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上腕骨(頚部)骨折に対するリハビリテーション!注意点やリハビリ方法!

上腕骨頚部骨折に対するリハビリテーションでは、骨癒合の状態を見ながら、痛みや関節可動域制限に考慮しながら進める必要があります。今回上腕骨(頚部)骨折に対するリハビリテーションについてまとめていきたいと思います。

目次

上腕骨(頚部)骨折に対するリハビリテーション!注意点やリハビリ方法!

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肩関節についてのおすすめ記事

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上腕骨頚部(近位端)骨折の概要

上腕骨頚部(近位端)は肩関節に近い部分を指すます。

スポーツや交通事故による外傷、転倒による受傷が多いとされています。

骨折による転位の程度を知る事が重要(Neer分類)です。

神経損傷や脱臼が合併症として多く、末梢神経障害による感覚障害に注意する必要があります。

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上腕骨頚部(近位端)骨折の分類

Neerの分類が用いられます。

骨頭、骨幹、大結節、小結節間が、各々1cm以上、あるいは45°以上の回旋転位がある時に、転位有りと判断する基準があます。

1つの骨片の転位:2parts骨折

2つの骨片の転位:3parts骨折

3つの骨片の転位:4parts骨折

転位が基準以下の場合、1part骨折

となっています。

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上腕骨頚部(近位端)骨折の合併症

合併症としては、

骨転位による血行障害、骨頭壊死、肩関節機能障害

骨折による疼痛、関節可動域制限、日常生活動作障害が生じます。

肩関節可動域制限では、
・屈曲
・外転
・外旋

が生じやすくなります。

転位の程度が大きくなると、可動域制限が残存しやすいとされています。

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上腕骨頚部(近位端)骨折で手術するか、しないか

1part骨折では保存療法が選択されやすいと言われています。

2parts骨折、3parts骨折ではプレート固定術や髄内釘固定術が行われる事が多くなります。

4parts骨折(骨頭の整復が困難な状態)では人工骨頭置換術が行われる事が多くなります。

プレート固定の欠点は展開が大きくなり拘縮を起こし易い事で、釘の欠点は腱板を損傷することや2part骨折を3part骨折へ拡大する可能性があります。

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上腕骨近位端骨折のリハビリテーション評価

患側上肢が、日常生活上または仕事上においてどの程度の運動性を必要とするかを聴取します。

これらは目標設定に必要となります。

・機能的に回復可能か

・回復不可能な場合、代償手段の獲得が必要になる

画像評価では、受傷時の骨折の状態や術後の固定性の確認を行います。

視診、触診としては、以下の評価を実施します。

・保存療法または術後の装具固定は適切か(方法や必要性を理解
しているか)

・患部または患部外の炎症反応の確認(腫脹、熱感、発赤、浮腫)

・周計測定(上腕部(肘上5・10cm)、肘部、前腕部(肘下5・10cm))

疼痛としては、以下の評価を行います。

・安静時、動作時における疼痛の程度(NRS、VAS)

感覚としては、以下の評価を行います。

・末梢神経障害の有無を確認

これは、骨折部周囲や遠位の感覚検査を行います。

関節可動域としては、以下の評価を行います。

・主治医の許可が下りれば、肩関節の可動域測定を実施

・患部外の可動域制限を生じる可能性があるため計測

・結帯動作は指椎間距離を計測(母指とC7棘突起間の距離)

