Body Lateropulsionの病巣やメカニズム、評価とアプローチの考え方についてまとめています。
目次
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Body Lateropulsionとは、筋力が保たれているにも関わらず、不随意に身体が一側に傾いてしまう現象を言います。
不随意ですから、意識に上らないレベルで傾きが生じるため、バランス制御や歩行などの妨げになります。
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Body Lateropulsionに関する責任病巣として、背側脊髄小脳路に一致した延髄外側の小梗塞が報告されています。
脊髄小脳路の問題により、無意識レベルで伝達される下肢と体幹からの固有感覚経路の障害がBody Lateropulsionに関与するとされています。
延髄については以下の記事も参照してください。
ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)ではなぜ運動失調が起きる?予後予測は?
脊髄小脳路
脊髄小脳路は、筋紡錘や腱紡錘などの固有受容器からの固有受容感覚の内、体の姿勢・位置・運動に関するもので、意識に上らないもの、もしくは反射的なものは小脳に伝達されるのですが、この経路を脊髄小脳路と言います。
要するに、無意識レベルで姿勢にや運動に関する情報が伝わる経路ということになります。
前庭脊髄路は、網様体とともに伸筋の促通に関与します。
筋緊張に関係するγ運動ニューロンだけでなく、α運動ニューロンにも関与します。
前庭脊髄路は、外側と内側の2つの経路があります。
外側前庭脊髄路は、同側支配で、屈筋の抑制と伸筋の促通を行います。
内側前庭脊髄路は、両側支配で、頸部や体幹の伸筋を促通します。
前庭脊髄路の問題により、同側の体幹・下肢の伸筋群の筋緊張低下がBody Lateropulsionに関与するとされています。
前庭脊髄路などの筋緊張に関わることについては以下の記事を参照してください。
延髄外側梗塞では病巣と同側に倒れる
橋上部被蓋梗塞では病巣と反対側へ倒れる
橋下部被蓋梗塞では病巣と同側に倒れる
という報告があります。
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垂直を判断するための一つに、SVV(subjective visual vertical:主観的視覚的垂直位)があります。
SVVでは光る棒を視覚のみの情報から口頭で垂直に置くような評価が行われます。
Body Lateropulsion では、SVVが強く偏移することが知られています。
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Body Lateropulsionの評価には、Burke Lateropulsion Scale(BLS)やPostural Assessment Scale for Stroke(PASS)があり、これらは信頼性・妥当性が高いとされています。
①寝返り
最初に影響を受ける側に向かって、次に影響を受けない側に向かって寝返りをします。
0=他動的な寝返りへの抵抗なし
1=穏やかな抵抗
2=中程度の抵抗
3=強い抵抗
1=両方向に抵抗がある場合は、1点追加
②座位
足底が床から離れた状態で両手を膝に置き端座位をとります。
予想される片麻痺者の反応は、非麻痺側に体重をかけることです。
ある例では正中(垂直)位にされると受動的に麻痺側に倒れます(*これは採点されない)。
体幹を麻痺側に向けて垂直位から30度離れた位置に配置し、垂直に戻そうとする試みに対する反応を評価します。
0=垂直位への受動的な復帰に対する抵抗はない
1=体幹、腕、または脚の自発的または反射的な抵抗運動は、垂直に近づく最後の5度でのみ見られる
2=抵抗運動はあるが、垂直から5〜10度以内で始まる
3=抵抗運動は垂直から10度以上で始まる
③立位
予想される片麻痺者の反応は、非麻痺側に重心移動するか、垂直位に置かれたときに受動的に麻痺側に倒れます(*これ
採点されない)
体幹を麻痺側に向けて垂直位から15〜20度離れた位置に配置し、垂直に戻そうとする試みに対する反応を評価します。
0=重心が十分に非麻痺側下肢を超えるまで抵抗はない
1=正中線から5度から10度超えようとすると抵抗が始まる
2=抵抗が垂直位の5度以内で見られる
3=抵抗が垂直位の5〜10度で始まる
4=抵抗が垂直位から10度以上で始まる
④移乗
非麻痺側への移乗時の抵抗を評価します。
0=非麻痺側への移乗に対する抵抗なし
1=非麻痺側への移乗に対する軽度の抵抗
2=移乗に対する中程度の抵抗(1人介助)
3=移乗に対するかなりの抵抗(2人介助)
⑤歩行
歩行時における側方突進を評価します。
0=側方突進なし
1=軽度の側方突進
2=中等度の側方突進
3=強い側方突進(2人介助を要するまたは歩行できない)
最高点は17点になります。
姿勢保持
①座位
支えなしで座る(高さ50cmの検査台の端に座り足が床に触れる)
0=座れない
1=手などで少し支えて座ることができる
2=サポートなしで10秒以上座ることができる
3=サポートなしで5分間座ることができる
②サポート付きで立位保持(足の位置は自由、他の制約なし)
0=支えがあっても立つことができない
1=2人の強いサポートで立つことができる
2=1人の適度なサポートで立つことができる
3=片手支持で立つことができる
③サポートなしで立位保持(足の位置は自由、その他の制約なし)
0=サポートなしで立つことはできない
1=サポートなしで10秒間立つことができる(一側に大きく傾く)
2=サポートなしで1分間立つことができる(わずかに非対称に立つ)
3=サポートなしで1分間以上立つことができ、同時に肩の高さ以上で腕を動かす
④片脚立位(非麻痺側)
0=立つことはできない
1=数秒間立つことができる
2=5秒間以上立つことができる
3=10秒間以上立つことができる
⑤片脚立位(麻痺側)
0=立つことはできない
1=数秒間立つことができる
2=5秒間以上立つことができる
3=10秒間以上立つことができる
姿勢変換
・項目10から12は、サポートなしで行う
・採点
0=実行できない
1=多くの助けを借りて行える
2=ほとんど助けなしで行える
3=助けなしで行える
⑥背臥位から側臥位へ(麻痺側)
⑦背臥位から側臥位へ(非麻痺側)
⑧背臥位から端座位へ
⑨端座位から背臥位へ
⑩端座位から立位へ
⑪立位から端座位へ
⑫立位で床から鉛筆を拾う
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姿勢保持に必要な感覚は、視覚、体性感覚、前庭覚です。
その中で、延髄外側の損傷では前庭覚や視覚に問題が生じることが多いので、体性感覚を用いてアプローチすることがあります。
具体的には、触覚や圧覚を用いる(意識できる感覚)ことです。
意識的に傾きが見られる側と反対に荷重するように意識してもらい、その際に足底に生じる感覚入力の左右差を比較してもらうなどしながら姿勢制御を学習してもらいます。
前庭脊髄路の問題により、同側の体幹・下肢の伸筋群の筋緊張低下がBody Lateropulsionに関与することを前途しました。
筋緊張低下に対しては、以下に述べるようなアプローチを用います。
筋緊張のコントロールを高める(低緊張→適正化)には、スクワットが利用できます。
屈曲時:急速に行います。
延髄網様体からの中枢性の調節が動的γ運動ニューロンを介して、Ⅰa感覚神経応答の感度(速さ)を高める(伸筋の遠心性従重力コントロール)。
伸展時:ゆっくりと行います。
橋網様体や前庭脊髄路からの中枢性の調節が静的γ運動ニューロンを介して、Ⅱ感覚神経応答の感度(長さ)を高める(伸筋の求心性抗重力コントロール)。
筋緊張適正化に向けての話は、以下の記事を参照してください。
筋緊張に関わるγ運動ニューロンの特徴から考える筋緊張の高め方(適切な筋緊張に調整できるか)
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