リーチ動作の評価では、肩甲上腕関節、肩甲骨運動、体幹運動、重心移動など、観察項目と分析の視点には様々なものがあります。今回、リーチ動作の評価と解剖・運動学的解釈として、胸椎運動に着目した分析方法についてまとめていきたいと思います。
目次
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対象物に向かってのリーチ動作では、骨盤は前傾運動を伴います。
骨盤前傾は、腰椎の運動に伴うものと、股関節の運動に伴うものがあります。
腰椎の運動に伴うものとしては、腰椎前彎に伴う骨盤前傾で、股関節の運動に伴うものとしては、股関節屈曲に伴う体幹前傾(骨盤前傾)となります。
腰椎の前彎運動では、第3腰椎の動きが重要です。
第3腰椎は水平な位置をとっており、前彎運動のスタートになるためです。
第4・5腰椎は、仙骨が傾いた方向と同じ動きをしますが、第3腰椎は水平のままで動きを切り替えていきます。
そのため、第3腰椎はモビリティーとスタビリティーが必要になります。
腰椎を前彎させるために必要な筋肉は、
・多裂筋
・腸腰筋(主に大腰筋)
です。
多裂筋が収縮(toneが上がる)すると腰椎を前彎させ、骨盤は前傾します。
大腰筋が収縮(toneが上がる)すると腰椎を前彎させ、骨盤は前傾します。
第3腰椎のモビリティーとスタビリティーが低下し、例えば第3腰椎が前に傾くと、それをとめるために背筋群は過剰に働いてしまいます。
また、胸椎を動かす筋は第3腰椎についており、第3腰椎が後ろに傾くと、それよりも上部にある筋群は作用しにくくなるため、胸椎は伸展できず屈曲位をります。
胸椎に関する多裂筋は、第8・9胸椎を境として放射状に付着しています。
そのため、胸椎の伸展を作っていくのに重要なのは特に第8・9胸椎です。
対象者の方でよくみられるのは、対象者に「背中を伸ばしてください」と指示した際に、胸椎の伸展を腰腸肋筋などを使っているパターンです。
その場合、上部体幹の伸展は努力的には生じますが、第3腰椎は屈曲したままということが多いです。
理想的な胸椎の伸展は、第8胸椎が(おおよそ肩甲骨下角の位置)前方に移動するような動き方です。
また、胸椎の伸展が出にくい方では、後頭で筋緊張が亢進し、上位頚椎伸展、下位頚椎が前方移動し、目線が上に行くようなことが観察されます。
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通常のリーチング動作では、第8胸椎が対象物に向かいまっすぐに前へ、水平に動いていくことが重要になります。
しかし、上部体幹の屈曲は、第8腰椎が水平に前方移動するのを妨げてしまいます。
これでは胸椎は下方向に向かい、肩だけで上肢屈曲を作ろうとしてしまいます。
また、代償的に上腕二頭筋の活動を高めて、リーチングで肘が屈曲パターンとなってしまうことも考えられるでしょう。
このような場合、第8胸椎が水平に前方移動すれば、上腕二頭筋の過緊張は軽減される事が考えられます。
これらのことから、リーチ動作では多裂筋が適切に働き、胸椎伸展できているかを評価する必要があります。
その際、胸椎は肋骨の可動域により影響を受けることも知っておく必要があり、肋骨の可動域確認も行う必要があります。
リーチ動作で胸椎が屈曲すると、重心は前方移動しているようで、実は後方移動となっています。
胸椎伸展は、主に胸椎の多裂筋、両側の僧帽筋下部繊維の作用によってキープされます。
これが、最長筋や腰腸肋筋などの作用によって伸展を努力的に作ると、体幹回旋を伴うリーチ動作が行えなくなります(回旋動作を止めるように作用する)。
すると正中線を超えたリーチ動作が困難となります。
寝返りでは下部体幹のローテーション動作が生じにくくなり、胸椎屈曲位リーチでは着座時に下肢伸筋の遠心性収縮が用いにくくなります。
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対象者は、筋の問題、関節可動域の問題などにより、上肢リーチ動作において、胸椎屈曲位でのリーチパターンにならざるを得なくなっています。
そのため、まずはそのパターンから脱却できるように治療展開していく事が大切です。
ストレッチポールがなければ、バスタオルを2枚巻いた物でも利用可能です。
ストレッチポールの上で臥位となり、胸椎が伸展、肩甲骨内転位の状態から、天井に向かいまっすぐリーチ動作を行います。
これは、仙骨、第8胸椎、後頭隆起を一直線上に配置し、脊柱が屈曲位とならずにリーチ動作の学習を促す事ができます。
頭上リーチは、その名の通り、頭よりも上方へのリーチ動作です。
頭上リーチを行うためには、胸椎伸展運動が必要です。
胸椎屈曲での頭上リーチでは、屈曲姿勢の高齢者の方を見ているとわかりやすいですが、頭上にバンザイすることはできません。
胸椎屈曲を防ぐ(または胸椎屈曲しないように意識させる)ためには、壁を背にした座位や立位となり、頭上リーチを行う方法を選択する事があります。
頭上リーチでは、対象物を用いてリーチさせ、それを把持させる方がより自然なリーチ動作を促せることになります。
ちなみに、頭上リーチでは、中指が天井方向を向き、前腕回内しながら小指球が対象物に向かってリーチされます。
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