筋力としては、以下の評価を行います。

・骨折部または術部に負担をかけないために、骨癒合確認後にMMTを行う

・握力の左右差を確認

・自動運動許可が下りれば、肩挙上に伴う代償動作の確認

評価バッテリーには、以下のようなものがあります。

・Hand20

・DASHまたはQuick DASH

これらの評価については以下の記事を参照してください。

ハンドセラピーで用いる評価バッテリーの概要と評価方法、結果の解釈

ADL評価では、以下のことを確認していきます。

・各動作における観察

・代償動作の確認

・代償方法の確認

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上腕骨頚部骨折のリハビリテーションの流れを確認

上腕骨頚部骨折に対するリハビリテーションでは、骨折の状態や骨折粒の固定力により、その進め方を考慮していく必要があります。

基本的には、主治医と連絡を取りながら、自動介助運動や自動運動の指示が出るまでは慎重になる必要があります。

術後直後では、化骨の形成が不十分であり、その時期には過緊張状態になりやすい筋肉の緊張を軽減させる必要があります。

過緊張状態になりやすい筋肉としては、大胸筋や三角筋が代表的です。

そのため、これらの筋肉の状態を確認しながら、手術直後ではリラクゼーションを進めていくことが大切になります。

手術直後では上腕骨の運動は行えませんが、肩甲胸郭関節(肩甲骨)の可動性を維持させたり、その運動を行うことは大切になります。

肩甲上腕関節については、烏口上腕靭帯、中関節上腕靭帯、前・後下関節上腕靭帯の柔軟性維持に対して、ストッピングエクササイズを行います。

自動運動の維持が出れば、軽い負荷での腱板筋に対するトレーニングを行い、骨頭が関節窩に安定しておさまるようにしていきます。

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上腕骨頚部(近位端)骨折の保存療法の流れ

1part骨折では保存療法が選択されやすくなります。

1part骨折では予後も良好な場合がほとんどです。

保存療法では三角筋やバストバンドによる装具固定が行われます。

受傷1週後頃よりstooping exが開始されます。

受傷2週後頃より他動運動が開始されます。

ただし、4週程度外固定する場合もあります。

受傷5週後程度より自動介助運動が行われ、その頃より装具固定が外される事が多くなります。

受傷後6週程度で骨癒合が得られやすくなります。

受傷後7-8週程度で自動運動、等尺性の筋トレを行います。

受傷後9週程度でストレッチングや筋トレを強化していきます。

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上腕骨頚部(近位端)骨折の手術療法

2parts骨折、3parts骨折ではプレート固定術や髄内釘固定術が行われます。

4parts骨折(骨頭の整復が困難な状態)では人工骨頭置換術が行われる事があります。

プレート固定の欠点は展開が大きくなり拘縮を起こし易い事です。

釘の欠点は腱板を損傷することや2part骨折を3part骨折へ拡大する可能性がある事です。

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上腕骨(頚部)骨折術後の大まかなスケジュール

術後翌日〜2週

・肘関節以遠の自動、他動運動による関節可動域訓練
・ストッピングエクササイズ
・肩関節の他動挙上運動(90°まで)

術後3〜5週

・肩関節の他動挙上・外旋関節可動域訓練
・自動介助、自動運動
・自主トレーニング(棒体操、ワイピングなど)

術後6〜8週

・肩関節の全方向への自動、他動関節可動域訓練
・腱板筋トレーニング、肩甲上腕リズムの獲得

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肩関節人工骨頭置換術の流れ

術後、三角巾による装具固定(リハビリ以外)は5週頃まで行います。

術後5週頃まではstooping ex(三角巾装着の元)や他動運動を行います。

肩甲下筋の縫合をしている場合、伸展・外旋を制限する事があります。

術後は6週程度の自動運動を回避します。

6週頃より、骨癒合の程度を確認しながら、自動介助運動や等尺性の筋トレを行います。

8週頃より、徐々にストレッチや筋トレの強度を高めます。

8週頃からは日常での腕の使用も可能になります。

13週頃より、最終域でのストレッチや筋トレ(抵抗運動)を行います。

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stooping ex(ストゥーピングエクササイズ)とは

