記憶障害のリハビリテーションを実施するには、詳細な評価と対象者に適したリハビリテーションアプローチを選択する必要があります。
目次
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高次脳機能障害のリハビリテーション Ver.2 江藤文夫/武田克彦/原寛美/坂東充秋/渡邉修 医歯薬出版 2004
滝浦 孝之 日本におけるベントン視覚記名検査の標準値:文献的検討
http://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20170514201609.pdf?id=ART0008387548
日本版リバーミード行動記憶検査 解説と資料
第6回和歌山認知症症例検討会 大沢愛子「ワーキングメモリとエイジング」配布資料
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神経ピラミッドとは、前頭葉機能を基本とした高次脳機能を、土台(底辺)から順に
①神経疲労
②抑制と発動性
③注意力と集中力
④情報処理
⑤記憶
⑥論理的思考力と遂行機能
⑦自己の気づき
という階層的に分けており、より上の階層が働くためには、その下の階層がしっかり働いている必要があるということを示しています。
これに対応する高次脳機能障害としては
②無気力・脱抑制
③注意・集中力の低下
④情報の処理が遅い、正確に把握できない、脈絡なし、断片的
⑤記憶低下
⑥遂行機能低下
⑦病識欠如
などが挙げられます。
・神経疲労
無気力症では発動性の欠如、発想の欠如、無表情、無感動などがあります。
抑制困難症では衝動的、感情の調整が困難、ストレス耐性の低下、イライラ感、激怒、気性爆発、多動症などがあります。警戒態勢ではある刺激に対し反応があるかを示し、神経系を賦活していくためには、この警戒態勢をまず上げていくことが必要になります。
覚醒レベルの評価では精神疾患(うつ病など)薬剤の影響も考慮する必要があります。
・注意力と集中力
選択的注意や配分性注意と、その注意を維持するための集中力の低下などがあります。
・情報処理
情報のスピードに対応しながら正確に受信し、相手に伝わるように発信する事に関わります。
・記憶
エピソードや予定を覚えていたりすることに関係します。
・論理的思考と遂行機能
言われた事や本の内容などをまとめたり、同類に分類するための「まとめ力」、様々な発想を思いついたり臨機応変に対応するための多様な発想力に関係があります。
遂行機能では、日常生活上のゴール設定、オーガナイズ(分類整理)、優先順位をつける、計画の立案、計画の実行、自己モニター(検証)、問題解決)に関係します。
・自己の気づき
自己の症状を知り、認識して、それぞれの症状に対する戦略を自ら使用する事で、生活を豊かにしていくために必要な事を理解する能力に関係します。
上の階層の、より高次なレベルでは自覚が生じやすいですが、より下の階層の、基礎的なレベルでは自覚が生じにくいとされています。
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Rey複雑図形検査は必要物品が少なく、全所要時間も5分〜10分と短く(再生の条件設定により時間が長くなることあり)実施できます。
図形は上下左右とも対照的ではない幾何学的図形で、点数化してデータの比較が可能です。
非言語性の視覚性記憶も評価できるため、失語症の方にも実施可能です。
また被験者にとって教示する内容の理解が容易で導入しやすくなっています。
記憶面の評価以外では、模写における半側空間無視、構成障害、注意障害、視覚性認知、視空間構成なども評価することができます。
*模写終了時に、後でまた書いてもらうことには触れないようにします。
*模写と再生の間は、言語性課題や雑談などの干渉を入れます(他の模写や描画の課題は挟まない)。
方法1
①Rey複雑図形の模写(時間指定はなし。終わったら声をかけてもらう)
②3〜30分後、Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう。
方法2
①Rey複雑図形の模写(時間指定はなし。終わったら声をかけてもらう)
②Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう(即時再生)
③30分後、Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう(遅延再生)
方法1が一般的な実施方法で時間を要さず、3分後再生で前向性健忘の有無を評価することが可能です。
一方、方法2は即時再生と遅延再生の差を比較することができ、エピソード記憶障害患者は、遅延再生で著名な点数の低下が認められます。
模写課題と再生課題の両方で、18の採点部位について、
①線の正確さ
②全体図に対する相対的配置
の2点満点で評価するTailorの36点法が一般的です。
模写課題は視覚構成能力の指標となります。
方法2で行う即時再生の点数では、視覚性短期記憶の容量を測る指標となります。
健常者でも即時再生の点数は模写課題での点数の約半分に低下します。
しかし、重要なことは健常者では即時再生と遅延再生を比較するとほとんど点数の低下がみられません。
模写(点) | 即時再生(点) | 遅延(点) | ||
1 | 左上の十字(大きな四角の外) | |||
2 | 大きな四角 | |||
3 | 対角線の十字 | |||
4 | 2の水平二等分線 | |||
5 | 2の垂直二等分線 | |||
6 | 2の左側に入っている小さな四角 | |||
7 | 6の上の小さな区画 | |||
8 | 2の内側の左上にある4本の平行線 | |||
9 | 2の右上の三角形 | |||
10 | 9の下の短い垂直線 | |||
11 | 2にある三点のついた円 | |||
12 | 2の右下にある3と交わる5本線 | |||
13 | 2の右にある三角形 | |||
14 | 13にくっついているダイヤモンド | |||
15 | 13の三角形の中にある2の右端に平行な垂直線 | |||
16 | 4の右に続く、13の中の水平線 | |||
17 | 中央下の十字 | |||
18 | 左下で2に接する四角形 | |||
合計36点満点 |
判定基準:
①形が正しい
位置も正しい:2点、位置は不正確:1点
②歪んだり不完全だが形がわかる
位置が正しい:1点 位置も不正確0.5点
③欠けている、または判別不能:0点
Rey複雑図形検査の正常値
健常人:30名:平均年齢68.1歳(標準偏差6.5、年齢範囲55〜78)
平均 | (標準偏差) | 範囲 | |
模写 | 35.7 | (0.6) | 34〜36 |
3分後再生 | 18.8 | (5.7) | 10〜31 |
