依存症、アディクション(嗜癖)の問題発見、初期介入を行い、次には相談を進めていきます。相談援助において、その特性を踏まえた関わりが重要になります。今回、依存症、アディクション(嗜癖)に対する相談援助の基本姿勢について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。
目次
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アルコール問題では、飲みたい・飲まないという葛藤に対して、今も飲みたい・やめられていないという本音を善悪判断されず、安全に語ることができる関係性の構築を目指していきます。
そのための心構えとして、
この問題について彼らが無力であることを受け止め、私たち援助職もまた、そのことに無力であること、やめさせることも治してあげられることもできない存在であることを知り、受け入れることが必要です。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P195
とあります。
援助者が何とかするという姿勢いると、本人の依存傾向が出現し、回復の責任の所在があいまいになってしまいます。また援助職にも責任があるように感じられてしまいます。
本人、援助職とも、人の無力さを共有する関係が大切です。
しかしながら、援助職は情報提供や心理教育の提供、仲間作り、他機関との連携など、動いていくことは必要になります。
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問題に対し援助職がなんとかしようとすると、本人の独立依存葛藤を刺激することになり、またやめられないことに負の感情を持つことにもつながり、本人と境界線のない苦しい関係を構築してしまいます。
援助職が本人の問題に対し、自分の問題であるかのように対処しようとすると、「巻き込まれ」が起きてしまいます。
援助職が仕事を終えてからも利用者のことを考えていたり、上手くいかなかったことがつらいなどと思っている場合、「情緒的な巻き込まれ」が起きています。
このような場合には、境界線を意識的に引きなおすことが必要です。
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家族がアディクションをする機会を与えていないか(家族が後始末や尻拭いをすることなどによる)ということに対する変容が家族には求められます。
また援助職においても、支援方法や解決の仕方によりイネイブリングしている可能性もあります。
アディクション関連問題のみを解決し、根本的な解決に至っていない場合も、イネイブリングしている可能性が高くなります。
援助職による生活支援は、関連問題の解決を手伝う「援助」というイネイブリングである一方、アディクション問題に介入する貴重な切り札なのです。
対人援助職のためのアディクションアプローチ P198
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依存症、アディクションの回復過程には様々な変化(アディクションに気づく・認める、再発など様々)があり、援助職は変化に立ち会うことになります。
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依存症、アディクション問題に家族も関係しているのであれば、家族システムの中で援助していきます。
問題に気づき、相談してきた家族はキーパーソンであり、まずは家族への評価が大切になります。
家族も一人のクライエントとして対応することが大切です。
ビジター関係では、家族が少し話してみた、援助職から関わりをもったなどの淡い関係性で、本人のニーズ確認や、援助職が関わりをもった理由を伝えて内容の共有を図ります。
コンプレナイト関係では、問題について、家族は情報を提供するだけの役割だと思い援助職との関係を持っています。この関係では家族が動いたことを評価し、本人よりも先に家族の意識・行動の変容の必要性を伝えます。
カスタマー関係では、目標ははっきりしないが、家族が解決に向けて関心を持ち援助職と関係を持っている状態です。この関係では支援目標の共有を図り、相談を継続していきます。
家族をクライエントとするのは、本人と家族をセットで捉えて個人境界をあいまいにすることを避けるためです。このことは、家族自身が行動変容の責任を持つこと、本人への手助けの範囲決定など、本人との境界線を意識し吟味してもらうことにつながります。
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家族をシステム全体として捉え、見えてくるパターンやバランスの悪さを変えていけるようにします。
イネイブリングに対しては、何がイネイブリングさせている要因なのかを話し、家族が巻き込まれから外れるようにします。
家族境界に穴をあけ、情報が伝わり、伝えらえるようにします。
子供の巻き込みがみられたら、子供への影響も伝えます。
家族システムの変化の居心地の悪さに対しては、肯定し、順調さを伝えます。
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家族に対する幻想をあまり持たないようにします。
家族が大切であっても、アディクションが優先される場合もあるなど、家族は回復への鍵であると同時に、家族という集団には限界もあります。
初期には、関係づくりやアディクションに対する情報提供や心理教育など積極的に関わります。
援助に対する拒否や多くを語らない場合、援助職は一歩下がり、対象者の世界を教えてもらう立場をとります。
このとき、明らかに違うことに対しては、否定も肯定もせずに傾聴します。
危機への介入や家族への介入時には、リスクを想定し、対応方法と本人への直面化に向けた準備を手伝います。後手に回らないようにしていくことが大切です。
リハビリテーションや回復の段階では、対等で平行的な関係をとります。
良い変化が見られている場合には評価し、回復がとまりそうであれば再発予防や再発した場合の対応方法を一緒に検討します。
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アディクションは行動コントロールの障害であるため、情動に意識を向けて考えないことが大切です。行動の変容に着目していく必要があります。
例えば、「もうやる気持ちはない」と決意を示されても、その意気は受け取りながらも、行動は別だということを意識しておきます。
再発に対し、本人の合理化、否認などに対しては、巻き込まれていると感じたら相手に問題を返します。
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一人でなんとかせず、援助職が他機関の意味を理解し、その必要性を説明できる必要があります。
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アディクション問題では、援助職は依存・転移が起きやすく、支援の境界線があいまいになりやすいといえます。
本人・家族に対し一人の援助職で対応するのではなく、チームとして対応することが理想です。
一つの機関でなく複数の機関でネットワークを構築していきます。
障害認定を受けている場合は障害者総合支援法も利用できます。このように様々な関係性のなかから支援を組み合わせていきます。