ストッピングエクササイズは、自分の腕の重みにより軟部組織を慎重させるトレーニングです。

立位で行われることもありますが、手術直後ということを考えれば、リラックスできる肢位として腹臥位が選択されることがあります。

①ベッド上で腹臥位になり、上肢を床に下垂させます。
②上腕骨が回旋しないように注意します。
*この際防御性収縮が生じないように慎重に誘導します。

目的としては、棘上筋と肩峰下滑液包との癒着予防や、上腕骨の大結節が肩峰下に通過できる環境を確保しておくことにあります。

具体的なエクササイズ方法は動画で確認⇨

チャンネル登録よろしくお願いします⇨https://bit.ly/37QHaWc

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側臥位でのstooping ex

側臥位でのstooping exでは、肩甲骨を操作します。

肩甲骨上方回旋させると、関節包靭帯上部がストレッチできます。

肩甲骨下方回旋させると、関節包靭帯下部がストレッチできます。

注意点としては、骨折部の離開を防ぎながら行う必要がある事です。

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側臥位でのstooping exの実際

側臥位で実施します。

患側上肢の下には枕やクッション等で敷き、上腕骨近位部を把持固定することで骨折部(術部)の安定性を保ちます。

患者は上肢をリラックスさせ、肩屈曲45-90°の肢位をとります。

他動運動にて肩甲骨を上方回旋させる事で、関節包靭帯上部がストレッチできます。

他動運動にて肩甲骨を下方回旋させる事で、関節包靭帯下部がストレッチできます。

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体幹回旋によるstooping ex

体幹前屈位でのstooping ex時に、体幹の回旋を加える事があります。

【例】左上腕骨近位端骨折

体幹右回旋させると、関節包靭帯前方がストレッチできます。

体幹左回旋させると、関節包靭帯後方がストレッチできます。

【例】右上腕骨近位端骨折

体幹右回旋させると、関節包靭帯後方がストレッチできます。

体幹左回旋させると、関節包靭帯前方がストレッチできます。

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体幹回旋によるstooping exの実際

体幹前屈位、上腕骨骨頭を把持安定させます。

上腕骨は垂直位を保持します。

体幹の左右回旋を加えます。

体幹回線により関節包靭帯前・後部繊維がストレッチされます。

側臥位での肩甲骨上方・下方回旋操作も行い、関節包靭帯上・下部繊維のストレッチも併用して行います。

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肩峰下インピンジメントとは

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肩峰下インピンジメントとは、上腕骨の下方への滑り運動が阻害された結果、大結節が肩峰下を通過できなくなる状態のことを指します。
肩峰下インピンジメントでは、肩峰下にある棘上筋、棘下筋、肩峰下滑液包が挟み込まれることで痛みが生じます。

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肩峰下インピンジメントの原因(能動要素と受動要素)

受動的要素における肩峰下インピンジメントの原因としては、
・肩峰下滑液包の癒着(肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮含む)
・後方関節包の拘縮
が考えられます。

能動的要素における肩峰下インピンジメントの原因としては、
・各腱板筋の機能低下(筋力低下、筋出力低下など)
・肩甲胸郭関節の機能低下(筋力低下、筋出力低下など)
が考えられます。

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肩峰下滑液包の癒着(肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮含む)

肩峰下滑液包は、腱板の上に存在する組織です。
キャタピラのような動きをすることで、
肩峰下滑液包において癒着が生じると、キャタピラの機能が果たせなくなるため、スムーズな関節運動が阻害されます。
肩峰下滑液包の癒着では、肩関節内転時に肩甲骨の下方回旋が確認できます。

肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮があると、肩挙上時の上腕骨の下方への滑り運動が阻害され、スムーズな関節運動が阻害されます。
肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮では、肩関節の内転制限が確認できます。

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後方関節包の拘縮

後方関節包の拘縮があると、肩挙上時の上腕骨頭の後方滑りが阻害され、スムーズな関節運動が阻害されます。

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各腱板筋の機能低下

各腱板筋は、肩挙上時に上腕骨頭を関節窩に対して求心位に保つ役割があります。
腱板筋の筋力低下があると、肩挙上時に三角筋の収縮力を大きくしようとするため、インピンジメントが起こることが考えられます。
また、痛みがなくても筋力低下がある場合、インピンジメントにつながる可能性があります。
そのため、どの部位の腱板の機能低下がみられるかを把握することが重要になります。

