リハビリテーションにおいて、痛みの存在は治療目標の達成に影響したり、なにより対象者本人の身体的、精神的苦痛を強めることになります。痛みの評価では、痛みの性質や日常生活状への痛みの生じ方を把握しておくことが重要です。今回、痛みの評価における、面接での注意点や評価バッテリーの用い方について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 痛みの評価ー面接での注意点から評価バッテリーの用い方までー

引用・参考文献

面接での注意点:面接の準備

痛みの評価前には、対象者の現病歴、既往歴を確認する必要があります。
現病歴からは、診断名、発症日、発症当時の様子、どのような障害があるか、医学的処置、発症から現在までの経過がわかります。
既往歴からは、現在の障害や訴えを生じさせる原因となる過去の外傷や疾患の経過について把握することができます。

面接の実施:全体を通しての注意点

・質問に対しての返答に行き当たりばったりな答えや曖昧さはないかを確認する

・質問の順番はそれほど重要ではない

・痛みに対する対象者の行動に変化を与え、その認識を変えるため、「痛み」という言葉に変えて、「不快感」「〜に困ってはいませんか」などの言い回しを用いる

・面接での評価項目は、痛みの傾向、痛みの部位、痛みの感じ方、痛みの期間、痛みの強さ、痛みと時間帯、痛みと睡眠、痛みの程度に影響する要因、活動時の痛みと困難さ、障害と活動遂行能力

痛みの傾向

発症時からの痛みの変化を把握するために、「怪我をしてから痛みは強くなりましたが、おさまってきていますか、変わりがないですか」と尋ねます。
最近1ヶ月の症状を確認します。
これにより、手術などをしてからの対象者の痛みの強さの変化を確認します。
返答で「強くなった」「ましになった」などが聞かれた場合、その心あたりがあるかどうかを尋ねます。
この項目では、対象者が自分の痛みをどのように感じているか、考えているかをセラピストが知る上で重要です。

痛みの部位

痛みの部位をボディチャートを用いて指し示すようにしてもらいます。
痛みのある範囲は細かい斜線で、特に痛みの強い部位は×印、放散痛は矢印で示すなどします。
どのように指し示すか観察することにより、痛みを体の深部に感じているのか、または表面に感じているのかの判断にも役立つことがあります。

強い痛みのある人は、痛みの場所を正確に指し示すことが可能です。
指し示せない場合、痛みの拡散が考えられます。

痛みの部位の特定は、痛みの原因の判定への手がかりとなります。
末梢神経の走行に沿う放散痛であれば、末梢神経性の疾患があることを表しています。

痛みの感じ方

痛みの表現には様々な言葉があります。
以下は、痛みの程度の弱い順に、痛みを表現する言葉です。
1.ちらちらする、ぶるぶる震えるような、ずきずきする、ずきんずきんする、がんがんする

2.びくっとする、ピカッとする、ビーンと走るような

3.ちくりとする、千枚通しで押し込まれるような、ドリルで揉み込まれるような、刃物で突き刺されるような、槍で突き抜かれるような

4.鋭い、切り裂かれるような、引き裂かれるような

5.つねられたような、圧迫されるような、かじり続けられるような、ひきつるような、押しつぶされるような

6.ぐいっと引っ張られるような、引っ張られるような、ねじ切られるような

7.熱い、灼けるような、やけどしたような、こげるような

8.ひりひりする、むずがゆい、ずきっとする、蜂に刺されたような

9.じわっとした、はれたような、傷のついたような、うずくような

10.さわられると痛い、突っ張った、いらいらする、割れるような

11.うんざりした、げんなりした

12.吐き気のする、息苦しい

13.こわいような、すさまじい、ぞっとするような

14.痛めつけられるような、過酷な、残酷な、残忍な、死ぬほど辛い

15.ひどく惨めな、わけのわからない

16.いらいらさせる、やっかいな、情けない、激しい、耐えられないような

17.ひろがっていく(幅)、ひろがっていく(線)、貫くような、突き通すような

18.窮屈な、しびれたような、引き寄せられるような、しぼられるような、引きちぎられるような

19.ひんやりした、冷たい、凍るような

20.しつこい、むかつくような、苦しみもだえるような、ひどく恐ろしい、拷問にかけられているような

この中から、現在の痛みを最も適切に表しているカテゴリーの中から、言葉をひとつ選んでもらいます。
対象者が適当に選んでいるか、注意深く読み込みながら選んでいるかなどの情報も重要になります。

痛みの期間

各部位の痛みに関して、「一時的」「断続的」「持続的」のどれに当てはまるかを選んでもらいます。

痛みの強さ

痛みの強さの評価では、Numerical Rating Scale(NRS)、Visual Analogue Scale(VAS)、Verbal Rating Scale(VRS)を使用します。

NRSは、0から10の11段階に痛みを分け、痛みが全くないのを0、最大の痛みを10とし、その点数を尋ねます。
VASは、100mmの線の左端を「痛みなし」、右端を「最大の痛み」とし、対象者の痛みの程度を表すところに印を付けてもらいます。
VRSは3段階から5段階の痛みの強さを表す言葉(痛みなし、少し痛い、痛い、かなり痛い、耐えられないくらい痛い)を数字順に並べ、どれに当てはまるかを選択してもらいます。
VASは筆記用具が必要で、VRSは言語の問題や、段階が少なく痛みを詳細に評価できないこともあり、一般的にはNRSが推奨されています。
3つの評価法は、MMSEが18点以上の軽度の認知機能低下者においても使用可能です。
NRSとVRSは、10~17点の中等度認知機能低下者でも使用可能とされています。

