「同時に2つの事ができない」ことは、仕事や生活における効率を悪くし、作業遂行や結果にも影響します。同時に2つのことができないメカニズムを脳機能の観点から考え、日常生活での工夫についてまとめていきます。
目次
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高次脳機能障害、統合失調症、発達障害などでは、「同時に2つの事ができない」といったことがしばしば見受けられます。
リハビリ場面では、2重課題(デュアルタスク)などとも呼ぶことがありますが、ある一つのことを行いながら、同時進行で違う事を行うというのは、かなり複雑な脳機能によるものです。
同時に2つの事ができないと、日常生活では作業効率が悪くなる、混乱するなどというように日常生活上で影響があります。
・ある仕事を頼まれているときに、違う用事で少し呼ばれて戻ると何をしていたか忘れてしまう
・一度にいくつかの指示を受けると混乱してしまう
・電話対応で、用件、名前などを一度に覚えられ無い
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「同時に2つのことができない」方は、物事の優先順位をつけることが苦手です。
今どれをしなければならないのか、後で行うのはどれがよいかという判断が行えない方が圧倒的に多い傾向にあります。
周りにあふれている情報の中から、現時点ではどのような情報を選び、それに基づいて行動計画を組み立てることができません。
同時に複数のことを行うこと、あいまいな状況、臨機応変な対応が要求される状況などでは、情報処理の容量が大きい必要があります。
情報処理の容量が小さいと、すぐに情報でいっぱいになり、それ以降の情報が入力されなくなることで混乱やパニックを引き起こしてしまいます。
複数の事が同時に行えないと、他者への気配りが行いにくいということもあります。
自分の行うことで精一杯なので、相手のことまで考えることができないということが背景にありますが、これは他者からすると、「あの人は自分本位だ」と思われてしまうかもしれません。
気配りをするということは、注意を配分できるということです。
注意の幅が狭いと、全体的に注意を配分することができません。そうなると、状況に応じて様々な情報の中から重要で有益な情報を選択することができなくなります。
注意機能については以下の記事も参照してください。
注意機能に問題があると、記憶にも影響があります。
中でも、短期記憶(ワーキングメモリ)での処理能力も遅くなります。
人間の能力では、一度に処理できる情報量には限りがあります。そのため、自分にとって必要な視覚情報を選択的に取り入れています。これはフィルター機能になりますが、フィルター機能が低下すると、情報の過剰入力が行われてしまいます。
このことで、効率的な情報処理が損なわれてしまいます。
関連のない情報が入りすぎると、混乱したりパニックになるのも当たり前です。
記憶については以下の記事を参照してください。
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判断、決断、調整に関わりがあるのは前頭葉の機能です。
状況が変化したとしても、計画を遂行するのか、変更するのかというような柔軟な思考を行います。
前頭葉の遂行機能には、問題解決能力、思考の柔軟性、計画能力、時間的調整、洞察力、判断力、などがあります。
ワーキングメモリと脳の関連部位については、
一般には、前頭皮質、頭頂皮質、前帯状皮質、および大脳基底核の一部がワーキング
メモリに関与すると考えられている。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%AA
とあります。
前頭葉機能については以下の記事を参照してください。
前頭葉損傷(遂行機能障害)に対する評価と作業療法、リハビリテーションアプローチ
立方体透視図模写課題は遂行機能(行為プランニング)評価が可能!評価方法と結果の解釈についての考え方!
脳卒中ガイドライン(2015)とエビデンスから見た遂行機能障害へのアプローチ!
迷路課題は何に効く?迷路課題の特性と遂行機能の関係性!
遂行機能障害と介入方法、具体的なアプローチ
前頭前野(前頭連合野)の機能・役割とADLにおける観察ポイント
大脳基底核は、不必要な刺激を除去する機能があります。
課題を遂行するには、自分が焦点を当てていること以外の刺激を排除し、刺激を調整する必要があります。
刺激の取捨選択、抑制があってこそ、作業遂行が行えます。
大脳基底核によるフィルター機能あることで、物事をしっかりと考え、計画し、遂行することが可能になります。
大脳基底核は側頭葉や大脳辺縁系との関連もあり、前頭葉で計画されたものを実行に移す機能も有しています。
大脳基底核が目的決定や動作選択の節目を捉えて情報を処理し、前頭連合野が処理結果を保持するという特徴が明らかとなりました。これは、大脳基底核と前頭連合野が連携することによって初めて「決定や選択」と「結果の保持」という高次脳機能の二大要素が達成されることを示します。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/08/20n8m200.htm
大脳基底核については以下の記事も参照してください。
大脳基底核の損傷とADL障害!「ブレーキ管理ができない」にどう対応するか?
パーキンソン病と大脳皮質-基底核ループの関係性!脳科学から考えるPDの症状!
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日常生活上の工夫には、
・指示は一つずつ出す
・長い説明をせず、短くても理解しやすくする
・大事な指示は時間を空けて繰り返し言ってもらう
・一つの課題を終えたら次の課題を伝える
・絵や写真を用いて手順を示す
・集中できる環境を用意する
・時間を決めて取り組む
・時間がきたら確認してもらう
・優先順位を他者に相談する
・取り組んでいるときには、話しかけないでもらう
・メモ、スマホアプリを利用する
・今やることを言い聞かせる
・フォローしてほしいことを他者に伝える
以下の記事も参考にしてください。
就労(移行)支援とリハビリテーション!就労移行のための評価項目!
高次脳機能障害と作業遂行上のエラーに対する支援とアプローチの例