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三宅式記銘力検査は、言語性記憶検査のひとつであり、対連合学習という古典的記憶検査法を基にした日本で開発された検査です。
主な内容は、「ビール-コップ」のような関係性が近い組み合わせと「本-空」のような関係性が無いものを読み上げて聞かせた後、最初の単語を検査者が言って、対になっているもう一方の単語を言ってもらう検査です。
検査内容を伝える時には、わかりやすい言葉で説明し、理解を求めていきます。
説明の例を以下に挙げます。
「これから、私がビール-コップというような言葉の組み合わせを10組言いますから、そのとおりによく覚えてください。一通り言い終わったら、ビールというように最初の言葉を言いますから、組み合わせのもう一方を言ってください。
それでは、ビールなら何ですか?」のように教示し、「コップ」と答えられることを確認する。
高次脳機能障害学 第2版
単語リストを読み上げていく時には、ひとつの対語と次の対語の区別がはっきりするように2秒程度間隔をあけていきます。
10組読み上げた後、最初の単語を言い、対語を答えてもらいます。
読み上げに対する答えを全部で3回行い、その答えの内容と正答数を記録していきます。記録では、1回目に6個、2回目に8個、3回目に10個正答であれば、「(6-8-10)」のように記載します。
1回目や2回目までに全問正答できた場合は、その時点で検査を終了しても構いません。
有関係対語試験→無関係対語試験の順番で実施していきます。
このテストは記憶障害がある方にとってはストレスがかかりやすいものであり、実施中正答できないことに自信をなくしてしまうような場合も考えられます。
そのため、ストレス耐性が弱いと思われる対象者には、あらかじめフォローの言葉(「難しいテストなので、上手くいかなくても大丈夫ですよ」)や検査終了後のフォローの言葉をかけて、少しでも精神的不安を増大させないようにする必要があります。
単語リストは東大脳研式が広く用いられているようですが、年代を感じさせる単語リストもあり、若年者にとっては単語の意味がわからないものもあるかもしれません。
有関係対語
煙草-マッチ、空-星、命令-服従、汽車-電車、葬式-墓、相撲-行司、家-庭、心配-苦労、寿司-弁当、夕刊-号外
無関係対語
少年-畳、雷-虎、入浴-財産、兎-障子、水泳-銀行、地球-問題、嵐-病院、特別-衝突、ガラス-神社、停車場-真綿
石合らが健常人データを示しています。
平均年齢68.8歳(標準偏差6.4、範囲56〜79)、MMSE27〜30点、30名
3回目の成績
平均(標準偏差) | 範囲 | |
有関係対語試験 | 10.0(0) | 10〜10 |
無関係対語試験 | 4.6(2.5) | 1〜10 |
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30分程度で実施でき、即時記憶容量、学習曲線、前方干渉・後方干渉、作話傾向、時間的順序記憶、再認・自由再生の差異などの評価が可能です。
検査は日本では標準化されていません。
リストA再生①〜⑤:
「これからいくつかの単語を読み上げます。後で言ってもらうのでよく聞いて覚えてください」と説明し、リストAの単語を1単語ずつ1秒間隔で読み上げます。
読み上げた後に、「今の単語を覚えているだけ言ってください。読み上げた順番どおりでなくても構いません」と説明し、単語を想起してもらい書き留めていきます。
同手順を5回繰り返し、「今の単語をまた後で言ってもらうので覚えておいてください」と説明します。
リストB再生:
「今度は別の単語を読み上げます。後で言ってもらうのでよく聞いて覚えてください」と説明し、リストBの単語を1単語ずつ1秒間隔で読み上げます。
読み上げた後に、「今の単語を覚えているだけ言ってください。読み上げた順番どおりでなくても構いません」と説明し、単語を想起してもらい書き留めていきます。
リストA干渉後再生:
「最初に何度も繰り返し読み上げた単語を覚えているだけ言ってください。」と説明し、リストAの単語を想起してもらい書き留めていきます。
リストA干渉後再認:
「単語リスト(再認用検査用リスト)があります。この中で最初に繰り返し読み上げた単語に丸をつけてください。単語は15個でした。」と説明し、再認検査用リストに丸をつけてもらいます。
リストA30分後再生:
「最初に何回も繰り返して読み上げた単語を覚えているだけ言ってください。」と説明し、リストAの単語を想起してもらい書き留めていきます。
リストA30分後再認:
「単語リスト(再認検査用リスト)があります。この中で最初に繰り返し読み上げた単語に丸をつけてください。単語は15個でした。」と説明し、再認検査用リストに丸をつけてもらいます。
リストA単語:
雨、学校、太陽、薬、家、時計、風、鉛筆、桜、秋、魚、鏡、顔、船、電話
リストB単語:
机、帽子、手紙、山、窓、本、財布、酒、羊、月、車、雷、子供、靴、海
再認検査用リスト
船、夏、本、靴、窓、川、机、家、雲、椅子、学校、桜、先生、風、車、嵐、台風、太陽、耳、冬、月、足、羊、魚、財布、薬、靴、帽子、電車、親、壁、山、医者、手紙、病気、顔、雨、海、鏡、電話、遠足、体操、時計、砂糖、杖、子供、鉛筆、牛、秋、酒
リストA再生①では得られた単語数は言語性短期記憶容量の指標となります。
エピソード記憶障害の場合、言語性記憶容量は正常範囲であることが重要であり、4単語以下の場合集中力の低下や注意障害の疑いがあります。
リストA再生①〜⑤で得られた正答単語数をプロットすることで、学習曲線が得られます。
エピソード記憶障害の場合、学習曲線で学習効果が得られない、もしくは少ないといえます。
リストA再生①とリストB再生の正答数の差では、前方干渉(リストAの単語学習がリストBの単語再生に影響する)の指標となります。
リストA再生⑤とリストA干渉後再生の正答数の差は後方干渉(リストBの単語学習がリストAの単語再生に影響する)の指標となります。
前方干渉や後方干渉では、情報の取り込みや想起の際の戦略・手がかり形成への影響が考えられます。
エピソード記憶障害では、30分後の遅延再生(リストA再生−リストA30分後再生)で、3単語以上の忘却が認められると言われています。
リストA干渉後再生、リストA30分後再生において、リストAの単語とは音韻的(例えば「デンキ」「デンパ」)・意味的に異なる単語をいう場合には作話傾向が存在する可能性があります。
リストA干渉後再生・再認、リストA30分後再生・再認の際にリストBの単語を再生・再認した場合は時間的順序障害の可能性があり、作話傾向や時間的順序障害は前頭葉との関連が示唆されています。
