リハビリテーションにおける栄養障害の有無は、検査値のみでは判断できませんが、ひとつの指標として活用することは有効となります。また病院であれば患者の検査値は把握しやすく、初期評価の際にも評価の手がかりとなりやすいです。今回、リハビリテーション栄養評価における検査値の基準と解釈について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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検査値の中で重要な項目は、尿中尿素窒素と窒素バランスです。
窒素は糖質と脂質には含まれてなく、蛋白質にのみ含まれているため、窒素の検査は蛋白質の代謝を調べることになる。窒素は蛋白質質量のほぼ16%を占めているため、窒素=蛋白質÷6.25となる。
尿素窒素は蛋白質の水溶性最終代謝産物であり、尿中窒素排泄の約80%を占める。その他、便、皮膚などからも排泄される。24時間蓄尿を行ったうえで尿中尿素窒素を調べれば、1日の尿中尿素窒素排泄量を計算できる。PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P36
尿中尿素窒素排泄量(g/day)=蓄尿量(ℓ/day)×尿中尿素窒素(g/ℓ)であり、
これが尿中窒素排泄の約80%を占めるため、
窒素排泄量(g/day)=尿中尿素窒素排泄量×1.25となります。
窒素摂取量(g/day)=蛋白質・アミノ酸摂取量(g/day)÷6.25となります。
なお、アミノ酸・蛋白質摂取量は経口・経管栄養・経静脈栄養で摂取している総量になります。
窒素バランス(g/day)=窒素摂取量−尿中尿素窒素排泄量×1.25
または、
窒素バランス(g/day)=窒素摂取量−尿中尿素窒素排泄量−4(推定非尿中尿素排泄量)
により、窒素バランスが求められます。
窒素バランスが正の値ならば、蛋白質同化状態となり、負の値なら蛋白質異化状態と判定します。
このことから、正の値では筋力トレーニングを行えますが、負の値では維持的な訓練を行うことになります。
栄養状態良好で現在の筋肉量を維持すればよい場合や、肥満で減量して脂肪だけを減らしたい場合、窒素バランスの目標は0である。減量時に窒素バランスが負になると、筋肉量も減少している可能性が高い。一方、成長期の小児、妊婦、筋肉量を増やす場合には、正の窒素バランスが目標となる。
PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P38
筋力トレーニングを行っても筋力が改善しない・低下する場合、窒素バランスを測定し、負の値であれば、肝・腎機能に注意しながら蛋白質と総エネルギー摂取量の増加を検討します。
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主な栄養指標はアルブミン、リンパ球数、ヘモグロビン、コリンエステラーゼ、総コレステロール値となります。
これらは脱水や炎症、肝臓疾患などでは検査値の変化があるため、栄養指標としては不十分となり、また栄養指標にならないとの見解もあります。
項目 | 正常 | 軽度障害 | 中等度障害 | 重度障害 |
アルブミン(g/dl) | 3.6以上 | 3〜3.5 | 2.6〜3 | 2.5以下 |
リンパ球数(/m㎥) | 2,000以上 | 1,200〜2,000 | 800〜1,200 | 800以下 |
ヘモグロビン(g/dl) | 男性13以上女性11.5以上 | 10〜13 | 10以下 | 10以下 |