リハビリテーションでは機能維持を目的とするか、機能改善を目的とするかを決定する際に、栄養指標を目安とすると、計画を立案しやすくなります。その指標にはアルブミン値、BMIとなります。今回、リハの訓練の目安となる栄養指標と、栄養不良時の訓練について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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摂食・嚥下リハと栄養状態に関する調査では、
摂食・嚥下機能の改善群の平均アルブミンは3.2g/dl、不変・悪化群の平均アルブミンは2.8g/dlで統計学的有意差を認めた。慢性閉塞生肺疾患患者の摂食・嚥下障害の研究では、アルブミンが3.1g/dl以上のほうが3g/dl以下と比較して、栄養補助が不要な割合が有意に高かった。
PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P20
とあります。
アルブミン3g/dl以上、BMI18.5以上では栄養改善、筋・筋持久力向上を目標としたリハビリテーションにより機能改善しやすいとういう仮説があります。
軽度の栄養障害(ヘモグロビン10g/dl以上、リンパ球数1,200/m㎥以上)であれば機能改善されやすいと考えられていますが、仮説の域となっています。
アルブミン3.6g/dl以上、BMI22前後では栄養状態も良く、積極的なリハビリテーションのみでも良いですが、栄養状態の維持には注意を払っておきます。
BMI22以上 | BMI18.5-22 | BMI18.5未満 | |
アルブミン3.6以上 | 機能改善 | 栄養・機能改善 | 栄養改善・機能維持 |
アルブミン3.0-3.5 | 栄養・機能改善 | 栄養・機能改善 | 栄養改善・機能維持 |
アルブミン2.9以下 | 栄養改善・機能維持 | 栄養改善・機能維持 | 栄養改善・機能維持 |
アルブミン2.5g/dl、BMI16以下の重度栄養障害でも、エネルギー摂取量が多く、栄養状態が改善傾向であれば積極的なリハビリテーションにより機能改善も考えられます。
健康な時からBMIが18.5以下の場合には、健康な時と比較して著明な体重減少がなければ、機能改善を図ることができます。
過去の栄養指標の推移をみながら今後の経過を予測するなかでリハビリテーションを行っていくことが大切になります。
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栄養障害が不良の場合、訓練内容を適切に管理することが必要になります。
栄養指標以外の全身状態が問題がなくても、筋力・筋持久力訓練は逆効果となるため行ってはいけません。その他体力を使う訓練内容は禁忌となります。
機能維持を目標とする訓練内容としては、関節可動域訓練、ポジショニングの決定、筋ストレッチ、物理療法、筋力強化を除く呼吸訓練の一部、座位訓練、ADL訓練などがあります。運動強度は1.5〜2メッツ以下がよいかもしれないと言われています。
ベッドサイドと訓練室での訓練を考えた時に、栄養状態が好ましくない場合には基本的にベッドサイドで行うことが望ましい(訓練室で行う意義が少ない)ですが、心理的負担の軽減(気分転換、気晴らし)を考慮する場合、訓練室で体力を消耗しない程度に行うことも可能です。
ADl訓練に関しては、患者の現在の筋力・筋持久力で実施可能な範囲で行います。
栄養障害があって筋力・筋持久力の改善が難しくても、効率的な動作学習や自助具・福祉用具の使用によりADLの改善が図られることがあります。
機能レベルでの改善が困難でも、活動・参加れべるでは改善可能なことを知っておく必要があります。