上記の物を用いて、
・今どのように感じますか
・最も調子がいいときは
・最も調子が悪い時は
・これまでで最もひどい痛みは
・これまでで最もひどいと感じた痛みは何か(自由回答)
を尋ねます。

「痛みの期間」での評価結果、対象者の観察を、痛みの強さで得られたデータとを組み合わせて、
①伝えようとしている痛みを感じているのか
②伝えようとしている痛みを感じていると信じているのか
③大げさに痛みを伝えようとしているのか
を見分ける手がかりにします。

 痛みと時間帯

どの時間帯(朝、昼、晩、睡眠中)になると痛みが始まるか、
痛みがひどくなるのか、を尋ねます。
不快感が一番ひどくなるがどうしてこの時間なのかを尋ねます。

対象者の中には、就寝前に痛みが増強するということも多くあります。
これは、活動中は痛みに対する注意をそらすことができていましたが、活動や刺激がなくなることで痛みの緩和効果がなくなるためだと考えられます。

この評価項目を把握することで、対象者の勤務時間の提案や作業内容の調整の提案をすることも可能になります。

痛みと睡眠

10cmの線分を4分割し、それぞれ「なし」「時折」「たびたび」「常に」に区分けします。
質問は「寝付くのが困難」「眠るには睡眠薬が必要」「痛みのために目がさめる」「損傷側を下にして横になれる」の4つです。
対象者に、線分の中で当てはまる所に印をつけてもらいます。
セラピストは線分の左端から何cmのところに印がついたかを測ります。

現在の平均睡眠時間、病前の平均睡眠時間を尋ねます。
一晩の睡眠時間が大幅に減った場合、疲労や体質の変化が考えられます。
課題遂行の集中力低下やストレス耐性の低さでは、睡眠時間が関与している可能性があります。
他にも巧緻性、協調性などにも影響を及ぼすことがあります。
睡眠時間の増加にも注目する必要があります。

睡眠を妨げる理由(主観的な)を尋ねます。

不眠の理由が身体的なものなのか、情緒的なものなのか、両者によるものなのかを検討します。

障害側を下にした側臥位が取れない場合、関節周囲の組織に問題があることが考えられます。

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痛みの程度に影響する要因

以下のリストから、どれが痛みを増加させるのか、軽減させるのか、影響を与えないかを選択してもらいます。

温熱、暖熱、冷風、氷、気象の変化、飲酒、マッサージ、局所的な圧迫、長軸方向の圧迫、周囲からの圧迫、叩打、振動、運動、安静、動作速度の調整、スプリント装着/固定、良肢位による動作、住環境の改善、職場環境の整備、課題の調整、役割の交替、緊張/不安、作業活動、エクササイズ、姿勢、睡眠、疲労、手袋の使用、服薬

記載例として、痛みを増強させるものには「↑」、軽減させるものには「↓」、影響しないものには「×」、よくわからないものには「?」、増強・軽減させるものには「⇅」を記載します。
対象者には、例を交えて説明してもらうようにします。

服薬については、何をどのような頻度で飲んでいるかを確認します。

対象者独自の解決法を知ることで、その方の判断力、問題解決能力などを把握することができます。

活動時の痛みと困難さ

各動作において、痛みが変化するか、どのように変化するか、また動作の困難さを尋ねます。
以下に上肢動作の例を挙げます。
1.指の使用
 硬貨をつまみ上げる、安全ピンを閉じる、服のボタンをかける、鍵をかける
2.手の使用
 食器を持つ、歯を磨く、びんを開ける、はさみを使う
3.到達動作
 天井の電球を取り替える、髪を洗う、床から物を拾い上げる、食器棚から皿を出す
4.押し引き動作
 車のドアを開閉する、服にアイロンをかける、掃除機をかける、芝生を刈る
5.持ち上げ、運搬動作
 買い物袋を持つ、ゴミ袋を持つ、スーツケースを持つ、赤ん坊やペットを抱く
6.ねじり動作
 タオルを絞る、ドライバーを使う、缶切りを使う、ドアノブを回す

10cmの線分を4分割し、それぞれ「なし」「軽度」「中等度」「重度」に区分けします。
対象者に、線分の中で当てはまる所に印をつけてもらいます。
セラピストは線分の左端から何cmのところに印がついたかを測ります。

ある動作を行った後に痛みが生じる場合、それがどの程度持続するかを尋ねます。

障害と活動遂行能力

各活動において、「動作の遅延」「方法の変更」「要休憩」「要援助」「不可能」のどれに当てはまるかを尋ねます。
また、その内容を詳しく尋ねます。
行った活動の中で最も負担の大きかった活動を尋ねます。
上肢活動の例を挙げます。
1.更衣:
 ファスナー・ボタン類、前開きシャツ、靴、靴下、かぶりシャツ、装身具
2.食事の用意:
 食材を切る、まぜる、皮をむく、容器を開ける、食べ物を運ぶ
3.整容:
 入浴、髭剃り、化粧、歯磨き、爪切り、整髪
4.家事:
 掃除、庭の手入れ、整理整頓、車の整備
5.コミュニケーション:
 書字、電話の使用、パソコンの操作
6.移動:
 車の運転、バス・地下鉄の利用、オートバイや自転車の運転
7.趣味とレクリエーション:
 余暇活動、スポーツ、手工芸

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