リストA30分後再生で著名な低下があり、再認で成績改善の場合には、記憶の取り出しに障害がある可能性があり、再認も低下する場合には記憶の保持に障害がある可能性があります。
リストA再生⑤で5個以下は異常と考えられます。
干渉後、30分後いずれの再生でもたかだか2個の減少である。
この結果は、健忘患者では、5回目の成績に比べて、干渉後再生、30分後再生で3つ以上の低下がみられるという見解を支持するものである。
臨床的実用性としては、三宅式記銘力検査が健忘の有無の判定に鋭敏であるのに対して、AVLTはその程度の評価に有用である。
高次脳機能障害学 第2版
ベントン視覚記名検査は、視覚認知、視覚記名、視覚構成能力を評価する検査です。
心因性障害と器質性脳障害の鑑別、認知症早期のスクリーニングにも有効とされています。
刺激図版は10枚あり、形式Ⅰ、形式Ⅱ、形式Ⅲの3つのセットがあり、学習効果や習熟の可能性を避けて検査が可能です。しかし、高齢者では形式Ⅱの難易度がやや高いとの見方もあるようです。
検査には4通りの実施方法があります。
施行A:図版を10秒提示し、直後に再生描画させる。
施行B:図版を5秒提示し、直後に再生描画させる。
施行C:図版を模写させる
施行D:図版を10秒提示し、15秒後に再生描画させる。
各形式において、これらの施行を行い、制限時間は設けません。
質的分析を行うために、図版ごとの所要時間や、対象者の反応などを記録しておくとよいと思われます。
施行A、Bでは提示時間に差はありますが、即時記憶課題となります。
施行Cでは模写を行いますが、視空間構成能力、視空間把握能力の評価が可能です。
施行A、B、Dにも多少視空間構成機能が影響すると言われており、本検査を記憶検査というよりも視空間性能力(半側空間無視や構成障害)の検査とみる意見もあります。
施行Dでは遅延再生ではあるものの、干渉刺激がないため、即時記憶課題として捉えます。
実施時間は5分程度です。
採点は正確数と誤謬数の面から行われます。
正確数は全く誤りなく正確に再生描画されたもので、部分点はなく0か1点として採点されます。
正確数は0ー10の間の整数値となります。
誤謬数は、描画図形にあるすべての誤謬数の合計になります。
誤謬は6つのカテゴリ(省略・追加、歪み、保続、回転、置き違い、大きさの誤り)に分けられます。
記録用紙には63種類の誤謬の記号が記されており、該当欄に丸をつけます。
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日本版リバーミード行動記憶検査は、日常生活に類似した状況で検査が行われるという特徴があります。
課題には人の名前を覚える、約束を覚える、道順を覚えるなどがあり、記憶障害がどのような種類の日常課題に現れやすいかを推測しやすくなります。
また障害の時間的変化を追うことにも適しています。
11種類の下位検査で構成されており、そのうち3種類は直後・遅延検査で2回使用されます。
また4種類の並行検査が用意されていることから、繰り返しの検査による練習効果を避けることができます。
1姓名:顔写真を見せ、姓名を伝え、覚えてもらいます。遅延後に再生させます。
2持ち物:被験者の持ち物を一つ出してもらい隠します。検査終了時に持ち物の返却を要求させます。
3約束:20分後にタイマーをセットし、タイマーが鳴ると決められた質問をしてもらいます。
4絵:絵を呼称させ、遅延後に再認させます(見たことがあるかどうかの確認)。
5物語:短い物語を聞いてもらい、直後再生、遅延再生させます。
6顔写真:顔写真を見せ、性別・年齢を判断させ、遅延後に再認させます(見たことがあるかどうかの確認)。
7道順:部屋の中で一定の道順を覚えさせ、直後と遅延後に被験者にたどらせます。
8用件:7で道順をたどる際に設定される用件について記憶させます。直後、遅延再生で用件を実行するかチェックします。
9見当識と日付:日付、場所、年齢などについて尋ねます。
素点、標準プロフィール点、スクリーニング点の3種類があります。
素点の記録から標準プロフィール点に換算し、スクリーニング点を算出します。
標準プロフィール点は0〜24点、スクリーニング点は0〜12点の範囲をとり、カットオフ点があるのでそれを参考に記憶障害の有無と重症度を判定します。
スクリーニング点は健常範囲であるかそうでないかを大まかに判定するために有効で、リハビリテーション実施による変化を追うには細かい得点となっている標準プロフィール点を用いる必要があります。
日本語版では年齢群別のカットオフ点が定められています。
(数値/数値)の意味は、各得点の前後が検査による記憶障害を疑って良いかどうかの判定の目安になります。
標準プロフィール点において、病棟内の自室やトイレ、訓練室への道順を正しく覚えているのは7点以上、9点以下では日常生活上の行動に指示や見守りが必要であり、15点以上では一人で通院が可能、17点以上では計画的な買い物が可能になると言われています。
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生活健忘チェックリストでは、記憶障害により日常生活上起こりうる問題やそのような場面を13項目設定しています。この検査により、日常生活上の起こりうる問題の把握と予測、また患者の記憶力に対する認識(アウェアネス)を把握することが可能です。
リハビリテーションを行う中での記憶障害の改善を追うこともできますし、患者の認識力の変化も評価することができます。また、この評価結果を示すことで患者の気づきを促すための一助となる事も考えられます。
1昨日もしくは数日前に言われた事を忘れて、再度言われないと思い出せない事がある
2ついその辺に物を置き、置いた場所を忘れてしまったり、物をなくす事がある
3物のしまってある場所を忘れて、全く関係のない場所を探す事がある
4ある出来事が起こったのがいつだったか忘れている事がある
5必要な物を持たずに出かけたり、どこかに起き忘れて帰ってきたりすることがある
6自分ですると言ったことを忘れてしまうことがある
7前日の出来事で重要な内容を忘れていることがある
8以前にあったことのある人たちの名前を忘れていることがある
9誰かが言ったことの細い事を忘れたり、混乱して理解していることがある
10一度話した事や冗談を再度言う事がある
11直前に言ったことを繰り返して言ったり、「今何を話してましたっけ?」などと言う事がある
12以前行ったことのある場所への行き方を忘れたり、よく知っている建物の中で迷う事がある
13何かをしている最中に注意をそらすことがあった後、自分が何をしていたのか忘れることがある
13項目に対し、それぞれ1(全くない)、2(時々ある)、3(よくある)、4(常にある)の4段階評価を行い、合計得点を算出します。
得点は13〜52点で、高得点であればあるほど記憶障害の強いと言えます。
