入浴動作は自立達成が難しい活動のひとつです。福祉用具を適切に用いることで、自立に近づけたり、介助量を軽減することも可能です。今回、入浴動作の環境設定として、身体機能に合わせた福祉用具の用い方をまとめていきます。
目次
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入浴動作を大きく見ていくと、以下のような工程に分けることができます。
・移動
・更衣
・浴室の段差を越える
・洗体
・浴槽の出入り
・浴槽内で体を安定させながら湯につかる
風呂から上がる際も、この工程の要素により入浴動作が行われます。
入浴動作における環境設定のポイントとしては、
・第一に安全に動作遂行できること
・介助者の負担が大きくならないこと
になります。
できるだけ対象者本人の能力を活かしながら、転倒のリスクを少なくできるような環境設定を目指していきます。
また同時に、最適な動作方法を対象者に指導し、習得してもらうことも重要なポイントになります。
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移動面の援助では、移動能力に応じて考えていく必要があります。
・歩行可能な場合
・歩行不可能(立ち上がりは可能なレベル)
・歩行不可能(立位保持できないレベル)
歩行可能な場合、家の段差などに応じて手すりを設置したり、福祉用具として杖や歩行器を用いながら移動できるようにします。
手すりを用いるのであれば、手すりを設置できないようなところにはできるだけ支持物が途切れないように家具を配置するなどして、転倒のリスクを抑えるようにします。
歩行は難しくても、立ち上がれる程度の場合は車椅子やシャワーキャリーを用います。
歩行が難しくて、立ち上がりや立位保持もできないようなケースでは、移動は車椅子またはシャワーキャリー、さらには天井走行式のリフトも検討する必要があります。
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歩行可能な場合、脱衣所での更衣動作は
・立位
・座位
のどちらかで行います。
バランス能力に応じて、必要箇所に手すりや支持物を置いておくと安定して動作を行なうことが可能です。
入浴ではのぼせてフラフラする可能性もあるということを考えると、座位で更衣動作を行うことが無難かもしれません。
立ち上がりが可能なレベルでは、立位での更衣は行わず、座位で行った方が安全に動作遂行できます。
立位を維持できないようなレベルの方では、座位ではなくベッド上で更衣動作を行う(手伝ってもらう)方が安全に動作が行えます。
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歩行可能なレベルの場合、段差昇降は、
・手すりの設置
・すのこで段差解消
・座って段差を越える
などが考えられます。
対象者本人や家族の不安が強い場合には、段差解消として、床と段差の部分をフラットにしたり、敷居用のスロープを使用することが考えられます。
歩行は不可能だが立ち上がりは可能なレベルの方では、移動が車椅子かシャワーキャリーになるので、段差解消を行う必要があります。
シャワーキャリーを用いる場合、車輪が小さいと段差の乗り越えが難しい場合があるので、車輪の大きいものを選ぶことがあります。
このレベルの方では、シャワーキャリー、天井走行式または設置型のホイストを使用することになります。
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歩行が可能な方でも、歩行不可能だが立ち上がりは可能なレベルの方においても、シャワーチェアーを利用する方が安全面としてはリスクが低くなると考えられます。
この場合、シャワーキャリーの適応になります。
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浴槽の出入りに関しては、評価により
・浴槽から立ち上がることができるか
・浴槽から立ち上がることができないか
により環境設定が変わります。
この場合、立位バランスがかなり良い方であれば、手すり(バスグリップ含む)を設置することにより安定性を得ながら浴槽のまたぎ動作を行います。
また、状況に応じて浴槽内に滑り止めを置いたりすることもあります。
座位で浴槽の出入り動作を行う場合、シャワーチェアやバスボードを使用して動作を行います。
浴槽からの立ち上がりやしゃがみこみ動作を楽にするものとして、浴槽内台を用いることがあります。
ただし、このときには設定する台の高さによって体全体が湯に浸かれないということもあるため注意が必要です。
この場合、浴槽の出入り動作は浴槽内昇降機やホイストを用いて行います。
私の経験では、脊髄損傷の方で、ヘルパーの2人介助を受けて福祉用具なしで浴槽の出入りをされる方もいました。
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浴槽内では、浮力があるため体が安定しにくいことがあります。
その際には、
・手すりを持つ
・浴槽の縁を持つ
・浴槽内台を使う
・浴槽に対して向きを変えて浸かる
・浴槽に体をフィットさせる
・介護者に手伝ってもらう
などが考えられます。
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