間質性肺炎では、肺高血圧症や心不全の合併やその有無に注意しながらリハビリテーションを行っていく必要があります。今回、間質性肺炎と肺高血圧症、心不全との関連性とリハビリテーションについてまとめていきたいと思います。
目次
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間質性肺炎は、肺の間質に炎症が起こっている疾患の総称です。
予後不良で治療も困難な事が特徴的です。
間質性肺炎が進行して組織が繊維化したものを肺線維症と呼んでいます。
間質性肺炎については以下の記事を参照してください。
間質性肺炎と労作時低酸素-なぜ低酸素?リハビリの注意点は?-
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間質性肺炎では労作時の低酸素血症が著明になる事が特徴です。
多くの場合酸素投与が行われます。
その理由としては、酸素投与により低酸素血症および組織低酸素の改善や、肺循環における低酸素性血管攣縮を予防し肺高血圧を予防する事にあります。
ここで、肺循環における低酸素性血管攣縮について考えていきます。
肺循環とは、心臓と肺の間での血液の移動の事をさします。
脱酸素かされた血液が肺に運ばれて酸素を吸収し、二酸化炭素を放出します。
そして、酸素化された血液は心臓に戻ります。
先ほど、酸素投与により肺循環における低酸素性血管攣縮を予防し肺高血圧を予防する事が重要だと述べました。
低酸素性血管攣縮とは、肺胞気酸素分圧が低下した場合に、その肺胞に隣接する細動脈の血管平滑筋が収縮する現象です。
これは、ガス交換能が悪い肺胞への血流を低下させて、肺内シャントを減少させて低酸素血症の増悪を抑えようとする働きです。
なお、肺内シャントとは、肺動脈由来の血液が肺胞で酸素を受け取らないで肺静脈へ行く異常な血流交通のことをさします。
肺循環における低酸素性血管攣縮により肺血管抵抗が上昇して肺高血圧症となります。
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心不全とは病名ではありません。
心不全は、静脈還流(心臓に戻ってくる血液の量。 上・下大静脈から右心房に戻ってくる血液量)が十分であるにもかかわらず、心臓が全身の組織の代謝の必要に応じて適当かつ十分な血液を駆出できない状態です。
心不全の症状を考える際には、
・前方障害
・後方障害
の2つを考えると理解が進みます。
前方障害とは、血液を送り出す能力が低下することによって起こる症状です。
前方障害があると心拍出量が減ることで、筋肉に血液が行き渡らなくなり、疲れやすさや気だるさなどの症状を訴えることがあります。
また、腎臓への血液が低下することで尿量が減少したり、昼間は筋肉に行き渡る血液が夜には腎臓へ行きやすいことから夜間頻尿の症状につながることもあります。
後方障害とは、血液のうっ滞によって起こる症状です。
血液を全身に送り出す能力が低下すると、心臓から前方へ血液が進みにくくなり、心臓の後方(血液を受け入れる)では血液のうっ滞が生じます。
心不全と一口に言っても、病態としては3つがあります。
・左心不全(肺循環系)
・右心不全(体循環系)
・うっ血性心不全
この中で、うっ血性心不全は左心不全と右心不全の病態が合わさっているものになります。
右心不全では、以下のメカニズムにより各種症状が出現します。
・右心拍出量低下
↓
・残血量増加
↓
・右室拡大し、後方障害も起こる
↓
・右房圧上昇(右房から血液を送れない)
↓
・体循環系の拡張と圧上昇(逆行性に体循環系に圧が伝わる)
↓
・全身うっ血
↓
・全身浮腫(肺を除く。胸水貯留はみられる)
これが体循環系のうっ滞です。
肺高血圧症では、肺動脈から血液を送り出すために、右心室に対する負担が大きくなります。
負担が長期化すると右心室の肥厚や拡大によって、肺性心となり、その結果右心不全となります。
心不全などの心臓リハビリテーションについては以下の記事も参照してください。
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そのために、ADL評価を通じて、低酸素状態になっていないかモニタリングを行う事が大切になります。
動作遂行に必要な酸素流量を適切に設定する事が求められます。
動作開始前の酸素投与量を増やしておくことも検討します。
動作遂行中は適宜休憩をとることや、休憩しやすいように作業スペースに椅子を設置するなどの環境設定も必要になります。
リハビリテーション場面における対象者は高齢の方が多いと思います。
高齢者における心不全として注意しておきたいことがあります。
それは、
・脱水に伴いうっ血所見がはっきりとしない
ことです。
このような高齢者の場合、後方障害に加えて、前方障害の有無もしっかりと確認することが必要になります。
前途しましたが、前方障害に見られる症状として、
・全身倦怠感
・運動耐容能低下
・尿量減少
・夜間頻尿
などがあります。
対象者の疲れやすさなどの訴えを通して、心不全に陥っていないかを再度確認しておくことも、リスク管理においては重要になります。
慢性心不全の増悪を避けるためには、その兆候を把握しておくことで、早期発見に努めることが重要です。
慢性心不全増悪の兆候として、
・下腿浮腫
・体重増加
・運動耐容能低下
・全身倦怠感
・食欲不振
・夜間頻尿
・尿量減少
などがあります。
体重増加に関しては、水分のIN・OUTの結果が出るため、尿量を測定するよりも信頼性が高まります。
注意しておきたいこととして、呼吸困難やSpO2低下はあまりみられないことが多く、胸の異常音もわからないことが多くあります。
そのため、上記のような兆候がみられた場合には、Drと相談して、レントゲンを撮って確認してもらうようにすることが重要になります。