患者、信頼できる介護者(家族など)の両方に質問できると双方のまたはセラピストの評価を加えた検討が可能になります。
患者自己評価点 (平均) |
介護者評価点
(平均) |
健常者自己評価点
(平均) |
|
39歳以下 | 25.8±7.7 | 28.4±9.8 | 22.6±4.6 |
40〜59歳 | 23.7±7.6 | 26.4±10.0 | 21.7±4.2 |
60歳以上 | 21.8±6.2 | 30.0±9.3 | 24.6±5.4 |
合計 | 23.1±7.1 | 28.7±9.7 | 23.3±5.0 |
健常者では年齢に応じた記憶力の低下を正確に評価していますが、患者では認識(アウェアネス、病識)の低下により自己評価が曖昧になります。
またそのことを介護者は正確に評価しているとも言えます。
60歳以上の患者群と健常者での比較では、自己評価点が逆転していますが、これは病識不良を伴う認知症者の存在が多くあったと考えられます。
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認識(アウェアネス)の問題とは、患者による自分自身への障害への気づきという問題です。
認識力が低下していると、自分の障害に気づかなかったり、気付いたとしても無頓着になっていたりします。
自分の現状を正しく理解している患者も中にはいますが、自分の最大能力を甘く見積もるような方もしばしば見受けられます。
アウェアネスの問題が重いほど、機能の再獲得が困難になるということが知られています。
一方で、患者のアウェアネスを援助者側が低く見積もっている場合もあるため、しっかりと評価していくことが求められます。
患者自身と介護者が個別に、各項目に対する現在の能力と病前の能力を比較し、「ほぼ同じ」「やや悪い」「非常に悪い」のどれに当てはまるか判定します。
両者の評価結果がよく一致している場合、患者の記憶障害への認識は適切であることが推測されます。
この評価を行うときに、患者と介護者では異なる場面(経験)を根拠にして質問に答えている場合があるため、各質問項目に対して、具体的なエピソードを聞き取りながら行うこともひとつの方法であると思われます(記憶障害のため具体的なエピソードが出て来にくいかもしれませんが)。
日付
月
長年の知り合いの顔
1,2度会った人の名前
長年の知り合いの顔
1,2度会った人の顔
よく知っていた場所への道順
1,2度行ったことのある場所への道順
物を置いた場所
人から言われたこと
読んだこと
その他の記憶の問題(記述)
リバーミード行動記憶検査を土台として、患者に対する質問、介護者に対する質問、患者の記憶行動の評価が一致しているかを見ていく方法があります。
例えば、リバーミード行動記憶検査の前に、患者には「あなたが誰かに会い、名前を教えてもらったとします。後でその人に会ったときに名前を思い出す必要があるときに、どの程度名前を思い出すことができると思いますか」と質問をします。
介護者には、「患者が誰かに会い、名前を教えてもらったとします。後でその人に会ったときに名前を思い出す必要があるときに、患者はどの程度名前を思い出すことができると思いますか」と質問します。
次に実際にリバーミード行動記憶検査の「姓と名」の項目を実施し、直後に「先ほどの検査であなたはどの程度よく思い出せましたか」と質問します。
このような質問をしていくことで、患者の認識(アウェアネス)を評価していくことも重要です。
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ワーキングメモリは、認知活動において認知的処理と処理されている情報の両者に関与するシステムです。
情報を一時的・同時的に保持、または処理するための能動的で目的指向的な記憶といえます。
ワーキングメモリは別名で「脳のメモ帳」「作動記憶」「作業記憶」と呼ばれることがあります。
記憶の保持時間としては、数秒〜数日、情報保持が可能です。
行動の目標達成のためには、陳述記憶、手続き記憶、エピソード記憶などの長期記憶をうまく短期記憶につなげることが重要ですが、ワーキングメモリは情報を時間的に接着する役割を持ちます。
ワーキングメモリの容量を超えると、もの忘れやし忘れにつながります。
ワーキングメモリは日常生活の中で様々な場面に役立っています。
会話するときに相手の言葉を聞いて理解しながら受け答えをするときや、
料理の手順を考えて調理するときにワーキングメモリが必要です。スポーツでも、相手の動きを予測し自分の次の行動を考えるときにワーキングメモリが必要になります。
ワーキングメモリの能力が高い人は、複数のことを同時にこなしたり、頭の中に記憶しておいて順番に処理することができるのです。
中央実行系の機能には、
①課題準備などを含むプランニング機能
②記憶内容のや表象の更新
③注意資源の配分や注意焦点の移動
④表象の活性化や不適切な反応の制御
があります。
ワーキングメモリは、論理的思考、理解、学習などの遂行において、覚えておかなければならないことを心的過程にとどめておくために必要です。
そのモデルにでは、中央実行系とそれに支配を受ける音韻性ループ、視空間スケッチパッド、エピソードバッファからなります。
音韻性ループは音響的、音韻性の記憶痕跡をごく短時間(2秒程度)保持するコンポーネントとそれをリハーサルするコンポーネントからなる。
視空間スケッチパッドは、視空間のイメージについて同様の機能を持つシステムである。
中央実行系は、短期間の記憶痕跡、イメージの保持と処理に対して、容量に限りある注意を振り分けるシステムである。
高次脳機能障害学 第2版 P199
エピソードバッファは後から追加された概念で、多次元の情報を一時的に保管するためにあります。
いずれも容量が小さく保持の期間も短く、中央実行系による注意の制御に伴う様々な意識的処理の過程で、定着した言語、視覚性意味記憶、エピソードの長期記憶(臨床的な遠隔記憶)へのアクセスを経て、より長い記憶の過程(近時記憶)へと橋渡しされる。
高次脳機能障害学 第2版 P199
このことから、中央実行系は実行機能、遂行機能との関連が深いといえます。
ワーキングメモリに関連する脳領域として、前頭前野背外側皮質と前頭前野腹外側皮質があり、背外側部は加齢による衰退が指摘されています。
ワーキングメモリの短期貯蔵部に容量が収まる程度の情報記憶には腹外側皮質が関与し、それを超える情報量の場合は背外側部が関与します。
中央実行系には前頭前野内側皮質と前部帯状回皮質の相互作用が必要で。機能が良好なほど前部帯状回皮質の活動が高いことが言われています。
ワーキングメモリの評価方法には、様々なものが開発されています。
リーディングスパンテストは、提示された文章の音読、言葉を覚えることを繰り返し実施し、再生の合図が出された時に覚えた言葉を順番に再生するものです。
