股関節と膝関節にはつながりがあり、股関節外側の痛みが膝関節由来のこともあります。今回、膝関節内反不安定性と股関節外側の疼痛の関係性についてまとめていきたいと思います。
目次
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変形性膝関節症の方では、歩行においてラテラルスラストが見られます。
ラテラルスラストは、膝関節が内反することをさします。
変形性膝関節症では、歩行の立脚初期において膝関節の内反が観察されます。
このラテラルスラストは、実は健常者においても見られるものです。
では、健常者と変形性膝関節症の方では、どのような違いがあるのでしょうか。
健常者では、立脚初期においてラテラルスラストが約5°程度起こりますが、立脚中期までの間で0°に戻るという特徴があります。
一方、変形性膝関節症の方では、立脚初期でラテラルスラストが起こると、その後も膝関節が内反したままになっていることが特徴です。
つまり、変形性膝関節症の方では、立脚初期から立脚中期までの間に膝関節の内反を元に戻せないことが問題になることがわかります。
健常者では、立脚中期においての膝関節内反ストレスは最小になりますが、変形性膝関節症の方では立脚中期において最大となります。
詳しくは、以下の記事も参照してください。
変形性膝関節症と膝手術(TKA)!日常生活動作(ADL)指導とリハビリ、健康管理まで!
膝関節内反を制動する受動的な要素としては、腸脛靭帯があります。
健常者では、膝関節の内反制動に大内転筋を用いています。
大内転筋は、立脚初期から立脚中期までの間に、股関節を伸展させながら内転させる働きがあります。
大内転筋は、坐骨結節から起始し、内側上顆に停止するため、膝関節の内反制動にも作用します。
変形性膝関節症の方では、大内転筋の筋活動が見られにくくなります。
また、大殿筋も内反制動に関与しています。
大殿筋には上部繊維と下部繊維がありますが、内反制動に関与するのは大殿筋の下部繊維になります。
大殿筋下部繊維の作用は、股関節の伸展と内転です。
踵接地における外側に対するブレ、ずれを膝関節を伸展しながら大殿筋下部繊維で戻しています。
足関節に作用する筋も膝関節の内反制動の役割を有しています。
足関節の内反、外反についてですが、変形性膝関節症の方では、その動きがほとんどみられないことが知られています。
健常者では、立脚初期に足関節内反の動きが見られ、立脚中期に向けては足関節外反の動きが見られます。
踵接地の際には前脛骨筋の働きがあり、足底接地直後からは後脛骨筋の働きが見られます。
この2つの筋の作用は、CKC(Closed Kinetic Chain)において、外側に傾斜している脛骨を真っ直ぐな位置に引っ張る働きがあります。
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膝関節内反を制動するものには静的な要素と動的な要素があります。
静的な要素としては外側側副靭帯(LCL)などがあり、動的な要素としては大腿二頭筋や膝窩筋があります。
そのため、外側側副靭帯(LCL)損傷や大腿二頭筋、膝窩筋の筋力低下があると、膝関節の内反が強制されることも考えられます。
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膝関節内反による疼痛では、股関節では外側に疼痛が生じる可能性があります。
そのメカニズムには、腸脛靭帯が関与しています。
腸脛靭帯は脛骨近位部前外側に停止しているのですが、これは膝関節内反により伸張を受けます。
このことはもちろん膝関節外側への疼痛を発生するのですが、股関節にも波及します。
それは、股関節に関与する筋肉である大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋とのつながりがあるためです。
よって膝関節が内反されることにより、腸脛靭帯がストレスを受け、つながりのある大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋にもストレスがかかるということになり、股関節外側痛が生じることが考えられます。