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肩甲胸郭関節の機能低下

肩甲胸郭関節の機能低下があると、肩峰下インピンジメントが生じることがあります。

上肢挙上時の肩甲骨の上方回旋が不足すると、相対的に、第2肩関節スペースが狭くなる。

運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略

筋力だけではなく、筋の伸張性(筋緊張)も考慮する必要があります。

前鋸筋は肩甲骨の内転、菱形筋が肩甲骨の外転、肩甲挙筋が肩甲骨の下制、小胸筋が肩甲骨の後傾を制限することで、肩甲骨の生理的な運動が制限されることになる。

肩関節拘縮の評価と運動療法

詳しくは、以下の記事も参照してください。
肩屈曲、外転時痛(肩峰下インピンジメント)の原因の評価方法

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肩峰下インピンジメントにどう対応するか

肩峰下インピンジメントは、上記のような理由により生じますが、肩峰下インピンジメントを生じさせないようにするには、

上肢挙上時に肩峰下での大結節の衝突を避けることにあります。

そのためには、

・肩周囲の筋緊張が過剰緊張になっている部位の緊張除去を図る
・肩甲骨をニュートラルな位置に整える
・上肢挙上時に肩甲骨上方回旋がしっかりと生じるようにする(肩甲上腕リズムの獲得)
・腱板筋の筋出力(筋発揮力)を高める

ということがポイントになります。

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上腕骨近位端骨折術後の肩峰下インピンジメントの原因

髄内定固定術では、術中に滑液包と棘上筋に侵襲が加わるため、癒着による滑動性低下や腱板炎による腱板機能低下の可能性があります。

肩峰下滑液包と棘上筋を他動的に滑らせる事が重要です。

疼痛やポジショニング、アライメント不良、肩周囲筋の過緊張は肩峰下インピンジメントの原因となり得ます。

術後初期のポジショニングやアライメントの確認が必要で、これは、肩峰と上腕骨頭の距離を保つことに役立ちます。

AHI(acromion-humeral interval)とは、肩峰から上腕骨頭直上までの距離(X線写真で確認)で、正常値は7-14mmとされています。

術後肩峰下インピンジメントをどう防ぐか、対応するか

三角巾装着時の注意点(前から見て)です。

・術側の肩が上がっていないか

肩甲骨アライメントに影響したり、腱板炎の増悪に繋がります。

・肘が伸びていないか

・手のひらが下を向き(前腕回内)、手首が曲がっていないか(掌屈)

大胸筋の緊張につながります。

三角巾装着時の注意点(横から見て)です。

・肩甲骨が前に傾いていないか

肩甲骨位置(下方回旋、外転を伴う)による鎖骨下動脈圧迫、腕神経叢・腱板の牽引による疼痛につながります。

・肘が後方に位置していないか

肩甲骨位置や肩周囲筋の過緊張につながります。

上腕骨近位端骨折のリハビリワイピングエクササイズ(テーブル拭き)

サンディングとも呼ばれています。

ワイピングエクササイズは、テーブルを拭く動作訓練です。

脳卒中片麻痺者、上腕骨近位端骨折、頚椎症性脊髄症など、様々な疾患に適応があります。

麻痺手の筋出力改善、上肢の筋力増強や関節可動域の改善を目的に利用する事が多いです。

テーブルの上で行うため、関節への負担に配慮しながら行えたり、筋力が十分でなくても上肢運動を促す事ができます。

痛みの状態に合わせて稼働範囲を自分で調整する事ができます。

両手で行うことで、両手を協調させる手の使用練習にもなります。

重錘で負荷をかけることにより、筋力増強運動になります。

ワイピングエクササイズを行う時期としては、自動介助運動の許可が下りる時期になります。

保存療法では受傷後5-6週程度、手術療法では術後4-6週程度、人工骨頭置換術では術後6-7週程度が目安です。

実施上の注意点としては、以下のような事があります。

・ゆっくりとテーブルを拭く
・肩関節屈曲、伸展、内転、外転運動を実施
・疼痛が強くなる場合、可動範囲の調整や運動を中止する
・1セット30回程度を1日2-3回を目安に実施する