数唱課題は数字を順番に読み上げたものを記銘し、提示終了後に覚えた順番に再生する課題です。
順唱と逆唱があり、逆唱では読み上げた数字を逆順に再生します。
例:1-2-3-4→1-2-3-4(順唱)
1-2-3-4→4-3-2-1(逆唱)
数唱課題の解釈では、失語症の影響を考慮する必要があります。
標準注意評価法(CAT)の中にある課題です。
用紙などに視覚的に提示されたいくつかの「⬜︎」などのマスに、不規則に指差されたのを、それを覚え、提示終了後に再生させる課題です。
タッピングスパンの成績は、通常はディジットスパンよりも1〜2個少ないとされています。
タッピングスパンの解釈では、視空間の障害を考慮する必要があります。
標準注意評価法(CAT)の中にある課題です。
オペレーションスパンテストでは、計算と言葉の記銘を繰り返し、単語の再生成績によって容量を測定します。
例えば、(1×2)+1=?のような計算課題とアルファベットを記銘することを数試行繰り返します。
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エラーレス学習(誤りなし学習)とは、誤りをさせない学習方法です。
一方、誤り(試行錯誤)を通じて学習していく方法は、エラーフル学習(誤りあり学習)になります。
記憶障害を有する方においては、エラーレス学習とエラーフル学習を比較すると、エラーレス学習の方がよい成績になると言われています。
そのため記憶障害を有する方には、エラーレス学習を中心にリハビリテーションを行っていく必要があるとされています。
記憶障害を有する方では、一度間違えて覚えてしまうとその誤反応が残ってしまい、正しい反応や行動に修正しにくくなるという特徴があります。
このことから、記憶障害を有する方が、新規の事を覚えようとする際には、先に誤った反応が出るのを避ける必要があるといえます。
そのため、最初から正しい(覚えてほしい)反応が出るように、セラピストや介護スタッフ、家族は関わっていく必要があります。
健常者では、エピソード記憶が正常なので、誤反応があったとしても、その体験をもとに正しい反応や行動に修正することが可能です。
潜在記憶は記憶障害者にも保たれているため、自分の行った誤り反応が潜在記憶に残り、次回以降も同じ誤りを繰り返す結果になると考えられている。
綿森 淑子ら「記憶障害のリハビリテーション-その具体的方法-」リハビリテーション医学 VOL.42 NO.5 2005
潜在記憶は簡単に言うと無意識レベルの記憶で、専門的に言うと「意識的な想起を伴わない記憶」となります。
誤反応が無意識レベルの記憶として保たれてしまうというわけです。
これまでのことから、記憶障害を有する方においてはエラーレス学習がポイントになることがわかりました。
では、臨床場面においてエラーレス学習をどのように用いるかを考えていきたいと思います。
基本的な戦略としては、対象者に「推量を求めない」ことが重要なポイントになります。
推量(考える、推測する)ことは、試行錯誤をさせることにつながってしまいます。
考えて出した答えが間違ったものだったとすると、記憶障害を有する方はその答えが潜在的に保持されてしまい、次回以降も間違った答えを表出してしまう可能性が高くなります。
それだけは絶対に避けたいですから、常に正しい答え・反応を対象者に提供する必要があります。
このような考え方は、セラピスト、介護スタッフ、家族など、対象者に関わる全ての方に徹底しておく必要があり、セラピストは、行うと決めた戦略を有効にしていくためにも家族教育なども行うことが重要になります。
繰り返しになりますが、エラーレス学習は相手に推量を求めないことですから、こちらから正しい反応を提示していく必要があります。
「今日は何月何日何曜日ですか?2月20日火曜日ですね。」「私の名前を覚えていますか?◯◯ですよ。」などと日常会話場面でもエラーレス学習を応用できる機会は多いと思います。
新規課題(例:クロスステッチ)を行う際にも、対象者が迷いそうな素振りが見られたら即座に適切な行動がとれるように誘導していくことで、正しい反応が潜在記憶として残るようにアプローチしていく必要があります。
対象者に話してもらう時も、答えに確信がないものを言ってもらうよりは、確実に確信がもてることのみを言ってもらう方が記憶障害を有する方にとってはとても有益だと思われます。
PQRST法を行う際にも同様で、Testにおいて即答できない場合に、正解を導くための最初の語などを提示することにより、誤った表出を防ぐようにします。
エラーレス学習(誤りなし学習)とは、誤りをさせない学習方法です。
一方、誤り(試行錯誤)を通じて学習していく方法は、エラーフル学習(誤りあり学習)になります。
誤りなし学習に適している課題は、知識を覚える、単語を覚える、対連合学習(2つの項目を対として覚える)などとされており、メモリーノートの導入時にも効果的だとされています。
試行錯誤学習では、誤りの中から自身への気づきを高めたい場合などに用いられることがあります。
このような自己認識を高めていくことで、問題解決方法を生み出したり、対処方法を自ら立案していくことにつなげていくことがあります。
論文「記憶障害者への社会生活・復職におけるメモリーノートの汎化に向けた取り組み」では、メモリーノートを社会生活で使用するために試行錯誤学習を用いています。
試行錯誤学習において、様々な状況を通じて「失敗」を体験しますが、この失敗体験により自身の障害への気づきが高まることを期待します。
しかしながら、失敗体験をすることは対象者自身の喪失体験にもつながってしまうため、適切なフィードバックや励まし、賞賛が必要なのは言うまでもありません。
どのような新規課題においても、障害への気づきを高めたい場合には、多少の失敗を伴う試行錯誤学習を導入する方がよいのかもしれません。
注意点としてですが、対象者の精神的機能(ストレス耐性など)を把握した上での導入が必要になります。
試行錯誤学習を用いることができる対象者の状況としては、ある程度自身の障害認識がある方になるかと思います。
例えば課題遂行後のフィードバックにおいて、セラピストが誤りを指摘してもそれに対して我関せずといったような方には導入が難しいまたは時期尚早と考えられます。
フィードバックに対して誤りに気づけるレベルの方であれば、誤りなし学習を導入して誤りに気付かせないまま課題を進めるよりは、試行錯誤学習により誤りを気付かせる機会を設けた方がよいかもしれません。
記憶障害があっても、注意機能、知的能力や問題解決能力のような前頭葉機能の働きが良好であれば、自身の障害への気づきが高いことが多く見受けられるように思います。
これは、リハビリテーション場面だけではなくて対象者が生活する病棟、家庭、職場などの様々な場面での様子から評価し、得られる情報です。
