上腕二頭筋は肘関節屈曲に作用する筋肉ですが、実は肩甲骨のアライメントによりその実力が十分に発揮されなかったり、痛みにも関与することがあります。今回、肩甲骨のアライメントと上腕二頭筋の関係性についてまとめていきたいと思います。
目次
上腕二頭筋の作用は、
・肘関節屈曲
・前腕回外
です。
上腕二頭筋の起始・停止については、
長頭は肩甲骨関節上結節から起こり、上腕二頭筋長頭腱として関節包内・上腕骨結節間溝を通り、大部分は橈骨粗面に停止する。一部は尺骨の前腕筋膜に停止する。短頭は肩甲骨烏口突起から起こり、停止部は長頭と同様である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E8%85%95%E4%BA%8C%E9%A0%AD%E7%AD%8B
となっています。
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次に、肩甲骨の正常なアライメントについて考えていきます。
肩甲骨の静的・動的なアライメントや、肩甲上腕関節との関連からみていきます。
肩甲骨のアライメントは、筋緊張の影響や形態の異常がなければ、
項目 |
指標 |
内側縁 |
脊柱に平行(3〜5°の上方回旋) |
|
胸郭中心から7〜8㎝ |
高さ |
T2〜T7の間 |
前額面に対する角度 |
30° |
上腕骨頭の前方変位 |
3割以上が肩峰より前に位置する |
上腕骨頭の回旋 |
手掌手体側につけると肘頭が後方を向く |
胸椎 |
*胸椎の後弯は肩甲骨を前傾させる |
肩甲上腕リズム |
肩屈曲0〜60°以降、90°屈曲で肩甲骨30°上方回旋 |
|
180°屈曲で肩甲骨60°上方回旋 |
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肩外転0〜30°以降、90°外転で肩甲骨30°上方回旋 |
|
180°外転で肩甲骨60°上方回旋 |
最終域での運動 |
肩甲骨下制、後傾、内転する |
というような一般的に用いられている指標があります。
このような肩甲骨の正常なアライメントがなんらかの原因により保つことができないと、上腕二頭筋の機能にも影響が出てくることが考えられます。
肩甲骨のアライメントの指標は前途しましたが、それが崩れていると、肘関節屈曲時にみられやすい現象がよく観察されます。
それは、肘関節屈曲に伴う
・肩甲骨の前傾
・肩関節(肩甲上腕関節)伸展
です。
イメージとしては腕を後ろに引きながら肘を曲げている状態と思ってください。
このような現象は、肘関節屈曲時に肩甲骨に付着する筋群により肩甲骨を安定的に固定できないことが原因となっています。
なお、この現象は肘関節屈曲に抵抗を加えたとき(徒手抵抗や重りの持ち上げ)に最も出現しやすくなります。
そのため、肘関節屈曲時に上記の肩甲骨前傾や肩関節伸展運動がみられたときには、肩甲骨の機能を評価することが重要になります。
前途した肩甲骨のアライメント評価に加えて、MMTも用いながら肩甲骨を不安定にしている筋に見当をつけていくことになります。
肩甲骨の不良アライメントは肩峰下でのインピンジメントの原因となることがあります。
それは、肩甲骨のアライメントが肩峰の下の空間(肩峰下腔)を狭くすることが知られているためです。
この空間には、上腕二頭筋長頭腱が通るのですが、通常ある程度の空間があることでうまく通過するのが、空間が狭くなれば運動の際に圧迫や擦れることが起こるのは容易に想像ができます。
このような状態で肩や肘の運動を繰り返し行っていると肩や肘の痛みにつながってしまうのです。
この場合、改善すべきは肩甲骨のアライメントになります。
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例えば、肩甲骨が前傾したままの状態では、上腕二頭筋のアライメントはどうなるでしょうか。
上腕二頭筋は肩甲骨に付着するので、当然上腕二頭筋のアライメントも崩れてきます。
肩甲骨が前傾すると、上腕二頭筋の筋長は短くなってしまいますから、このような状態が続いてしまうと筋緊張の亢進や短縮状態になってしまいます。
筋肉が最大限の機能を発揮するには筋長が正常に保たれている必要がありますから、肩甲骨の不良アライメントがあると筋力が発揮されにくいということが起こります。
そのため、筋力が弱い→筋力トレーニングというような安易な考え方に至るのではなく、肩甲骨のアライメンント評価を詳細に行い、それを修正することで筋力が十分発揮されるということもあると考えています。