上腕骨近位端骨折のリハビリ肩甲骨運動

肩甲骨運動を行う時期としては、全時期を通して行う事が必要(特に装具固定期で重要)です。

・保存療法では受傷後4週目程度まで
・手術療法では術後3週目程度まで
・人工骨頭置換術では術後5週目程度まで

になります。

なぜ肩甲骨運動が必要かというと、肩を挙げる際、腕の運動と肩甲骨の運動は一つのユニットとして動くためです。

装具固定期に、肩甲骨の運動性は保たれておく必要があり、特に、肩甲骨内転・下制方向の動きが重要(僧帽筋中・下部繊維)になります。

手術において、deltopectoral approach(前方進入法)というものがあります。

この方法では、烏口突起の直上から三角筋の前縁に沿って大胸筋の上腕骨停止部に至るまでの切開が行われます。

ロッキングプレートや人工骨頭置換術で実施されます。

この方法は、上腕骨と三角筋との間の滑走性が制限されやすくなります。

肩甲骨内転(胸を張る)運動で滑走性を促す事が重要になります。

上腕骨近位端骨折のリハビリ 肩後方組織に対して

上腕骨近位端骨折後のリハビリでは、上肢挙上の際に大結節を肩峰下に通過させる事が大切です。

上肢挙上に伴う上腕骨頭の下方滑りが生じる必要があり、これには肩関節の後方組織や下方組織の柔軟・伸長性の維持が重要になります。

肩後方・下方組織としては、特に棘下筋、小円筋、肩甲下筋下部の柔軟・伸長性に対してアプローチする必要があります。

肩後方組織のタイトネス(筋肉の伸長性が低下している状態)は、肩関節屈曲、水平内転、内旋(下垂位・外転位)の可動域制限に関与します。

小円筋の筋スパズム(筋攣縮)は2nd(肩90°外転位)内旋の制限につながります。

腹臥位での小円筋リラクゼーション後、90°外転位での内旋可動域は拡大します。

これは、後下方関節包の伸長前に、小円筋のリラクゼーションを得る必要性が高い事を示しています。

小円筋・棘下筋に対するリラクゼーションでは、腹臥位やstooping exの肢位(体幹前傾位)にて行います。

許可が下りていれば、肩関節軽度外転位で行います。

外転角度が大きくなると、三角筋後部繊維の緊張により触診しにくくなるため注意が必要です。

肩後方組織のストレッチは以下のようなイメージで行います。

上腕骨近位端骨折のリハビリ ズボラ自主トレストレッチ

上腕骨近位端骨折のリハビリで困ることとしては、以下のようなものがあります。

・腕が上がりにくい
・結果として洗髪や髪のセットがしにくい
・ブラジャーのホックを操作しにくい など

また、自主トレは何をしたら良いのかわからないということもよく聞かれます。

・方法がわからない
・教えてもらうが、面倒臭くなった
・効果が出ているのかわからない

患者様あるあるとしては、以下のような事があります。

・骨折側の手を積極的に使おうとしない
・正常な側の腕と比較すると、腕の使用時間が少ない

ストレッチは継続してこと意味があります。

筋肉は使わないと硬くなります。

1回のストレッチでは、ある程度時間をかける必要があります。

寝ながら、テレビを見ながらなど、何かに伴ってストレッチできる課題があると継続しやすくなります。

ストレッチするときに、自然に腕を使用する頻度も高くなります。

筋線維の特徴としては、以下のような事が言われています。

・アクチンとミオシンが交互に重なる「サルコメア」というユニットが一列に連なる筋原線維が詰まっている

・ストレッチを継続して行うと、 「サルコメア」が増える

・「サルコメア」が増えることで筋原繊維が長くなる

・2-3ヶ月継続することで、より効果が現れてくる

ストレッチを行う頻度が高ければ、より効果を得やすくなります。

そのため、リハビリ以外の時間でいかに骨折側の腕を使用できるかがポイントになります。

骨折後、医師よりストレッチが許可される時期に行います。

ベッドで横になりながら、テレビを見ながら、家族とおしゃべりしながらなど、隙間時間をしっかりと活用します。

ズボラストレッチ3選を紹介します(腕の上がりにくさにより種目を選択する)。

①首の後ろで手を組む

②頭の後ろで手を組む

③頭の後ろで両手を組む

できるだけ長く行う方が良いが、痛みが長引けば難易度の低い課題を行います。

腱板筋、三角筋、肩甲骨固定筋の協調

スムーズな上肢挙上に必要な要素は以下ことが重要です。

