ADLを観察する上で、動作遂行上のエラーからどのような神経行動学的機能障害が関連しているかを考えることが大切です。この際、機能障害のパターンを知っておくことで、仮説がより信頼できるものに近づきます。今回、内頸動脈支配領域における神経行動学的異常(機能障害のパターン)について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 ADL観察に役立つ!脳血管支配(内頸動脈)と神経行動学的異常(機能障害のパターン)!

引用・参考文献 

脳卒中と機能障害のパターンを知ることの重要性

脳卒中を引き起こす様々な動脈の障害は、種々の機能障害のパターンを引き起こします。
神経学的機能障害は、動脈のどの枝、どの大脳半球が影響を受けるかによって異なります。
ADLの観察から考えられる神経行動学的異常が、障害を受けた部位から引き起こされる機能障害のパターンと合っているかを考えることで、自分の仮説の裏付けをすることにつながります。
また、機能障害のパターンと異なる神経行動学的機能障害が考えられた場合は、過去の既往歴なども考慮することで、なぜそのようなことが起こっているかを考える一助とすることができます。

 

内頸動脈

脳は総頸動脈から分枝する左右の内頸動脈2本と、鎖骨下動脈から分枝する左右の椎骨動脈2本の、合計4本で栄養されている。

内頸動脈は主に前大脳動脈、中大脳動脈につながる。椎骨動脈は脳底動脈を経て後大脳動脈につながる。

前大脳動脈は大脳の内側を、中大脳動脈は外側表面を中心とした大脳半球の広範囲を、後大脳動脈は大脳の後部〜下内側面を灌流している。

 病気が見えるVol.7 脳・神経

内頸動脈は前・中大脳動脈、前脈絡叢動脈、後交通動脈に枝分かれする動脈です。
内頸動脈はアテローム血栓脳梗塞の好発部位となっています。

 

アテローム血栓脳梗塞

アテローム血栓脳梗塞動脈硬化性疾患のひとつです。
頭蓋内・外の主幹動脈のアテローム硬化(動脈硬化)により引き起こされます。
アテローム硬化は大動脈弓部、椎骨動脈起始部、内頸動脈起始部、脳底動脈起始部・週末部、内頸動脈サイフォン部、中大脳動脈水平部などが好発部位となっています。

血行力学性機序では、動脈に高度の狭窄があり、代償的に血管拡張や側副血行路が生じることでなんとか血流が維持されている状態に、全身の血圧低下が起こると、脳血流の低下により脳梗塞が起こる可能性が高まります。
血流を保てなくなった境界領域(分水域)では虚血となり脳梗塞を発症しやすくなります。
境界域(分水域)梗塞の好発部位として、前大脳動脈と中大脳動脈の境界部、中大脳動脈と後大脳動脈の境界部、中大脳動脈の皮質枝と穿通枝(レンズ核線条体動脈)の境界部などがあります。

一過性脳虚血発作の先行が2〜3割に見られ、安静時の発症が多く、段階状、進行性に症状の悪化が見られることが特徴です。

画像所見では中〜大サイズの梗塞を認め、多発性のこともあります。
また、ときに境界が不明瞭(側副血行路が発達している場合)となります。
動脈の支配領域の境界部(分水域)に梗塞がみられる場合があります。

脳画像と血管支配

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出典:中上 博之先生の脳画像資料より

内頸動脈における機能障害のパターン

前大脳動脈、中大脳動脈の機能障害に関連した障害となります。

前大脳動脈:
 対側麻痺(特に足)
 対側感覚障害(特に足)
 左半側失行(脳梁離断による)
 発話の不活性(超皮質性運動失語)、無言症
 行動障害(補足運動野:強制把握、道具の強迫的使用、パーキンソニズム)
  前頭葉内側(補足運動野)では自己意志での運動制御困難(運動開始・停止)
  前頭葉外側(運動野)では外部刺激による運動制御困難(外部環境に依存して行為  を実行してしまう)
 意欲低下(帯状回前部)

中大脳動脈:
中大脳動脈上幹
 どちらの半球でも
  対側片麻痺(特に顔面、上肢)
  対側半側の感覚障害
  視野障害
  対側の共同注視低下
  観念性失行
  判断力低下
  保続
  場への依存
  行動の組織化の障害
  抑うつ
  不安定症
  感情麻痺、アパシー
 右半球障害
  左半側身体無視
  左半側視覚無視
  病態失認
  視空間障害
  左半側運動失行
 左半球障害
  両側運動失行
  ブローカ失語
  欲求不満

中大脳動脈下幹
 どちらの半球でも
  対側の視野欠損
  行動障害
 右半球障害
  視空間障害
  左半球障害
  ウェルニッケ症

中大脳動脈上幹、下幹の両方
 上幹、下幹の障害の両方に関連する機能障害

分水域領域:
 前部(前頭前野):遂行機能障害
 前上部(前頭眼野・補足運動野・背側運動前野):眼球運動障害、予測的姿勢制御の障害、肢節運動失行、観念運動失行(優位半球)
 上部(体幹・上肢の運動・感覚野):体幹・上肢の運動麻痺、感覚障害
 後部(頭頂連合野):劣位半球では半側空間無視、着衣失行、構成障害(全体像の障害)。優位半球では観念失行、ゲルストマン症候群、失読、構成障害(細部の障害)
 下部:側頭葉下部:

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