水頭症はリハビリテーション場面でしばしば遭遇する診断名です。水頭症の症状としては歩行障害、精神活動低下、尿失禁が三大症候として有名です。今回、リハビリテーションに役立つ正常圧水頭症の特徴と評価、画脳画像、治療などについてまとめていきたいと思います。
目次
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水頭症は髄液の産生と吸収のバランスが乱れる、または髄液の流れが障害されることで脳室などに髄液が滞ることで脳室の拡大がおこり、同時に頭蓋内圧が上昇し、頭痛、嘔吐、意識障害などを生じるものをさします。
正常圧水頭症は、その原因が明らかである場合を続発性正常圧水頭症と呼び、その原因が明らかでないものを特発性正常圧水頭症と呼びます。
続発性水頭症の原因として多いのは、くも膜下出血や頭部外傷、髄膜炎などがあります。
正常圧の意味ですが、これはくも膜下腔での髄液が流れが障害されることで脳室は拡大するのですが、髄液の圧は正常に保たれているということです。
水頭症と言えば、その三大症候として「歩行障害」「精神活動低下」「尿失禁」が代表的ですが、必ずしもその症状が正常圧水頭症で出現するというわけではありません。
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特発性正常圧水頭症における歩行障害の特徴としては、
・歩幅の減少(small-step gait)
・足の挙上低下(magnet gait)
・開脚歩行(broad-based gait)
があり、歩行障害は初期から見られます。
歩行速度は低下し,不安定となる.方向転換時は特に小歩となり,かつ不安定になる.
また外股で歩き,歩幅が歩行中に著明に変動することも特徴とされている.
歩行開始時や狭い場所を歩くとき,方向転換時にすくみ足が顕著となることがある.
パーキンソン病とは異なり,号令や目印となる線などの外的なきっかけによる歩行の改善効果は少ない.
脳脊髄液排除前に複数回歩行検査を行うことによる練習効果はみられない.
脳脊髄液排除後,歩行速度は速くなるが,これは歩幅の改善によることが多い.
また方向転換に要する歩数も減少する.改善の程度は,一時的な脳脊髄液排除後よりもシャント術後の方が大きい.
しかし足の挙上低下や不安定性など,歩幅の改善や歩行速度と比較して改善しにくい症状もある.特発性正常圧水頭症診療ガイドライン2011年改訂版
・もの忘れ
・自発性の低下
・無関心
・日常動作の緩慢化
などが生じます。
軽症の患者でも精神運動速度が低下し,注意機能,作動記憶(ワーキングメモリー)が障害される.
また記憶障害も初期から認められるが,軽症の患者では,記憶の自由再生の障害と比較すると,記憶の再認は保たれていることが多い.また語想起検査(語列挙検査)でも低下を認める.
脳脊髄液排除前に複数回認知機能検査を行っても学習効果はみられない.
シャント術後には認知機能の中でも言語性記憶と精神運動速度が改善しやすい.
前頭葉機能全般,視覚構成機能も改善しうる.しかし認知機能が健常者のレベルにまで改善することは多くない.シャント術前に言語性記憶障害が強い患者ではシャント術後に全般的な認知機能が改善しにくい.
言語性記憶障害に加えて視覚構成障害や遂行機能障害を有する患者ではさらに改善しにくいと報告されている.特発性正常圧水頭症診療ガイドライン2011年改訂版
排尿障害としては、
・切迫性尿失禁
・無関心による失禁
などが生じます。
排尿障害の特徴として,尿意切迫,尿失禁が主体である過活動膀胱を認めること,
およびウロダイナミクス検査にて最大尿流速の低下,残尿量の増加や膀胱容量の低下が指摘されている.
その他,過活動膀胱は,心拍変動解析による副交感神経活動の亢進と有意な相関を示し,それらの変動は脳脊髄液排除やシャント手術後に正常レベルに回復するとの報告がある.特発性正常圧水頭症診療ガイドライン2011年改訂版
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正常圧水頭症の脳画像上の特徴としては、
・脳室拡大(左右対称、特に側脳室前角):頭部CTorMRI
・外側溝(シルビウス裂:側頭葉,前頭葉を分ける溝)の拡大:頭部CTorMRI
・側脳室周囲の淡い低吸収域(periventricular lucency:PVL)
・MRI T2協調orFLAIRにて高信号域(PVH:periventricular hyperintensity)
・脳底槽の拡大や前頭葉部の脳溝の狭小化も見られることがあります。
などが確認できます。
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0:正常
1:注意・記憶障害の自覚のみ
2:注意・記憶障害を認めるが、時間・場所の見当識は良好
3:時間・場所の見当識障害を認める
4:状況に対する見当識は全くない。または意味ある会話が成立しない。
0:正常
1:頻尿または尿意切迫
2:時折の失禁(1-3回/週)以上
3:頻回の失禁(1回/日)以上
4:膀胱機能のコントロールがほとんどまたは全く不能
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タップテストは、腰椎穿刺により髄液を30mL程度排除量することで症状の改善が見られるかを確認する検査です。
症状改善は一週間以内にみられるとされています。
歩行障害が主な指標とされていますが、歩行に改善がみられなくても認知機能、自発性、尿失禁の改善が認められる場合もあリます。
タップテストは偽陰性例もあることから注意が必要です。
タップテストが陰性の場合、ドレナージテストを行い1日100~150mL の脳脊髄液を数日間排除します。
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Gait Status Scale-Revised姿勢反射障害:重心が足裏から外れる程度に後方に軽く引いて評価4:足が後方に出ずそのまま倒れる3:小刻みに突進し自力で止まれない2:6歩以上突進するが自力で止まれる1:3〜5歩で自力で止まれる0:2歩以内で自力で止まれる開脚歩行1:あり0:なし小刻み歩行2:歩幅が足底の前後径未満1:小刻みだが歩幅が足裏の前後径以上0:なしすくみ足2:歩行途中で止まってしまう1:歩行開始時のみすくむ0:なしすり足歩行1:あり0:なし歩行レベル2:手すり〜用手介助を要する1:監視下に独歩可能0:正常左右の動揺2:足の運びが左右にふらつく1:体幹が左右にふらつく0:なし加速歩行2:加速し自力で止まれない1:加速するが自力で止まれる0:なし継ぎ足歩行:8歩の継ぎ足歩行の間に2歩以上やり直したとき障害あり1:障害あり0:なし外股歩行1:あり0:なしTimed Up & Go Test(TUG)
詳しくはこちらの記事を参照
・MMSE
・WAIS-IIIの符号課題,記号探し課題
・TMT(A)
・FAB
・日本版RBMT
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