目次
腰部脊柱管狭窄症は、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、中を通る神経や血管が圧迫され、血流が悪くなり、腰や脚の痛みやしびれが起こる病態のことを指します。
一般的には50歳以上からみられ、70歳以上の高齢者では、二人に一人の割合で発症される確率があると言われています。
腰部脊柱管狭窄症の好発部位は腰椎のうち、上から4番目と5番目の間から発生する神経が障害されることが多いとされています。
脊柱管が狭くなる原因としては、以下のことが考えられます。
・加齢に伴う腰椎の椎間板が膨らむ、周囲の靭帯が厚くなる、骨が変形するなど
・他の腰の病気やケガなどの合併症
・長時間の座位・立位姿勢やによる腰へのストレス
腰部脊柱管狭窄症の症状を確認していきます。
•下肢の痛み(坐骨神経痛など)
•下肢のしびれや異常感覚(灼熱感など)
•間欠性跛行
•腰痛
•排尿・排便障害(頻尿、残尿、失禁など)
•その他(下肢脱力、間歇性勃起、陰部のしびれなど)
間歇性勃起とは、性的な欲求および興奮とは無関係に疼痛を伴う異常な勃起が持続する状態です。
初期では軽度のしびれや痛みが主で、日常生活への影響は少ないこともあるが、重症化すると下肢の痛み、しびれ、筋力低下により歩行困難になる場合もあります。
腰部脊柱管狭窄症における手術療法にはいくつかの種類がありますが、ここでは「除圧術」と「脊椎固定術」について見ていきます。
まずは「除圧術」です。
除圧術は、神経を圧迫している部分の骨や靱帯を部分的に切り取って、神経の通り道を広げる手術方法です。
除圧術は骨への衝撃が少なく、腰の動きが残りやすいことが特徴とされています。
過度な除圧による姿勢不良や除圧の不足による症状の残存の可能性も指摘されています。
次に「脊椎固定術」です。
脊椎固定術は腰椎すべり症など腰椎の不安定性がある場合に、除圧をした後スクリューやボルトなどで固定する手術方法です。
腰骨の姿勢の矯正が可能ですが、体幹や骨盤の運動が制限されることが特徴とされています。
固定された骨の周囲に余分な動きが生じ、新たな症状が発現する可能性も指摘されています。
腰部脊柱管狭窄症における術後の症状改善は人により様々とされています。
元々の症状が重症の場合、改善があまり良くないことがあります。
排尿障害、筋力低下、しびれの症状は手術を行っても良くならないことがります。
脊椎固定術では、スクリューにより脊椎が固定されます。
固定の際、必要に応じて骨移植が行われることもあります。
移植部分の骨癒合は8-12週(最長1-2年)かかるため、骨癒合するまでは固定部に過度な負担をかけないようにすることが大切になります。
また、術後は固定部を安定させるため、装具を使用することが一般的です。
装具装着により、体幹が必要以上に動くことを防ぎます。
術後は過度な屈曲、伸展、回旋動作は避ける必要があります。
術後の痛みの経過と運動負荷について考えていきます。
術後1〜2週間は痛みが強い場合が多いため、まずは痛みが生じにくい起き上がり方法等の獲得が重要になります。
また、服薬による痛みのコントロールも並行して行われます。
術後間もない期間での歩行など、負担をかけすぎないように注意することも必要です。
リハビリの運動で負担がかかりすぎないように配慮しつつ負荷量を決定していきます。
痛みや炎症が改善する頃(術後3-4週程度)より徐々に負荷を強めていくことが必要です。
腰部脊柱管狭窄症の術後における立位姿勢の工夫について考えていきます。
神経症状を誘発しにくくするためにはどのようなことがポイントになるのでしょうか。
いかに、ポイントを箇条書きで示します。
・過度な反り腰姿勢がNG
・腰の反りが減少すれば、脊柱間内圧は減少する
・腰を屈めた姿勢ばかりとるのもNG
・腰部筋、椎体、椎間板に負担をかけ、別の腰痛につながる
・骨盤の傾きがなく、脊柱が真っ直ぐになる姿勢
上記のようなポイントに気をつけて姿勢保持していると、神経症状を誘発しにくかったり、腰部への負担が少ない姿勢をとることにつながります。
腰部脊柱管狭窄症の術後において、悪い立位姿勢の例を示します。
左図の姿勢は、骨盤が前に倒れ、前を見るために身体を起こしています。
右図の姿勢は、骨盤が前に倒れ、脊柱が反る姿勢になっています。
これらのような姿勢保持は、神経症状を誘発しやすい姿勢と言えます。
腰部脊柱管狭窄症の術後において、良い立位姿勢の例を示します。
図の姿勢は、骨盤の傾きが少なく、脊柱が真っ直ぐになっている状態です。
これらのような姿勢保持は、腰部への負担が少なく、神経症状を誘発しにくい姿勢と言えます。
腰部脊柱管狭窄症の術後において、立ち仕事をする際の姿勢の工夫について見ていきます。
作業姿勢をとる際は、台に片足を乗せることがポイントになります。