このような評価情報から対象者のアウェアネスがあるていど高いと判断できれば、試行錯誤学習を用いることもひとつの方法になるかもしれません。
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PQRST法は記憶障害の方に対する学習方法の一つで、「Previw」「Question」「Read」「Self-Recitation」「Test」からなります。
要するに、
Previw:全体的なものとして捉えるためにはじめにざっと目を通す
Question:文章の鍵となる意味内容について尋ねる
Read:上記の質問に答えれるように文章を読み込む
Self-Recitation:読み終えた情報を積極的に覚えていく
Test:質問に答え、正誤を再検討する
というような構成になっています。
PQRST法は、文章を記憶するために有効な学習法であり、このような戦略は言語的記憶戦略法と呼ばれています。
PQRST法は、言語性記憶障害のある方が対象になります。
日常生活や仕事場面では、文章を読み取り、それに応じた反応または行動を示していくことが重要になります。
学校での授業を考えてみると、授業では教科書を使用しながら基本的な知識を習得していくことが多くあります。
そのような際に、言語性記憶障害があると学習がはかどりにくいことは目に見えています。
PQRST法は近時記憶に対する戦略であり、数分から数時間、数日といった記憶保持過程における新しい情報学習するためにも必要になるといえます。
PQRST法では、前途した通り文章を読み流すだけではないことがわかります。
質問に答えることができるように読んでいくため、精読するのに時間はかかることが特徴でもあります。
質問に答えるためには文章の要点を捉えながら繰り返し読み取っていくことが必要になります。
質問があることによって、記憶を想起する過程で手がかりとなり、それが符号化を促すために記憶保持がなされやすいと考えられています。
PQRST法で用いられる課題には、文章のみのものと文章+写真や図(絵)の課題に分けることができます。
課題には新聞紙の記事をよく用います。
新聞紙の記事には、短いものから長いもの、写真や図が挿入されているものまで多岐にわたるため、課題選びには困りません。
また、対象者の興味や関心に沿った記事を選択することができ、記憶保持の助けになることも期待できます。
Questionで設定される質問数には特に決まりはありません。
文献等を見ていると、5〜6つ程度の質問数を設定しているようです。
質問の内容にも特に規定はなく、「いつ」「だれが」「どのように」「どうして」などの視点から質問を設定していくのがよいと思われます。
Readでは答えを確認しながら読んでいきますが、記憶の保持を助けるために答えとなる文章を見つけたら線を引くなどして目立つようにすることもあります。
Self-Recitationでは質問に沿って積極的に答えを覚えていきます。
Testでは再生までの時間に特に規定はありません。Self-Recitationが終了してから10秒程度経ってからTestを行います。
記憶障害を有する方においては、誤りなし学習を行う方が記憶の定着がよいと考えられており、これはPQRST法にも応用ができます。
Testにおいて即答できない場合に、正解を導くための最初の語などを提示することにより、誤った表出を防ぐようにします。
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間隔伸張法とは、ある情報を保持する時間間隔を徐々に伸ばし、想起させる方法です。
例えば、ある言葉を覚えてもらって、
①直後
②30秒後
③1分後
④5分後
⑤10分後
⑥20分後
というように徐々に保持時間を伸ばし、想起させていきます。
間隔伸張法は、記憶障害を有する方や認知症を有する方に有効性があるとされています。
記憶障害以外にも、失語症者の訓練にも用いられることがあります。
また日常生活場面でも、車椅子のブレーキ操作や移動時の注意点など、リスク管理能力獲得のためにも用いることができます。
どの場面においても、基本的な戦略としては試行錯誤を避け、不適切な行動や言動が見られた場合には修正行動や手がかりを与えることで誤りなし学習を強化します。
間隔伸張法は、すべての方が対象になるわけではありません。
間隔伸張法を実施するには、ある程度の手続き記憶が必要とされています。
そこで、スクリーニングを行う必要があります。
例えば、セラピストの名前を使用するのであれば、
「私は◯◯です。では私の名前は?」と問いかけます(直後再生)。
次に、「私の名前は?」と15秒程度して問いかけます。
次に、「私の名前は?」と30秒程度して問いかけます。
正しい解答が得られた場合は次の段階に進み、間違えが見られた場合にはもう一度行います。
3段階のうちのどこかで3回間違えが見られたら間隔伸張法の対象にはならないと判断します。
間隔伸張法の課題には、基本的には対象者に必要性がある課題をもちいます。
例えば、担当者の名前、日付などがあります。その他は、対象者への情報収集を通じてリストアップする必要があるかもしれません。
また、一般的な課題としては、単語、文章なども用いられることがあります。
リハビリテーション医学の第42巻5号に間隔伸張法を用いたドリル課題の流れが紹介されているため、引用させてもらいます。
きのうの復習
1 前日に覚えた文を想起する
2 自己採点する
3 再度正しい文を書き直す練習A:メインの課題、短い文を記憶し直後に想起する
1 課題文を記憶する(例:「今日の天気は晴れのち曇り、明日の天気は雨です。」)
2 覚えた文を直後に想起する
3 自己採点
4 再度正しい文を書き直す練習B:間隔をおくための課題。ぬり絵をして言葉を考える
1 ぬり絵をして絵から思いつく言葉を考えて記憶する
2 覚えた言葉を想起する
3 自己採点
4 再度正しい言葉を書き直す練習A’(20分後):間隔をおいた後にメインの課題文を想起する
1 覚えた文を遅延後に想起する
2 自己採点
3 再度正しい文を書き直す綿森 淑子ら「記憶障害のリハビリテーション-その具体的方法-」リハビリテーション医学 VOL.42 NO.5 2005
これを見ていると、遅延再生の前に課題を入れていることが特徴的です。
課題を間に挟むことで、干渉後の再生課題となります。
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メモリーノートを使用することで、仕事や生活に関することについて、自分で管理ができるようになったり、自分自身の行動を振り返ることにつながったり、作業手順の整理に役立てれば確実にミスなく作業ができるようになったりします。
ノートに記載して確認するという記憶を代償する事で、日常生活上様々なメリットがあります。