・腱板筋の収縮

・三角筋の収縮

・肩甲骨固定筋の収縮

・上記3筋群の協調した運動

腱板筋は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋により構成されています。

肩甲骨関節窩に対する骨頭の求心力として作用しますが、これにより運動の支点形成となります。

肩甲骨固定筋では、腱板筋、三角筋の収縮が得られていると仮定した場合、上肢挙上位を保つための筋力は、肩甲骨が上方回旋している方が少なくて済みます

腱板筋の収縮力が弱い場合、肩甲骨固定筋の収縮力を強化することで上肢挙上が行いやすくなる可能性があります。

腱板筋、三角筋、肩甲骨固定筋の協調運動課題

  • チルトテーブルを使用
  • テーブル角度0°から開始
  • 肩屈曲90°挙上位から0°に戻す
  • テーブル角度0°から徐々にupさせ、「肩挙上から戻す」課題を行う
  • 上肢の筋力や腱板への負担を考慮する場合、肘屈曲位から開始する
  • 上肢筋力改善状況等に合わせ、肘関節伸展位にて課題を行う

筋力トレーニングを始める時期

筋力トレーニングを行う時期は、保存療法では受傷後7-8週程度、手術療法では術後4-6週程度、人工骨頭置換術では術後6-7週程度が目安になります。

筋力トレーニングは等尺性収縮から始める事が重要です。

等尺性収縮とは、筋肉の長さが変わらずに筋肉が収縮している状態です。

経過の中で、全可動域での運動、抵抗運動(ゴムバンド等使用)へと段階を踏んでトレーニングを行うようにします。

筋力トレーニングと棒体操

新聞で作成した棒や杖、傘で簡単に行うことができるトレーニングがあります。

自動運動で運動が行えない、行いにくい場合に有用です。

筋力がまだ十分でない、患側のみで動かすと痛みが強いなどに適応があります。

棒を健側でも持つことにより、アシストが得られます。

患側の腕が上がりやすくなれば、健側のアシスト量を減らすようにします。

患側の筋力改善に応じて、錘(おもり)をつける事で更なる筋力改善を図ります。

痛みの程度に応じて、腕を上げる範囲は調整するようにします。

肩甲骨のスタビリティーを高める時期

肩甲骨のスタビリティーを高める時期は、保存療法では受傷後7-8週程度、手術療法では術後7週程度、人工骨頭置換術では術後8週程度が目安になります。

筋力トレーニング(抵抗運動での)を積極的に行える時期では、肩甲骨のスタビリティーを高めるトレーニングも積極的に行っていく事が必要です。

上腕骨近位端骨折と日常生活上の注意点

骨折後早期、または術後早期から、生活の中で骨折した腕を使用すると、骨折部の骨がずれる(転位)可能性があります。

転位により痛みが増す、関節可動域制限が生じる等の不利益となることがあります。

医師の許可が出るまでは、骨折していない腕で日常生活を送ることが大切です。

三角巾やバンド固定を適切に行うことで、日常生活の動きで骨折部に負担をかけないようにすることが大切になります。

上腕骨近位端骨折と日常生活(寝方)

医師の許可が出るまでは、就寝中に腕が動いて骨折部に負担がかからないように、バストバンドや三角巾で固定して寝ます。

骨折部を下にして寝ると、負担が大きくなったり、転位する可能性があります。そのため、骨折部を上にして横向け(側臥位)になります。

仰向け(背臥位) をとる場合、寝返りで骨折部が下にならないように、背中にクッションを挟む場合もあります。

上腕骨近位端骨折と日常生活(入浴)

入浴時は、骨折部を固定しているバンドや三角巾は外します。

医師の許可が出れば入浴を実施します。

入浴中に腕を上げる動作は避ける必要があります。

手すりや浴槽の縁に手をつかないようにし、骨折側の手でタオルを持ち体を洗わないようにします。

届きにくい場所は介助を受けたり、長柄ブラシを用いる等で対応します。

上腕骨近位端骨折と日常生活(着替え)

衣服の種類は、かぶりタイプよりも、前開きタイプの方が簡単に着脱しやすいと言えます。

その際、大きめの衣服を着ることで着脱がしやすくなります。

骨折側の腕から袖を通し(逆の手で袖を通しにいく)、逆の手の袖を通すの順番で行うことで着やすくなります。

脱ぐときは、逆の手順(骨折していない側から)で実施します。

ズボンは腰掛けて、骨折していない手で上げ下ろしを行います。

上腕骨近位端骨折と日常生活(その他)

