘導性の運動(前頭前野)と記憶誘導性の運動(補足運動野)になります。
動作システムに問題が生じると、運動性失行や観念性失行などの障害が生じます。
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下図は、種村 留美「作業療法士の立場から見た高次脳機能障害へのアプローチ」高次脳機能研究 第28巻第3号より引用したものです。
知覚システム(認知段階)の問題では、
・無視側の四肢を積極的に使用すること
・右空間の刺激を少なくする
・空間を限定する
・どのような指示が行為を促しやすいかを試す
などの介入が基本戦略になります。
ワーキングメモリ・SupervisoryAttentional System・知識表象ネットワーク(行動計画段階)の問題では、
・情報(刺激)の制限
・行為が促されやすい環境、道具の使用
・課題を分割して提供
・モニタリングを強化(視覚的(図や説明)、聴覚的刺激などによって)
などの介入が基本戦略になります。
動作システム(運動プログラム)の問題では、
・道具の名称や使い方を知り、正しい道具の使い方学習する
・道具の数を減らす,環境設定などを行い正しい道具を選択を学習する
・手や腕の動かし方を誘導し、正しい道具の動かし方を学習する
・手を正しい位置に誘導し、道具に働きかける位置・道具の持つ位置を学習する
・道具に対して正しい腕や手の形を作り、正しい腕や手のフォームを学習する
・道具と物の正しい関係を学習する
・系列行為で働きかける順序を正しく遂行できる指示や刺激を与える
などの介入が基本戦略になります。
なお、動作システム(運動プログラム)の問題では、繰り返し正しい行為を誘導し、行うことで学習が促されやすくなります。
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