記憶障害だけでなく、遂行機能障害であれば情報整理により計画的な行動を促す事に役立つ事が考えられ、精神障害であれば近い将来の行動予定が把握できることで不安の軽減に役立つ事が考えられます。
このようなことから、メモリーノートは記憶の代償だけではなく、適切な行動を促すツールとしても用いることができます。
メモリーノートには、情報の共有の機能もあると考えられ、これは、予定や重要事項などを患者だけでなく他者とも共有できるということです。
メモリーノートにうまく書けない場合支援者が記入することで本人との情報共有が図られ、患者がメモリーノートを通じて記録を他者に伝えることで、その経験を他者と共有することにつながります。
メモリーノートの項目は、患者の将来的な必要性により決定していきます。
例えば、基礎情報、行動メモ、カレンダー(スケジュール)、しなくてはならないこと、交通機関、感想メモ、人名、重要な事などがあります。
カレンダー(スケジュール)では、翌日以降の予定について月日、時間、内容、場所を記載することができます。
しなくてはならないことでは、指示された月日と完了期限、その内容、また実施したかどうかのチェック欄を記載します。
行動メモには、その日行った事やその時に知った情報などを記載することで、行動を振り返るのに役立ちます。
感想メモでは、日記的にその日の感情の変化など、自由に記載することができます。
様々なものを用意することができます。
ルーズリーフ式、大学ノート、大きい小さいなど、患者によって異なります。表紙が興味を惹くような綺麗なものであったり、名前入りのものであったり、患者に選択させることでメモリーノートの使用が促されることもあるかもしれません。
大事なことはメモリーノートの必要性を患者が理解し、日々使用するということにいかに繋げていくかということです。
メモリーノート使用獲得に向けては、その意義や使用の意欲を高めていく必要があります。
そのために、まずはすでにノートに記載されている内容を参照する事から初めていきます。この段階でメモリーノートを使用できるということは、自分で覚えなくても、ノートを適切に使用することで記憶の代償(引き出し)が可能であるということを意味しています。
参照訓練を行うことで、メモの使用に抵抗があった人にノート使用の意義や必要性の理解を促したり、使用意欲を高めるのに役立つことが考えられます。
構成では、メモリーノートを書き分けるための要素を訓練していきます。
シール(インデックス)などを用いて、ノートの適切な場所に、各課題が書かれたシールを貼り付ける作業を行います。
貼り付ける作業は記入することよりも単順で、情報を書くための適切な場所を見つけることを目的としており、シールは間違えても剥がすことが可能なので、失敗をしても再度チャレンジできることもあり、学習機会が増えるというメリットがあります。
記入では、ノートに口頭指示による内容を適切な場所に記入していきます。
ここでは障害特性に応じた記入方法の工夫を行い、適切な内容で適切な場所に記入することを獲得します。
構成訓練で書く場所についての学習は図られているため、記入訓練ではその部分への注意の負担は軽減されることが考えられます。
ノートを使用を促すために、キーワードを決めておくことも有用です。
これにより、ノートを使用する機会を患者が自ら気付くきっかけになることがあります。
例えば、カレンダー(スケジュール)では、「予定」がキーワードで、しなければならないことでは、「今日のうちに」「〜までに」がキーワードで、重要事項は「重要なこと」がキーワードになります。
これは患者本人だけでなく、支援者や家族も意識的にキーワードを使用することで、ノートの使用獲得が促されやすくなると考えられます。
般化に向けては、アラームなどの補完手段と組み合わせることが考えられます。
携帯のアラームでメッセージをつけれる機能があれば、定期的にノートの使用を促す機会になるかもしれません。
特定の場面ではノートを使用できるが、環境が異なるとノートの使用ができなくなることもあるため、般化には、患者をとりまく周囲の環境設定が重要になってきます。
前途のキーワードを含んだ指示の仕方などを周囲が行うことで般化につながることが考えられます。
「場面」「課題」「支援者」で区別することで、般化に至らない要因を発見することに役立ちます。
「場面」では、同じ指示内容を同じ支援者が違う場面で言う場合です。他の環境(例えば周囲が騒がしい)にて同じ指示を書き分けることができない場合、支援者は口頭指示に加えて視覚的な提示や個別に指示を与えるなど場面設定を行う必要があります。
「課題」では、同じ支援者が一定場面で違う指示内容を言う場合です。指示内容の変化により書き分けることができない場合、口頭指示に加えて視覚的な提示を行ったり、キワーワードを強調する、あらかじめ異なる課題を指示することを説明するなどの設定が必要になります。
「支援者」では、同じ指示内容を一定場面で異なる支援者が言う場合です。
この場合は、人による違いのため、段階としてはいきなり新たな支援者からの指示とせず、今までの支援者と新たな支援者両方いる場面で新たな支援者が指示を出すなどのステップが日必要です。
日常場面では、場面・課題・支援者が様々な組み合わせにより生じてきます。
対象者にとっては、ノートを使って良いのか、内容的にノートに記入すべきなのか、ノートへの記入を求められているのかなどの不安要素が生じている場合があります。
上記のことも含め、これら般化を阻害する要因を分析し、使用獲得に向けたアプローチを行うことが大切です。
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対象者の記憶が視覚優位なのか、言語(聴覚)優位なのかということは非常に重要な評価要素だと考えられます。
目で見て覚える方が得意な方に、耳で聞かせて覚えることを行っても、それはかなり非効率で努力を有することが予測できます。
セラピストは、様々な検査や日常生活場面での観察等を通じて、対象者が視覚優位か聴覚優位かを把握する必要があるのです。
視覚性記憶の検査としては、
・Rey複雑図形検査
が代表的かと思います。
また標準注意検査法(CAT)のタッピングスパンも視覚性記憶を評価できます。
聴覚性記憶の検査としては、
・聴覚言語性学習検査(Rey Auditory Verbal Learning Test(AVLT))
・三宅式記銘力検査
が代表的かと思います。
また、標準注意検査法(CAT)のディジットスパンも視覚性記憶を評価できます。
より日常生活に即した検査として、日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)があります。
これらの検査などから、対象者のプラスの側面を見つけ出していくのも大切な評価になります。