医師の許可が得られるまでは、重いものを持たない、担がないようにします。

医師の許可が得られるまでは、手をつけて体重をかけない事が大切です。

自動車運転は、バンド固定中については控えるようにします・

固定中に骨折部が転位すると、手術になる可能性が高まるためです。

医師の許可が得られれば運転を再開します。

自転車運転はハンドルを握る際に肩関節の運動が生じてしまうため、許可が得られるまでは行わないようにします。

上腕骨近位端骨折の痛みの特徴

骨折部位に直接的な衝撃が加わった場合や、上腕骨がずれると、非常に強い痛みが生じやすくなります。

骨折による出血が原因で骨折部位が腫れ、それにより痛みが生じることがあります。

腕を無理に挙げる動作が痛みを引き起こすことがあります。

これは、上腕骨が支える肩関節の動きによって、骨折部位が動くために痛みが生じるためです。

また、骨折部位への振動により痛みが生じることがあります。

ドアを閉めたり物を持ち上げたりすると、骨折部位に振動が加わるため、痛みが生じることがあります。

肩関節周囲にも痛みが生じることがあります。

これは、上腕骨が支える肩関節の周囲の筋肉や靭帯が緊張し、痛みを引き起こすためです。

上腕骨近位端骨折の痛みはいつまで続くのか

上腕骨近位端骨折の痛みの継続期間は、骨折の程度や治療法によって異なり、個人差があります。

一般的には、骨折後数日から数週間間は痛みが強く、後徐々に軽減する傾向にあります。

鎮痛剤や痛み止めの使用や、物理療法、運動療法、骨折治療の適切な管理などが痛み軽減のために重要になります。

上腕骨近位端骨折が完治するまでには、通常数か月から半年以上かかる場合があります。

治療の適切な管理や運動療法、リハビリテーションなどが継続的に行われることで、痛みが軽減され、早期に回復することが期待できます。

上腕骨近位端骨折の保存療法で痛みは軽減するか

上腕骨近位端骨折の保存療法は、骨折部位を固定して骨の自然治癒を促す事が大切です。

痛み軽減のためには、骨折部位の固定が適切に行われることが重要です。

固定された上腕骨近位端骨折を支えるために、スリング(三角巾)を使用されることが多いです。

スリングを使うことで、痛みが軽減されることがあります。

痛みの軽減には、痛み止めや鎮痛剤を使用することも有効になります。

上腕骨近位端骨折の保存療法では、固定期間中に筋肉や骨の萎縮が進むことがあり、固定を解除した後に痛みが生じることがあります。

適切な固定期間や運動療法、リハビリテーションなどを行い、固定を解除した後も適切なケアを行うことが重要です。

上腕骨近位端骨折の手術療法で痛みは軽減するか

上腕骨近位端骨折の手術療法では、骨折部位の正確な再配置や固定を行うことができるため、痛みが軽減することが期待できます。

手術療法には、骨折部位にプレートやネジを使用する内固定法や、骨折部位に針を挿入して固定する外固定法などがあります。

手術療法は、保存療法に比べて回復期間が短く、早期に運動療法やリハビリテーションを開始することができるため、痛みを軽減することが期待できます。

手術治療では、手術後の痛みや手術部位の腫れ、瘢痕、手術後の感染などの合併症が起こる可能性があります。

手術療法の適応は、骨折の程度や位置、患者の年齢や身体状態、活動レベルなどによって異なります。

上腕骨近位端骨折で痛みを軽減する方法

痛み止めや鎮痛剤の使用は、医師の指示に従って、適切に使用します。

適切なスリングやキャスト、外固定具などを使い、骨折部位を固定することで痛みを軽減させます。

固定期間中は、医師の指示に基づき運動を行います。

冷却療法は炎症を抑える効果があり、熱感が強い場合は患部にアイスパックを当てる事も試す(凍傷に注意)ようにします。

固定解除後のリハビリテーションでは、関節の可動域を回復させることで痛みを軽減することができます。

骨折部位の治癒には、適切な栄養補給が必要で、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を摂取することで、骨折部位の治癒を促し、痛み軽減につなげます。

