以前、被殻出血と筋緊張についての勉強会に参加してきました。今回、被殻出血と筋緊張の関係性についてまとめていきたいと思います。
目次
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被殻は、大脳基底核の一部です。
大脳基底核を構成する神経核としては、尾状核、被殻、淡蒼球外節、淡蒼球内節、視床下核、黒質緻密部、黒質網様部があります。
また、尾状核+被殻を合わせて線条体、
被殻+淡蒼球を合わせてレンズ核
と言います。
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大脳基底核の基本的な機能は、「抑制」をすることです。
大脳基底核ではブレーキをかける役割があり、アクセルをかける役割はありません。
上図を見てください。前途しましたが、線条体は尾状核+被殻から構成されています。
「抑制」をかける経路には2つの経路があります。
一つが「間接経路」もう一つが「直接経路」です。
間接経路では、ブレーキを強めることで運動をやめる経路(抑制強化の経路)です。
一方、直接経路はブレーキを緩めて運動を促す経路(脱抑制)の経路です。
では、大脳基底核は何を抑制しているかが気になりますが、それは大脳皮質-基底核ループを思い出してみましょう。
大脳皮質—大脳基底核ループは4つのループがあります。
①運動ループ
②眼球運動ループ
③前頭前野ループ
④辺縁系ループ
その中で、運動ループは、補足運動野-被殻-外側腹側核でループを形成しています。
記憶誘導性の運動や、自発的な動作に関与しています。
運動ループの機能低下が起こると、記憶を元にした運動の手順の障害が起こることが予測されます。
また、自発的な運動が起しにくくなることが予測されます。
このようなことから、大脳基底核は、補足運動野からくる記憶を元にした運動情報を抑制していると言えます。
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ここまで、大脳基底核(被殻)についての基本的な役割や機能を説明してきました。
次に、被殻と筋緊張の関係性について考えていきます。
筋緊張は、以下のように定義されています。
- 神経生理学的に神経支配されている筋に持続的に生じている筋の一定の緊張状態
- 骨格筋は何も活動していないときにも絶えず不随意的にわずかな緊張をしており、このような筋の持続的な弱い筋収縮
- 安静時、関節を他動的に動かして筋を伸張する際に生じる抵抗感
Wikipedia
一定の張力を保つことができていると、関節のコントロールが自在にできたり、常に一定の力を発揮することが可能になります。
また、筋緊張の病態を表す用語として。「異常筋緊張」というものがありますが、筋緊張が高すぎると「筋緊張亢進」、筋緊張が低すぎると「筋緊張低下」と言われます。
正常範囲内では、筋緊張が高い状態を「高緊張」、筋緊張が低い状態を「低緊張」と呼びます。
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筋緊張のコントロールを、脳の側面から考えた場合、大まかには抑制系と促通系に分けることができ、その制御は脳幹で行われています。
筋緊張の抑制系は脳幹網様体が関与し、「脚橋被蓋脚(PPN)」や「抑制性網様体脊髄路(橋網様体脊髄路、延髄網様体脊髄路)」があります。
一方、筋緊張の促通系には「前庭脊髄路」「促通性の網様体脊髄路」などがあります。
筋緊張の抑制系はさらに上位レベルでは補足運動野や大脳基底核が関与し、促通系は運動前野や小脳が関与します。
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脚橋被蓋核とは脳幹にある神経核である。上小脳脚を取り囲み、黒質の尾側に位置する。アセチルコリン作動性ニューロンが豊富に存在する他、グルタミン酸作動性、GABA作動性、各種の神経ペプチドを産生するニューロンなどが混在する。脚橋被蓋核ニューロンは主に大脳皮質、基底核より入力を受け、視床や視蓋、基底核、脳幹網様体へ投射する。したがって脚橋被蓋核は基底核-大脳皮質ループおよび網様体脊髄路系を介して運動の発現や姿勢筋活動の制御に関与するとともに、視床-大脳、大脳基底核投射や網様体賦活系を介して意識レベルや睡眠・覚醒、注意、動機付け、学習の調節に関わっていると考えられている。
脚橋被蓋脚 小林康 脳科学辞典 10.14931/bsd.1470
難しく書いてはありますが、筋緊張の視点で考えると、脚橋被蓋核の役割は「筋緊張を抑制する(低緊張にする)」ことです。
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前途しましたが、大脳基底核の基本的な役割は「抑制」であることは述べました。
では、大脳基底核と脚橋被蓋核の関係性を見ていきます。
私たちが、正常な筋緊張を保てていると仮定します。
その際に、大脳基底核と脚橋被蓋核という狭いくくりで見ていくと、
筋緊張を抑制する(正常範囲内である低緊張にする)脚橋被蓋核を大脳基底核(被殻含む)が抑制(ブレーキをかける、やめさせる)していることで、筋緊張は高緊張または一定の張力を保つことができます。
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大脳基底核(被殻)が損傷すると、筋緊張を抑制する脚橋被蓋核を抑制できなくなります(ブレーキをかけれない、やめさせれない)。
すなわち、筋緊張は低下するということになります。
ここで、大脳基底核の役割の一つを思い出して見ます。
「補足運動野からくる記憶を元にした運動情報」に関与するということがありました。
これを筋緊張の側面から考えると、記憶を元にした運動情報というのは、運動が起こる前の段階ですから、運動が起こる前の予測的な姿勢制御に関与していることが伺えます。
このことから、大脳基底核(被殻含む)または中大脳動脈領域の損傷が見られる場合、運動が生じる前の筋緊張を高めることができるかということも評価ポイントになります。
そして、運動に伴う姿勢調整や運動調整に必要な筋緊張のコントロールが行えているかを見る必要があります。
また、非麻痺側の代償運動で努力的な動作を行なっている場合、筋緊張の異常(亢進)を引き起こしてしまうことも考えられます。
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