フェインディングとは、心理学で用いられる方法です。
フェイディングは自転車に乗る練習に例えれば、『補助輪のついた自転車での練習』から『人の手で後ろを支えてもらった自転車での練習』への変化、そして、『自分の力だけで自転車に乗ることの成功』として理解することができる。
誰かが必要に応じて『強化子(報酬・罰)』を与えて援助して上げなくても、自分自身の意志と判断だけで、その『目的とする行動・学習』ができるようになるのが行動療法(オペラント条件づけ)の最終的な目標になるということである。
http://digitalword.seesaa.net/article/254479219.html
記憶障害(道順障害)のリハビリテーションで言うならば、道順を示す目印を徐々に減らしていき、最終的に自身の判断で道順を正しく覚えることができるようにする戦略です。
この方法を用いれるかどうかも、対象者の能力により変わってきます。
例えば、対象者が目印(矢印など)を見るのを忘れてしまっている、矢印が何のためにあるかが思い出せないというようなことになると、この方法は意味がなくなってしまいます。
文字順法では、順路の曲がり角ごとに文字札(アルファベッドなど)を提示しておき、それをたどっていくことで目標地点に到達するための方法です。
この戦略においても、目印を見ることを覚えていることが必要条件になります。
これは、書籍「高次脳機能障害の作業療法」で紹介されています。
高次脳機能障害の作業療法
外国での場面ですが、ある目標地点に行くために、「ReaL Emergency」という単語を覚えさせるようにしています。
これは、ひとつめの角を右に曲がり、次の角を左に曲がり、Emergencyの表示が見えたら目標地点であるといった覚え方です。
ある意味語呂合わせ的な要素もあると思いますが、ある対象者にとっては有効かもしれません。
この場合も、どこで曲がるのかがわからなければ、実践できないため注意が必要です。
今までに3つの方法を挙げてきましたが、他にも方法はたくさんあると思います。
聴覚・言語性記憶が優位なのであれば、建物の看板を読む、特徴のある目印を言葉で覚える、メモに書いておいてそれを見ながら進むなどが考えられます。
病院や施設の中ではあまり目印になるものがないことも部屋までの道順が覚えにくい要因になっているかもしれません。
実際に外出訓練を通じて対象者の能力を確認することも必要になると考えています。
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ワーキングメモリのトレーニングとして、Nintendo 3DSの「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」がリハビリとしても有用ではないかと思い、紹介することにします。
鬼トレでワーキングメモリを鍛えると、個人差はありますが、
「実行力」「抑制力」「予測や判断」「集中力」が向上し、仕事や勉強の効率が上がったり、家事のスピードアップやスポーツの上達など、様々な効果が期待されます。
とあります。
MRIを用いた前頭前野背外側皮質の体積を測定したところ、2ヶ月実施により体積の増加が認められたようです。
しかし、脳損傷による高次脳機能障害者の場合ははっきりとしたデータはないようです。
Nintendo 3DSは場所を選ばず持ち運びもできて、ゲーム感覚で行うこともできるため、操作の理解があり、ゲームとしてなら意欲が高まりやすいような場合、自主トレーニングとしては最適ではないかと思われます。
「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」の良い所は、実施者の成績に合わせてレベル調整が自動的になされ、課題も豊富にあることです。
具体的には、各課題の正解率が75%程度であればレベル据え置き、65%以下であればレベルダウン、85%以上でレベルアップします。
出典:
https://www.nintendo.co.jp/3ds/asrj/training/index.html
鬼トレ
①鬼計算
順に出題される計算問題の答えを覚えながら、前に出題された問題の答えを書きます。一般的には「Nバック課題」と言われています。動画はこちらから。
出典:
https://www.nintendo.co.jp/3ds/asrj/report/index.html
②鬼めくり
ふせたカードをタッチして同じ数字のペアを見つけます。カードを2枚めくって同じ数字ならカードが消えます。動画はこちらから。
③鬼ネズミ
ネコとネズミが出たり入ったりする間、パネルに隠れたネズミを覚えます。動画はこちらから。
④鬼朗読
文を声に出して読みながら、下線の言葉を覚えます。最後に、下線の引かれた言葉をすべて書き出します。動画はこちらから。
⑤鬼記号
順に表示される記号を覚えて、前に表示された記号を答えます。動画はこちらから。
⑥鬼ブロック
6つのブロックのうち1つが消えます。くり返し消えるのですべて覚えます。最後に、ブロックが消えた順にタッチします。動画はこちらから。
⑦鬼カップ
数字が書かれたボールをカップで隠し、シャッフルします。カップの中の数字を覚えて、中の数字が小さい順にカップをタッチします。動画はこちらから。
⑧鬼耳算
声で出題される計算問題の答えを覚えながら、前に出題された問題の答えを書きます。動画はこちらから。
他にも、「鬼トレ補助」9種、「脳トレ」9種、「集中時間測定」、「リラックス」3種があります。
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基本動作、ADLの観察評価!高次脳機能障害の現れ方!高次脳機能障害と作業遂行上のエラーに対する支援とアプローチの例前頭葉損傷(遂行機能障害)に対する評価と作業療法、リハビリテーションアプローチ失行をくまなく評価し、リハビリテーションアプローチにつなげる知識と方法!ゲルストマン症候群に対してはどのようなリハビリ(作業療法)を行うのか日本語版SRSIの概要と評価方法、結果の解釈前頭前野(前頭連合野)の機能・役割とADLにおける観察ポイント2種類の保続とリハビリテーション!機能面とADLへのアプローチ構成障害に対するリハビリテーションアプローチレーヴン色彩マトリックス検査の概要と使用方法、結果の解釈意欲障害の捉え方!うつとアパシー違いや評価方法を解説!コース立方体テスト(目的、方法、IQ算出、結果の解釈)と、頭頂葉・後頭葉、前頭葉領域障害による取り組み方の違い注意障害の評価と解釈、リハビリテーションの進め方失語症の知識(聴覚的理解と発話)の評価、リハビリテーション半側空間無視の詳しすぎる評価方法やリハビリ方法(アプローチ)を解説!
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