関節可動域制限と痛みの関係性

上腕骨近位端骨折では、その重症度により関節可動域制限が生じやすくなります。

関節可動域制限が生じると、関節周囲の筋肉や靭帯などの組織が硬くなり、さらに可動域が制限されるという悪循環に陥ります。

このような状態が続くと、痛みや機能障害、筋力低下などが生じることがあります。

可動域が制限された関節を動かそうとすると、筋肉や靭帯が緊張して痛みを引き起こすことがあります。

痛み軽減のためには可動域を回復させることが重要です。

リハビリテーションでのストレッチなどにより、硬くなった組織を柔らかくし、関節の可動域を回復させる必要があり、痛みや機能障害などの症状も改善されることが期待できます。

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スキマ時間勉強ならリハノメ

PTOTSTのためのセミナー動画が見られます。

各分野のスペシャリストが登壇しているので、最新の知見を学びながら臨床に即活かす事が可能です。

セミナーあるあるですが、、、メモ取りに夢中になり聞き逃してしまった。

なんてことはなくなります。何度でも見返す事が可能だからです。

高額なセミナー料+交通費、昼食代を支払うよりも、スキマ時間を見つけて勉強できる「リハノメ」を試してみるのも良いのではないかと思います。

臨床で差をつける人は皆隠れて努力していますよ。

長い期間で契約したほうが、月額が安くなります。

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転職サイト利用のメリット

何らかの理由で転職をお考えの方に、管理人の経験を元に転職サイトの利用のメリットを説明します。

転職活動をする上で、大変なこととして、、、

仕事をしながら転職活動(求人情報)を探すのは手間がかかる

この一点に集約されるのではないでしょうか?(他にもあるかもしれませんが)

管理人は転職サイトを利用して現在の職場に転職しました。

コーディネーターの方とは主に電話やLINEを通してのコミュニケーションを中心として自分の求める条件に合う求人情報を探してもらいました。

日々臨床業務をこなしながら、パソコンやスマホで求人情報を探すというのは手間ですし、疲れます。

そういう意味では、転職サイト利用のメリットは大きいと考えています。

転職サイト利用のデメリット

デメリットとしては、転職サイトを通して転職すると、転職先の病院や施設は紹介料(転職者の年収の20-30%)を支払うことです。

これがなぜデメリットかというと、転職時の給与交渉において、給与を上げにくいということに繋がります。

それでも、病院や施設側が欲しいと思える人材である場合、給与交渉は行いやすくなるはずです。

そういった意味でも、紹介してもらった病院や施設のリハビリ科がどのような現状で、どのような人材が欲しいのかといった情報が、自分の持つ強みを活かせるかといった視点で転職活動を進めていくことが大切になります。

転職サイトは複数登録することも必要

転職サイトは複数登録しておくことが重要になるかもしれません。

それは、転職サイトによって求人情報の数に違いが生じることがあるからです。

せっかく転職サイトを利用するのであれば、できるだけ数多くの求人情報の中から自分の条件にあった求人情報を探せる方が良いはずです。

その分複数のコーディネーターの方と話をする必要がありますが、自分のこれからのキャリアや人生を形作っていく上では必要なことになります。

また、コーディネーターの方も人間ですから、それぞれ特性があります。

自分に合う合わないと言うこともありますから、そういった意味でも複数サイトの登録は大切かもしれません。

とにかく行動(登録)!管理人も登録経験あり!転職サイトのご紹介!

ネット検索にある転職サイトの求人情報は表面上の情報です。

最新のものもあれば古い情報もあり、非公開情報もあります。

各病院や施設は、全ての求人情報サイトに登録する訳ではないので、複数登録する事で より多くの求人情報に触れる事ができます。

管理人の経験上ですが、まずは興味本位で登録するのもありかなと思います。

行動力が足りない方も、話を聞いているうちに動く勇気と行動力が湧いてくることもあります。

転職理由は人それぞれですが、満足できる転職になるように願っています。

管理人の転職経験については以下の記事を参照してください。

「作業療法士になるには」「なった後のキャリア形成」、「働きがい、給与、転職、仕事の本音」まるわかり辞典

転職サイト一覧(求人情報(非公開情報を含む)を見るには各転職サイトに移動し、無料登録する必要があります)

PT/OT/STの転職紹介なら【マイナビコメディカル】

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