手のしびれがあるときに、考えるべき事のひとつに手根管症候群があります。今回、手根管症候群の原因となる、正中神経症状の原因と評価の考え方についてまとめていきたいと思います。
目次
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腕や指の小指側にしびれがある!尺骨神経症状の原因と評価の考え方!
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手のしびれ(手のひらの橈側で母指、示指、中指、薬指の橈側半分)がある場合に考えなければいけないことは、正中神経の問題です。
正中神経は、
正中神経(せいちゅうしんけい)は腕神経叢に由来する上肢腹側のおよそ真ん中を走行する神経で、前腕部においては、尺骨神経、橈骨神経とならぶやや径の大きな神経である。
前骨間神経、総掌側指神経、固有掌側指神経に分枝する。Wikipedia
とあります。
また、手根管は手関節部にあり、正中神経の通り道となっています。
下図は正中神経の知覚支配の領域です。
なお、正中神経支配の筋は、
となっています。
正中神経の運動障害で有名なのは猿手です。
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ここでは、手根管症候群を確かめるために用いられるテストをみていきます。
手根管部分(下図の黄色丸)を打鍵器(の細い部分)で叩打し、前途した手のひらの橈側で母指、示指、中指、薬指の橈側半分の感覚障害が出現するかを確認するテストです。
このテストでは、叩打により手根管の内圧が上昇し、正中神経が圧迫を受けた場合には神経症状が出現します。
ファレンテストは、両方の手関節を掌屈位とし手背同士を合わせます。
逆ファレンテストは、両方の手関節を背屈位とし、手のひら同士を合わせます。
これら各肢位を60秒間保持し、前途した手のひらの橈側で母指、示指、中指、薬指の橈側半分の感覚障害が出現するかを確認するテストです。
このテストでは、圧迫により手根管の内圧が上昇し、正中神経が圧迫を受けた場合には神経症状が出現します。
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筋肉は関節をまたいで付いており、筋肉がその張力を発揮するには関節の柔軟性が保たれていなければなりません。
関節可動域が制限されていることによって、本来収縮/伸張されるべき長さに至らないと、筋収縮力は低下してしまいます。
ここで、手関節が硬く動きが制限されている場合を考えていきます。
手関節掌屈/背屈が制限されていると前途した理由から、手関節をまたぐ前腕屈筋/伸筋は筋収縮力を上手く発揮できません。
そうなると、補助筋である手指筋群が過剰に働くことが予測されます。
手指屈筋が過剰に働くことにより、手根管の内圧上昇が起こることが考えられます。
手部には横手根靭帯というものがあるのですが、これは母指球(短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋)と小指球筋(小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋)が付着する部分になっています。
横手根靭帯は、手根管内圧が上昇すると 側に押し出されながら緊張する現象(掌側張り出し)が、MRIで確認されている。
これらの筋の過剰な緊張は、屈筋支帯の掌側張り出しを妨げ、手根管内圧の上昇を惹起する可能性が考えられる。運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略
このようなことから、母指球や小指球の筋緊張が亢進していたり、柔軟性の低下があることで手根管内圧が上昇し、それによって正中神経領域の知覚障害につながることがわかります。
小指球や母指球のほぐし方については以下の記事も参照してください。
母指球と小指球の硬さはしびれにつながる!母指球と小指球のほぐし方、緩め方!
前腕回内外の制限がある場合は、肩や手関節による代償運動がみられるようになります。
このとき、手関節の代償運動としては掌屈や背屈が過剰に生じます。
このような代償的な運動を反復的に行っていると、手根管においては手関節掌屈運動によって手根管の内圧上昇が起こることが考えられます。
前腕回内、回外運動では、上橈尺関節において、橈骨が尺骨の上で回旋をしています(軸回旋)。
回内運動では尺骨上で橈骨頭の後方への滑り、回外運動では前方への滑りが生じているともされています。
また、回内運動に伴い橈骨はわずかに外側に移動するともされています。
その際に、橈骨輪状靭帯が制動をコントロールしているのですが、橈骨輪状靭帯の伸張性が低下すると、その動きが制限され、前腕回内可動域の制限が生じることがあります。
前腕回内、回外運動では、下橈尺関節において、回内時には橈骨が尺骨上を前内側方向に滑り、回外時には橈骨が尺骨上を後外側方向に滑ります。
この時の動きの制動を、橈尺靭帯が担っています。
橈尺靭帯の伸張性低下があると、橈骨の動きが阻害されてしまい、前腕回内、回外に制限が生じることがあります。
前途した、前腕回内、回外運動時における下橈尺関節の動きの制動には、前腕骨間膜も関与しています。
円回内筋の作用は、前腕回内と肘関節の屈曲です。
円回内筋に硬さ(短縮や筋緊張亢進)がある場合、手指屈筋群の短縮や筋緊張亢進も考慮する必要があります。
円回内筋の短縮の有無を調べるには、以下の方法を用います。
・手関節掌屈、手指屈曲位で前腕回外の可動域を測定します。
*手関節掌屈、手指屈曲位をとることで、前腕屈筋群が緩む肢位になります。
先ほど、手指屈筋群の緊張も可動域の制限になることを述べました。ここで、手指屈筋群の短縮を区別する方法を考えていきます。
橈・尺側手根屈筋
手指屈曲位で手関節背屈の可動域を測定します。
*手指屈曲位で浅指屈筋が緩む肢位になります。
浅指屈筋
手指伸展位で手関節背屈の可動域を測定します。
*手指伸展位で浅指屈筋が緊張する肢位になります。
方形回内筋は、下橈尺関節を安定させる役割をもちます。
円回内筋は、肘屈曲にも作用する筋肉だったので、方形回内筋が前腕回外を制限しているかを確認するためには、
・肘関節最大屈曲位にて前腕を回外させる
ことが必要になります。
回外筋は肘関節がどの肢位(肘屈伸)においても影響を受けることがありません。
回内制限がある場合に、個別で回外筋の影響を確認するためには、
・肩関節90°屈曲位、肘関節最大屈曲位にて前腕を回内させる
ことが必要になります。
また、手指伸筋群も前腕回外に作用するので、回内制限の原因になりえます。ここで、手指伸筋群の短縮を区別する方法を考えていきます。
長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋
手指伸展位で手関節掌屈の可動域を測定します。
*手指伸展位で長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋が緩む肢位になります。
総指伸筋
手指屈曲位で手関節掌屈の可動域を測定します。
*手指屈曲位で総指伸筋が緊張する肢位になります。
前腕回内外の可動域制限の理由と治療については以下の記事も参照してください。
前腕回内、回外の関節可動域(ROM)制限の原因と改善方法!
先ほど、手関節の可動域制限から手関節筋群の筋収縮力が発揮されず、代償的に手指筋が過剰活動し、手根管内圧が上昇することを確認しました。
ここで、可動域の制限がなくても、手関節掌屈筋に筋力低下があれば、先ほどと同じように手指屈筋(浅・深指屈筋)の過剰活動が生じ、手根管内圧の上昇につながることが考えられます。
また、手関節背屈筋の筋力低下がある場合、物品把持などにおいては手関節は掌屈位を取りやすくなりますが、この状態で力強いグリップを作ろうとすると、どうしても手指屈筋群が過剰活動を強いられることになります。
これは、何度も言っているように、手根管内圧を上昇させる原因になります。
手関節についてのおすすめ記事は以下を参照してください
橈骨遠位端骨折術後の作業療法!浮腫管理から可動域改善、ADL指導まで!
手関節伸展の筋力トレーニングで注意したいこと!代償運動を見逃さない!